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2015年5月

2015年5月31日 (日)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……


Mituo2_2

昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー







この物語は(株)ユタカファーマシーが
展開する、ドラッグユタカで
実際にあったエピソードです。


『ずっとずっと決めていたこと 後編』
Author :志賀内泰弘


高橋のお婆ちゃんに、
心を読まれてしまったようだ。
「・・・で、でも」
「あんた、なんで介護用のおむつばっかり、
たくさん買い込むんだろうかって、 
不思議に思っているんだろう」
「え?・・・は、はい」
「あまり人には言わんでな」「・・・」

彩也香は、真顔のお婆ちゃんを見つめた。
とても認知症の人には思えなかった。
「お爺さんはな、寝たきりになってしもうたがな、 
ちゃんと毎日、わたしと話をしてくれとる。
めったには出掛けなかったけど、
宮崎とか北海道とかに旅行に行ったことは
何度も話すんだ。楽しかったな~、
美味しかったな~、てな。
そんな同じ話ばかりしてもうすぐ7年が経つんよ。
長いようで短いなあ。

お爺さんにはな、これからもずっとずっと
長生きしてもらいたいんよ。
私よりも先に死なれたら、辛くてたまらん」
彩也香は、とつとつと話す
お婆ちゃんの瞳を見つめていた。

「おむつがなぁ。1ヶ月分しか家にないとな、
不安になるんよ。
あと1ヶ月しか生きていられんような気がしてな。
2ヶ月分しかないと、
あと2ヶ月で死んでしまうような。
それでなぁ。3ヶ月月分、4ヶ月分とな、
だんだんと増えていってしまって、
とうとうお座敷いっぱいになってしまったという
訳なんよ。

たぶん、1年分くらいはあるんじゃないかな。
でも、まだ不安なんよ、
わたし。お爺さんには、1年ばかりじゃなくて、
何年も何年も生きていて欲しい。
下の世話もわがままも何でも聞いてやるから」

彩也香は言葉を失い、
ただそこに立ち尽くした。
気が付くと、頬に一筋の涙が伝っていた。

それから、半年ほどが経った
ある日のことだった。
高橋のお婆ちゃんの旦那さんは、
風邪がもとで気管支炎を患い、
あっという間に亡くなってしまった。

そしてそれから2週間後、
お婆ちゃんが店にやってきた。
「ユタカさん、ありがとうね。
おかげで、お爺さんも
天国に安心して行けましたよ」
旦那さんが亡くなって
通夜にも告別式にも参列させてもらった。
思うよりも元気そうでホッとした。

「そろそろ、片づけもしなくちゃならんのだけど、
なかなか手が付かんくてね」
「しばらく、ゆっくりして下さいよ、お婆ちゃん」
「うん。でもな、野菜はどんどん芽を出すしな、
畑仕事は休めん」
「そうですね」
「ところでな・・・ちょっとな、
あんたに相談があるんよ」

「相談」と言われて、彩也香は
少し嬉しくなった。
何にも役に立てずにいる自分に
苛立っていたからだ。
「あのなぁ、あのお座敷のおむつなんだけど、
一緒に手伝って処分してもらえんかなぁ。
いつか、わたしが必要な時が来るかもしれんけど、
あれを見ると、お爺さんのことを思い出して
辛くてなあ」……

「もちろんです。もしよかったら、
返品に応じさせていただきます」
「え? 返品??」
「はい。たしか、レシートをきちんと
保管していらっしゃいましたよね、お婆ちゃん」

「あ、うん・・・お爺さんの癖で、
菓子箱に全部入れてあるよ」
「1年前のものは返品できないっていう
決まりはありませんから」
「え? 本当にいいんかい・・・
会社から叱られん?」

それは彩也香が、ずっとずっと前から
決めていたことだった。
残念ではあるけれど、きっとこの日が来ることを
考えていた。

「お爺ちゃんが亡くなられて、
年金だけじゃますます生活がたいへんでしょ。
返金分で、お孫さんに何か買って
差し上げてください」
高橋のお婆ちゃんはうつむいて
動かなくなってしまった。
足元の床に、ポツリポツリと、涙が落ちた。

彩也香は、それを見て見ぬフリをして
大声で言った。
「今日は、カボチャの料理でも作ろうかな。
美味しい煮物の作り方、
教えてもらえますか?」
彩也香にとって、思い出深い夫婦だった。

《終わり》



【死にざま】




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






P R

カビの生えない・きれいなお風呂

furo



お風呂物語








信じれば真実、疑えば妄想……59

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin

韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。



漢の韓信-59

これより前、劉邦の戦車が通過する直前、
韓信は兵卒を前に胸の内に秘めた作戦を披露している。
兵の数は親衛隊を中心にしたおよそ四十名。
実に心許ない数ではあったが、
今は数よりも質を重んじるときであった。

「私がこの地点に陣を張ったのは、
ここがいちばん隘路になっているからである。
北は山、南は川に面し、いずれも急斜面になっている
……騎馬では到底迂回できない。
私の推測では、十中八九、ここを項王が通る」
「…………!」兵たちは声を失った。
いずれの顔にも恐怖の色が浮かぶ。
しかし、構わずに韓信は話を続けた。

「項王はその性格上、先頭を駆けてくるだろう。
これは性格の面だけではなく、
今までの戦場での行動を分析してもわかることだ。
しかしなぜここを項王が通るか? 
答えは獲物が大きいからである。
項王の最大の目標は漢王の捕縛だ。……
すなわち、この道を漢王が通る」
「将軍には、なぜそのように断言できるのです?」
誰もがもつ疑問であった。

兵の質問に韓信は誇るふうでもなく答えた。
「私は彭城での軍規の乱れから、
漢の敗北をあらかじめ予想していた。
いや、予想という言葉は当てはまらない……
確信していたのだ。
そこで私は前もって敗走経路を漢王に示しておいたのだ」
兵たちはざわついた。
敗北を前提に作戦をねる大将など、
不謹慎ではないか、と言いたいのである。

だが韓信は悪びれる様子もなく、またも淡々と話した。
「あのような勝利の浮かれ騒ぎの中、
漢王が敗北を受け入れるはずがない。
我が軍はそのうち負けますので王は逃げてください、
などと言っても信用されるはずがないだろう。
そこで私は漢王にではなく、
御者の夏侯嬰を説得したのだ。
もし我が軍と漢王の身になにか悪いことが起きれば、
この道を通って逃れよ、と」

兵たちはまだ信じぬようであった。
本当に劉邦はここを通るのか。
「信じるか信じないかは、もはや問題ではない。
私とて、一抹の不安はある。
夏侯嬰が私の話を覚えているか、
あわてて忘れてしまいはしないか……
しかし、信じるしかない。

では、作戦の話に入ろう」
韓信はその長剣で地面に図を描きながら話し始めた。
父の形見の大事な剣のはずだが、
その扱いはぞんざいである。
「我々は隘路を塞ぐように横に五重の陣形をしき、
漢王の姿を確認したら左右にわかれ、
これを速やかに通す。
通し終わったら素早く陣形を戻し、
追いすがる楚軍に備える……
ここまではよいな? 

楚軍の姿が視界に入ったら諸君はそれぞれ
弩(ど)(いしゆみのこと。矢を人力ではなく、
引き金を使って射る、クロスボウのような兵器)を構え、
ありったけの矢を射てその進撃を止めよ。
あらかじめ言っておくが、このたびの作戦は
楚軍を撃ち破るものではない。
漢王が安全に落ち延びるための時間稼ぎである。
追撃の速度を緩めてやれば、それでいいのだ」
韓信は力を込めて語ったが、
誰にもわかりきったことであった。

先頭を駆けてくる者が項羽だと知り、
たった四十名で勝てると思う夢想家など、
この中にはいない。
「矢の連射によって楚軍の足を止めたあと、
山側から攻撃を仕掛ける。
隘路によって縦に伸びた軍列を側面から討ち、
分断するのだ」不信に思った兵のひとりが尋ねた。

「兵の数が足りませんが……?」
「兵は二人、いや三人いればよい。
私はやはりこうなることを予測し、
山側から道を塞ぐ程度の巨岩を転がす仕掛けを
作らせておいた。
諸君はそれを動かすだけでいい。
それだけで、確実に道は塞がり、楚軍は分断される。

岩を落とす地点は、なるべく楚軍の
先頭に近い位置がいい。
できれば項王その人がひとり取り残されるのが
理想だが、さすがにそれは無理であろうな」
「岩を落として項王に直接当てる、というのは
……もっと難しいですな。
しかし、いつの間にそんな仕掛けを?」
韓信は苦笑いした。
「苦労した。兵たちはどの者も浮かれ騒ぎたいと思い、
私が命令を下しても聞く耳を持つ者はいなかった。
やむを得ず、協力してくれた者には将来、
将軍に推すことを確約した」
「そんな約束をして大丈夫なのですか?」
「さあ、どうかな。おそらくその者たちは
すでに皆死んだだろう。
私には説得している時間などなかったので、
軍中でとびきり欲深そうな、
酒宴に興じている者だけを選んで、偽りの約束をした。

時間がないときは、その方がてっとり早い」
韓信はすこしいらついた表情を浮かべた。
このとき彼は、自分の行動に
嫌悪感を抱いたのかもしれない。
「欲深な者は、欲につられて仕事をする。
その先の運命まで、私が責任を持つことはない」
韓信はその気持ちを振り払うかのように言い放った。
これを受けて、一座はしんとなった。

つづく 

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.

愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



古賀のメロディー日本人の心を辿る 
人生の並木路・美空ひばり




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる







P R

カビの生えない・きれいなお風呂

furo



お風呂物語






2015年5月30日 (土)

信じれば真実、疑えば妄想…58

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin

 

韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。

漢の韓信-58

劉邦は酒宴を開く兵たちに混じって、
自らも酒を飲み、唄い、騒いでいた。
もともと家業も手伝わず、遊びほうけていた
平民時代の姿がそこにあった。
張良はそんな劉邦の姿を見るのに
嫌気がさしたのか、ひとり廃屋にこもり
静かに過ごしていた。

張良は元来多病で、すぐ風邪をひいては
寝込むたちであったが、
このときも遠征の疲れが出た、と言って
軍中に姿を現すことがなかった。
実際は乱れた軍組織の中に自分がいることを
恥ずかしく感じたのであろう。

いったい勝利とは、なんだ?
韓信はさじを投げたくなった。
しかし我慢強く、耐え忍べばそのうち
項羽がやってくるだろう。
そのときこそ自分が軍を掌握する
唯一の機会だ、と考えざるを得なかった。
敵の項羽の反転来襲を期待するとは、
韓信にとって甚だ不本意ではあるが
仕方のないことであっただろう。

いっぽう首都の危急を知った項羽は、
斉との戦いをひとまず部下に任せ、
自ら精兵三万のみを率い、
彭城に取って返した。
五十六万対三万の戦いである。

項羽の自信は筆舌に尽くしがたい。
四月のある日の明け方、彭城の西、
簫(しょう)の地に項羽率いる楚軍は出現した。
まともな守備態勢などとっていなかった
諸国の連合軍をあっという間に壊滅させ、
昼前に項羽は彭城に達した。

恐慌をきたした連合軍は、
一斉に南にむかって逃げ出した。
大潰乱である。逃げる漢軍は、
穀水(こくすい)泗水(しすい)のふたつの川で
行く手を阻まれると、十万人以上の犠牲者を出した。
残りの兵たちはさらに南の山中に逃れたが、
楚軍の追撃はなお止まない。
凄まじいのは追撃する楚軍の先頭に
項羽自身が立っていることであった。

「項王だ! 助けてくれ」
「項王に殺される」兵たちは叫んだが、
しかし助けてくれと言っても助ける者などいない。
山を越えて睢水(すいすい)まで追い込まれた
漢軍の士卒は、追い込まれてみな川岸から落下し、
十万人以上が川底に沈んだ。
このため、睢水はその流れが一時的に
止まったという。

劉邦も逃げた。その途中で楚軍に三重に取り囲まれ、
もはやこれまでか、と思った矢先、
気候が急に乱れ、西北から大風が起こったという。
その大風を受けて楚軍の追撃が一瞬弱まった
間隙を突いて、劉邦は脱出に成功した。
しかし、その周囲には数十騎の騎兵が
残されているだけだった。

なおも楚軍の追撃は続く。
劉邦は御者に向かって怒鳴り散らした。
「もっと早く走れぬのか。
項羽めに追いつかれてしまうぞ」
御者は夏侯嬰である。
これ以上急げと言われても彼には
どうすることもできない。そもそも怒鳴る劉邦自身、
揺れる車上で何度も転倒しているさまなのである。
「大王、身を低く! 矢で射られてしまいます」

この時代の戦車は四頭立ての馬が引き、
御者は立ってそれを操る。
さらに乗員も立ったままの姿勢でいることが普通で、
椅子らしきものはない。
また劉邦が乗る戦車には参乗の樊噲が
陪乗して護衛をすることが常であったが、
このとき劉邦は樊噲とはぐれ、
戦車には劉邦しか乗っていなかった。

非常に心許ない逃避行を、
劉邦は強いられたのである。
楚軍との距離が縮まり、
劉邦の身に矢が届き始めた。
夏侯嬰には、それを防ぐことができない。
ひたすら四頭の馬を走らせることしかできなかった。
このまま、討ち取られるのか。
ここで終わりなのか?
夏侯嬰の頭の中に絶望がよぎったとき、
前方に影が見えた。

激しい砂塵が舞う中で、彼はよく目を凝らしてみた。
それは漢の軍旗であった。味方だ!
しかし前方に見える兵の数は、決して多くない。
それでも劉邦の進路を開ける動きには、
きびきびとした規律が見られた。
そして先頭に立つ将らしき人物が、
長剣を杖がわりにして立っている姿が見えた。

「……韓信だ!」夏侯嬰は助かった、と
言わんばかりに叫んだ。
劉邦はそれを聞き、手を叩いて喜んだ。
「信め! 先回りして退路を確保しているとは! 
やはり無双の国士よ!」

劉邦の姿を見て剣を収めた韓信は、
すれ違いざまに劉邦に言い放った。
「大王! 滎陽へ! 滎陽で再起を図りましょう! 
ここはお任せを!」

夏侯嬰は叫んだ。「韓信、項王だ! 
頼んだぞ!」
劉邦も叫んだ。「信、きっと死ぬな! 
生きて滎陽で会おうぞ!」
そして劉邦の戦車は砂塵を残し、
通過していった。……


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.

愚人は過去を、賢人は現在を、

狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



夜のめぐり逢い  石原裕次郎&八代亜紀



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる







P R

カビの生えない・きれいなお風呂

furo



お風呂物語






妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……

Mituo_2
 
昨日という日は
歴史、

今日という日は
プレゼント

 

明日という日は
ミステリー

 

 



この物語は(株)ユタカファーマシーが
展開する、ドラッグユタカで
実際にあったエピソードです。


『ずっとずっと決めていたこと 前編』
Author :志賀内泰弘


安藤彩也香は・・・泣いていた。
来店されるなり、高橋のお婆ちゃんが頭を下げた。
「ユタカさん、ありがとうね。おかげで、
お爺さんも天国に安心して行けましたよ」
高橋のお婆ちゃんの旦那さんが亡くなってから、
もう2週間が経つ。
通夜にも告別式にも参列させてもらった。
彩也香にとって、思い出深い夫婦だった。

ドラッグユタカの滋賀県の店舗に着任早々、
高橋のお婆ちゃんと仲よくなった。
畑で採れた野菜だと言って、
買い物に来るたび持って来てくれた。
アルバイトの子たちも含め、みんなで分けていただいた。

毎月、一度、高橋のお婆ちゃんは大量の買い物に訪れた。
消毒液、脱脂綿、ビニール袋、介護用のおむつ・・・。
そう、お婆ちゃんは自宅で、
脳梗塞で倒れた旦那さんの介護をしているのだ。
もう7年になると、前任の店長から聞いていた。

息子さん二人は、家を出て遠くで働いているらしい。
長男さんからは「一緒に暮らそう、
東京へ来ないか」と言われているが、
頑なに拒んでいると耳にした。
お爺さんが、自分の生まれ育った家で
死にたいと言っているのだという。

老々介護。辛くないはずがない。
でも、高橋のお婆ちゃんは、けっして暗くない。
お店にやってくるなり、いつもケタケタと笑う。
「こんな形のキュウリができてな。
みんなに見せようと思って持ってきたんよ。
チンポコみたいじゃろ」
学生アルバイトのユージの「アソコ」に、
そのキュウリを押し付けては、たまケタケタと笑う。

ところが、そんな元気のかたまりのお婆ちゃんが
畑仕事をしていて、腰をやられてしまった。
「車の運転ができないので、
持って来てくれないか」と電話があり、
彩也香は心配になって飛んで行った。
部屋には、民生委員さんと、
ヘルパーさんが来てくれていた。

「お婆ちゃん、老人ホームに入った方がよくない?」
「大丈夫、すぐに治る」と言い、腰をさすった。
彩也香は、ちょっとだけホッとした。顔色は悪くない。
「痛てて」と言いながらも、
壁を伝って部屋の中を歩くこともできる。
「おむつとか、どこへ運びましょうか」
「隣の部屋へ頼むわ」と、遠くから指を差された。

ふすまの扉を開ける。「え!」
彩也香は、目の前に迫るようにそびえ立つ山に驚いた。
そこは、仏壇のある座敷だった。
ずっと使われていないらしく、納戸のようになっていた。
その広い畳の部屋いっぱいに積み上げられていたのは、
ティッシュペーパーと介護用おむつだった。

いったい、どれくらいあるのか見当もつかない。
ドラックユタカの店頭の在庫よりも多いことは間違いない。
6か月分、いや1年分ちかくもありそうだ。
「そこへ積み上げておいとくれ~」
遠巻きにお婆ちゃんの声が聞こえた。
(これはどういうことなの?)

彩也香は、ひょっとして・・・と訝しんだ。
お店に来るときは、かなりしっかりしっかり者に見えた。
でも、実は、相当に認知症が進んでいるのではないか。
目の前に、こんなにもストックがあるのだ。
忘れて買い置きしているわけではなさそうだ。

昔、親戚のおばさんに聞いたことがある。
認知症の症状の一つとして、
買い物依存症が出るというのだ。
叔父さんもそうだった。いつも吸っているマイルドセブンライト。
机の上にも、ポケットにも入っているのに、
自動販売機を見ると買ってしまうのだった。
たくさん手元に置いておかないと、不安になるらしい。
そのため、いつも100箱以上の買い置きがあった。

(息子さんに連絡をして、
一度病院に連れて行ってもらった方がいいかも)
彩也香は、介護用のおむつの山を見ながら、
溜息をついた。

それから5日後のことだった。
高橋のお婆ちゃんが、元気な姿を見せた。
「もう大丈夫」と、大きなカボチャを
3つも抱えてレジに置いた。
「みんなで食べてな」
「ありがとうございます」
「それから・・・またこれだけ用意してくれんかな。
車の運転もできるようになったから、
自分で持って帰るから」

「はい、私が用意します」と答え、
彩也香がメモ用紙を受け取った。(え!?)
そこには、ついこの前、配達したばかりの商品が
羅列してあった。
あの、座敷に山となっていた介護用のおむつも。

やっぱり認知症・・・。
「いんだよ、その通りで」
高橋のお婆ちゃんに、
そんな心を読まれてしまったようだ。
「・・・で、でも」
「あんた、なんで介護用のおむつばっかり、
たくさん買い込むんだろうかって、
不思議に思っているんだろう」
「え?・・・は、はい」
「あまり人には言わんでな」

 

《後編に続く》



【母の遺書】



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






P R

カビの生えない・きれいなお風呂

furo



お風呂物語






2015年5月29日 (金)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin

韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。

漢の韓信-57

韓信は出撃を前にして、精鋭を周囲に置き、
これを常に自らの周囲に配置することにした。
親衛隊のようなものである。
それは大軍となった漢と諸国の連合軍の中で
指令系統が乱れ、軍の収拾がつかなくなったときのための
最後の切り札であり、つまりはこの諸国間連合の
行く末が楽観できないという
彼の気持ちのあらわれであった。

しかしそんな韓信の思いをよそに、
漢を始めとする連合軍は、
はやる気持ちを抑えもせずに西楚の首都、
彭城へなだれ込んだ。
総勢五十六万の蹂躙。
車馬の列が奏でる大地が裂けるほどの轟音。
あらゆるものをも焼き付くすかのような大火。
そして、敵味方を問わず浴びせられる罵声。

もはやその姿はひとつの目的にしたがって
行動する軍隊などではなく、
五十六万の意思がとりとめもなく散乱する
ただの混沌でしかなかった。
その混沌が、楚の首都彭城を包み込んだのである。
尽きることのない悪意の数々。
城内に財宝が発見されると、
早い者勝ちで兵たちはそれを奪おうとする。
宝の奪い合いが殺し合いに発展し、
その結果勝利を得た者が財宝を手中にした。
しかしやがて上官が現れると
その兵は斬り殺され、
財宝は上官のものになるのだった。

将兵たちは楚兵の首を囲んで酒宴を開き、
女を見つけるや老若を問わず見境なしに犯し、
欲求を満足させると、その女を殺した。
家を見つけては食料を奪って山分けし、
奪い尽くすとそれに火を放った。
そして彼らはそれに飽き足らず、
高価な副葬品を見つけ出そうと墓を掘り返した。
めぼしい物が見つかると、
兵たちはまた殺し合いを始めるのである。

韓信は目を背けたくなった。
軍のたがが外れてしまった。
もはや私に統御できる段階ではない……。
彼らには義も不義も関係なく、
欲を満たせればそれでいいのだ。

本来彼らには戦うための理念というものがなく、
楚が弱まれば漢に味方し、
漢が弱まれば楚に味方する。
うまい汁を吸える方になびくだけなのだ。
何もかも放り出して、逃げ出したくなった。

しかし当然のことながら大将としての立場が
それを許さない。……
諸君、よく見ておくのだ。
これが人間の本性というものだ。
欲望に身を委ね、思いのままに行動しているうちは、
人々は自らの身の危険を考えない。
実に愚かなことだ……。

彼らは今、項王の存在を失念してしまっているのだ」
韓信は直属の親衛隊に向かってそう話し、
予期される項羽の反転に関して注意を喚起した。
嘆く気持ちを抑えつつ、
韓信は項羽の帰還経路を推測して
それに備えるよう努力したが、徹底しないこと甚だしい。
もはや軍規の緩みは諸国連合の
核ともいうべき漢軍にも及んでいた。

漢王も漢王だ。あの方こそしっかりしておれば、
こんな事態にはならなかったものを……。
張子房どのも、いったいどこで何をしている?
その韓信の思いをよそに、
漢王劉邦はこのとき空前の勝利に浮かれていた。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



わかれ川 石原裕次郎&八代亜紀




人の為(ため)と書いて
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誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる












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お風呂物語






歴史・履歴への許可証

歴史・履歴への許可証

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Kobanasi_3



『えんま大王の考え』

この頃は病気で死ぬ人が少なくなってきたので、
地獄がひまになりました。
そこでえんま大王は、鬼たちを集めて
相談をしました。

「地獄がひまになったのは、
医者が病人を残らず治してしまうせいです。
医者という医者を、
みんな地獄へ連れてきましょう」
「それは、名案だ」青鬼も、賛成しました。
「どうでしょう。えんまさま」
鬼たちがたずねると、
えんま大王は首を横に振りました。

「いや、それはちと、考えものだぞ」
「なぜで、ございますか?」
「よく考えてみろ。
医者が薬のさじかげんを間違えたり、
見たて違いをしてくれるおかげで、
本当は死ななくてもよい人間が、
ここにやってくるのだ。

やぶ医者までが一人残らずいなくなっては、
ますます困る。
連れてくるのは、くれぐれも
腕の良い名医にかぎるぞ」


おしまい




ライオン とメス牛親子



五両(5りょう)と五分

お祭(まつ)りが、やってきました。
町内の若(わか)いものが集(あつ)まって、
いろいろ相談をしたあげく、
芝居をやることにきまりました。

役(やく)の名を、紙にかき出して、
「おい、三太、おまえ、一番若いんだ。
ひとっ走り、呉服屋までいって、
これだけの衣装(いしょう)が、
いくらでできるか、きいてこい」

「おいきた」三太は、いきおいよく、
呉服屋まで、かけていきました。
お店の番頭は、紙に書いた役(やく)をよみあげ、
パチッパチッと、そろばんをはじいて、
へえ、しめて、五両と五分(四十万円ほど)になります

三太は、わすれるとこまるので、
「あの、紙に書いてください」すると、番頭は、
「いや、いや。紙に書くほどのことはない。
それ、おまえさんのこっちの手の指一本を
一両として、こう五本まげて五両。
こっちの手の指は、一本一分で、
五本まげて五分。両手をあわせると、
ほれ、五両と五分。
わすれっこは、ありますまい」

「なるほど」三太は、両手をにぎったまま、
表へ出ると、 「こっちの指が五両。
こっちの指が五分。両手をあわせて、五両と五分」
つぶやきながら、歩いていましたが、

なにをおもったが、くるりともどって、
呉服屋に入り、 「あのう、番頭さん。
どうか、二分か三分、まけてください」
「まあ、いいですが、それにしても、
どうしたわけで ?」

すると、三太は、二つのこぶしを突き出して、
「これでは、帰っても、戸があけられません」


おしまい




人の為(ため) と
書いて、
いつわり(偽) と
読むんだねぇ





誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから。


時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる






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カビの生えない・きれいなお風呂

furo


お風呂物語





2015年5月28日 (木)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。


漢の韓信-56

しかし、韓信は何もしなかったわけではない。
前途に不安を感じるのであれば、
今できる最大限の努力をしておこうと考えた彼は、
軍の中から精鋭を選び出し、
自分の直属とした。
精鋭といっても単に武芸に達している者に限らず、
職務に忠実な者、理解力に長けている者、
また足が速いことだけが自慢の者もいれば、
腕力だけが自慢の者もいた。

韓信が重視したのは、武勇に長けた、
百戦錬磨の者を選ぶことではなく、
いざという時に自分の指示を疑うことなく
実行できる者を選ぶことであった。
固定観念が少なく、
柔軟に物事を考えられる人物が最適で、
この結果選ばれた者たちは
必然的に若者が多かった。

韓信はさらに人材を得ようと
軍中を見回っていたときに、
とびきり馬の扱いに慣れた若者を目にした。
さらに馬上からの騎射がうまく、
韓信が立ち会った演習の場では、
どの位置から射ても寸分違わず
同じ的に命中させてみせた。

「実に巧みな射術だな。すばらしい。
我が配下に彼を誘いたいものだ」
韓信は思うだけでなく、
実際にその若者に誘いの言葉をかけた。
しかし、その若者はまともな返事をせず、
会話が成り立たない。
この者は唖(おし)か……?
韓信がそう思った矢先、
若者はやっと声を発した。

「私、……楼煩(ろうはん)です」
楼煩とは万里の長城の外に居住する
遊牧騎馬民族のことをさし、
いわゆる「胡」と呼ばれていた
異民族のひとつである。

もともと楼煩は中央アジアの北部を拠点として
遊牧生活を営んでいたが、
匈奴に圧迫されて次第に
東に移住するようになり、
やがて中原諸国に流入するに至った。
この時代には趙の北部に
楼煩県という行政区分もあり、
定住、漢化の始まった時期であった。

その楼煩出身の若者は、
左手に騎射に適した独特の短弓を持ち、
常に右手一本で馬を制御していた。
馬上で矢を射るときには軽く右手に
手綱を絡ませながら足だけで馬を御し、
巧みに矢をつがえて放つ。
その際に馬の足が止まることはまったくなく、
それでいて命中の精度は比類がなかった。

「楼煩の若者。名をなんという?」
その若者は軽い所作で馬から飛び降り、
韓信の前に跪いて言った。
「カムジン、です」
しかしその若者には姓がない上に、
自分の名を記す文字も知らなかった。
それでは諸事都合が悪かろうと考えた韓信は、
その若者に中国風の
「咖模津」という名を与えた。

韓信は命名するにあたって
特別な思いを込めたわけではなく、
彼を配下に置く以上は
名を記さねばならないこともあるだろうと思い、
当て字をしただけである。

読み方は「かむじん」のままであった。
ところが当のカムジンはこれに感動し、
韓信の手を取って喜びを表現したという。
その後韓信はカムジンと話を続けたが、
カムジンが必死に韓信の言葉を
理解しようと努力する姿に感じ入り、
あらためて配下に招くことを決意した。

カムジンは趙から逃れてきた
張耳の指揮下にあったが、
韓信は要請して彼を引き抜き、
以後弟のように可愛がったという。

ことが起こる前にそれを見抜く見識のことを、
先見の明という。
この時代に生きた者の中で、
韓信は間違いなく、その能力を持つ者の
ひとりであった。
しかし、彼は自身のその能力を
やや持て余していたようである。
つまり、彼には自分を取巻く状況が
悪い方向へ向かっていることが、
手にとるようにわかるのであった。
このとき彼は、いっときの勝利の
向こうにあるのが敗北であることや、
形だけの連合の行く末が新たな対立であることを
正確に予期していた。
それでいながら、彼にはそれを阻止することが
できないのであった。
いま私の前に広がる彼の思念は、
そのもどかしさを訴え続けている。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



【別れの夜明け】石原裕次郎・八代亜紀




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









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きれいなお風呂・宣言

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幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない


みのる


昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

『広島新幹線口、グリーンリッチホテル、支配人から
届いた、ファインメール』

婚礼シーズン!  今では1年中いつでも婚礼がある。
当館でもこの秋 結婚式の為、
ゲストの宿泊でご利用くださった方々も多い。
中学の教員をしている友人は、
教え子の結婚式に招かれることも多い。
それぞれ感動する結婚式になる。

中でも中学1年のとき、母親を病気で亡くし
父親と二人で生活していた直君の結婚式は
忘れられないという。

彼の性格はおとなしいけれど芯が強く、
感情を表に出さない生徒だった。
どんな時も前向きで、慣れない家事も
父親と二人三脚で、頑張っていた。
そんな直君から『ぜひ結婚式に来てほしい』と
うれしい連絡があり、 出席することになった。

新郎新婦の幼いことから今に至り、
楽しい思い出が披露されて、
笑顔の渦が会場を一色にしていた。
式のクライマックスで、お母さんが亡くなる前に、
お母さんからお父さんに
『直君が結婚するときに読んでほしい』と
渡された手紙が披露された。

『結婚式までは開けないでほしい』と話していたため、
この手紙の存在を忘れていたが
数日前に思い出し披露することになったという。

『直君、結婚おめでとう。
直君が生まれた日のことを、
昨日のことのように思い出します。
大きな産声で力いっぱい存在感を 
アピールしていましたね。
お父さんも お母さんも 
最高の幸せをいただきました。ありがとう。  
幼稚園での初めての運動会。
かけっこの練習を一緒にしましたね。
たくさん たくさん練習して いよいよ本番。
よーいドンの合図で走り出し1番で走っていたね。
でもゴール目前でつまずき転んでしまって、
友達がみんなゴールした後、
悔しい想いと闘いながら、最後まで投げ出さず
一生懸命走っていましたね。
そんな姿を見てお父さんもお母さんも
自慢の息子と思いました。
これからもたくさんの事にぶつかり、
迷い悩む事があるかもしれません。
でも直君なら、しっかり立ち向かい
乗り越えてくれると信じています。
明るく、楽しく、笑顔が絶えない
幸せな家庭を築いてくださいね。  

最後に晋一さん(直君の父)
私が早くに旅立つことになって、
本当にごめんなさい。
直君の成長を居場所は違うけれど
一緒に見守ることはできる。
だけど手伝うことができないのは本当にくやしいです。
こんなに立派に育ててくれて心から感謝します。
ありがとう!  そして お疲れ様でした。
これからは晋一さんの人生思う存分楽しんでくださいね。
心から愛しています。ずーと愛しています。
恵実(直君の毋)』

人前では決して涙を見せない直君が
人目も気にせず号泣していた。
お父さんもお母さんが亡くなった後、
たくさんの苦労があったのだろう。
明るくて 気さくなお父さんが、
今まで抑えていたものが、一気に涙となった。

どんな状況になっても、
家族の絆の強さと温かさを
改めて感じた結婚式だった。……


Author :志賀内泰弘

ギネスに載った/賢い犬

 

世代を越えた結婚

私の祖母は2014年9月末に癌で
84年という生涯の幕を閉じました。
祖母が息を引き取る前、
そっと私だけに教えてくれた話しです。

スエ(祖母)は65年前、
同級生のアツ(男の子)と交際をしていた。
彼とは家も近所の幼馴染。
終戦から4年が経ち、
スエが住んでいた村も平和を取り戻しつつあった。
スエの実家もアツの実家も農家で、
互いに手伝いの合間を見つけては、
フナ釣りに出掛けたり、山へ出掛けたりと
デートを楽しんでいた。

付き合いはじめて1年が過ぎ、
結婚を意識しはじめた2人。
互いの両親に認めてもらうために、
2人はスエの実家へと挨拶に出向いた。
「結婚させてください!」
身分も同じ。何も障害になるものはない。
スエもアツも”親たちはすんなり認めてくれる”と
そう思っていた。

しかし、予想とかけ離れた言葉が返ってきた。
「アツ君には悪いが、
娘の結婚相手はもう決まっている」
スエも初めて聞いた話しに驚きを隠せず、
「聞いてない!」と。

驚く2人にスエの父は
「娘は隣町のタカ君
(後の私の祖父。祖母より2つ年上)と
お見合いをすることが決まっている。
だから、君との結婚は認められない。」と、
冷静に話しをした。
放心状態のスエは家を飛び出し、
いつもの池へと向った。

アツは追いかけ、泣きじゃくるスエに
2人で村を出ようと約束をする。
駆け落ち同然で一旦は村を出たものの、
田舎の農家育ちで若い2人には
自分たちの力だけではどうすることも出来ず、
結局、村に戻ってきてしまう。

戻ってからはカンカンに怒った父に
2人きりで会うことを許されず、
スエは父の言う通りタカと見合いをし、
結婚をきに隣町へ引っ越した。

それからというもの、アツは出稼ぎに出る為、
近くにある大きな町へと出ていってしまう。
アツは工場関係の仕事につき、
転勤を何度も繰り返した為、
2人は何年も会うことなく、
それぞれ別の人生を過ごしていくこととなった。

スエはタカとの間に4人の子をもうけ、
普通に充実した生活を送っていた。
やがて子どもたちも結婚し、
スエにとっては3人目の孫となる私が誕生した。
5人、6人と増え孫も10人になる。

スエが61歳の時、癌を患っていたタカが
家族に見守られるなか他界。63歳だった。
スエが80歳の時、アツナ(孫の私)が結婚。
アツナとカズ(アツナ旦那)は大学で知り合い
付き合い始めた。

親の実家が近いということもあり、
2人の中は急速に近くなり、
結婚まではとんとん拍子に話しが進んでいった。
アツナ親とカズ親は顔合わせをするまで
会ったことがなかったが、
何度かご飯の席をもうけたので、
結婚式当日は数回目の対面ということもあり、
話しが盛り上がっていた。

式で初めて会った両家の祖父母たちも
和気あいあいと話しをしていて、
楽しい時間が過ぎていった。
そしてスエが82歳の時、
トラ(スエのひ孫)が誕生する。
その1年後、肺炎をこじらせ
床に伏せてしまったスエ。
元気だったスエの体調は戻らず、
1人では起き上がれない程になってしまう。

この世を去る数日前、
スエはアツナに昔の写真を出してくるように頼んだ。
アツナは写真を持ってスエの側に行くと、
昔、祖父以外の人(アツ)と
大恋愛をしていた話しをしてくれた。

昔は今のように自由な結婚よりも
親が決めた人と言う習慣が
田舎にはまだ根強くあったこと、
それでもそのときに青春を楽しんでいたことなど、
心が熱くなる話しだった。
思い出話しを聞いて余韻に浸っていたアツナは
静かにうなずき話しを聞いていたが、
なぜかアツナの結婚式の話しになる。

スエ「あのね~、カズ君のおじいちゃんね~、
おばあちゃん会ったの初めてじゃないんや」
アツナ「ふーうん。
カズのお父さんのお父さん? 知り合いやったん?」
スエ「そう。おばあちゃん、アツナの結婚式で
会うたときにびっくりしたんや。
その時はよう話さなんだけど」

アツナ「何で?」
スエ「アツナはカズ君のおじいちゃんの名前
しらんか?」
アツナ「ん? 知らんよ?
気にしたことなかったし。でも、あ!
でも引き出物送る住所に書いてあるかも!
カズ君書いてくれたからアツナ見てないけど。
ちょっとまってよ…えーっと…」
スエ「アツヒト」
アツナ「そうそう!
アツヒトさん!が、どうしたん?  
アツヒトさんと何で知り合い?
…え?? まさか!」

スエ「そうそう。おばあちゃんが今話ししたアツ君や。
まさか、こんな形で会うとは~と思ったわ。
もう60年以上も前の話しやけど。
見た目も変わらんかったわ。
カズ君を初めて見た時に
アツ君に似た子やなーと思たけどまさかなぁ~。
世間は狭いわ。
なかなか会えなんだのに。」と言った。

驚きと涙で言葉が出ないアツナ。
スエ「世代をこえてまた関われるとはね。
やっぱり運命やったんやろか。
式場で話したんや。久しぶりやねー。言うて。
それだけや。」それっきりでこの話しは終わり。

それから数週間後、祖母は息を引き取った。
私にだけ打ち明けてくれたおばあちゃん。
あの平凡な普通のおばあちゃんに
そんな人生があったなんて。
今もこの話しを知っているのは、
スエとアツナ、アツヒトとカズの4人だけ。
それ以外の身内には秘密の話し。



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる








furo
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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語




2015年5月27日 (水)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。


漢の韓信-55

項羽が斉を相手にしている途中にも、
断片的に情報は入ってくる。その中のひとつに、
「函谷関を出て東進をはかる漢軍によって、
鄭昌率いる韓が敗れた」というものがあった。
劉邦が……まさかな。あの弱い軍が
これ以上進んでくるとは思わぬ。
漢軍がそれ以上進撃を続けるには、
いずれ自分と対峙しなければならない。
自分の前で情けなく頭を地に付けた、
あの劉邦にそれだけの度胸があるとは思わなかった。

韓が敗れたというのは意外であったが、
もし事態が憂慮すべき段階になったら、
自分が行って徹底的に叩けばいい。
そのくらいにしか考えなかった。
しかし、漢軍の行動は項羽の想像より早い。
劉邦は韓を撃ち破る漢軍の実力を示すと、
天下に檄をとばした。
その結果、いち早く魏が賛同の意を表し、
魏王豹(ぎおうひょう)が劉邦のもとへ馳せ参じた。
魏豹はかつて章邯に降伏し、
焼身自殺した魏咎の従弟である。
またこのとき漢は、張耳を追い払った陳余に対しても
協力を要請している。

陳余はこのとき、趙王に歇を戻し、
自らは代王を称している。
しかし国情を考えて領国の代へは行かず、
そのまま趙の地に留まっていた。
漢より協力を要請されたその陳余の返答は、
以下の様であった。
「そちらに逃げ込んだ張耳を、
漢が殺しましたら従いましょう」
この陳余の言を受けて、漢の意見は割れた。
いやな男だ、陳余という奴は。……
それとも人というものは権勢に目が眩むと、
過去の恩や友誼をすべて忘れることができる
生き物なのだろうか?韓信は思い、
無理に趙に協力を要請する必要はない、と主張した。
こういう人物とはともに戦えない、と
考えたのである。

しかし盧綰や周勃など漢の旧来からの将軍は、
反対の意見を主張した。
「兵は多いほどよい。なにしろ
項王を相手にするのだからな。
いくら項王が彭城に不在だからといっても
用心するに越したことはない。
また、天下を望むのであれば、
いずれ趙も味方に引き入れなければならないのだ
実質的に章邯を破り、韓を破った韓信ではあるが、
いまだその将としての実力は
未知数であることからの主張である。

漢将の多くは、韓信は勝利を得たが、
それは敵国の王が民衆から支持されていなかったからで、
韓信はそれに乗じることができたに過ぎない、と
考えていたのである。
しかしそのときの韓信にとってそのような評価はどうでもよく、
目の前の問題だけが大事であった。
彼が考えるに、取引によって生じた連合組織ほど
信用できないものはない。
数だけを揃えてみても烏合の衆では話にならず、
かえって軍全体の把握が難しくなるだけである。
「陳余のような人物は、
いざ状況が劣勢になると真っ先に自分の安泰をはかり、
踏みとどまって戦おうとはしないでしょう。
それともあなた方は、疑わしい者を味方につけるかわりに
張耳どのを殺そうと主張なさるのか」

一座は言葉を失い、しんとなった。
「せぬ」そう言ったのは漢王である。
漢王は形式張った演説など苦手な男だったが、
このときは滔々(とうとう)と自己の主張を話し始めた。
「張耳が国を追われたのは、
決して張耳自身の責によるものではない。
また、追われた張耳はあまたある国の中でわが漢を選び、
身を寄せたもうた。
罪を犯して逃亡してきたのならいざ知らず、
非のない者が災難を逃れて身を寄せてきたのである。
これを一時の連合のために殺すというのは、
義に背く行為だと言わねばならない。
ましてわしと張耳は旧知の間柄である。……
わしは若い頃、食い詰めて張耳の客として
世話になったことがあるのだ。
恩を仇で返すわけにはいかぬ」

将軍たちの間で、ではどうするのか、と論議になった。
一座の中のひとりが、「それでは大王は、
趙は当てにしない、とのお気持ちですか」と聞いた。
漢王はしかし首を横に振り、
「いいや。陳余などは、善か悪かと問われれば
悪かもしれぬ。
しかしわしはそれでも味方に引き入れるくらいの
度量は持ちたいと思っている。
この中の誰かが言ったが、
今のところ、兵は多いに越したことはない。
大将軍にも悪人を使いこなすくらいの度量を期待したい」
再び一座は、どうする、どうするの議論でざわついたが、
張良のひと言で、議は決した。

「では、こうしましょう。罪人のなかで
張耳どのによく似た者を探し、
これを斬る。陳余などは、
先ほど韓信大将軍が言った通り、
状況が悪くなればすぐ裏切るでしょう。
であれば先にこちらが騙しておいても
差し支えなかろうと存じます」
こうして漢は韓・魏・趙を味方に引き入れた。
その結果、漢の軍勢はおよそ五十六万に
ふくれあがったのである。
大軍は確かに敵を圧倒するもの……。
しかし、ひとたび乱れれば統御のしようがない。
乱れる前に決着をつけられればよいが……。
大軍誕生に浮かれる漢の上層部のなかで、
ひとり韓信は前途の多難さを予測し、
ため息をついた。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



赤坂で別れて ・ 石原裕次郎&八代亜紀





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語

2015年5月26日 (火)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。


漢の韓信-54

ときを同じくして、項羽は田栄を討つべく、
北方の斉を攻撃している。
それに先立って諸侯に参戦を促したが、
意外なことに黥布がこれに従わなかった。
このとき黥布は項羽から九江王の地位を授けられ、
生まれ故郷の六(りく)(地名)を居城にしていたが、
このころから項羽への非協力的な
態度が目立つようになる。

彼は項羽から督促の使者が来ても、
病と称して参戦を断り、
わずかに数千人の兵を差し出しただけだった。
新安の虐殺、並びに義帝の暗殺という
項羽に命ぜられた汚れ仕事に対する
悔恨が原因であった。

黥布に自立心が芽生えたとしたら
このときだったに違いない。
しかしまだ項羽を恐れる心は確かに存在し、
仮病は使っても反旗を翻すまでには至らなかった。
黥布の協力を得られなかった項羽は、
斉の討伐に際して、まず手始めに配下の一人の
将軍を派遣したが、
これが斉に敗れたために自ら
出征しなければならなくなった。
いや、したくなったのである。

他人に大事を任せきれない性格と、
生来の好戦的な性格がそうさせたのであった。
かくて項羽は首都の彭城をもぬけのからにして、
田栄と対峙すべく北方の斉へ向かって
進軍を開始した。

黥布が来なくても、斉を撃破する自信が
項羽にはあった。
麾下には名将と謳われる竜且(りゅうしょ)や、
鍾離眛がいる。
もし万が一彼らがいなくとも、
たったひとりでも斉を撃ち破るのは
たやすいことだと項羽は本気で考えていた。
やれば、できる。

他の者どもは気概が足りないのだ。
ひとりよがりな感は否めないが、
事実そうであったから仕方がない。
本気になった項羽に対抗できる人物は
この時代にはおらず、
韓信でさえも勇猛さにかけては数段劣る。

そして項羽を先頭に立てた楚軍は、
そうでないときと比べて士気が格段に上がる。
兵士たちは軍神をあがめるがごとく恍惚となり、
自らの命を意識することなく、
無数の殺人機械となったがごとく
敵陣に殺到するのであった。

項羽率いる楚軍の狂ったような襲撃を受けた
田栄はまったくこれに対抗できず、
命からがら斉国内の平原という城市に逃げ込んだ。
兵は散り散りになり、部下の大半を失った。

捲土重来は期せそうにもない。
ここまでか。いや……まだ
終わるわけにはいかぬ。
田栄は敗兵をまとめ、再起を図ろうとした。
「斉王はここに存命中である。
我々は敗れはしたが、今一度結束し、
憎き楚へ復讐せんとするものである。
志ある者は……」などと演説したが、
平原の住民がそれを許さなかった。

項羽の過去の行為をみると、
敵に味方した城市の住民は、
ことごとく穴埋めにされている。
住民は自分たちがそうなることを恐れた。
斉王と項王を天秤にかけた住民たちは、
結局項王を選び、斉王田栄は
平原の住民たちの手にかかって撲殺された。

項羽のこれまでの残虐な行為が
報われた結果となったのである。
しかしそれで納得するほど項羽は
気の優しい男ではない。
ひとたび危うくなれば、自らの王も売る。

信用おけない住民どもではないか。
結局平原を始めとする斉の城市は、
項羽の進軍経路に沿って焼き払われ、
住民は虐殺された。

項羽にしてみれば、
信用おけない斉の住民などは、
ひとり残らず殺し尽くしてしまいたかった。が、
もちろん実際はそういうわけにはいかず、
少なからず叛逆分子を討ち漏らした。

生き残った住民や残兵たちは田栄の弟、
田横を中心に再集結し、
数万人集まったところで城陽において
項羽に逆襲したのである。
項羽は斉の厄介さに手を焼き、
彭城への帰還の予定が大幅に遅れた。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



恋路 ・ 石原裕次郎& 八代亜紀




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








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きれいなお風呂・宣言

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妄想劇場・一樂編

妄想劇場・一樂編

信じれば真実、疑えば妄想



昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



Mituo





『カッコイイかカッコ悪いか【2】

田中作蔵は、大手食品メーカーの社長だ。
フットワークが軽いことで有名で、
全国の支店を飛び回っている。
現場の声を直接聴きたいというのが目的だ。
そのため、東京の本社と大阪支社のとの間は、
まるで通勤圏内であるかのように毎週往復している。
予感はあった。いや、予感ではない。
強く願っていたからこそ、
それが叶ったに違いない。

作蔵は、「もう一度会いたい」と
思っていた人物を目の前にして、 心が弾み、
自然に頬が緩むのを覚えた。
それは、一か月ほどの前の出来事だった。
作蔵は、待合室で一人の青年が
目の前に落ちている空き缶を
サッと拾うのを目撃した。
それだけではない。 辺りに零れていたビールを、
ティッシュで拭きとりゴミ箱へ捨てに行ったのだ。
そのあまりにもスマートな振る舞いに、
作蔵は惚れてしまった。

そして・・・なんと車両に乗り込むと、
その青年と座席が隣合わせになったのだった。
思い切って、作蔵は青年に尋ねた。
「なぜ、空き缶を拾いティシュで拭くということが、
自然にできるのですか」と。
それに、青年は何事でもないかのように答えた。
「カッコイイから」だと。
さらに、「ものごとを損か得かという判断基準は捨てて、
カツコイイかカッコ悪いか、 それだけで決めているんです。
それが僕の生き方なんです」
薄汚れたTシャツにあちこちが破れたジーンズ。
首元には、キラキラ光るネックレス。
そして黒いサングラスと、イルカの形のイヤリング。
作蔵は、「人は見てくれで判断してはいけないな」と
反省した。

ところがである。後日、女性秘書の斉藤朱音に聞くと、
作蔵が知らないだけで、
誰もが知る有名なミュージシャンなのだという。
ドルフィン・ウェーブのボーカル・佐久間龍一。
東京ドームや武道館を満杯にする人気グループ。
「紅白歌合戦」にも出演したことがあるらしい。
うかつにも、名刺を交わすのを忘れてしまった。
けっしてミーハーな気持ちからではない。
もう一度、彼、佐久間龍一と話がしてみたかったのだ。
作蔵は、年齢とか性別とかに関係なく、
自分と関わるすべての人からいつも
「学びたい」と思っていた。

「カッコイイかカッコ悪いか」を、
生き方の判断基準していると、
スパッと言い切る青年に興味を抱いた。
それは、日を追うごとに雪だるまのように
募っていった。
「カッコイイ」というと、
つい外見のことを考えがちである。
しかし、彼が言う「カッコイイ」は、
「見てくれ」のことを指しているのではないことは
明らかだ。
「カッコイイ」という心の有り様。
そう、内面のことを言っているのだ。

この前と同じ、新大阪駅のホーム。
そんな願いが神様に通じてか、
東京行きのぞみ号のグリーン車8号車の
停止位置で待っていたら、 うしろから声を掛けられた。
「この前は、どうも!」振り返ると、
そこにあの青年、佐久間龍一が立っていた。
「おや、奇遇ですね」と答えつつも、
運命と言うか、出逢いの必然性を
感じ取った作蔵だった。

すぐ隣に立っている、「佐久間さんの
大ファンなんです!」と言っていた秘書の朱音は、
間近に憧れの人を見てしまったということで、
ポカ~ンと口を開けて放心状態になっていた。
作蔵は、車掌に頼んで佐久間と
隣の席に換えてもらった。
本来なら朱音は、一般車両の
指定席に乗るはずだったが、
せっかくの機会に別々ではあまりにもかわいそうだ
ということで、 追加料金を「自己負担」ということで
通路をはさんだ隣の席に移動させてもらった。
席に座ると、作蔵は「待ちきれない」という表情で
話し始めた。

「佐久間さん、彼女・・・私の秘書の
斉藤朱音というんですがね・・・  
彼女から聴いて驚きました。あなたは、
ずいぶん有名なミュージシャンでいらっしゃるとか」
「いいえ、有名と言われればそうかもしれません。  
たしかに、はめたくもないサングラスをしなければ
電車にも乗れないんですから」
佐久間は、苦笑いをして言った。
「でも、あなた・・・」
「ああ、たいへん失礼しました。田中と申します」
作蔵は、慌ててポケットから名刺入れを取り出し、
座席から立ち上がって渡した。

「ごめんなさい。僕は名刺を
マネージャーに預けていて・・・
後でお送りします」
「マネージャーさんは?」
「今日は、大阪で二週間に1回の
ラジオ番組の収録日でして・・・
一人で行動してます」
そう言いつつ、作蔵の名刺をチラリと目にして、
「ああ、銀座食品の社長さんでしたか」
「はい、ご存じですか?」
「ご存じもなにも・・・私なんかよりも
知名度はずっと高い会社じゃないですか。  
子供の頃から食べてます・・・
ああ、もちろん、今も」
「恐れ入ります」最近知ったとはいえ、
著名人から自社の製品のファンだと言われて
悪い気はしない。

「ところで・・・この前の『カッコイイ』のお話、
心に残りました」
「いやあ、恥ずかしいです」
「彼女からあなたのことを聞いてから、
少しネットなんかで調べさせていただきました。  
ずいぶん、文化的な活動も熱心にしておられるようですね」
「いえ・・・それほどでも」

作蔵が言っているのは、佐久間が、
仲間のミュージシャンや 作家・画家などと一緒に
立ち上げた
環境保護活動のことだった。
褒め称えたつもりで話題にしたのだが、
一瞬、サングラス越しに 佐久間の顔が
ゆがんだことに気付いた。

「素晴らしい活動ですね。
第一線で活躍するアーチストの皆さんが、  
印税など多額の寄付を地球の未来のためにする
「・・・」 「まさしく、カッコイイ」
ところが、佐久間は意外な反応を示した。

「いや、カッコ悪くて、嫌気が指しているんです。
お恥ずかしい限りです」
「え?」
「この前、僕はカッコイイかカッコ悪いかという基準で
ものごとを 判断して生きていると申しました」
「はい。その言葉に新鮮さを覚えただけでなく、
年齢には関係なく  私も学ぶべきかと思ったしだいです」
「その基準からすると、今、私が関わっている活動は
カッコ悪くて仕方がないのです」
作蔵は、佐久間の意図するところが
まったく理解できなかった。

通路をはさんで、秘書の斉藤朱音が、
興味津々という表情で二人を凝視していた。
「実は、あの活動は僕が言いだしっぺなんです。
このままでは、地球温暖化で日本、
いや世界中の生き物が滅んでしまう。  
危機感を抱いて仲間たちに基金を作ろうと
呼びかけたんです」
「素晴らしいじゃないですか」
「はい、そこまではよかった。
次々に賛同者も増えて・・・。  
私は、それをこっそりとやるつもりだった。
誰にも知られないようにね。  
こっそりだからこそ、『カッコイイ』んです。

でも・・・」
作蔵は、この青年の言わんとしていることを
即座に察した。
「事務所とか、レコード会社とか、テレビ局とか・・・
それを知った連中が  そっとしておいてはくれなかった。
大義名分はあります。  
多くの人に、私たちの活動が知られることによって、
CDが売れたり、ダウンロード回数が増えれば、
寄付金も多くなります。  
ファンのみなさんあっての我々ですから。  
でも、『佐久間は環境保護運動をやっている』と
知られるのは、僕の生き方に大きく反するのです」
「なるほど、『カッコ悪い』というんですね」
「はい、ものすごく『カッコ悪い』」

この若者は、なんてピュアなんだろう。
作蔵は改めて心を打たれた。
「でもね、あなたがそんなふうに考える必要はないでしょう。  
もっと、胸を張られたらいいのではないですか」
「事務所の社長もそう言います。
でも、これは僕の生き方ですから」
「なるほど、あなたの口にすることには一貫性がある。  
まったくブレていない。
今の日本に必要なことかもしれませんね」
「いえ、そんな立派なことじゃないんです」
しばし、沈黙の後、佐久間が再び話を始めた。

「さっき、検札のために車掌さんが来ましたよね」
「はい」 「そのとき、私はすごく感動したんです。
『ああ、カッコイイ ! この人は』と」
「え?」 「気付かれました?」 「何をですか?」

「若い女性の車掌さんでした。
彼女がね、私の切符を受け取って、  
ポンッて青いインクの検印を押してくれました。
その後なんです」 「・・・」
作蔵は、佐久間のサングラスの中の
見えない瞳を見つめた。

「乗車券と特急指定券の二枚。
表同士を内側にクルッと併せて、
私に返してくれたんです」
「ああ!」作蔵は、佐久間の話の
意図することが理解できた。
青い検印のインクを押す。
それが乾かないうちにお客さんに返す。
多くの人は、スーツやシャツの
内ポケットの仕舞うであろう。
すると・・・インクが服に付いてしまう恐れがある。
さっきの車掌は、それを防ぐために、
二枚のチケットをクルッと内側に向け直して
返却したのだ。

「実は、僕が最初にこのことに気付いたのは、
3年くらい前のことなんです。  
ああ、この車掌さんはスゴイなぁって。
それで思い切って訊いてみたんですよ。  
誰かの指示でやってるのかって」
「はい」 「先輩がやっているのを見て、
いいなぁって思ったそうなんです。

別に誰に言われたわけでも、決まりでもない。  
その方がお客さんのためになると思っただけだと」
「ほほう、それは素晴らしい」
「僕の言う『カッコイイ』って、そういうことなんだと
改めて確認できたような気がしたんですね。  
誰に褒められなくてもいい。誰も認めてくれなくてもいい。
自分が『カッコイイ』と信じることをやる」

「私は恥ずかしながら、新幹線には
年に100回以上乗っているのに気づきませんでした」
「いえ、気づくとかそういうことではなくて・・・」
「はい、わかりますよ」
東京駅に着くと、「今日は、ちょっと
急ぎの用事があるので・・・」と言い、
佐久間は早めにホームへ飛び出して行った。
「また、おめにかかれるのを
楽しみにしています」と言い残して。

「私、ますます佐久間龍一の
ファンになってしまいました」と朱音が言う。
「そうだね、私もだよ」と答えつつ、
作蔵はホームから地下へ降りる
エレベーターに足をかけた。
パッと顔を上げた瞬間、
そこには見慣れた大きな看板が目に飛び込んできた。

作蔵が社長を務める「銀座食品工業」の広告だった。
それは、商品のPRをするものではなかった。
青い海、抜けるような青空の下に、
マングローブの緑の写真。
そこに、大きな文字で、
こんなキャッチコピーが踊っていた。

「銀座食品工業は、地球の環境のために
熱帯の植林事業を応援しています」
それを見て、作蔵は冷や汗が出た。
ひょっとすると、佐久間も、
この看板を見ているに違いない。
「斉藤さん・・・これはカッコ悪いよね」
朱音が、「え?・・・
何ておっしゃいました?」と聞き返す声が、
新幹線の発車のベルに打ち消された。

Author :志賀内泰弘


人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……




「悲しき子守唄」
作詞:西条八十・作曲:竹岡信幸


可愛いおまえが あればこそ
つらい浮世も なんのその
世間の口も なんのその
母は楽しく 生きるのよ






1938年(昭和13年)に、松竹映画
「愛染かつら」の主題歌で「旅の夜風」
「悲しき子守唄」は、カップリング曲

高石かつ枝が歌手になってステージで歌った
「悲しき子守唄」は、田中絹代は歌わず、
ミス・コロムビアのレコードをかけて、
口だけ動かすという形になっている」



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語






2015年5月25日 (月)

歴史・履歴への許可証

歴史・履歴への許可証

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



Kobanasi_3



おネズミがお死んでる
むかしむかし、ある田舎の娘さんが、
町のお金持ちの家へ働きに行きました。
でも、田舎で育った娘さんは、
ていねいな言葉をうまく使うことができません。
お客さんに、お茶を出すときも、
「茶を飲め」などと言うので、
お金持ちのおかみさんは困ってしまいました。
そこで娘さんに、「お客さんには、
ていねいな言葉を使わなくてはいけません。
何でも言葉の初めに、
『お』という字をつけて言いなさい。
そうすれば、ていねいな言葉になりますよ」と、
注意したのです。
 

 

茶に『お』をつければ、
お茶。なるほど、
『お』という字を
つければいいんだな)
それから娘さんは、
いろいろな言葉に
『お』という字を
つけてみました。



ネコは→おネコ、カラスは→おカラス、
カボチャは→おカボチャ。
(これで、もう大丈夫!)娘さんは
『お』という字をつけた言葉を、
早く使いたくてたまりません。

家の前でウロウロしていたら、
ネズミがどぶに落ちて死んでいました。
娘さんはさっそく、おかみさんの部屋にかけつけて、
「おおかみさん、
おネズミがおどぶに落ちてお死んでる」と、
言いました。
おかみさんと一緒にいたお客さんは、
それを聞いて大笑いです。

お客さんが帰ったあと、
おかみさんは娘さんに言いました。
「何でもかんでも、
『お』という字をつけてはいけません。
役に立つときだけ、『お』の字をつけなさい」
(そうか、役に立つときだけか)

さて、その晩のこと。お金持ちの家族が
晩ごはんを食べているところへ、
娘さんがお味噌汁を運んできました。
ふとおかみさんを見ると、おかみさんのおでこに、
おひたしのなっぱがついています。
そこで娘さんは、大声で言いました。

「かみさん、でこにひたしのなっぱがついて、
かしいだよ」(・・・・・・・
ああ、この娘には、何と言ったらわかるのだろう)
おかみさんは、ガッカリして、
「そういう時は、
『おかみさん、おでこにおひたしのなっぱがついて、
おかしいですよ』と言うんですよ」と、
言い聞かせました。
すると娘さんは、ニッコリわらって、
「おやっぱり『お』の字をおつけたほうが、
おいいんだべ」と、言ったのです。


おしまい


虹の鳥 (Rainbow birds)
きれいな色の鳥と、そうでない鳥がいる理由とは。




二羽のカモ

むかしむかし、京都に一人の男が住んでいました。
男の家は貧乏でしたが、
お嫁さんと二人で仲良く暮らしていました。
ある日の事、お嫁さんに赤ちゃんが生まれました。
ところがお嫁さんはお産のために体が弱っていたので、
あまりお乳が出ません。
そこでお嫁さんはお肉を食べて力を付けようと思い、
夫に頼みました。
「わたし、お肉を食べたいのですけれど・・・」
それを聞いて夫は、「それは、もっともだ。
肉を食べて、はやく元気になってもらわないとな。
お前のためにも、赤ん坊のためにも」と、言いましたが、
しかし男は貧乏で、お肉を買うお金がありません。
男はいろいろと考えたあげく、
「よし、そうだ。自分で鳥を取りにいこう」と、言いました。

次の日、男は朝早く起きると、弓矢を持って家を出ました。
そして、ミミドロ池という池にやって来ました。
この池にはあまり人が来ないので、
きっと水鳥がたくさんいると思ったのです。
男は池まで来ると岸に生えた草の中に身をかくして、
じっと水の上を見つめていました。
すると一羽のカモが、草むらのかげから泳いで来ました。
続いてもう一羽がやって来て、
二羽のカモは仲良くこちらに近づいてきます。









それは、メスとオスのカモでした。
男はそっと、弓に矢をつがえましたが、
(夫婦だろうか? 
仲の良いカモを殺すなんて かわいそうだ)と、思い
弓と矢を置きました。

しかし男は、また思い直しました。
お肉を食べたがっている、お嫁さんの事を思ったからです。
(仕方ない。カモよ、許しておくれ)
男が矢を放つと、矢は真っ直ぐに
オスのカモに当たりました。「それ、当たったぞ!」
男は大急ぎで池に入って獲物を拾い上げると、
すぐに家へ帰りました。
男はさっそく、お嫁さんにカモの取れた事を話しました。
そして、「あすの朝は、
カモを料理して食べような」と、言うと、
カモをさおにかけて寝ました。

さて、その夜中の事です。
男は、さおにかけたカモがバタバタと
羽を動かしている音に目を覚ましました。
「おや? あのカモが、生きかえったのかな?」
男が不思議に思いながら、
あかりを持ってさおのところに行きました。
すると昼に取ってきたカモは死んだままで、
そのそばを一羽のカモがバタバタと
羽ばたいているではありませんか。
「あっ! メスのカモだ。

ミミドロ池でオスとならんで泳いでいた、
あのメスガモに違いない。
殺されたオスをしたって、あとをつけてきたのか」
男はメスのカモを、じっと見つめました。
カモはあかりを持った人間がそばに立っているのに
少しも恐れる様子はなく、
死んだオスのまわりを離れようとはしません。

男はつい、ポロリと涙をこぼしました。
すると、外の音に起き出したお嫁さんもやって来ました。
お嫁さんは男の隣でじっとカモを見つめると、
夫に言いました。
「カモも人間も、相手を想う気持ちは一緒なのですね。
ねえ、明日あのカモのお墓を作ってあげましょう」
「しかし、カモを食べないとお前の体は・・・」
「いいえ。わたしは病気ではありません。
日がたてば、また元気になれますから」

その朝、男はオスガモを持って、
また池にやって来ました。
そしてていねいにうずめてやると、
小さなお墓を作ってやりました。

それからしばらくたつと、
お嫁さんはすっかり元気になりました。
そして赤ちゃんと三人で、
しあわせに暮らしたという事です。
 

おしまい









人の為(ため) と書いて、
いつわり(偽) と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから。



時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる









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きれいなお風呂・宣言


お風呂物語




しんじれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。


漢の韓信-53

張良が関中に入り、この時点で
漢軍は蕭何、張良、韓信の三名の
建国の功臣を得るに至った。
蕭何は治において、張良は策において、
韓信は武においてそれぞれ後世に
語り伝えられる大功をおさめるに至る。
これより後の世、それぞれの分野で
彼ら以上の勲功をたてた人物もいないことはないが、
劉邦が歴史的に評価されるところは、
彼ら三名をを同時に得ることができた点であろう。

現在では中国文のことを漢文、中国の文字を漢字、
代表的な中国の民族のことを漢民族と我々は呼び、
「漢」という語はひとつの王朝を指す以上に
中国そのものを示しているといっても過言ではない。
その起源が約二千二百年前のこの時代であり、
漢がまともな王朝国家となる以前、
蕭何・張良・韓信の三名が集結したこのときこそが
その歴史の出発点であると言える。

韓信は張良や蕭何に函谷関から外に出て
中原へ進出する必要性を、このとき主張している。
韓信にとってそれはもはや絵空事ではなく、
充分に勝算があった。
項王が斉討伐に動いている今こそが、
そのいい機会だ。と思ったが、
韓信には一抹の不安がある。
韓が防壁となっていることで、
あるいは張良が出兵を渋るのではないか。
しかし当の張良はまったく異を唱えなかったので
韓信は意外に思った。

「子房どの、韓の地にはあなたと旧知の関係にある者が
多数おられましょう。にもかかわらず
討って大丈夫なのですか」と韓信は張良に質問した。
これに対し張良は、「いかにもその通りではあるが、
彼らを解放するには、少しばかり戦渦に
巻き込むことも受け入れねばなるまい。
そのあたりは……将軍がうまくやってくれることを
祈っている。
実はすでに王族につながる者を探し出して、
その者に一軍を率いさせている」と述べた。

「なるほど」韓信は相づちを打ち、話の先を待った。
「その者は軍の統率にまだ不慣れで、
単独では鄭昌の軍を破ることはできない。
だから、将軍にお任せするしかないのだが
……いいだろうか?」
「無論です」
「そこで頼みがあるのだが、
決定的な場面……つまり鄭昌その人を討つことは、
その者にやらせてほしいのだ。
その者に武勲をあげさせ、
大王に韓王として認めさせたい」
「わかりました」
「戦場でもわかるくらいの、とびきり背の高い男だ。
彼の姿を認めたら、武勲を譲ってやってもらいたい。
頼むぞ」
韓信はこれを受け入れ、王の許可を得て、
関の外へ出兵することとなる。

関外進出に決定がなされた背景には、
あらたに手中にした漢中、巴蜀の地が
思いのほか豊穣であったことがあげられる。
山々に閉ざされた土地を想像し、
漢軍の誰もがどうしようもなく土壌の痩せた
荒廃した地だと思い込んでいたが、
実はそうではなかった。
気候は温暖で土地は肥沃、
人々は悠々と米作を営み、
また大きな湖もあることで水産物にも事欠かなかった。
漢軍は大きな食料庫を与えられたようなものであった。
そして、その管理は蕭何がやってくれる。
後顧の憂いのなくなった漢軍は、
まずは河南の地を攻めて、
これをいとも簡単に陥落させた。
しかしその先には王鄭昌に率いられた韓が控えている。
鄭昌は先述した通り、もと項羽の部下である。
それも功を賞されて王位に就いたというよりも、
漢軍を抑えるために必要上
王権を授けられた、という部類の男であった。

いわば鄭昌は楚の雇われ王であり、
韓人にとっては、畏敬の対象ではない。
そのような者が王である以上、
韓の主権は楚にあると言っていい。
自らの意思ではなく、上からの命令で
韓を守っていた鄭昌は、
漢軍が武威を見せても降伏しようとはしなかった。

それもそのはず、安易に降伏してしまえば、
あとになって項羽から断罪されるのである。
韓信はそんな韓の事情を察し、
張良にいわれた通り、うまくこれを処した。
間諜を用いて韓軍全体の感情を揺さぶり、
前衛部隊の気力を削ぐことに成功すると、
ためらいもなく中央突破をはかり、
韓軍の中枢部へと兵を進めた。

前を守る者たちは漢軍に通じていたので、
道を開けるばかりである。
あっという間に漢軍に囲まれた形になった
鄭昌の直属の部隊はある程度抵抗したものの、
数の差において漢軍が圧倒した。
韓信はここまでお膳立てをして、
後の処理を張良に言われた韓の王族に連なる男に託した。

例のとびきり背の高い男である。
「斬りかかる必要はない。
鄭昌は王ではあるが、事実上楚の将軍と変わらない。
状況もわきまえず、必死で楚のために働こうとするだろう。
こういう手合いには近寄らないに限る。
数では圧倒的に有利であるから、
落ち着いて遠巻きに弓矢で射よ」
そのときの韓信の助言である。

その言のとおり、鄭昌は最後まで抵抗して粘りを見せたが、
部下が自分より先に降伏してしまう状況ではどうしようもなく、
ついに観念して降伏した。
韓信は民衆の命をほとんど損なうことなく、
韓の地を制圧した。

張良はこれに感激し、韓信の手を取って
ひと言だけ、言ったという。
「ありがとう、将軍」
韓の地には亡き韓王成の甥がたてられて王とされた。
劉邦が初めて任じた諸侯王がこの人物ということになるが、
これが先に韓信が助言を与えた人物であった。

余談であるが、この人物は名を信という。
韓の王族につながる男なので姓は韓である。
よってこの人物も韓信なのだが、
漢の大将の韓信と混同を避けるため、
韓王信と表記されるのが一般的である。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



山の湖 ・ 石原裕次郎 & 浅丘ルリ子




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語




2015年5月24日 (日)

チャンネル掲示板

チャンネル・ニュース

幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない


みのる


昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


暖かい食事

数年前、不況で俺はリストラされた。
なかなか職が見つからず、
仕方なく親戚が支配人をしているファミレスで
3ヵ月バイトをすることになった。
その時たくさんの家族連れを見てきたが、
子供の世話ってどの家族連れも母親がしていた。

暖かい食事を持っていっても、
嫁さんは子供に食べさしたりして、
料理はどんどん冷めていく。
なのに旦那は、子供が何しようが
嫁さんの料理が冷めようがお構いなしに
自分の分を食べて行く。

食事が終わると子供の世話をする人もいれば、
新聞を読み出す人もいる。
どっちにせよ、暖かい食事を食べれる
嫁さんはすくない。
多分どこの家でもこうなんだろうな。
もし俺に子供ができたら、俺は面倒を見てやろう。
嫁さんに暖かい食事を食べさしてやろう。
そう思った。

それからしばらくして俺はそれなりに
会社に再就職した。
子供にも恵まれた。
ファミレスに行った時、子供の世話をする嫁さんと
その皿をみてふと思い出した。
『あぁ。俺、あの時の旦那と同じコトしてるな』と
そして俺は「俺が面倒みるから、
お前先食えよ。」と言った。
嫁さんは驚いた顔をした。
家にいても滅多に子供の面倒みないからな…

嫁さんは「悪いから…」と言ったが
「いいから。ほら!」と娘用のスプーンをとり、
娘に食べさせた。
嫁さんは小さく「ありがとう」といい、
暖かい食事を食べ始めた。
嫁はいつもより早口で食事をし、俺と交替した
。俺の手からスプーンを受け取る時
「ありがとう…本当にありがとね」と
何故か涙ぐんでいた。
俺の皿には冷めた料理がのっていたが、
それでもいつもより美味く感じた。




【障害のある姉からの便箋 】


主人が失明した原因

主人は3年前に左目を失明した。
義眼を入れているので、
見た目は言われなければわからない。
失明した原因は当時1歳7ヶ月だった
息子とじゃれあって遊んでいた時
おもちゃの先端が主人の左目に
運悪く刺さってしまったからだ。

事故当時、主人より息子の方が
泣き叫んでいたように感じる。
子供心にただ事ではないことを感じていたんだろう。
傷の具合が良くなくなってから主人は、
自分の運転中に何かあってはならない、と
車の運転をやめた。
趣味だったバイクも売った。
ただ、いつの日か後ろに乗せて
一緒に出かけるために、と
息子の1歳の誕生日に買った
新品の子供用ヘルメットはまだ家にある。

4歳を過ぎた息子は今、
父親の左目が見えないことも、
なぜそうなったかも、まだ知らないはずだ。
言ってはならないと主人にきつく言われているし、
私自身わざわざ教える必要もないと
思っているからだ。

ひょっとしたらもう父親の異変に
気づいてるのかも知れない。
主人は今日も息子と一緒に公園に出かけ、
大はしゃぎしながら帰ってきた。
いずれ父の左目が見えないことも、
その理由も知る時が必ずやってくるだろう。
だけど私には泣きじゃくる息子の頭を
笑顔で撫でている主人しか想像できない。

主人が、父親で、本当によかったと
感謝の気持ちでいっぱいです。




おばあさんのために席を譲らせた高校生のGJ




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……
時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる








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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語



しんじれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。


漢の韓信-52

主君を虐殺された張良は悲憤にくれた。
張良にとって国を奪われたのは、
実はこれで二度目である。
一度めは博浪沙において力士とともに
復讐に挑んだが、失敗に終わった。
二度の失敗は許されない。
張良は劉邦の手を借り、
今度こそ復讐を成就させる決意を固めた。
張良はひそかに韓を離れ、関中へ走った。
ふたたび漢王のもとへ仕えたのである。

いっぽう楚を悩ませた斉の動きは、
この前の年から激しい。
きっかけは項羽の論功行賞にあり、
騒動の中心は、やはり斉の田栄であった。
田栄は、兄の田儋の死後から、
実質的な斉の支配者である。
その田栄が項梁の再三の要請にもかかわらず、
支援を拒否して見殺しにしたことは前に触れた。
また、趙が鉅鹿に追われ、
項羽がこれを救援に向かったときにも
協力的な態度は示さず、
しかも裏では宋義と内通しているかのような
動きも見せている。
項羽が田栄を好きになる理由は、
まったくといっていいほどなかった。
よって項羽は田栄になんの恩賞も与えず、
かわりに斉をばっさりと三分し、
それぞれに田市、田安、田都の三王をたてた。
田市は田栄から擁立されたもともとの斉王であるが、
ほかの二人は田栄とそりが合わず、
楚に味方したというだけで王になった人物である。

王はおろか侯にもされず、
一寸の土地も与えられなかった田栄が
激怒したことは言うまでもない。
「ほんのわずかでも項羽に期待した
わしが愚かだった。
思い返せば、項羽から土地や官位を
恵んでもらう理由はない。

かつて陳勝は言ったものだ。
『王侯将相、いずくんぞ種あらんや』と。
だれが天下に覇を唱えようと構わない時代である。
項羽が勝手に覇を唱えるのであれば、
わしが唱えてもおかしくない道理だ」
そのように周囲に語った田栄は、
まず趙の陳余に使者を送り、
陳余が項羽に従軍しなかったことで王とされず、
侯爵に留まっていることを
不満に思っていることにつけ込んで、
反乱を使嗾した。

これに乗った陳余は趙国内で反旗を翻し、
王となった旧友の張耳を討った。
逃れた張耳は漢へ身を寄せることとなる。
そして新たに斉王に任じられた田都が
入国しようとすると、田栄は武力でそれを阻み、
逃れた田都は楚へ奔った。
それだけなら話はわかるが、
もともとの斉王の田市が項羽を恐れ、
みずから新たな領地に赴こうとすると、
田栄は怒り、なんと田市を殺してしまった。

田市は田儋の子で、そもそも田栄自身が
かつぎ上げた王だったことを考えると、
彼の性格の凄まじさは言語に絶する。
もはや欲望の塊となった田栄は、
田市を殺した帰り道で、さらに田安を殺害し、
斉の全土を制圧することに成功した。
これを機に、彼はついに自ら
斉王を称したのである。

これを知った項羽の怒りは、頂点に達した。
「このわしの指名した三人の王を、
三人とも締め出して自ら王となるとは、
田栄め! それほどわしに殺されたいのか。
ならば望みどおりに殺してやるまでよ!」
項羽が憤ると、髪の毛が逆立ち、
まなじりは裂け、
あたかも血が噴き出すかのようで、
それに恐れをなした周囲の者は
ひれ伏して顔を上げることができない、と
言われている。

このときの項羽がまさしくそれであった。
かくて項羽は斉へ遠征した。
張良の読み通りである。
また、范増老人の読み通りでもあった。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



銀の指輪 ・ 石原裕次郎 & 愛まち子




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








furo
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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語




2015年5月22日 (金)

妄想劇場・番外編

妄想劇場・番外編

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

Oiran_2

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18歳未満の方は
ご遠慮下さい。




昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

Author:官能小説家


江戸のお色気話ー1

昔、江戸の下町には裏長屋と言う生活の場があった。
裏長屋とは、表通りから路地を入った裏側にあり、
小さな家が何軒もつらなり 比較的貧しい人達が、
間口が九尺、奥行きが二間という狭い中で 生活をしていた。
こんな裏長屋でも借りるにあたっては、
大家の身元調べがうるさかったようだが、
大家は家の持ち主ではなく
管理を任された代理人である、
この裏長屋の店賃(家賃)はその頃
三百文が相場だった。
そこでは 「熊さん、八っさん」と言うように、
落語の世界に出てくるような平凡的な人達が住んでいた。
その広さは三坪(およそ六畳)程の
小さな狭い家が多かったようだ。
江戸の町人のほとんどが、こうした長屋に住んでいたのである。
あまり小綺麗でないこの長屋には様々な人が住んでいたが、
その長屋の住人達は、それぞれに個性というか、
一癖ありそうな人が少なくなかった。

その長屋には、左官屋や魚屋、金魚売り、
金貸しの取り立て屋、 更に、売れない浮世絵師などがいた。
またそこでは、素性の知れない浪人者が住み、
収入の為に傘張りをしたり、寺子屋で教えていたが、
前は事情があるのだろうか、
どこぞの武家の出のようだった。
その他に珍しいのはどこか気品があるが、
落ちぶれて今は身をやつした粗末な身なりの母娘も
その長屋の下でひっそりと生活していた。

その長屋の住人達は、 そんな人物が
どういうものかお互いに興味を持ち、
井戸端会議では、女達がヒソヒソと噂をしたりして、
それが楽しみの一つでもあった。
そういう下世話な話し好きは、
時代が変わっても今日と相変わらず同じである。

さて、その長屋では、 今は独り者の
長老という話し好きな男がいて、 皆から人望があった。
やはり長老と言うだけあって何事にも詳しく、
何かと言えば若い者などは その男の部屋を訪れては、
相談事を聞いて貰ったり、 くだらないおしゃべりをして、
その日の暇つぶしを常としていた。
親戚で不幸があったとき等には、
出来るだけ金を出さないで済ます方法がないか、とか、
女を孕ましてしまったが、上手く切り抜ける方法はあるか等、
聞けばくだらないような様々なことをその老人に相談に行き、
その意見を聞いたりしていた。
そんな場合でも、いつも老人は適切な教えを説いていた。
そんなところに、この老人の人気があるのかもしれない。


つづく


歌は心の走馬灯、花に例えた古い歌
今さら聞いても仕方がないが
何処に置いても飾っても
歌も花も、枯れてゆく
…人生、絵模様、万華鏡…


18禁 「 命あたえて」



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


Tinko_2

 人の為(ため)と
 書いて
 いつわり(偽)と
 読むんだねぇ




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……







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 きれいなお風呂・宣言

 お風呂物語





妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……



Mituo2_2 
昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー






※この話しは(株)ユタカファーマシーでの
エピソードです。

『お婆ちゃんの金魚 』


ドラッグユタカでは、毎年、夏休みに入ると
子供向けのイベントをいろいろと企画している。
その一番の人気は、金魚すくいだ。
朝から、子どもたちが順番を競ってやってくる。
昔は、縁日の定番だった。
「5匹すくった!」「わたしは7匹」と
みんなで自慢し合う。

でも最近は、金魚すくいをするのは
初めて、という子供も多い。
ほとんどの子が、すぐに紙が破けてしまう。
「あ~ザンネンだったね~。でも大丈夫だよ、
3匹あげるからね」と言い、
アルバイトのリョウは小学1年生くらいの男の子に、
金魚をビニール袋に入れて渡した。
すぐ近くにいた父親が、「ペコリ」と
リョウの方を向いてお辞儀をした。

その時だった。すぐ後ろにいたお婆さんが、
「ポイちょうだい」と一番前に出てきた。
ポイとは、金魚をすくう、あの網のことだ。
リヨウは、ポイを「はいっ」と言って渡した。
てっきり、その後ろにいた女の子の
お婆ちゃんだと思ったら、
お婆ちゃんが自分で金魚をすくい出した。
「あ~お婆さん、すみませんが、
コレお子さん限定のイベントなんですよ」

お婆さんはじっとして動かなくなり、
しゃがんだままリョウを見上げた。
なんとも悲しげな目だった。
「できんの・・・?」
そう言われて、言葉に詰まった。
しかし、これは子供向けの無料のイベントだ。
10人くらいの列ができており、
後ろの方では付き添いのお母さんが
「何かあったのかしら・・・」という顔つきで
こっちを見ている。

「ごめんね、お婆ちゃん」
そこへ店長がやって来た。
「あ、山岸のお婆ちゃん」「・・・」
「どうしたの?リョウ君」
「いえ、このお婆さんが金魚すくいを
やりたいって・・・」
リョウは困ったときに、グッドタイミングで
助け舟が現れたと思った。

「ああ、お婆ちゃん、今年も来てくれたんだね、
ありがとう。 
リョウ君、お婆ちゃんにもやってもらってよ」
「でも、お子さん限定の・・・」
「いいんだよ、特別、特別!」
そう言われて、山岸と呼ばれたお婆ちゃんは
嬉々として水面に目を向けた。

ビニールプールの中には、
色とりどりの金魚が太陽の陽を浴びて
キラキラと輝いてみえた。
しかし・・・。お婆ちゃんのポイの紙は、
すぐに破れてしまった。
ほとんど輪っかだけになったポイで、
何度もすくおうとするお婆ちゃん。

「お婆ちゃんに、残念賞の
金魚あげてよ、リョウ君」
「あ、はい」リョウは、アルミのカップで、
金魚を3匹すくうとビニール袋の中に
水と一緒に流し込んだ。

「わたしは、1匹でいいんよ」
「お婆ちゃん、いいからいいから」
「ううん、1匹でいい」
せっかく好意で入れてやったのに、と
リョウは憮然とした。

すると店長が、横から、
「リョウ、元気そうなヤツを1匹だけ
入れてやってくれんか」と言う。
「真っ赤なヤツにしてくれんかな」
リヨウは、仕方なく、3匹ともプールに戻し、
大きめのスイスイ泳いでいる真っ赤な金魚をすくった。

お婆ちゃんは、
「ありがとう」こそ言わなかったが、
満面の笑顔で帰って行った。
金魚すくいのイベントが終わり、
後片付けをしていると店長がやって来た。
「リョウ、さっきはスマンかったな」
「あ、いえ・・・でもいいんですか・・・
子供限定のイベントに 大人を参加させたら、
文句がでませんか」

「そんなことはいいんだよ。
子供向けと決めたのは、うちの店なんだから。
お客様に喜んでいただけたらそれでいい。
それにね・・・あのお婆ちゃんの場合はさ、
特別なんだよ」
「特別って・・・」
「片づけが終わったら、飲みに行こうか」
「え?」「そこで教えてやるよ・・・
山岸のお婆ちゃんのこと」
リョウは意味深な店長の言葉に
首を傾げながら、駐車場の掃除を始めた。


山岸ミネは、今年の秋が来ると78歳になる。
この町で生まれ、この町に嫁ぎ、
この町からほとんど出たことがない。
今は一人暮らしだが、以前は夫と、
息子の3人家族だった。
息子は、稀に見る秀才だった。
野球部でもレギュラーで、甲子園を目指した。
夫婦には自慢の息子だった。

東京の大学に入って2年目の夏。
お盆の帰省のため、関西に住む友達2人と一緒に、
車で出発した。
高速道路を愛知県に入った頃のことだった。
突然、前を走っていたトラックが
カードレールに激突した。居眠り運転だった。
そこへ、息子の乗った車も突っ込んだ。
3人とも即死だった。
もう、30年以上も前の話だ。
それ以来、夫と二人きりの生活だった。
息子の話は、あえて口にしないことにした。
ミネも夫も。どちらかが言い出したことではない。
口にすると悲しいだけだとわかっていたからだ。
初盆のとき、息子が幼い頃に好きだった
カリントウを買って来た。
仏壇に供えようとすると、
そこにはもう一袋のカリントウがあった。
夫も買って来ていたのだ。

そんな暮らしが1年、また1年と過ぎ、
いつのまにかお爺さんとお婆さんになってしまった。
そして、一昨年の夏、夫は先に逝ってしまった。
心筋梗塞であっという間に。
それまでは健康が取り柄だったので、
苦しんだ期間が短かったということでは、
良い最期だったのかもしれない。……

「そうそう、ユタカさんのチラシが入ってたけど、
金魚すくいは今日だったわね」
誰に言うわけでもなく呟いた。
縁側には、小さな水槽があった。
3匹の金魚は、去年の夏、
近所のドラッグユタカでもらったものだった。

麦茶を買いに行くと、何やら入口の前で
子供たちがワイワイと騒いでいた。
覗き込むと、金魚すくいをしていた。
懐かしかった。
まだ賢一が小学生の頃のことだ。
神社の夏祭りへ家族で出掛け、
3人で金魚すくいをしたことを思い出した。

思わず、前の方へと割り込み、
「わたしもやらせてもらっていいかね」と
口にしていた。
店員は、ちょっと戸惑った様子だったが、
「いいよ、お婆ちゃん」と言い、
ポイを1つ差し出してくれた。
「いくら・・・」と尋ねると、
「ううん、お婆ちゃん、コレ
無料のイベントなんだよ」と。

なんだか嬉しくなり夢中で金魚を追った。
でも、1匹もすくえなかった。
ポイが無残にも敗れてしまったのを見て、
店員はビニール袋に3匹の金魚を入れてくれ、
「ハイ!お婆ちゃん、お土産だよ」と渡してくれた。

家に帰ると、小屋から昔使っていた
水槽を捜しだし、そこに水を張った。
そして、3匹の金魚を放った。
何日か経つうち、知らぬ間に
金魚に名前を付けて呼んでいた。
1匹は夫の賢太郎。1匹はミネ。
そして、もう1匹は賢一。
それは亡くした息子の名前だった。

「おお、賢太郎さん・・・今日も元気だね。
ミネさんともっと近づいてよ、寂しいじゃないの。
賢一はよく食べるねえ・・・などと」
それが、いつしか毎朝の日課になっていた。

しかし・・・。桜の咲き始めた頃、
ミネは風邪をひいた。
3日ほど寝込んでしまったせいで、
金魚の世話を怠った。
ずいぶん水が汚れていたので、
替えてやらなくては、と思っていたが
身体が動かなかった。
「ごめんね、わたしが悪いのよ」
床上げをした朝、水槽を見て言葉を失った。

賢太郎と呼んでいた、
真っ赤な金魚がプカプカと浮かんでいた。
ミネは、賢太郎をそっと庭の片隅に、
そっと埋めてやった。
「賢一、今からユタカさんに行って、
お父さんの金魚をすくってくるからね」
水槽の中で、賢一と呼ばれた黒い金魚が
泡を一つ、プクッと噴き出した。
ミネには、何か言いたげな表情に見えた。
その横で、出目金のミネが楽しげに泳いでいる。
ミネはちゃぶ台から、
ヨイショと言って立ち上がった。

《終わり》

Author :志賀内泰弘



【お昼ご飯】



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語




信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。


漢の韓信-51

桟道の修復の完成が間近に迫り、
いよいよ迎撃態勢をとった章邯は
関中の南側に兵を集結させつつあった。
しかしこのときすでに内応者によって
手引きされた別働隊が、なんと関中台地の最西端、
陳倉(ちんそう)の城門を破り、なだれ込んだのである。
意図していない方角からの攻撃に、
意表をつかれた章邯はまったく対抗できなかった。
そしてここに至り、桟道の修復が完了し、
南側からも漢軍が突入を開始した。
「よし……。上出来だ」別働隊の侵入と
ほぼときを同じくして桟道の修復を終える、という
時間的な機微は韓信がいちばん神経を尖らせた部分であり、
これを確認した瞬間、
韓信は作戦の成功を確信した。

あとは流れに乗るように敵を攻めるだけである。
挟み撃ちにした章邯の軍を破るのに、
細かな作戦はいらない。
大軍の利を生かして敵を殲滅するだけであった。
韓信はさんざんに章邯の軍を撃ち破り、
咸陽の北、好畤(こうじ)の地までこれを追い込んだ。
ここで章邯は陣形を組み直して対抗しようとしたが、
さらに韓信に破れ、廃丘(はいきゅう)に逃れた。
廃丘から咸陽は目と鼻の先の距離である。
そこで漢軍は先に咸陽を制圧し落城させると、
廃丘を包囲しつつ、東方へ兵を分けて進出し、
司馬欣、董翳を攻め、この二人を関外へ追い出した。
ここまでやれば、実質的に関中は
漢によって平定されたといっていいだろう。

章邯は廃丘で小規模な抵抗を続けているといっても、
それを援護する勢力もなく、
いずれ滅びるのを待つばかりである。
章邯が絶命したのは翌年の紀元前205年の5月であるが、
このときに韓信が手を下したわけではない。
それでも事実上章邯を滅ぼしたのは
韓信であることには変わりがなく、
当時の人たちもそのように評価した。
紀元前206年の7月、自分がなした戦功の巨大さに
呆然とする韓信であったが、
漢王劉邦はこれにおおいに喜び、
夏の暑気に汗ばんだ韓信の額を、
自らの手持ちの布で拭いてやったという。

項羽が覇権を掌握したことにより、
天下はより一層混乱した。
事態は韓信が劉邦に説明した通りに展開し、
趙や斉が乱を起こした。
韓信は、その混乱に乗じる形で中原へ
出兵することを主張しながら、
その一方で不安を感じた。
斉や趙は漢と同様に、楚と対立している。
しかし、共通しているのはそのことだけであった。
志が異なる者が寄り集まっても、
最大限の効果をあげることは至難の業である。
仮に成功しても、その後に待っているのは
新たな対立であろう。
韓信はそのことを見抜いていたが、
どうすることもできなかった。
彼の優れた洞察力を持ってしても、
雑多な人の意志を完全に統御することは
不可能なのであった。

項羽は漢軍の関中平定に際し
終始傍観の態度を決め込み、
結果的に彼は章邯を見殺しにした。
それでも章邯は項羽が任じた王であったので、
これを滅ぼしたことは項羽が漢を討つ
大義名分になりうる。
しかし項羽にとって漢の関中反転は予想よりも早く、
状況の意外な変化に態度も
慎重にならざるを得なかった。
余裕で傍観していたというよりは、
手の打ちようがなかったと言っていいだろう。
劉邦のもとには、まともに軍の指揮をとれる
将官などいないと思っていたが……
認識を改めなければならぬ。

項羽にはもちろん韓信が大将として
漢軍を統率している事実は伝わっていない。
それだけに漢への対応は情報を
収集してからにしたかった。
このとき居城の彭城に至ったばかりの項羽は、
一通の書状を前にして、范増と議論を交わしていた。
その書状には、こう書かれていた。

「漢王は本来あるべき務めを
果たそうとしているに過ぎず、
義帝との約束を果たすために関中の地を
得ようとしているだけなのです。
関中を得れば、そのまま留まり、
さらに東進するつもりはございませぬ」
さらに、こうも記してあった。

「斉に謀反の気配がございます。
斉は趙とともに、楚を討ち滅ぼそうとしております」
その書状の差出人は、張良であった。
劉邦のお気に入りの謀臣である。
しかし、項羽は、張良のことが気に入らなかった。
儒家でもないくせに妙に行儀がよく、
涼しい表情をしながら、常に自分にとって
よからぬことを考えているように見えるのである。
直情的な項羽にとって、もっともよくわからない
男のひとりだった。

「亜父、この書状の中身、どう思うか?」
項羽は范増にその書状を渡し、判断を仰いだ。
「……これを見るに、漢王のくだりは虚言、
斉のくだりは事実を述べていますな。
漢は見逃し斉を討て、そう言いたいのだ。
張良なら、当然そう言うでしょうな」
項羽はいらいらとし始めた。

「いったい、この張良とかいう男はなんなのだ! 
韓の貴族のくせに劉邦の手駒になっているとは。
韓を安泰に保ちたいのなら劉邦の助けなど借りずに、
このわしに頼めばいいのだ! 
それほどわしは頼りないか? 
それともわしに頭を下げるのがそんなに嫌か?」
「落ち着かれよ。斉の動きが不穏なのは事実。
かの地には、田栄がおりまするゆえ、
捨て置くわけには参りませぬ。
かといって漢もそのままにしてはおけない。……

王よ、亜父は妙案を思いつきましたぞ」
「妙案……? 
お聞かせ願おう」
范増は目を光らせた。
この老人は良策を思いついたときには、
眼光の鋭さが増す。
項羽はこの目を見るたび、わけもなく
心の底から興奮するのを覚える。
「王は張良のいう通り、事が起きましたら
斉を討伐に行くがいいでしょう。
漢に対しては、韓をもって備えとする。
すなわち、軟禁している韓王成を殺し、
あらたにこちらで別の王を擁して張良の
よるべをなくす、というのはどうであろうか」

項羽は膝を打った。
「なるほど。張良の弱り顔が目に浮かぶわ。
奴は、結局漢に奔るであろうな。
しかし、それでも構わん。
斉を討ったあとに、劉邦もろとも
討てばいいだけの話だ。
亜父、その線で行こう」
こうして韓王成は処刑され、晒し者とされた。
罪状に正式なものはない。
かわりに項羽は、韓とは本来縁もゆかりもない
鄭昌(ていしょう)という部下を韓王に任じ、
関中への防御線とした。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



東京さすらい歌 (石原裕次郎&浅丘ルリ子)



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








furo
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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語




2015年5月21日 (木)

歴史・履歴への許可証

歴史・履歴への許可証
 
  昨日という日は歴史、
  今日という日はプレゼント
  明日という日はミステリー

 
 
  Kobanasi_3

 
 
  むかしむかし、一人の男が荒地(あれち)を
  畑にしようと掘り起こしていると、
  「ガチン!」と、クワが思いっきり
  石を叩いてしまったのです。「しまった! 
  大切なクワが!」クワが割れてしまったのです、
  男はクワを直してもらう為に鍛冶屋(かじや)へ
  向かいました。
 
  その途中、手に棒を持った子どもたちが、
  捕まえたキツネを叩いていじめていたのです。
  「こら、お前たち、やめねえか。
  キツネが、可愛そうだろう」
  「だって、これはおらたちが捕まえたキツネだ。
  どうしようと、おらたちの勝手だろう」
  子どもたちは、キツネをいじめるのを
  止めようとはしません。
 
  そこで男は、「それなら、
  そのキツネをおらに売ってくれんか?」と、
  男はクワを鍛冶屋で直してもらう為のお金を
  子どもたちにやって、キツネを買い取りました。
  そしてキツネを子どもたちのいない所へ行って
  逃がしてやろうと思ったところで、
  ふと思いました。

Kitune1

  「おらは、
  何をやっているんじゃろう?
  新しい畑を作るには、クワがいる。
  そのクワを直してもらうには、
  鍛冶屋に払うお金がいる。

 
 


  でも、そのお金がなくなってしもうた。
  このキツネが、クワを直してくれるのならともかく。
  ・・・こりゃ大変だ。
  キツネよ、悪いがそう言う事だ」
 
  男はまた子どもたちのところへ行って、
  キツネを渡してお金を返してもらいました。
  すると子どもたちは、前よりも
  もっとキツネをいじめるのです。
  それを見かねて、
  男はまた子どもたちのところへ行くと、
  「止めてくれ、今度は本当に買うから」と、
  またお金を渡して、キツネを買い戻しました。
 
  そしてキツネを山へ連れて行き、
  「もう、二度と捕まるなよ」と、言って、
  逃してやりました。
 
  それから数日後、男の家に
  あの時のキツネがやって来て言いました。
  「この間は、危ないところを助けて頂いて、
  ありがとうございました。
  恩返しに、何かを差し上げたいと思います。
  わたしの家にはキツネの倉(くら)と言って、
  無い物は無いという倉があります。
  よろしければ、あなたの望みの物を
  好きなだけお持ち下さい」
 
  それを聞いた男は、キツネと一緒に
  キツネの倉へ行きました。
  「さあ、これがキツネの倉です。
  どうぞ、中へ入って好きな物を取って下さい」
  喜んだ男が倉の中へ入って行くと、
  キツネが倉の戸をバタンと閉めました。
  そして大きな声で、
  「泥棒だ! 倉に泥棒が入ったぞ!」と、
  叫んだのです。
 
  すると、あちこちからたくさんの人が集まって来て、
  「泥棒は殺せー! 泥棒を殺すんだー!」と、
  言うのです。
  倉に閉じ込められた男は、ビックリです。
  「違う、違うんだ。おらは泥棒でねえ」
  男は必死で言いましたが、
  外の人たちは聞いてくれません。
  「泥棒は殺せー! 泥棒を殺すんだー!」
  男は怖くなって、倉のすみっこで
  ブルブルと震えていました。
 
  「だっ、だまされた。キツネの奴に、だまされた」
  でもしばらくすると外の騒ぎがおさまって、
  倉の戸がガラガラと開きました。
  そして、さっきのキツネが言いました。「
 
  ビックリさせて、すみません。
  さあ、クワでも着物でもお金でも、
  好きな物を持てるだけ持って出て来て下さい
  」男は訳が分からず、
  取りあえず言われたまま持てるだけの物を持って
  倉から出て来ました。
 
  「どうです。さっき閉じ込められた感想は?」
  「どうだったも何も、
  恐ろしくて、生きた心地がしなかった」
  男がそう言ったので、キツネは満足そうに頷くと、
 
  「そうでしょう。実はわたしも先日、
  同じ思いをしました。
  あなたに助けてもらった時は、
  心の底から喜びましたよ。
  でもその後で、また子どもたちに返された時は、
  もう生きた心地はしませんでした。
  そして最後には、再び助け出されたわけですが、
  あの時の事を考えると今でも体が震えます。
  あなたに恩返しをする前に、
  これを知って欲しかったのです 」と、
  言ったという事です。
 

  おしまい
 
 
 
  ヘビとカニ・イソップ童話
 
 
 
 
  引っ張り合図


  むかしむかし、ある村に、
  とても世間知らずの婿さんがいました。
  ある日の事、その婿さんが嫁さんと一緒に
  実家に呼ばれました。
  二人に、ごちそうをしてくれると言うのです。
  嫁さんは、少し考えました。
  (この人がごちそうを食べる順番を
  間違えて笑われない様にしないと)
 
  そこで嫁さんは、婿さんの服に
  糸をぬい付けるとこう言いました。
  「あなた、あたしが横で、この糸を引っ張って
  合図をします。
  『ツン』と、一回引っ張ったら、おつゆを飲むのです。
  『ツンツン』と、二回引っ張ったら、
  ごはんを食べるのです。
  『ツンツンツン』と、三回引っ張ったら、
  おかずを食べるのですよ」
  「うん、わかった」
 
  さて、二人が実家に着くと、
  さっそくごちそうが並べられました。
  横に並んだ嫁さんが、『ツン』『ツンツン』
  『ツンツンツン』と、上手に合図を出してくれるので、
  婿さんは、おつゆも、ごはんも、おかずも、
  順序よく落ち着いて食べ始めました。
  それを見て実家の両親は、
  「世間知らずと聞いていたが、
  なかなか大した者じゃ」と、感心しました。
  でもそのうちに、嫁さんはトイレに行きたくなったので、
  (まあ、少しの間くらいは大丈夫でしょう)と、
  持っていた糸を後ろの柱に結んで、
  部屋を出て行きました。
 
  するとそこにネコがやって来て、
  ゆらゆらとゆれる糸にじゃれつき始めたのです。
  『ツンツン、ツン、ツンツンツンツンツン』
  ネコが無茶苦茶に糸を引っ張るので、
  婿さんはびっくりです。
  「これは大変だ! 急がないと」
  婿さんはネコが引っ張るのに合わせながら、
  おつゆも、ごはんも、おかずも、
  夢中で口に放り込みました。
  その様子を見ていた実家の両親たちは、
  「やっぱり、この婿さんは相当な世間知らずじゃ」と、
  あきれ果てたそうです。

 
  おしまい
 
 
 
 
水の枯れた沼のカエル・イソップ童話
 
 
 
 
  人の為(ため) と書いて、
  いつわり(偽) と読むんだねぇ
 
  誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
  誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
  ただ、黙っているだけなんだよ、
  言えば愚痴になるから。

 

 
  時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる
 

 
 
 
 
 
 
 
  furo
 
P R
 

  きれいなお風呂・宣言
 
 
お風呂物語
 

 
 

 

妄想劇場・一楽編

妄想劇場・一樂編
信じれば真実、疑えば妄想



昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



Mituo_2








『カッコイイかカッコ悪いか【1】

新幹線の新大阪駅。 田中作蔵は、
ちょっと早めに駅に着いたため、
ホームのガラス張りの待合室に座っていた。
作蔵は大手食品メーカーの社長をしている。
ちょっとプライベートの用事があったので、
先に秘書を返して一人遅い
新幹線に乗ることにしたのだった。
退屈だった。会社では、いつも誰かがそばにいる。
そして何か喋っている。
まだ、予約している列車が来るまで、15分ほどある。

「雑誌でも買って来ようか」と思ったその時だった。
斜め前に座っていた母娘の会話が耳に入った。
若い母親が、7、8歳くらいの女の子にこう言った。
「それ拾いなさい」
作蔵が、母親の視線の方向に目をやると、
そこには、ちょっとひしゃけたビールの
空き缶が落ちていた。
女の子は、携帯ゲームに夢中だった。
チラッと見て答えた。「イヤ」
「いいから拾って、ゴミ箱に捨てて来なさい」
それは、明らかにその母娘が落としたものではなかった。
作蔵は、ちょっといい気分になった。
ホームに落ちているゴミを、娘に拾わせる。
なかなか良い教育をしているなと思った。

ところが・・・。
「イヤ!」女の子は、語気を荒げて言った。
「なぜ?」母親は、けっして怒るわけではなく、
穏やかに訊いた。
理知的な顔つきをしている。
きっと育ちがいいんだろうなと思った。
「だって、損だもの」
「どうして損なの? 損てどういうこと?」
それまで、穏やかだった母親の口調が、
急に厳しくなった。

作蔵は、この母親に興味を持った。
どう女の子をしつけるのだろうかと。
しかし・・・その目論見は大きくはずれた。
なぜなら、問題の空き缶が目の前から
消えてしまったからだった。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。

母娘の前を通り過ぎた青年が、
ちょっと屈んだかと思ったら、
サッと空き缶を拾っった。
それだけではない。その青年は、
ティッシュをポケットから取り出すと、
何枚かをつまんで床に零れたビール拭ったのだ。

「え?!」女の子は再び、ゲームに夢中になった。
母親は唖然とした顔をしている。
いや、唖然としたのは、作蔵の方だった。
あまりにも自然というか、
それは「美しい」と言っても過言ではないような
自然な行動だった。

よくは観察できなかったが、
青年の風体はあまり芳しいと言えるものではなかった。
なにやら、薄汚れたTシャツにあちこちが破れた
ジーンズをはいている。
首にはキラキラと光るチェーンみたいなものを掛けていた。
何より、黒いサングラスが作蔵の印象を悪くしていた。
(いかん、いかん。人は見てくれじゃないな)
作蔵は、そう反省した。

社長という仕事をしていると、
一人の人間と長い時間続けて話をするということが
少なくなる。 さらに、毎日、何人もの新しい人と会う。
そのため、ついつい外見で
人を判断してしまうのだった。
(これからは気を付けよう)

「え?!」今にも列車が動き出そうとしている発車直前。
作蔵がグリーン車の窓側席に座って、
前ポケットに置いてある雑誌に
手を伸ばしたその時だった。
「お隣に失礼します」と声を掛けられた。
その声の主に目を向けると、
さきほど待合室でビールの空き缶を拾った
青年だった。

「あ、はい」作蔵は、返事にならないような返事をした。
それは、ちょっと驚いたからだった。
もちろん指定席である。
「隣は空いてますか」と尋ねるわけではない。
当然、指定席のチケットを持っているから座るのだ。
先に座っている人にお隣に失礼します」などと、
挨拶されることなどめったにない。
青年は笑顔で会釈をし、
荷物を棚に上げると作蔵の隣に腰かけた。
いや、正確には、
笑顔だったかどうかわからない。
サングラスをしたままなので、
表情がよくわからないのだ。
耳たぶには、イルカの形のイヤリングが
キラキラと揺れていた。

青年は、再び、ちょっとだけ腰を浮かせて
後ろを振り向く。
「恐れ入ります。座席を少しだけ倒しても
よろしいでしょうか」
後ろの中年男性が、パソコンの画面から
顔をチラッと上げて、「どうぞ」と答えた。
作蔵は、またまた感心した。

「うん、この若者はやるじゃないか」
もし、うちの会社に就職試験を受けに来たなら、
社長の特別枠で推薦して
入社させたいと思ったほどだった。
いや、もし、他の会社に勤めていても、
ヘッドハントしたいくらいだ。
そんなことを、つらつらと考えているうちに、
「まもなく京都、京都です」という車掌の
アナウンスが聞こえた。
隣の席の青年は、腕組みをして目をつぶっている。
いや、目をつぶっているかどうかは、
サングラスをしているのでわかならいなが・・・。
まだ京都では降りないらしい。さらに30分が経った。

作蔵は、青年のことが気になって気になって
仕方がなかった。
いったい、どんな生い立ちなんだろう。
どんな仕事をしているのか。
いや、まだ学生かもしれない。
10代・・・いや、そんなことはなかろう。
25歳くらいか。ひょっとして、30代かもしれない。
彼がもし名古屋で降りてしまったら、
二度と会うことができない。
そう思うと、居ても立ってもいられなくなってしまった。

青年は、姿勢を変えずにややうつむき加減で
眠っている様子。
作蔵は、失礼かとは思いつつも、
思い切って声をかけてみることにした。
「あの、お休みのところ申し訳ございませんが・・・」
そう言うと、青年は、ビクッとして顔を上げた。
そして、作蔵の方を向いて腰を浮かせた。
「あっ、ごめんなさい。どうぞ」
どうやら、作蔵がトイレに行きたいのだと
勘違いしたようだった。
「い、いえ、そうではないのです」
「え・・・?」青年は、腰を少し浮かせたまま、
サングラス越しに作蔵を注視した。

「大変唐突ではありますが、
一つ、あなたにお聴きしたいことがあります」
「はあ・・・」青年の驚いた様子が見てとれた。
「先ほど、新大阪駅の待合室でのことです。
あなたは、空き缶を拾われましたよね」
「・・・はい」 「そして、ティッシュで床を拭いた」
「あ、はい」
「なぜ、そんなこと・・・と言っては失礼かな、
そういうことが自然にできるのですか」
青年の返事はなかった。
「いったい、このシジイは何者なんだ」と
思われているに違いない。

作蔵は、少し後悔をした。しかし、
せっかくの機会を逸するのは性分に合わない。
臆することなく、さらに言葉を続けた。
「本当に、隣の席になったというだけで、
こんなことをお尋ねして申し訳ありません。  
年寄りのことだと思って勘弁してください。

さきほど、あの空き缶をね、  
近くに座っていた若い母親が、
小学2年生くらいの娘さんにね、  
『拾ってゴミ箱に捨てて来なさい』と
言っているのが聞こえたのです。  
そうしたらですね、その女の子が
『損だから嫌だ』と言うんですな。  
私もそれを聞いて、ちょっとだけムッとしたのですが、  
何が損なんだろうとチラッと考えたりしましてね。  
その母娘の会話の続きがどうなるかと
注意して見守っていたところに・・・」

「ハハハッ」そこで、
作蔵の言葉をさえぎるようにして、
青年が笑いだした。「・・・」
「僕がその邪魔をしてしまったのですね」
「いや、邪魔というわけじゃなく・・・
ご立派な方だと思いました。本当に」
「やめて下さい。ご立派だなんて」
「いやいや、立派です。
なかなかできることではありません」
「僕は、そんなこと考えたことはありませんよ」
青年は、大きく首を振った。
「これまた謙虚な」
「いえ、謙虚でもなんでもないんです。
これは生き方の問題なんです」

そう言うと、青年は、かけていたサングラスをはずし、
話を続けた。青年は、二重瞼で、
まるで歌舞伎役者のような凛とした瞳をしていた。
「あのですね。その女の子が、
『損だから嫌だ』と口にしたそうですね」
「はい」 「僕はね、そういうのを否定はしないんです。  
世の中、誰かが得をすれば、誰かが損をする。
それは仕方のないことです」
「ふむ」
「でもね、僕は根性が曲がっているというか、
ひねくれ者なので、そういう考え方に
抗って生きたいと常々思っているんです」
「ほほう、抗う・・・どういうふうに?」
「はい、損か得かという判断基準は捨てちゃうんです。  
それでね、カッコイイかカッコ悪いか、
それだけで決めているんです」
「・・・!」

「あの時、この列車が来るまで時間があった。
ホームで待つのもちょっと寒いし、  
待合室で時間を潰そうと思って中へ入った。
すると、目の前に空き缶が落ちているのが目に入った。  
辺りにビールが零れている。
これは、拾った方がカッコイイと思った。  
さらに、拭いた方が、もっともっとカッコイイと思った。
ただ。それだけのことです」

「カッコイイですか」
「そう、そうした方がカッコイイじゃないですか。  
反対に、そのままにして、見て見ぬフリをしたら
カッコ悪いでしょ」
「ということは、あの時、私も含めて
あの場にいた人たちはみんな、カッコ悪い人ばかりでしたね」
「いえいえ、そんな皮肉で言っているんじゃないんです。
勘弁してください。  
他人のことはどうでもいいのです。
ひねくれ者の僕に限った生き方ですから」

作蔵は慌てて右手を振って謝った。
「そんなつもりで言ったのではありません。
カッコイイとか、カッコ悪いとかいう基準が、
あまりにも新鮮で感動してしまったのです」
「感動ですか?」
「はい、感動です」
「そんなのやめてください。
僕は道徳とかなんとかいうのが苦手なんです。  
人に親切にしましょうとか。いつも掃除をしましょうとか、
そういうのがどうも・・・。  

けっして良い子ではありませんでしたから。
どっちかというと不良みたいな・・・。  
単純なんですよ、
「それがあなたの生き方なんですね」
「はい、生き方です」
作蔵には、青年の瞳が眩しいほどに輝いて見えた。

その時だった。バタバタッと、若い女性3人が
騒がしく二人の席に近づいて来た。
こういうのをキャーキャーと言うのだろう。
そのうちの一人が、青年の向かって言った。
「あの~ドルフィン・ウェーブの佐久間さんですよね」
「・・・」青年は困った表情を見せた。
作蔵には何が何かわかならない。
「サインしていただけますか」
「しまった」と言いつつ、
青年はサングラスをはめて答えた。

「いいですよ。でもね、ここは公共の場です。  
周りのお客さんに迷惑にならないように静かにね」
二十歳くらいの学生だろうか。
そう言われて、顔を赤らめていている。
「ごめんね。怒ってるわけじゃないからね」
そう言うと、差し出されたキャラクターのデザインの
大学ノートにサインをした。
「君たちも?」と、ささやくように小さな声で訊いた。
「はい、お願いします」と言い、
一人の女の子は、クルッと向きを変えて背中を見せた。
どうやら、白いシャツの背中にサインして
欲しいということらしい。

その三人組が去った後、作蔵は
青年・・・いや佐久間に尋ねた。
「あなたは、ひょっとして有名なんですね」
「いや、有名というかなんというか・・・
音楽を少しやっていて」
「ミュージシャンですか」
「まあ、そんなところです」
「今日は、いい勉強になりました。
カッコいいか、カッコ悪いか。  
そのカッコとは、外見のことではなくて、
中身・・・つまり生き方のこと」
「よしてください。若い者をからかうのは」
アナウンスが、もうすぐ品川駅に到着することを告げていた。
この青年、いやドルフィンなんとかの佐久間君に、
また会いたいと思う作蔵だった。……!!


Author :志賀内泰弘


信号が無い!!【エチオピアの交差点】
事故らないのが不思議
 !!




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R

きれいなお風呂・宣言

お風呂物語





2015年5月20日 (水)

信じれば真実疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin

韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。

漢の韓信-50

巴蜀の鎮撫を丞相の蕭何にまかせ、
劉邦はじめとする漢軍の面々はそろって
北進を開始した。
韓信はこれに合わせて、大々的に
桟道の修復を開始した。
桟道を直しながら進軍するものと
敵に見せかけるためである。
しかし一方で韓信は別働隊を編成し、
ひそかに山脈を大きく迂回する古道を使って
関中への進路をとらせた。

この古道を使えば、行く手を遮る川を
船で渡らねばならない。が、部隊が
一度に渡りきれるほど船の数はない。
必然的に渡河には船の往復を必要とし、
気が遠くなるほどの時間がかかった。
桟道の修復も一朝一夕に完成するものではなく、
韓信は兵を督励し、時には自ら作業を手伝いもした。

どちらも日進月歩的な進行状況ではあったが、
悲観すべきものではなかった。
明確な目的意識を持ち、韓信の表情から
鬱屈した悩める若者の陰が取り除かれていったのは、
このころからである。
時間がかかることはかねてから覚悟していたことなので、
どうということはない。
古道を行く別働隊の進軍速度に合わせて、
桟道の修復もせいぜい時間をかけて行えばよいのだ。
関中の敵が桟道の完成に合わせて
迎撃態勢を整える間に、
予想しない方角から降って湧いたように
別働隊が関中に流れ込む、それが理想である。

そのために少数の先遣隊を古道から送り、
関中の内応者を募らせたのは、
韓信の芸の細かさであった。
内応者を募ることはそう難しいことではなかった。
章邯を始めとする関中の王たちは
民衆の支持を失っており、
声をかければ民衆はおろか兵卒でも漢軍に味方をした。
たとえ迷う者がいたとしても、
多少褒美を上乗せすれば
意を決しない者はなかったのである。

かくして韓信は作戦に自信を持ち、
みせかけの桟道の修復作業にも
力が入る、という具合であった。
しかし、それを見た士卒の中には、
風格が足りないと感じた者も多い。
身分の高い者が卑しき作業に努力することを、
素直に受け入れないのであった。
この者たちは、韓信の若さに不安を持ち、
頼りなさを感じているから
そういう受け止め方をしたのである。

「将軍は努力家であられますな。
しかし、ここで体力を使い果たすと、
関中に入ってからがきつくなりますぞ」と、
声をかけてきた者がいる。老人であった。
こけた頬、白髪まじりの長い顎髭、
しみの多い肌……韓信にはそれが栽荘先生の
晩年の姿のように見えた。

「先生!……いや、人違いであろう。
老人、名はなんと言いますか」
その老人は優雅な微笑を作り、
緩やかな所作で受け答えをした。
「わしの名は、
酈食其(れきいき)という。

(

)

おもに使者の役目を仰せつかって、
この軍にいさせてもらっている。……

ところで先生とは誰のことじゃ?」
韓信にはどうにも説明できない。
「いえ、昔お世話になった先生に
あなたがとてもよく似ていたものですから……」
「ほう、なるほど。ところで、わしも先生じゃ。
人はわしのことを
酈生(れきせい)と呼ぶ。

なぜわしが先生と呼ばれるかというと、
いつも身なりに気をつけているからだ。
そこから生まれる気品のおかげで、
みながわしを敬うのだ」

なんという自信過剰な老いぼれであろう、と
韓信は思わないではなかったが、
この時代、老人にたてつくことは「孝」の概念上、
許されない。さらに、注意してみれば、
その老人はしみだらけの顔に似合わず、
不思議と調和された気品が確かにあった。
これを受けて韓信は、
この老人は儒者であるに違いない、と結論づけた。

「先生は、孔子の徒であられますか」
「いかにも。わしは儒者である。
儒者は日ごろ冠の位置まで注意深く直し、
礼のない言動を嫌う。
わしはこの軍を通じて孔子の教えを
天下に広めるのが最終目標よ」
儒家がどういうものか、
韓信は詳しく知っていたわけではない。
しかし、この時代の通念として、
儒家というものは王者に仕えるための
礼儀作法を教える学問だということだけは知っていた。

王者は彼らに行儀よくかしずかれることにより、
より王者としての風格を増す。
人によってはおべっか使いの学問だと
批判する者もあった。
「わが漢王は、あまり礼儀作法に
通じたお方ではありませんね。
儒者嫌いだという話も聞いたことがあります」
酈生は、劉邦の話を陰ですることがいかにも
楽しそうに笑った。
「それよ。わしが初めて漢王に相見えたときは、
王は両足をたらいにつけ、小娘に足を洗わせておった。

失礼千万な話じゃ。また、いろいろな噂も
それ以前に聞いておった。
漢王は儒者を見ると、その冠をむしり取って、
その中に小便をする、などと……。
しかし、漢王はそれ以上のことはせぬ。
ひところは儒者であること自体が
罪とされる時代があった。
将軍の若さでは知らないかもしれんが……
穴に埋められないだけましと思うしかない。
それに、漢王は儒者であろうとなかろうと、
聞くべき意見は分け隔てなく聞いてくださる。
やはり、他の者よりまし、と思うべきだろう」

酈生は平気で劉邦の陰口を叩き、
批評までしてのけた。
漢軍の自由な気風がそうさせたのか、
単に酈生が変わり者だったのかは
韓信にはよくわからない。
おそらくその両方だろうと、彼は思うことにした。

「先生には関中入りしたのち、
民衆に漢に味方するよう説いて回っていただきます。
よろしいか」酈生はやはり優雅に笑って答えた。
「それは構わん。それはそうと、将軍たる者、
土木作業などに根詰めて従事するものではない。
懸命なのはわかるが、やりすぎると
士卒たちに軽んじられるもとになるからのう。
もし将軍が望めば、みんなの前で
わしが将軍にかしずいてみせるぞ。
そうすればみなの将軍を見る目が
変わってくるだろうて」

「いえ……それはご免こうむります。
想像するだけで尻が痒くなってきそうだ」
これを聞いて酈生は高笑いし、去っていった。
高らかに笑っても下品な印象を残さないのは、
高名な儒者のなせる業だろうか。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...


山口蘭子/愛のタンゴ

山口蘭子;山口・山口市生まれ。
早稲田大学仏文科でシャンソンに出会った。
作曲しようと思ったが指が短く、
ギターを弾くのに限界を感じた彼女は、
卒業と同時に、歌手の道に。
シャンソン歌手・芦野宏の前歌として全国を廻った。
「タンゴに出会うまではシャンソンでした。
しかし、タンゴを聴いたとき“詞が深い”
勉強しよう、と」自力でアルゼンチンに渡る。
現地のミュージシャンらとコンタクトを取り、
レコーディングも決めた。
フランス語、スペイン語、英語が堪能な才媛



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R

きれいなお風呂・宣言

お風呂物語



2015年5月19日 (火)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……



Mituo2_2 
昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー






※この話しは(株)ユタカファーマシーでの
エピソードです。

『わがままなお客様』

具志堅高志は、今の仕事を辞めようかと迷っていた。
ドラッグストア・ユタカのアルバイトだ。
その働き具合を見て、将来、
正社員への道も開けていると聞き、始めた仕事だった。
しかし、ここでも続きそうになかった。

昨日の帰りがけのことだ。店長の下山に呼ばれた。
「おい、具志堅。ここの棚、
ちゃんと整理しておいてくれって頼んでおいたろう」
けっして、怒ったような口調ではなかったが、
思わず、「すみません・・・」と答えていた。

昔から、人に何か注意されると身体がすくんで
言葉が出なくなってしまうのだ。
「それ片づけてから帰ってくれよな」
「すみません・・・」まるで反射神経のように
、また「すみません」と言っていた。

言われるままに、栄養ドリンクの棚の整理を始めた。
高志は、最初から忘れていたわけではなかった。
お客様に次々と声を掛けられて、
あちこちと店内を案内しているうちに
時間が経ってしまったのだった。
本当は、その理由を説明すべきなのだろうが、
それよりも先に「すみません」が口に出てしまう。

(オレ、きっと人と話す仕事が向いてないんだろうなぁ)
そう思いつつも、人と話さなくて済むような、
どんな仕事があるのか思い浮かばなかった。
その時だった。再び、店長から声を掛けられた。
「具志堅、ちょっと頼まれてくれんかな~」
「あ、はい・・・すみません」
「え?・・すみませんって何だよ」
「い、いえ、すみません」
人から何か言われると謝ってしまう。
まるでパブロフの犬だな、と高志は思った。

「松栄マンションの山口さんのところに
配達に行ってもらえないかな。 
もちろん、時給延長して付けとくから」
「あ、はい」そう答えると、
店長から段ボール箱を渡された。
中身を覗くと、さまざまな商品が詰め込まれていた。
シャンプー、麦茶のペットボトル、綿棒、柿の種、
セロハンテープ、箱ティッシュ・・・。
「自転車使っていいから・・・
そうそう、301号室ね」
高志は、言われるままに配達に出掛けた。

301号室、「山口小枝子」。
表札を確認してインターホンの呼び鈴を押す。
こちらから、「ドラッグユタカですが、・・・」と
言うよりも先に、怒鳴り声が聞こえた。
「遅い!」あまりに大きな声で、
一瞬何を言われたのかわからなかった。
思わず、「すみません」と返事をしていた。
その場に立ち尽くしていると、
中からドアが開いた。

「何ボーっと立ってるのよ! 中入んなさいよ!」
段ボールを抱えて、おどおどと一歩踏み出した
。山口小枝子は、70、いや75歳くらいの老人だった。
歳には似合わず、派手な化粧をしている。
まるで、テレビで見る女性芸人のような
真っ赤な口紅をしていた。
「あれっ、いつもの人じゃないの?」
「すみません・・・」
「すみませんって何よ」
「いい、いえ、すみません・・・」
高志は思った、きっと気難しいお客様なので、
配達するのにも担当が決められているに違いないと。

「高梨君、どうしたのよ」
「あ、いえ、わかりません・・・
店長に言われて伺ったので ・・・すみません」
高梨というのは、アルバイトの先輩だった。
店で一番デキルとみんなから頼りにされている男性だ。
いつも笑顔で、テキパキと仕事をこなす。
お客様にも人気がある。

「電話もなく他の人を寄越すなんてどういうことよ!」
山口老女は、眉間にしわを寄せて怒鳴った。
「すみません」
「だいたい何よ、あんた!
そんな汚い靴下で上がらないでよ」
高志は自分の足元を見た。
白いソックスに穴が一つ空いていた。
そして、先の方が少し黒ずんでいる。
古くなったので、洗っても落ちないのだ。

「まあ、いいわ。覚えておいてよ」そう言うと、
山口老女は、段ボール箱を持ったままの高志を
家の中に招き入れ、風呂場へと促した。
「シャンプーはここね」その後、ティッシュはここ、
綿棒はここと、置き場所を教えられた。
「今度、あんたが来たら、ちゃんとここに置いておくのよ」

「・・・」どうやら、相当細かいお客様らしい。
しかし、配達した商品を、
一つひとつ家の中まで上がって
指定の場所に仕舞わせるとは、
なんてわがままなお婆さんなんだ。
高志はちょっと憤りを感じた。
「そのまま綿棒置いたら使えないでしょ。
ちゃんとビニールはずさなきゃ」
「あ、はい、すみません」
「あんたね、すみません、すみませんって、
他に何にもしゃべれないの?」
「すみません・・・」
「まあ、いいわ」

高志は、一刻も早くここから帰りたいと思った。
それには、とにかく怒らせないように
黙って従うことだ。
「ついでにね、ちょっとこっち来て」
言われるままにトイレの中を覗く。
「電球が切れちゃってね、取り替えといて」
「あ、はい」「それが済んだらね、
絨毯を干したいの。ベランダに持って行ってよ」
こちらの都合はまったく考えていない様子。
高志はだんだん腹が立ってきた。
その時だった。「何よ~これ~」
「すみません」「すみませんじゃないわよ~」
「はい、すみません」
「柿の種は亀田しか食べないって言ってるでしょ」
「すみません」

山口老女は、手にしていた柿の種を
勢いよく高志にほうり投げた。
しかし、年老いた人のやること。
コントロールが定まらず、
近くのテーブルの角に当たった。
バーン!柿の種の袋は破け、
床一面にあられとピーナツが散乱した。
「・・・すみません」そう答えるよりも先に、
山口老女は泣き出した。
それも、周りの空気がきしむような悲しい声で。
「いや~あ、あ、あ、あ~」
高志は、しゃがみ込んで柿の種を拾おうとした。

しかし、「帰って~、帰って!」と
山口老女に力ずくで押されて、
マンションの廊下に突き出された。
ドアが、低い金属音を立てて閉まった。

いったい自分が何をしたというのか。
別に悪いことは何もしていない。
今日という日がついていないだけなのか。
いや、いつも、怒られてばかり。
「すみません」と謝る毎日。
高志は、もうどうでもよくなった気がした。
自転車を無茶苦茶に漕ぎ、店へと駈った。

高志が店の裏口から入り、
着替えて帰ろうとしていると、店長から呼ばれた。
「おい、具志堅。お前に電話だぞ」
「え?」「今、配達に行ってもらった山口様からだ」
店長が子機のコートレスホンを差し出した。
否応なく、受け取り耳元に近づけた。

「ごめんね」「・・・」つい先ほどの勢いとは、
まったく別人のようなか細い声だった。
「さっきの子かい」「はい」
「私ね、いつもユタカさんには
お世話になっているんだよ。
高梨君が来てくれるとうれしくてね。
それなのに・・・なんでか顔を見ると
ワァーって怒鳴っちゃうんだ・・・うううっ」

何だか泣いている様子。しかし、
さきほどの怒りの泣き声とは明らかに違う。
「届けてくれるのに感謝しなくちゃって思うんだけと。
今日もやっちゃった。
ごめんね、ごめんね・・・ごめんね」
それだけ言うと、電話は一方的に切れた。

店長が心配そうに話し掛けた。
「大丈夫か」「はい」「山口様なんて?」
「・・・」「具志堅、あのお婆ちゃんな、
去年、旦那さんを亡くされてな。
それ以来、『うつ』になってしまったんだ。
以前は、ご夫婦でよくうちの店にも
いらっしゃってたんだよ。
それが膝が痛いからって、
配達を頼まれるようになって。
だんだん気難しくなって、

それで高梨君に専任で担当してもらってたんだ」
「そうだったんですか。
ただのわがままなお婆さんだと思いました」
店長は、急に真面目な顔をして言った。
「実はな、具志堅。今日はわざと
お前に山口様のところへ行ってもらったんだ」
「え!?」「高梨君と相談してな」「・・・」

「俺たちの仕事はな、いろいろ辛い思いをしたり、
困っている人を助けることなんだ。
ドラッグストアっていうのは、
本来、困っている人が来るところなんだからな。
ただ、薬やテッシュを売ってるんじゃない。
高梨君なんてな、あのお婆さんのところへ行くとな、
2時間は帰してもらえないんだぞ、いつも」

「・・・なんでですか?」
「亡くなった旦那さんの話を
ずっと聞いてあげるんだそうだ。
なんでも熱烈な恋愛結婚だったらしい」
「淋しいんですね、お婆さん」
「そういうことだな」「・・・」
「お前さ、いつも『すみません』ばかり言ってるだろ。
そんな謝らなくてもいいんだよ。
店の仲間に気を遣ってどうする。
心をもっと外へ向けろよ。外っていうのはお客様だ。
もっともっとお客様に何ができるか
考えてやってみろよ。
大丈夫、みんながカバーしてくれるよ」

山口老女のところへ配達に行かされたのは、
ひょっとして悪いくじを引かされたのかもしれないとも
思っていた。ところが、違った。
店長と先輩の高梨の思いやりだったのだ。
「店長、あのう・・・」「今から、もう一度、
山口様のお宅に入って来てもいいでしょうか」

高志は、床一面に飛び散った柿の種が
気になって仕方がなかった。
(片づけなくちゃ)
「いいよ、行って来い!」
高志はその返事を聞き終える前に、
表に飛び出していた。
帰りが遅くなることを覚悟して。


《終わり》
Author :志賀内泰弘



【お昼ご飯】



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
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幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない


Mituo31_2


昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



妻の愛が詰まった時計

先月、俺の誕生日があった。
毎年誕生日には妻がごちそうを作り、
ケーキを焼いてくれる。
特に今年は、幼稚園に入ったばかりの息子からは
「パパ」というタイトルの似顔絵、
片言を喋れるようになったばかりの娘からは
「パパ、チュキ」という言葉とチュウをもらって、
とても嬉しかった。
そのささやかなパーティーのあと、
寝ようとしてベッドにいくと、
サイドテーブルに小さな包みが置いてあった。

あけてみると、俺が前から欲しいと思っていた
フランクミュラー(時計)が入っていた。
こんな高価なものを・・・家計は大丈夫なのか。
妻に聞くと、にこにこしながら、
家計からは一切出していないから安心して。
私のお金で買ったのよ、と言う。

妻は子供ができてからずっと専業主婦だし、
家を買うとき妻名義の貯金もほとんど使ってしまったから、
妻個人のお金でこんな高いものを買えるはずがない。
そのとき俺の脳裏に、数日前の妻の姿が浮かんだ。

独身の頃から大事にしてきた着物を、
何故か突然取り出して眺めていた妻。
いとおしそうに一枚一枚触れながら、
思い出話をしていた妻。
着物用のたんすを開けると、予想したとおり、
それらが何枚もなくなっていた。

妻が祖母から受け継いだという、大切な着物まで・・・
もう着ないから処分しただけよ、
あなたはいつも私にプレゼントをくれるけど
私はいつもケーキくらいしか作ってあげられなかったから。

あなたのお金を使わずに、私自身のお金で
プレゼントしたかったの。あなたへの感謝は、
こんなものじゃ表しきれないくらいだけど・・・。
妻はそう言った。

俺はケーキだけで充分だったのに。
大事な思い出を売ってまで、
プレゼントなんてしてくれなくてもよかったのに。
でも、でもありがとう。とても嬉しいよ。
俺は泣いた。泣きながら妻を抱きしめた。

あれから毎日、妻のくれた時計をはめて
会社に行っている。
妻の愛が詰まったこの時計を見ると、
どんどんやる気がわいてくる。
これからも妻と子供のためにがんばっていこうと思う。




俺の泣く場所




タイム・ショック
小学生の頃に目撃した、
未だに、おそらく一生忘れられない
両親のセ◎クスの話です・・・。
20年くらい経った今でも、
昨日のようのことに思い出します。

少学5年の夏休みが終わりの頃でした。
いつものように飯を食って風呂に入って
一旦寝たんですが、なんか夜中1時頃になっても
寝つけませんでした。で、
何か食おうかなと思いつき、
1階の居間に行くことにしました。
階段を降りかけたところで、
両親の寝室のドアが5センチくらい開いていて、
何やら騒がしい(?)声が聞こえました。

俺は、既に何回も、声と気配を感じたり
目撃していたため、ある意味(?)
慣れていました。(笑)
時には、部屋に帰って
オ◎ーニのおかずにしていたので。(笑)

だからその時も、
「あ、またヤってるのかな。
でもドアしめろよな~ !」と、
半分ムカツキながらも、いつものように
スケベ心がムクムクわいてきたので、
抜き足差し足でドアの隙間に近寄り、
息を潜めて、中のようすをうかがいました。
この日は、月の光がとても明るくて、
部屋の中はわりと鮮明に見えました。

ベッドの上で、パジャマ姿の父が、
あお向けに寝ている母に
覆い被さるようにしていました。
セ◎クスする前かした後かはわかりませんが、
抱き合っていました。
何故か母はすすり泣いていました。

そんな母を父は抱き、キスしたり頭を撫でながら、
「大丈夫や。何も、心配すんな。
○○(俺)も○○(妹)も、ええ子やから。」
「俺がついとるから、何も心配すんな。
大丈夫、大丈夫。愛してるから。待っとるから・・」
「心配すんな○○(母の名前)愛しとる!
俺がついとるから!」
などと、大きな声で語りかけていました。

やたらと「大丈夫」とか「心配すんな」を
繰り返す父に、俺は何か、
いつもと違う雰囲気を感じていました。
なんか、切羽詰った雰囲気でした。

その後、母が半分叫ぶように、
「○ちゃん(父の名前)、私怖い・・!
嫌や~。お願い、ずっと抱いてて!怖い!」と
言いました。

そしたら父が、「アホ!
おまえがそんな弱気でどうする!
絶対戻ってこような、大丈夫やから!」と
叫ぶように言い、
なんか、父まで泣き声ぽくなってきて、
二人で抱き合って大泣きしはじめました。
俺は唖然としましたが、
目が離せなくてそこから動きませんでした。

しばらくしたら、母の泣き声が
なんか喘ぎ声ぽくなってきて、
フッと見ると、いつの間にかパジャマを脱いだ
両親が営んでいました。

父は何度も母の名前を呼び、
今まで見た事もないような優しいしぐさと声で、
母を愛撫していました。
母は喘いでいるだけでなく、
やっぱり泣きつづけていました。

「絶対治るから。絶対良くなるから。
俺がついてるから! がんばって治そうな。
正月になったら、また○(俺)と○(妹)とお前で、
旅行行こうな~!なぁ!」と、父が母に語っていました。

その時になって、俺は母が
何か病気かケガをしていて、
ちょっとヤバイ事になってるのだということを、
初めて知りました。
母ちゃんヤバイんか? どんな病気なんや?
何なんだ一体!!と、激しく動転しましたが、
俺は何故か一歩も動けず、
声も出せないまま、両親をそのまま見ていました。

そうこうしているうちに、
母がいつのまにか父の上に乗り、
腰を動かし始めました。
ふとんがほとんど剥がれていて、
揺れるオ◎パイが月の光で丸見えでした。

母は泣いているようにも
笑っているようにも見えました。
「○ちゃん(父)と結婚して、
私とっても幸せや・・。」みたいな事を、
母は言いました。
何故かその言葉で、
俺は、勃起しながら泣いてしまいました。

その後、どのくらいその場にいたか
覚えてませんが、
気付いたら俺は自分の布団で泣いてました。
その夜は、結局一睡もせずに
終わってしまいました。


その翌日、ばあちゃんが家にきました。
母は、「お母さんしばらく病院いくから、
ばあちゃんにご飯つくってもろてね。」
みたいな事を、普通に明るく言い、
病院に行きました。

俺は、頭が真っ白になりました。
妹は全然わからないみたいで、
「いってらっしゃーい!」と元気に送り出しました。

母は、そのまま入院し、11月に亡くなりました。
末期の膵臓ガンでした。38歳でした。
父は、男手ひとつで俺と妹を育てあげ、
妹を嫁に出した4年前、母のところに行きました。

俺は今、嫁さんと一緒にこの家に住んでます。
心なしか、両親の寝室
(今はほとんど物置(?)に行くと、
嫁さんとケンカしていても、
優しい気持ちになり、
すぐに仲直りできる感じがします。




田舎もん




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから。


時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる











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2015年5月15日 (金)

歴史・履歴への許可証

歴史・履歴への許可証
 
 
昨日という日は歴史、
  今日という日はプレゼント
  明日という日はミステリー

 
Kobanasi_3

 
  げんこつのほうび
  むかしむかし、ある国の殿さまが、
  《珍しい物を持って来たら、ほうびをとらせる》と、
  おふれを出しました。
  それを聞いた人たちは、珍しい物を持って
  次々と城へ出かけました。
  でも、色々と珍しい物を持っている殿さまは、
  「こんな物、ちっとも珍しくない」と、
  みんなを追い返してしまいました。
 
  さて、この国にカブを専門につくっている
  お百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
  お百姓さんは大きな大きなカブをつくろうとして
  、長い間、苦労を重ねてきました。
  そしてその苦労が実って、
  大きな岩みたいなカブが出来たのです。
  「これなら、あの殿さまも見た事がないだろう」
  お百姓さんは近所の人に手伝ってもらって、
  そのカブを荷車に乗せると城へ運んで行きました。
  ところが城の門番が、
  「カブなんて、ちっとも珍しい物ではない」と、
  中へ入れてくれません。
 
  Kabu_6「でもこれは、おらが
  一生懸命に育てたカブです。
  こんな大きなカブは、
  どこを探しても
  他にありません。
 
 
 

一目だけでも、殿さまに見ていただきたいのです」
  お百姓さんがあまりにも頼むので
  、門番は殿さまに大きなカブの事を話してくれました。
  すると、殿さまは喜んで、
  「すぐ、持って来るように」と、言いました。
  それを聞いた門番は、急いで戻るとお百姓さんに言いました。
  「わしのおかげで、どうにか殿さまが見てくださる事になった。
  わしのおかげでな。・・・いいか、
  もしほうびをもらったら、わしにも半分寄こせよ。
  何しろ、わしのおかげなんだからな。わかったな!」
  「はい、しょうちしました」
 
  お百姓さんは、城の庭へ荷車を引いて行きました。
  殿さまは荷車の上のカブを見て、とても目を丸くしました。
  「これは珍しいぞ。よくぞここまで、カブを育てたものだ。
  ほうびをとらすから、何でも欲しい物を言うがよい」
  でも、お百姓さんはほうびよりも、
  あの門番をこらしめてやろうと思いました。
  そこで、殿さまに訳を話して、
  「おらに、げんこつを十個ください」と、言ったのです。
  「よし、よし。そう言う事なら、げんこつをあげよう。
  もっと近くへ来なさい」殿さまは、お百姓さんの頭を
  やさしく十回叩いて言いました。
 
  「お前は正直者だ。本当のほうびは、
  あとで届けてやるからな」
  「ありがとうございます」
  お百姓さんは喜んで荷車を引くと、
  城の庭を出ていきました。
  門のところへ来ると、門番が待ちかねた様に言いました。
  「どうじゃ。殿さまにほうびを頂いたか?」
  「はい、おかげさまで」
  「よし。それじゃ約束通り、ほうびの半分をもらおうか」
 
  門番はお百姓さんの前に、両手を突き出しました。
  そのとたん、お百姓さんはこぶしで、
  門番の頭を思いっ切り殴りつけました。
  「あいた! な、なにをする!」
  「おらが殿さまからもらったほうびは、
  げんこつが十個だ。半分やるから、覚悟しろ!」
  お百姓さんはこぶしをにぎりなおすと、
  あと四回、門番の頭を殴りつけました。
  これには門番もたまらず、
  そのままひっくり返ってきぜつしてしまいました。
  「ははーん。ざまあみろ」
  気の晴れたお百姓さんは、ニコニコしながら
  家に帰っていきました。そして家に帰ると、
  すぐに殿さまからのほうびのお金が届きました。
  お百姓さんはそのお金で、村人たちに
  ごちそうをしたという事です。

 
  おしまい

 
 
  金持ちと泣き女
 
 
 
 
タヌキの糸車
 
むかしむかし、山奥に木こりの夫婦が住んでいました。
  木こりは木を切って炭を焼き、
  おかみさんは糸車を回して糸をつむいで暮らしていました。
 
  さて、木こりが仕事でいない昼間、
  タヌキが時々やって来て食ベ物を食い散らす様になりました。
  それで夫婦は、なベやおひつに大きな石を乗せて、
  タヌキに食べられない様しました。
  それでもタヌキは夜になるとやって来ては、
  家の前でポンポコと腹つづみを打ったり、
  踊ったりして騒ぎます。
  夜に寝られなくなった木こりは腹を立てて言いました。
  「今に見ておれ。ワナを仕掛けて捕まえてやる!」
 
  Tanukijpg
それから数日後、
  月のきれいな晩に
  おかみさんが糸車を回していると、
  しょうじの破れ目から
  タヌキの黒い目玉が
  クルクルと動いているのが
  見えました。
 
 
 
 

そしてタヌキはおかみさんの真似をして、
  糸車を回すかっこうをしました。
  「あら。可愛いタヌキだこと」
  タヌキは、おかみさんをとても喜ばせました。
 
  そして、さらに数日後のある晩の事。
  「ギャンギャン!」
  裏山で、タヌキの泣き声がしました。
  おかみさんが見に行くと、あのタヌキが
  ワナにかかって木からぶら下がっています。
  「可愛そうに。うちの人が仕掛けたワナにかかったのね」
  おかみさんは、そっとワナを取ってやりました。
  「気をつけないと、うちの人にタヌキ汁にされてしまうよ」
  助けられたタヌキは何度も頭を下げ、
  何度も振り返りながら森の中へ帰って行きました。
 
  冬が来て寒さが強くなると、木こり夫婦は
  ふもとに下りて小さい家で暮らします。
  おかみさんは山の方を見ては、
  (あのタヌキ、どうしているのかしら?)と、
  時々タヌキを思い出していました。
 
  さて春が来て、夫婦はまた山の家へ戻って来ました。
  家に入ったおかみさんは、
  「あっ!」と、驚きました。
  ほこりだらけになっているはずの糸車が
  ピカピカに磨かれていて、その横には
  真っ白な糸が山の様に積まれているのです。
  「不思議な事」
  おかみさんが、ボーッと見ていると、
  「さあさあ、いつまでもつっ立っていないで、
  家の掃除をしろ」
  木こりはそう言うと、炭焼きがまを見に出て行きました。
 
  掃除をすませたおかみさんが、
  かまどでご飯を炊いていると、
  キイカラ、キイカラと、糸車の回る音がしてきました。
  「おやっ?」そうっと座敷の方を見たおかみさんは、
  息をのみました。「タヌキだ」
  いつの間にやって来たのか、タヌキが上手に
  糸車を回して糸をつむいでいたのです。
  キイカラ、キイカラ キイカラ、キイカラ
  おかみさんは声も立てずに、見とれていました。
 
  タヌキは一通り巻き終わると糸をはずして、
  いつもおかみさんがしていた通りに
  糸をきれいにまとめて積み重ねます。
  そしてタヌキは満足そうな顔をして、
  あたりを見回しました。
  その目がおかみさんの目と合うと、
  タヌキはうれしそうにおじぎをして森へ帰って行きました。
  「タヌキよ、ありがとう。お前のおかげで、
  今年は楽が出来るわ」
  おかみさんは恩返しをしてくれたタヌキを、
  いつまでもいつまでも見送りました。
 
 
おしまい
 
 
 
  カラスと水差し
 
 
 
 
  人の為(ため) と書いて、
  いつわり(偽) と読むんだねぇ
 
  誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
  誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
  ただ、黙っているだけなんだよ、
  言えば愚痴になるから。

 
 
  時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる
 
 
 
 
 
 
 
    furo P R
 
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2015年5月14日 (木)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編
信じれば真実、疑えば妄想……


Mituo2_2

昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー




『一緒に住めない』

貴臣(たかおみ)はショックだった。
間違いなく、妻の幸恵はオーケーしてくれるものと
思っていた。
それなのに、「私、お義母さんとは
一緒に住めないわ・・・ごめんなさい」と
言われてしまったのだ。

一年前、貴臣の父親が亡くなった。
ほとんど、急死といってもいいほどの出来事だった。
勤め先を退職してから、
地域のボランティアをして暮らしていた。
NPОを立ち上げて、もっと大きな組織に
するんだと口にしていた矢先のこと。
早朝に公園の清掃活動をしていて、
心筋梗塞に襲われた。
救急車で病院に運ばれ、九死に一生を得た。
しばらくは安静にと言われ数日後に退院。

ところが、その翌朝も清掃活動に出掛けてしまい、
再び発作が起きた。今度は助からなかった。
母親は、かなり参っていた。
貴臣は、昔から両親のケンカする姿を
見たことがなかった。
よく二人で旅行にも出かけているようだった。
それだけに、ポツンと一人になった母親は、
寂しそうだった。

そこで、「一緒に暮らそう」と持ちかけた。
母親は、「一人が気楽でいいから」と言い、
断られた。それは最初からわかっていた。
貴臣が結婚したときから、
ずっと口癖のように言っていたからだ。
「あなたたちは、あなたたち。
わたしたちは、わたしたち。
別々が上手くゆくのよ」
人に気を遣われるのが嫌いなのだという。

しかし、今度は事情が違う。
母親も、もうすぐ70歳になる。
持病のリウマチと糖尿病も心配だ。
無理やりにでも、連れて来るつもりだった。

ところが・・・。「私、お義母さんとは
一緒に住めないわ・・・ごめんなさい」
「え?・・・なんでだよ」
貴臣と幸恵には、二人の子供がいる。

一人は19歳の男の子。
すでに大学へ入って下宿生活をしている。
もう一人は高校3年の女の子。
推薦入学が決まり、
こちらも春には家を出る予定だ。
手のかかる子供もいなくなる。

何より、貴臣が安心していたのは、
幸恵と母親の良子の間に、
世間で言うところの「嫁と姑」の間の
いさかいがないことだった。
不思議なことに、結婚当初から
二人は気が合ったようだった。
待ち合わせて、二人で
ショッピングに出掛けたり、
双方の家を行き来したり。
貴臣の存在抜きで、よく会っていた。

(それなのに・・・なぜ?)
「あなた、仲が悪いはずがないのに、
なぜ?って思っているでしょ」図星だった。
「あ、う、うん」
「あなたはノンキでいいわね」
「え?」
「嫁と姑だもの、何もないわけないじゃないの」
幸恵は、ちょっと張りつめた口調で言った。
貴臣は、一瞬、ビクッとして妻の目を見た。

「大丈夫よ、なにもケンカしてきたわけじゃないもの。  
ううん、一度もケンカしたことないわよ、
「・・・」 「でもね、それはね、
お義母さんと私がね、
お互いに努力してきたからなのよ」
「え?! どういうことだい」
「やっぱりね・・・」
普段は見せない幸恵の厳しい瞳があった。
「そこがあなたのノンキなところなのよ」
「どういうことだよ!」
貴臣はちょっとムッとした。
キッチンの片付けをしながら話をしていた幸恵は、
手を休めて、貴臣に向き合うようにして
テーブルに座った。

「いいわ、この際だから、きちんと言ってあげる」
「・・・なんだか怖いなぁ」
あまりの緊張感から、おどけて言うと、
「ふざけないで、真剣な話よ」
「う、うん。わかった」
「あのね、結婚したすぐの頃にね、
お義母さんからこう言われたのよ。  
『貴臣は、ボーとしていて、
人の気遣いができない子供なの』って」
「え! なんだって」
「いいから、聴いて」
「う、うん」幸恵は話を続けた。

「お義母さんが言うにはね、もし私とお義母さんが  
『嫁と姑』の問題でケンカをしたとしてもね、  
貴臣はまったく仲裁ができないし、
それどころか、ひょっとすると
気が付かないかもしれないって」
「なんだって! オフクロがそんなことを言ったのか? 
いつだよ」
「いいから聴いてよ・・・まだ話の続きがあるの」
「・・・」貴臣にはまったく寝耳に水の話だった。

「だからね、お義母さんはね、
あまりお互いの生活のことを
干渉しないようにしましょうって 提案されたのよ。
もし何か意見が違うことがあってケンカをしてもね、  
貴臣はアテにならないから二人で解決しましょうってね」
「おいおい・・・」
「だからね、仲よくは無理でもね、
できるだけ私とお義母さんは  
おしゃべりする機会を作るように努力してきたのよ
・・・わかる?」

初耳だった。母親からもそんな話を聴いたことはなかった。
「てえことは・・・オレだけ除け者ってことか」
「う~ん、言い方は悪いけど、そういうことね。
もっと聴きたい?」
貴臣は恐々答えた。「どうせだから言えよ」
幸恵は淡々と話を続けた。

「これはね、私が言うんじゃないのよ、
お義母さんが言うのよ。い~い」
「あ、ああ」 「あなたね、
お父義さんとお義母さんの誕生日に
何かプレゼントしたことある?」
貴臣はドキッとした。プレゼントをしたことはある。
しかし、それは、たしか小学生のときのことだ。
中学になっても、プレゼントしたかどうかまで
覚えていない。

「父の日とか、母の日とかに、
いつも私がプレゼントの手配をしているでしょ」
「う、うん、仕事が忙しくて、
お前に任せきりで悪いとは思ったけど」
「じゃあさ、父の日や母の日に、
私の両親に、何か買ってくれたことある?」
貴臣は、もう何も返事ができなかった。
全部、妻に頼んでいたからだ。
もちろん、お金だけは出していたが・・・。

「お義母さんは言うのよ、今でもね。  
貴臣は自分のことしか見えない子だから
ごめんなさいって」
まるで糾弾されているようだった。
妻の口調が、厳しくないことが逆に辛かった。
「いいのよ、今さら責めているわけじゃないもの。  
でもね、そういう人の努力を知らないでいて、  

『一緒に暮らして欲しい』って言うのは
都合が良過ぎるの。  
第一、お義母さんは同居を望んでないでしょ」
「う、うん」幸恵は、席を立つと番茶を淹れた。
貴臣の前にも湯呑を置く。
ほんの10秒ほどが、何十分にも思えた。

沈黙の中、電話が鳴った。
トゥルルル、トゥルルル。
その場の空気から逃げるようにして受話器を取った。
「はい」 「ああ、貴臣だね」
「お母さん」からの電話だった、
「ちょっと、幸恵さんと代わってくれない?」
「いいよ、ここにいるから」
貴臣は、電話を幸恵に代わった。

「こんばんは、お義母さん・・・
は、はい。いいえ、いつもの気持ちです。  
はい、はい。いいえ、とんでもない。
元気ですよ・・・はい。じゃあお休みなさい」
それだけ言うと受話器を置いた。
「何だって、オフクロ?」
「・・・」またまた沈黙。
貴臣は、小さな声で、もう一度訊いた。
「何か特別なことか?」

「仕方がないわね・・・いい機会だから、
ちゃんと話してあげる。
お義母さんから私にね、お礼の電話なのよ」
「お礼?」
「そうお礼。毎年ね、お義父さんにね、
バレンタインデーの日にはチョコレートを
贈っていたのよ。でも、亡くなったでしょ。
だからね、仏壇にお供えしてもらおうと思って、
今年もチョコレートを贈ったのよ。  
お義母さんがね、
『お父義さん、天国できっと喜んでるわよ』って、
そういうお礼の電話なの。わかった?」

そう言うと、幸恵はキッチンの棚から、
一つの小さな包みを持って来て、
貴臣の前にそっと差し出した。
「はい、あなた」それは、神戸に本社がある
洋菓子屋さんの包装紙だった。
「責めてるわけじゃないからね、
わかって欲しいだけなの」
「食べてもいいかな」
「うん、コーヒー淹れましょうか」
「ああ、・・・いや、オレに淹れさせてくれ」
「じゃあ、お願いしようかな」
「一緒に食べてもいい?」
「も、もちろん」
コーヒー・カップの湯気の向こうに幸恵に言った。
「オヤジのこと、ありがとう」
「うん」 「それから・・・オフクロのこと、
これからもよろしく」
「もちろん」
貴臣の口の中で、チョコレートがトロリと溶けた。
とても、甘くて少し苦くて、切ない味がした。


Author :志賀内泰弘



【お母さんの優しい手】



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R

きれいなお風呂・宣言

お風呂物語






信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。




漢の韓信-48 章邯を討て!

軍の首脳部に激震が走った。
韓信が逃亡したから、ではない。
急を告げる使者の口上に、漢王劉邦は
卒倒しそうになった。
「蕭何が逃げた、だと!」
劉邦は深く嘆き悲しんだかと思うと、
次の瞬間には怒気を発し、
そうかと思えば自嘲的に笑ったりした。
事の重大さに、情緒不安定になってしまったのである。

それを周囲の者がたしなめようとすると、
劉邦はその者たちを激しく、口汚く罵る。
「お前らのような役立たずが何人いなくなっても
いっこうに構わん。
この中に蕭何の替わりになるような奴が居るはずもない。
まったく、どいつもこいつも能無しばかりだ……
くず共め!」ついにはおいおいと泣き出した。

このようなとき頼りになる張良は間が悪く韓に戻っており、
この場には居ない。
周囲の者はおろおろするばかりで、
劉邦を落ち着かせることができず、
仕方なく彼らなりの結論を出した。
「どうしようもない……しばらく、放っておけ。
それしかなかろう」
劉邦はひとり残され、しばらく泣いたり、
喚いたりしていた。
周囲の者はそれを遠巻きに眺め、
いよいよ狂ったのではないか。と、
人ごとのように思ったのだった。
しかし、漢軍に差しせまった緊張感は、あまり見られない。

劉邦を見る士卒たちの目は、
さながら世にも奇妙な珍獣を見るかのようで、
その反応を楽しんでいるかのようでもあった。
本当に心配しているのは劉邦ただひとりで、
実は士卒たちは誰も蕭何が本当に逃げ出すなどとは
思っていなかったのである。

翌朝になると、それを象徴するかのように、
蕭何は何喰わぬ顔で戻ってきた。
「大王、お顔の色がよくありませぬな。
ゆうべはよく眠れましたか?」
漢王は憔悴しきっていて、
それが誰の声か瞬時に判別できなかった。
「あ? いや、あまり眠れんかったわい。
……誰だ? 蕭何ではないか! 
戻ってきたのか! いや、よく戻った」

劉邦は蕭何の肩を抱き、喜び叫んだが、
そのいっぽう、「お前、わしを置いて逃げようとしたな! 
よくもおめおめと戻ってきたものよ。
断罪する! 死刑だ!」と怒ったりした。
劉邦の情緒不安定は、
蕭何が戻ってきても完全に治ったようではなかった。
蕭何はそれを他の士卒のように
放っておくわけにもいかず、
適当になだめながら真相を語り始めた。

「大王、私は逃げたわけではありません。
逃げた者を追った、それだけのことです」
劉邦は、そうか、と言うと、
ようやく気分が落ち着いてきたようであった。
「では、誰を追ったのか?」
「韓信です」劉邦はそれを聞き、いよいよ怪しんだ。
「蕭何、お前、わしに嘘をついているな。
今まで諸将が何人も逃亡しているのに、
お前は追わなかった。それなのに、
その韓信とかいう、わしが覚えてもいないような者を
追うはずがない。

お前はなにかわしに隠し事があって、
そんなでたらめを言っておるのだ」
蕭何は劉邦の態度にあきれた。
何度か名前を出して推挙しているのに、
劉邦は韓信のことを覚えてさえもいない。
気力が薄れ、心ここにあらず、ということだったのだろう。

それはそれで理解できることではあった。
「大王……。諸将など何人逃亡しても、
替わりの者はいくらでも養成することができます。
しかし韓信などは……

国士無双

(

こくしむそう

)


(天下に二人といない国士)の存在です。
替わりはいません。

王がこのまま漢中の王たるに留まるのであれば、
韓信のごとき士は必要ないでしょう。
ですが王が天下を望まれるなら、彼は絶対必要です。
韓信という男の必要性は、
王が天下を望むか、望まざるか、
それにかかっているのです」
劉邦はまだ迷っていた。ろくに名前も覚えてもいない男に
大事を任せてよいものかどうか、
日頃無責任に部下に任せきりのこの男でも
心配したのである。

「用いれば韓信は留まります。
しかし用いなければ、彼はまた逃げ出して、
楚や斉のものになってしまうに違いありません。
大王には、それでもよろしいか」
畳み掛けるように言葉を継ぐ蕭何に、
ついに劉邦は折れた。
「……お前がそこまで見込んだ人物であれば、
お前に免じて韓信を将軍にしてやろう」

ところが蕭何は首を縦に振らなかった。
「不十分です。それでは韓信は留まりますまい」
驚いた漢王は、やけくそになって言った。
「では、大将にしよう。大将軍だ!」
蕭何はこれに満足し、言った。
「結構です」「そうと決まれば、
さっそく任命しよう。

韓信をこれに召せ。印綬を用意せよ。それと……」
漢王は久しぶりに王らしい振る舞いを見せたが、
蕭何はこれを遮った。
「大王。それではいけません。
大王はもともと傲慢で礼もわきまえませぬ……。
私どもにはそれでも構いませんが、
韓信は頭の良い男でありますゆえ、
自尊心も高いのです。
王がそのように子供に物をくれてやるような
態度で臨まれるのであれば、
韓信は失望してやはり去ってしまいましょう」

「なにを言うか。名より実であろう。
儀礼などくそくらえ。
どのみち大将を任じることには変わりないのだ」
「さもありましょうが、韓信は野蛮を嫌う傾向があります。
どうか文化的に、吉日を選んで
王ご自身が斎戒なさって、壇上を設け、
礼儀を尽くしたものとしてください。
そうした方がのちのち漢軍の
評判のためにもよろしいでしょう」

「くだらん……しかし、そういうものか」
劉邦は蕭何の評の通り、
傲慢で礼もわきまえない男であるが、頑固ではない。
このときも蕭何の意見をあっさりと受け入れ、
斎戒し、充分に儀礼を尽くして任命の日を選んだ。

やがて南鄭に着いた漢軍の最初の儀礼が、
大将の任命式だった。
諸将はみなそれぞれ自分が任命されるものと期待し、
うきうきとした空気が全軍に流れている。
しかし実際に任命式が執り行われると、
拝命したのは韓信という名も知られていない、
顎髭もたくわえていないような若者であったので、
軍中の誰もが驚愕したのだった。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



おまえに惚れた- 美空ひばり




人の為(ため)と書いて
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誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
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2015年5月13日 (水)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
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信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

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Author:紀之沢直

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韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
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漢の韓信-47 章邯を討て!


韓信が大将軍に任じられた経緯は、
かなり突飛なものであった。
それまで目立った功績をあげたことのない人物に
そのような責任ある地位が与えられたという事実は、
人類の歴史を通じて、あまり例がない。
このことを意外に思わない人物がいたとしたら、
おそらくそれは推挙した蕭何と、
韓信本人だけであっただろう。
任命した劉邦でさえも自分の決断に
自身が持てなかったに違いない。
しかし、韓信は与えられた責務を過不足なくこなした。
長く頭の中で練り上げた戦術を実行に移した彼は、
ついに歴史にその名を刻むこととなる。

「死ぬとは思っていませんでした。
どうしてああも簡単に自害することができるのか、
不思議でなりません」
韓信は蕭何に胸の内を明かした。
これに対して蕭何は次のように答えた。
「死ななければ、お前に殺されると思ったのだろう。
それだけの話だ。……
ところで、かの者が刺客であるという確証を
お前はどうやって得たのか?」
韓信は苦笑いして答えた。
どこか、自嘲的な笑いである。

「確証という確証は何も……。
かの者が范増老人の麾下にいたことは事実です。
それにほかの兵たちの中には、
かの者がどこの部隊で誰の配下に
属すのかを知る者が誰もおりませんでした。
怪しいと思ったので、あの場で問いつめれば
なにか白状する、と思ったのですが……
死ぬとは思いませんでした」

「お前の勘が正しかった、ということだろう。
素晴らしいことだ」蕭何は賞賛したが、
韓信は素直に喜べない。
「よしんば、かの者が真の刺客だったとしても、
私はあの場で漢に帰順させるつもりでいました。
だいたい想像はつくのです。
かの者が范増老人に家族を人質に取られて、
意に添わぬ命令をされた、ということは……。
范増とはそういう人です」

蕭何は穏やかな笑みを浮かべ、
失意の韓信をなだめるように言った。
「それはもう今となっては誰にもわからん。
とにかく、見事な働きぶりだった」
韓信は桟道を焼くことによって、
兵の逃亡をとめ、軍糧の流出を阻止し、
刺客を始末することによって、
離れかけた兵たちの心を繋ぎ止めることに成功した。
そして、桟道の焼失が将来の
戦略的意味を持つのはこれからである。
あるいはこの男なら、やれるのではないか。
蕭何は韓信を評してそう思い、
劉邦に推挙しようと考えた。

思慮の深さ、味方を欺くかのような突飛な戦略、
そして不思議な勘の鋭さ……。
どれも素晴らしいものではあったが、
能力うんぬんより蕭何は韓信を気に入った、
と言ったほうがいい。
賞賛されるべき功績を上げておきながら、
本人は反省ばかりしている。
この時代に闊歩する、武勇を鼻にかけてばかりいる
豪傑どもに見せてやりたい態度であった。

そう思った蕭何は漢軍一行が
南鄭についに到着したのを機に、
劉邦に韓信を推挙した。
しかし良い結果は出なかった。
それは劉邦自身が都落ちに気落ちしていて、
新しいことを始める気力がなく、
新たな人事を執り行う必要性も
感じなかったことによる。
「落ちぶれた軍に、必要なのは安息の地のみよ。
わしはこの先巴蜀で寝て暮らすぞ」と
うそぶいた劉邦は、蕭何が来ても面倒くさがって、
ろくに相手もしなかったのである。
これを知った韓信はひそかに軍を離れた。
南鄭に至れば東の諸国と往来が
可能になることをいいことに、
兵の逃亡を抑えるべき自分自身が逃亡したのである。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



昭和流れうた_ 大川栄策




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
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時は絶えず流れ、
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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語




2015年5月12日 (火)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
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Author:紀之沢直

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韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。




漢の韓信-45

桟道では車を使えないので兵たちは
徒歩でこれを渡るが、苦労したのは
荷物の運搬であった。
荷車も使えないし、馬や牛も
桟道を通ることができなかった。
このため確保している軍糧を各人が担いだり、
背に負ったり、あるいは手に持って歩くしかない。
これは大変な重労働であったことは確かだが、
逃亡を考えている者にとっては逆に都合がよかった。
自分が手にしている軍糧が逃亡中の
腹を満たしてくれることになるからだ。が、
だからといって持たせないわけにもいかず、
これをいいことに逃亡者が相次ぎ、
その度に軍糧が目減りしていくのだった。

蕭何からこの問題の解決を命じられた韓信は、
翌日の朝には蕭何に策を示した。
「何? 桟道を焼く、だと!……
それは軍師の張良が主張していたことと同じだ」
驚いた蕭何は目を丸くした。
「そうですか。一晩考えてやっと出した
結論だったのですが……
すでに考えられていたこととは、
世の中には頭のいい人もいるということですね」
韓信は少し残念そうな顔をした。

「しかし、案を出した張良は韓に戻っていて、
この場にはいない。
漢王は張良がいないことで先が読めず、
実施をためらっておるのだ」
蕭何には目の前の男が策士と呼び声の高い張良と
同じ意見を主張するのが興味深く感じられた。
もしかしたら、この男も策士かもしれない。

「詳しく話せ」「……軍糧を守るためには、
兵卒に軍糧を持たせないことが最善ですが、
現状を考えると、そういうわけにはいきません。
また、信頼できる者だけに
軍糧を運ばせるわけにもいかず、
どうあっても軍糧は兵が運ばねばならない。
では、兵が逃亡できないようにすればいい、と
思ったまでのことです」

蕭何は聞く。「しかし、それでは我々は本当に
巴蜀の山々に閉じ込められる形になってしまうぞ。
お前は天下のために働きたい、と言った。
桟道を焼いてしまっては天下への道が閉ざされてしまう」
韓信の表情が、明るくなった。
ここ最近では珍しいことである。
「桟道を焼く目的は、実は二つあります。
ひとつは兵の逃亡の意思をくじくため、
もうひとつは項王や関中の三王
(章邯、司馬欣、董翳)に、
我々に再び関中を目指す意志がないことを示すためです。

桟道が焼かれたとあっては、
彼らは安心するに違いありません。
そこに油断が生まれます」蕭何はため息をついた。
「それこそ張良が主張していたことと同じだ……。
しかし、焼いてしまったあとのことは考えているのだろうな。
わしとしては漢軍がこのまま巴蜀にとどまることを
良しとしているわけではない」

韓信は力を込めて話した。
「もちろん、反転はします。
あくまで、私の腹づもりですが。
桟道が焼かれたとしても、
山脈を迂回する麓の古道があります。
そこを使えば咸陽まで旅程は数十倍かかりますが、
馬や車も使える。
反転するにあたって大々的に桟道の修復を宣言すれば、
敵の目はそちらに注がれましょう。
その間に本隊は古道を使って
咸陽にひそかに侵入する……大雑把ではありますが、
これが私の戦略案です」

お前に戦略を考えろ、と言った覚えはない、と
蕭何は思ったが、これ以上ない、
妙案ではないか。と認めざるを得なかった。
蕭何は劉邦に奏上し、桟道の焼却の
裁可をもらうことにした。
「それと、もうひとつ、
気がかりなことがあるのですが……」
韓信は表情に懸念を浮かべながら、
もうひと言付け加えた。
「なんだ」「軍中に見覚えのある顔がいます。
注意しておきたいのですが……」
「好きにするがいい」このとき蕭何は、
韓信が自分の昔なじみが軍中にいるので、
親交を深めたいと言っていると思ったに過ぎなかった。

韓信は行軍の最後尾に位置し、
兵たちが全員桟道のある一定の地点まで渡り終えるつど、
それを焼き続けた。
寸断するだけでことは足りるが、
すべて焼いたのは心理的な効果を狙ったものである。
そしてこれにより夜陰に紛れて桟道を逆行して
逃亡をはかろうとする者はいなくなった。
自然、軍糧も確保される。
韓信は蕭何に対しては株を上げたが、
その反面、逃亡を画策していた兵からは
恨まれることとなった。

そして兵たちの韓信を恨む感情が頂点に達したとき、
韓信は彼らを前に言葉を発した。
「桟道を焼いたのは、漢王の命により、
侵入者を拒むためのものである。
漢王は項王に厚遇されているとはいえず、
いつ刺客を送り込まれても不思議ではない。
お前たちが、漢王の生命より
自分の生命が大事だといって逃亡をはかるのならば、
それもよし。
そのような者は我が軍には不必要である。
ただし、逃げるのであれば軍糧は置いて、
身ひとつで逃げ出すのだ。軍糧は必要である」
兵たちは、この言葉を疑った。
人がひとり通れるような桟道の中に
あとから刺客が紛れ込むのは不可能だ、と
思ったからである。

そもそも焼いたあとに逃げてもいいなどと言われても、
今さら逃げようもない。
兵たちは韓信を小馬鹿にした態度をとった。
しかし韓信はそれに動じず、言葉を継いだ。
「刺客は我々が咸陽を発つときから、
すでに潜入している。
その者は、今この中にいるのだ!」
韓信の視線はある男の面上に注がれていた。
兵たちの視線もその男に集中した。

「……お前は楚軍にいた男だな。
范増の配下にいたことを私は覚えている。
お前ひとりか? それとも仲間がいるのか? 言え!」
韓信はその長剣を抜き、せまった。
しかし男は押し黙り、何も答えない。
やがて男の顔に脂汗が浮かび始めた。
すると兵たちが韓信に同調して、その男を取り囲み、
無言の圧力を加え始めた。
圧迫に耐えかねた男はやがて意を決したかのように
脇の下から匕首を取り出すと、
目にもとまらぬ早さで自分の喉元を刺して死んだ。

あっという間の出来事だった。
その死が美しいか、それとも醜かったか
韓信には判断がつきかねたが、
劇的であったことは間違いない。

つづく

Author :紀之沢直
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愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...


火の国の女 坂本冬美



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誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
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お風呂物語





妄想劇場・番外編

妄想劇場・番外編
 
  信じれば真実、疑えば妄想……
 
  昨日という日は歴史、
  今日という日はプレゼント
  明日という日はミステリー

 

 
  落語の原型とも言われている
  江戸小咄は、 江戸時代の
  庶民の楽しみとして広く伝わって
  おおらかに性を笑いに取り入れて
  現代にまで至っています。
  お色気小咄は日本だけではなく、
  外国にもあります、西洋小咄です

 
 
  念入りに
  五つになる子供をつれて、ある百姓が、
  町の市場へ牛を買いに出かけました。
  市場につないである牛を、彼は一頭ずつ、
  念入りにしらべました。
  手で、牛の背中をなで、毛並みのぐあいをみたり、
  横腹のあたりをつまんで、
  肉づきのよさをためしたり、
  乳をこちょこちょとやって、
  精がついているかどうかを、見たりしました。
 
  「お父ちゃん、いちいちどうして、
  そんなことするの?」
  「そりゃ、おまえ、物を買うときには、
  すみからすみまで、念を入れてしらべてみないことには、
  とんだクズものをつかまされては、
  こっちの損だものな。
  おまえも、ようくおぼえておきな」
  子供は、だまって返事をしませんでした。
 
  しばらくして、子供は、何か確信でも持ったかのように、
  父親にむかって、いいました。
  「お父ちゃん、うちのお母ちゃん、
  もう、ずっと前から売りに出されているんだね」
  まさか、人間が売り出されるなんて、
  そんなバカな・・・どうして、また、
  そんなことをきくの?」
  「だって、こないだ、近所のおじさんが、
  お母ちゃんを、とっても念入りにしらべていたよ」
 
 
 
  チケット
  かわいいスターのマリリーンを、
  一晩、五百ドルの約束で、寝室に連れこんだスミス君、
  ぜったいにつかれを知らないのです。
  そして、そのつど、トイレへ・・・。
 
  マリリーンは、びっくりしてしまいました。
  もちろん、顔を見られるのが恥ずかしいので
  、電灯は消してあったのです。
  あまりのたくましさに、さすがのマリリーンも、
  あきれはてて、「ねえ、スミス。
  あなたはどうして、こんなに?」と、きくと、
 
  「おれは、スミスじゃねえよ。
  スミスのやつは、ドアのそとで、
  一回百ドルでチケットを売ってるんだ」
 
 
 
  独身女史
  ユトレヒトの独身クラブ会長メケラ女史の家で、
  独身クラブ総会があった。
  会議が深夜におよんだので、
  会員のオット君は女史の家へ泊めてもらうことになった。
  ベッドに入ってからトイレに行きたくなったが、
  場所がわからない。
 
  そこでオット君はおそるおそる寝室のドアを
  ノックして呼んだ。
  「メケラ先生、メケラ先生・・・」
  中から女史の声がきこえて来た。
  「シーッ、静かに・・・。
  いま、カギをあけるから・・・」
 
 
 
おあとは、よろしいようで…
 
 
  みつお

 
人の為(ため)と
  書いて
  いつわり(偽)と
  読むんだねぇ

 
 
 
  誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
  誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
  ただ、黙っているだけなんだよ、
  言えば愚痴になるから……
 

 

  歌は心の走馬灯、花に例えた古い歌
  今さら聞いても仕方がないが
  何処に置いても飾っても
  歌も花も、枯れてゆく
  …人生、絵模様、万華鏡…
 

 
18禁 「 氷雨」
 
 
 
 
  時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる
 

 

 
 
 
 
 
 
  ふろ
  P R

 
きれいなお風呂・宣言

お風呂物語

 
 
 
 
 
 

2015年5月11日 (月)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

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韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
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漢の韓信-45

韓信にとって夏侯嬰などは、話の相手にもならない。
頭の作りが違うようであった。
しかし内心でそう思っていても、態度には示さない韓信である。
生涯御者として馬と劉邦の世話をして過ごしてきた夏侯嬰に対し、
韓信は粘り強く、相手が理解できるまで自分の考えを聞かせてやった。

「項王が敵を破る度に敵地の住民まで巻き添えにしたり、
今回のように徹底的に宮殿を焼き尽くしたりするのには、
わけがあります……。項王は、基本的に他者を
信頼していないばかりか、
人同士はわかり合えないものと考えており、
自分の思いが他者に通じないことを嘆いている節があります。
どれだけ高尚な意識をもって敵地の住民を鎮撫しようとしても、
それが通じることはない。
なぜかと言うと、彼らにとって項王は敵だからです。

私が思うに、項王には今の行動に至る
原体験があるに違いないのです。
それがどういうものかは存じませんが、
それ以来項王は敵地を鎮撫することを無駄な努力と考え、
徹底的に弾圧するようになったと思われます。
我々は、項王と反対に民心を安んじ、
支持を得ることに重きを置かねばなりません……」

夏侯嬰には、韓信の言うことの半分も理解できなかったが、
それでも自分と頭の作りが違うことだけは理解できた。
面構えばかりではなく、なかなか頭のほうも切れる奴だ。
夏侯嬰はそう感じ、漢王劉邦に
韓信を取り立ててやるよう奏上した。推挙したのである。

この結果、韓信は

治粟都慰

(

ちぞくとい

)

という
軍糧や財貨を管理する官に任じられた。
ああ、先生、やはり駄目だ! 
世の中には私という者を正しく見極めてくれる者が
いないようです。この私が治粟都慰などと……。
料簡違いも甚だしいとは思いませんか。
ただでさえ惜しい命を捨てる覚悟をしてまで
乱世に身を投げ出したのに、
財物の管理をせよ、などとは……。
食料や金の管理がしたいのなら
最初から商人になっていますし、
兵の中にはその能力に長けた者もいるでしょう。
なぜ私が……。

韓信の不満は爆発寸前のところまで来ていた。
軍糧や財貨の管理の仕事は、いわゆる後方職務である。
劉邦の軍のなかで、この職の最高責任者に当たる人物は、
蕭何であった。漢軍の最重要人物のひとりである。
劉邦は平民として生まれ、若いころは家業の手伝いもせず、
沛の街をぶらついて歩く単なるごろつきであったが、
劉邦の王としての性質をいち早く見出し、
ここまでもり立ててきたのが、蕭何その人であった。

蕭何はもともと沛の県吏であり、
謹直な人柄と職務に忠実なことで、人々の信頼を得ていた。
あるときには県令から中央の役人に
推薦されたこともあるくらいである。
また、沛の街が戦乱に巻き込まれようとしたとき、
民衆の中には劉邦ではなく蕭何を首領として
戴こうと主張した者もあった。
しかし蕭何はそのいずれも固辞し、
劉邦を影で支え続けた。
咸陽が落城した際、他の者が宮中の財宝に目を奪われる中、
ひとり法典や史書を確保しに走ったという事実は、
彼の謹直さを物語ると同時に、
将来の漢の世を見据えた行動であった、といえるだろう。

しかし、蕭何は文官ではないか。
私は武官として身をたてたいのだ。
韓信の辛気くさい表情が、さらに鬱屈したものに変わっていった。
しかし、それを気に留めたものは少ない。
士気の低下した軍組織の中では、
誰もが自分自身のことしか目に入らず、
他人に気を配る余裕を持つものなどほとんどいなかった。
だが万事に気配りの利く蕭何だけは違った。
蕭何は顔色まで青ざめて見える韓信の姿を目に留めて、
ひどく気にかけるようになった。

見るからに悩める青年がいる。あれはなんという者か。
心配するのと同時に興味を覚えた蕭何は、
ある夜韓信を呼び寄せ、話し相手をさせた。
「君の顔色を見るに、ずいぶんと悩んでいる相が出ている。
その様子では、桟道の上から身を投げかねないぞ……。
思っていることがあるのなら、今のうちに話してみるがいい。
わしが君の力になれるかどうかはわからぬが、
人というものは思いを言葉にするだけでも
胸のつかえがとれるようにできているものだ。
どれ、聞いてやろう。

なにが悩みだ?」このときの韓信の言葉は、短い。
馴れない者に対しては、いつもそうである。
「自らの不遇についてです」
蕭何は笑ったりせず、話に付き合う。
「不遇とは……? もっと具体的に話したまえ」

「私は楚から漢に鞍替えした男です。
もともと楚軍では郎中に過ぎませんでした。
漢軍に身を置いてからは連敖、今に至っては治粟都尉。
どれも私にとって適職ではありません。
鞍替えした意味がない」
「君がどんな男かわからないのだから、仕方ないだろう。
人はみな経験を積んで一人前の男になっていくものだ。
その過程で自分自身を知り、
どのような職務が自分に合っているのか見つけるものだろう。
君はまだ若いわけだし、これからの働き次第では
出世も夢ではない」「それは、わかっています。
しかし悠長にそのような機会を待っているわけにはいきません。
天下の状況は刻々と変化し、
対応を誤れば、置き去りにされます。
座して機会を待つわけにはまいりません
。私は早く天下のために働きたいのです」
韓信は、言いながら、かつて栽荘先生に
叱責されたことを思い出した。
「座して機会を待つばかりでは、何も変えることはできない」
それが栽荘先生の言葉だったが、
いざ自分が待つことをやめて積極的になろうと思っても、
結局は何も変わっていない、というのが現状である。
そして蕭何が受けた韓信の印象は、
生き急いでいる若者、といったものだった。
しかし言っていることは正しい。
漢軍は天下の中心から外れ始めており、
このままいけば漢王は奥地に閉じ込められ、
兵たちは離散し、天下は項羽のもとに定まる。
その点は韓信の言う通りだった。
「治粟都尉として働くことも、
決して天下のためではないとは言えないと思うが……。
よろしい。君にひとつ機会を与えよう。
天下のために先頭にたって働くような男であれば、
治粟都尉の仕事も楽にこなせるはずだ。
その結果をもってわしが君を漢王に推挙する
判断基準とする。よいか」 
韓信は仕方ないとでも言いたそうな素振りを見せて、
渋々頷いた。
「そう面倒くさそうな顔をするな。
君がどんな男かわしは知らぬ。
知る機会を与えてくれてもよいではないか」
「……何をすれば、よいのでしょうか」
「我が軍は今、軍糧に不安がある。
というのも逃亡する兵士が多く、
その者どもがどさくさにまぎれて
軍糧を持ち去っているらしいのだ。
方法は問わぬ。
南鄭に到着するまでの間の軍糧を確保し、
守り通すのだ。
それができたら、漢王に推挙しよう」
「……はぁ、わかりました」
韓信の返事は気のないものだった。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...


黒あげは/秋岡秀治




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
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きれいなお風呂・宣言

お風呂物語





信じれば真実疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。




漢の韓信-44

剣を杖がわりに地に突きたて、威風堂々、
韓信は劉邦軍に身を預けた。
韓信は人に会う度に持論を展開し、
自分を売り込もうとはかったが、しかし、
応対した下級士官の中には韓信のいうことを
理解できる者はおらず、
いくら項羽の弱点や戦略的構想を話して聞かせても
まったく話が進展しなかった。
さらには韓信自身が一兵も指揮したことがないことで、
最初から軽く見られたということもあるだろう。
結局彼に用意されたのは

連敖

(

れんごう

)

という
貴人の接待係の地位に過ぎなかった。

栽荘先生、私はここでも浮かばれないかもしれません。
私は、郎中や連敖などの地位が欲しくて
乱世に身を投じたのではありません……
先生、私はどうすれば世に出ることができるのでしょうか……。
韓信の落胆は激しく、そのため気力も萎え、
次第に捨て鉢な気分になっていった。

しかし、それは韓信に限ったことではない。
この時期、劉邦軍全体が士気の低下に悩んでいた。
事実上の都落ちとして山奥の巴蜀へ
赴かねばならない立場の軍としては
仕方のないことだったろう。

ちなみに「巴」「蜀」はともに独立した地名である。
巴は現在の四川省重慶の周辺、
蜀は成都の周辺にあたる。
現在でこそ大都会の両都市ではあるが、
紀元前のこの時代では、開発などは進んでおらず、
おもに流刑地として使用されることが多かったのである。

咸陽から巴蜀に至る途中の漢中も
また地域名であり、

南鄭

(

なんてい

)

という城市が
その中心であった。
南鄭は周代より開発された歴史の古い都市であり、
秦の代になってれっきとした漢中郡の郡都とされた。
しかし咸陽から南鄭への道は山や川に遮られ、
人がひとり通れるような桟道しか設けられていない。
桟道は断崖に宙ぶらりんに設置され、
場所によっては人がカニのように横歩きしないと
通れないところも多い。
また、高所に築かれた桟道から下を臨めば、
生きた心地もしないものであった。

劉邦に与えられた土地は、そんな所であった。
しかし情勢を考えれば、嫌だと言って
関中に留まることなど許されず、受け入れるしかない。
劉邦は前途の多難さを覚悟しつつ、
漢中行きを決めた。

これにより、劉邦は今後漢王と称されることになる。
これが紀元前二〇六年のことであり、
この年が漢の元年とされた。
桟道には馬や車を通す余地はない。
漢王麾下の三万の兵士たちは
いずれも徒歩で荷物を背に負い、
不安定な桟道を風に煽られながら通るしかなかった。
何人もの兵士が無惨にも谷底へ落ちてく。
無駄死に、というよりほかなく、
自然、逃亡する者が相次いだ。
軍全体にやりきれない諦めの気持ちが充満し、
ささくれができ始めた感情は互いに衝突した。

こうして軍内は些細なことで揉め事が多くなったのである。
ある日、韓信と同じ連隊に所属する兵のひとりが、
普段からそりの合わなかった上官を
故意に谷底へ突き落とした。
新参者だった韓信は事情をよく知らされていなかったが、
その上官は常々部下の兵士に対する態度が傲慢で、
目に余るものだったらしい。
手を下した者はひとりであったが、
実際は連隊内の総意であった。
そこで兵士たちは犯人をかばい
、詰問されても容易に口を割ろうとはしなかった。
事態を重く見た幹部たちによって処断が下され、
韓信の所属するその連隊は全員斬首刑に
処されることが決まった。
連座制を適用されたのである。

一同は急場作りの刑場に引きずり出され、
順番に首を刎ねられていく。
処刑の立会人として、夏侯嬰がその場にいたのを
韓信は認めた。
すでに十三名の仲間の首が斬られ、
次に自分の番を迎えた韓信は、我慢できずに、
低い声ではあるが、しかし力強く訴えた。
「……主上(漢王、すなわち劉邦のこと)は、
天下を望まないのか。
大業を成就させたいと思うのであれば、
いたずらに壮士を殺すはずがなかろう。
しかし主上が天下を望まず、
この地でその生涯を終えるおつもりであれば、
斬られても仕方あるまい」

その声が夏侯嬰の耳に入った。
軍が順風満帆なときは、
気にも留めなかったかもしれない。
しかし士気が衰えているときは、
このような生意気な意見も力強く感じられた。
夏侯嬰は興味を示し、処刑人をとどめ、
韓信の前に立った。
「……お前、よく見るといい面構えをしているな」
韓信はしかしなにも答えない。
夏侯嬰はしばし考え、やがて得心したように頷くと、
周囲に向かって命令した。
「この者を釈放せよ!」


つづく

Author :紀之沢直
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美空ひばり 「ひばりの佐渡情話」
 


人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









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お風呂物語





2015年5月10日 (日)

チャンネル掲示板

チャンネル・ニュース

幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない


昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



自閉症の長男を風呂にいれた日

5歳の長男が自閉症です。
満足に言葉もしゃべれない・・・。
俺はこの子は諦めていた。
口で言っても解らないんだよ。
躾以前の問題だ。
療育センター、TEACHいろいろやったけど
あまり変化がなくて・・・。

なんか育てるのが辛くなってきて。
叩いて躾けるしかないって。
愛情もあるのかないのか・・。

反動か、2歳になる愛想のいい次男を
可愛がってばかりいた。
話し掛けるとニコニコ可愛い。
いっつも俺の後についてきて・・・。
散歩もこの子とばかり・・・。

ちょっと前のこと・・・。
長男を風呂にいれた日のこと。
いつもの様に長男は石鹸で遊んでた。
体を洗おうとしてもまるで反応なし。
口笛(?)を吹きながらシャカシャカ
石鹸を泡立ててる。

俺は内心うんざりしながら
子供の体を洗ってやった。
洗いおわって、子供を湯船にいれた。
一息ついて自分の髪を洗っていると・・・。
子供が背中をさすっているんだよ!
手を石鹸で泡立たせて。手だけで。
初めてだよ。なんで?
自分の体も洗えないのになんで?

驚いたけど・・・。なんでか涙がでたよ。
この子にしか見られてなかったけど、
シャワーで涙をかくしたよ・・・。

なんで俺の背中を流してくれたんだろう?
ほんの気まぐれなのか?
解らないけど・・・。ほんのちょっぴり、
この子の親になって良かったって思った。・・



自殺の前の一言


お母さんの「やさしい手」
原作 高橋 知里

2_2

病床にある祖父に対する
母のやさしい行為に
深い感動を覚えた
ひとりの少女が綴った作文
 

 

私達がややもすると
忘れがちな家族愛について、
あらためて考えさせられます。


おじいちゃんを家族で病院にお見舞いに
行った時のことでした。
おじいちゃんは今年72オ。
四年前に東京のガンセンターで大手術をしました。
このごろ時々、胸が苦しくなっては、
お母さんに手でさすってもらうようになりました。
おじいちゃんは目をとじて大きく息をしました。
突然おじいちゃんが苦しく吐きそうになりました。

「お父さん! だいじょうぶ?」
口元にさっとお母さんの手がいきました。
「お父さん。遠慮しんでも吐いていいよ。
手で受け止めてあげるから」
おじいちゃんは下を向いたまま
目には涙がたまっていました。

「おじいちゃん。
私の手のひらの中に出していいよ」
思わす私も差し出しました。
「ありがとう。だいじょうぶ」
そう言いながらおじいちゃんは
すっと下を向いていました。
帰りの車の中で、私は、
お母さんに言いました。
「お母さんは、えらいと思う。

おじいちゃんが『げえー』ってやった時、
ふつうの人だったら『コミぶくろ、ゴミぶくろ』って
言うと思うよ。自分の手を出すなんて、
できないと思う」
「何を言ってるの。おじいちゃんのものなら、
ちっともきたないって思わないよ」
「お父さんも、お母さんには頭が下がる。
実の親子でもなかなかできんね。
本当にありがとう。
おやじもよろこんでいたと思うよ」

お父さんは、お母さんの手をにぎりました。
「私もおじいちゃんのものなら、
なんとも思わないよ」
「できるかぎり、いっしょうけん命お世話して、
早くよくなるといいね」
お母さんが、おいのりするように言いました。

8月11日、とうとうおじいちゃんは、
なくなりました。
お母さんの手に、何度も、ありがとう…
ありがとう…と言っていたおじいちゃん。
天国できっとお母さんの手を
思い出してくれていると思います。




おじさんと女子高生の会話




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2015年5月 9日 (土)

歴史・履歴への許可証

歴史・履歴への許可証
 
 
昨日という日は歴史、
  今日という日はプレゼント
  明日という日はミステリー

 

Douwa_2




 
  生まれ変わりのしるし
  那賀郡田中村(→今の和歌山市)というところに、
  赤尾長者と呼ばれる長者がいました。
  長者には子どもがいませんでしたが、
  ようやく玉の様な男の子が生まれたのです。
  長者は子どもに万年も生きてくれる様にと
  願いを込めて亀千代(かめちよ)と言う名前をつけると、
  子どもを毎日はかりにかけて体重が少しずつ
  増えていくのを楽しみにしていました。

 

Akago_2
  そんなある日の事、
  長者が亀千代の
  体重を測ろうとしたとたん、
  はかりのひもがぷっつりと切れて、
  亀干代は地面に頭をぶつけて
  死んでしまったのです。

 
 
 
  最愛の子どもを亡くした長者夫婦は、
  一晩中泣き続けました。そしてふと、
  死んだ子どもの手のひらに名前を書いておけば、
  生まれ変わったところがわかるという
  言い伝えを思い出したのです。
 
  長者はさっそく筆をとると、
  亀干代の左の小さな手のひらに、
  《赤尾長三郎の一子、亀干代》と、
  書きつけました。
  「いいか、亀干代。いつまでも待っているから、
  必ず生まれ変わって来いよ。
  もう一度お前を、抱かせてくれ」
  長者は何度も言い聞かせてから、
  小さなお棺のふたを閉じました。
 
  それから数年後のある日、
  小さな赤ちゃんをおぶった若い夫婦が、
  赤尾長者を訪ねて来ました。
  長者夫婦がその赤ちゃんを見てみると、
  左の手のひらに《赤尾長三郎の一子、亀干代》と
  書きしるした文字が、はっきりと
  現われていたのです。
  「こっ、これは・・・」驚く長者夫婦に、
  若夫婦が言いました。
  「この文字は、この子が生まれた時からありました。
  何度洗っても文字が消えないので、
  お寺の和尚さんに相談したところ、
  『この子は、赤尾長者の子の生まれ変わり。
  この文字はどんなに洗っても決して消えないが、
  以前に生まれた家の井戸の水で
  洗えば消えるだろう』と、言われました。
  そこで、お水をいただきにまいりました」
  長者夫婦は赤ちゃんを抱きしめると、
  涙を流して頼みました。「一生のお願いや!
  この子を、わしらにくださらんか。
  お礼なら、なんぼでもしますから。
  何なら、この屋敷を差し上げても良い。
  どうか、亀千代の生まれ変わりである
  この子をわしらに 」
 
  若夫婦は長者夫婦の涙にもらい泣きしながらも、
  きっぱりと断りました。
  「お気持ちはわかります。ですがこの子は、
  わたしたち夫婦の宝です」
  「・・・わかりました。
  もう一度我が子が抱けただけでも、本望です」
  長者夫婦はあきらめると、
  若夫婦に井戸の水を差し出しました。
  若夫婦がその水で赤ちゃんの手のひらを洗うと、
  今までどんな事をしても消えなかった文字が、
  すーっと消えたということです。

 
  おしまい
 
 
  ゼウスとサル
 
 

Tonosama_2
  ほら吹き甚兵衛
  むかしむかし、あるところに、
  甚兵衛(じんべえ)という
  ほら吹きがいました。


 
 
  ある日の事、「大変だ! 大変だー! 
  この先の池で、お殿さまが死んでいるぞ!」と、
  甚兵衛が大声で言うので、
  それを聞いた殿さまの家来たちが
  かけつけてみると、
  池には殿さまガエルが一匹死んでいるだけでした。
 
  「なんとも、悪質なほらを! 許さん!」
  家来たちは甚兵衛を捕まえると、
  お城に連れて行きました。
  ところが殿さまは怒るどころか、
  その話しを聞いて大笑いです。
  「よいよい、なかなかおもしろい男じゃ」
  殿さまは楽しい事が大好きで、
  ほらも立派な芸の一つと考えています。
  「甚兵衛とやら、よければ城にいる
  三人のほら吹き名人と、
  ほら比べをしてみないか? 
  勝てたなら、ほうびをやろう」
 
  こうして甚兵衛は、殿さまの前で
  ほら比べをする事になりました。
  呼ばれた三人の家来は、
  いつもほらの勉強をしているので、
  ほらがとても上手です。
  「ふん、こんな田舎者(いなかもの)に、
  我々が負けてたまるか」
  三人とも、怖い顔で甚兵衛をにらんでいます。
 
  「では、まずわたしから」
  一番目の家来が、言いました。
  「わたしの国には、一万年もたった
  大きな木があります。
  枝は国中に広がっていて、
  雨が降ってもカサがいりません」
 
  次に、二番目の家来が言いました。
  「わたしの国には、富士山をまたいで
  日本中の草を食べてしまう、
  とても大きなウシがいます。
  琵琶湖(びわこ)の水なんか、
  ひと飲みでなくなってしまいます」
 
  続いて、三番目の家来が言いました。
  「わたしの国には、海で顔を洗う
  大男がいます。
  大男が海の水を手ですくうたびに
  洪水(こうずい)が起こり、
  国中の家が流されてしまいます」
 
  それらのほらを聞いた殿さまは、
  大喜びです。
  「よいよい、三人とも、
  なかなかのほらじゃ」
  殿さまにほめられて、三人の家来は
  自慢げに胸を張りました。
  「さて、甚兵衛。お前のほらはどうじゃ
  」殿さまの言葉に、三人の家来が
  甚兵衛を見つめました。
  甚兵衛がどんなほらを吹いても、
  けちをつけるつもりです。
 
  「はい、では」甚兵衛は座りなおすと、
  殿さまの方を見て言いました。
  「わたしは、胴のまわりが三百里もあって、
  たたけば世界中に鳴りひびく
  大太鼓を作りたいと思います」
  「そんなに大きな太鼓を、
  どうやって作るのだ?」
  家来の一人がたずねると、
  甚兵衛が答えました。
 
  「まず胴は、一万年もたった大きな木で作り、
  太鼓の皮は富士山をまたぐウシの皮を張り、
  それから海の水で顔を洗う大男に
  太鼓をたたかせます」
  「・・・・」「・・・・」「・・・・」
 
  このほらには、三人の家来も
  けちがつけられません。
  甚兵衛のほらは三人のほらを
  うまく使っているので、
  甚兵衛のほらにけちをつけるのは
  自分たちのほらにけちをつける事に
  なるからです。
 
  その三人の様子を見た殿さまは、
  手を叩いて言いました。
  「見事! ほら吹き比べは、
  甚兵衛の勝ちじゃ!」
  ほら吹き比べに勝った甚兵衛は、
  殿さまにたくさんのほうびをもらいました。

 
 
おしまい
 
 
  ヘビとカニ
 
 
 
  人の為(ため) と書いて、
  いつわり(偽) と読むんだねぇ
 
  誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
  誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
  ただ、黙っているだけなんだよ、
  言えば愚痴になるから。

 
 
  時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる

 
 
 
 
 
 
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信じれば真実、疑えば妄想

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信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。




漢の韓信-43
項羽はついに関中へ達し、天下に覇を唱えた。
しかし韓信はこのとき、楚軍の中での
自分の存在に必要性を感じなくなり、漢に出奔する。
彼は自分の可能性にかけた。
だが、彼も人の子であった。
自らの判断の正しさに確信が持てなかった彼は、
漢軍内においても自身の必要性を感じることができずに、
無為な日々を過ごすのであった。
しかし、それでもなお眼力のある人々は、
彼の中に大きな輝きを見出したのである。
まったく、人を導くのはやはり人であるということを
示すよい事例だと言えよう。

鴻門での会見の結果を受けて、
項羽は咸陽への入城を開始した。
総勢四十万の項羽率いる楚軍が、
雪崩を打ったように関中へ侵入し、
先々の都市を飲み込んでいく。
沛公軍の面々は、少し離れた覇上という地から
その様子を眺めることしかできなかった。
項羽の征服の仕方は凄まじく、
有益なものはすべて接収と称して略奪し、
そして取りあげるものがなくなると、
都市ごと火をつけて焼き払った。
秦の民衆はこれに失望したが、
やはりできることは何もなかった。

やがて咸陽に到達した項羽は、
士卒たちが財物を漁り、
宮女を追いかけ回すのを止めようともせず、
なすがままに任せた。
かつての帝都は、欲望を抑えることのない
人の姿をした鬼によって支配される現世の地獄と化した。
この略奪、蹂躙こそが勝利の証であった。
敗者には何もくれてやらない。
温情を施しでもしたら、のちのち彼らは叛逆する。
情けは無用、徹底的に破壊し尽くし、
人民どもを屈服させることが重要なのである。
これが戦国時代の論理であった。

項羽はこの論理に忠実に基づいて行動し、
まず始めに秦王子嬰を有無を言わさず殺すと、
広大な咸陽宮および阿房宮から金銀財物を奪った。
奪い尽くすとこれに火を放ち、
後々の利用価値など考えず、残さず焼き尽くした。
火は大火となって燃え広がり、
あえて消火しようとする者もいなかったので
その後三か月に渡り燃え続けたのだった。
残さず焼き尽くすくらいなら、
沛公にくれてやってもよかったのではないか……。

韓信は眼前の炎を眺めながら、そんなことを思う。
どだい項羽の目的は、
秦を自分の手で滅ぼすという名誉欲しかない。
次の世をどう築いていくか、などという考えは
まるでないのだ。
関中は峻厳な山々に囲まれ、守りやすい。
そのうえ中原を見下ろす高台に位置しており、
攻めやすい。
当時の中国大陸の中心から大きく
西に偏った位置にありながら、
秦が天下統一を果たし得た要因として、
その地理的優位を除外することは不可能である。
項羽は、それをわかっていない。

この地を抑えずして、どうやって
天下を望むことができよう。
天下を望みながら、その方法を知らぬ、ということだ。
韓信が楚を見限ろうと決心したのは、
あの日鴻門で樊噲の姿を見たときが
きっかけになっている。
主君のためにあれほどの気迫をもって
突入をはかった樊噲の姿……。
あれほどの忠臣は見たことがない。

私もあの武人のように誰かを守ろうとして戦いたいものだ。
もしかすれば沛公とは私をそのような気にさせてくれる
存在なのだろうか……。
すくなくとも項羽は、そのような存在ではなかった。
項羽は自分の身は自分で守れるからである。
よって彼は第三者の意見を、あまり聞かない。
守る価値がないというよりは、その必要がないのである。

関中がどれほど重要か説いたところで、
項羽は聞く耳を持つまい。
すでに咸陽が焦土となった今となっては、
もはや説いても無意味なことではあるが……。
そう思い、韓信は陣中を去り、楚軍を見限った。

しかし士卒たちはみな略奪に我を忘れ、
軍隊らしい規律など無きに等しい状態であったので、
韓信の逐電に気付いた者は誰もいない。
燃え盛る炎の熱が、わずかな地上の水分を蒸発させ、
それが上昇気流に乗って空に蓄えられた。
やがてそれが限界を超えると、
蒸発した水分は再び液体となり、
雨となって咸陽に降り注いだ。
乾いた黄土が雨に塗れ、色の濃さを増していく。

しかし、それでも咸陽の炎は消えることがなかった。
消えない炎は、あたかも人間の行為の
罪深さを象徴しているかのように思え、
韓信は逃げ出したくなる。
しかしどうにかそんな感情を抑え、
目の前の現実を受け止めようと、
彼は心の中でもがいた。


つづく

Author :紀之沢直
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愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



大阪ボレロ




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









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2015年5月 8日 (金)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……

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 昨日という日は歴史、

今日という日はプレゼント

明日という日はミステリー

採用試験『何かの間違い』…!!

 
朱音は、真顔で大熊を見つめ返した。
その表情が真剣だったからか、大熊は、
「会社の誰かに何か言われたのかい?」と尋ねた。
「いいえ・・・はい・・・大学の友達に・・・」
「ちょっと、こっちへ来なさい」
大熊は、すぐ近くの空いていたテーブル席へ
朱音を促した。
大熊には朱音の視線が、珍しく鋭く感じられた。

「あのね」 「はい」大熊はあぐらをかいて座った。
朱音は、正座して向き合っている。
「絶対に他言は無用だ、いいかい」
「絶対に他言は無用だ、いいかい」
「え?」 「誰にも喋っちゃいけない。
トップシークレットだからね」
「あ、はい」
朱音は、大熊が何を言い出そうとしているのか
想像がつかなかった。
しかし、自分が聞いてはならないことを
聞いてしまったのだと、反省していた。

「斉藤さんはね、特別枠なんだよ」
「特別・・・枠?」
「うん、社長がね、特別に推薦して採用する枠だ」
「そんなの変です。だって、私、コネもないし、
社長さんのことも知らないし」
「でもね、田中社長は、
少なからず君のことを知っているようだよ」
「まさか」

うちの会社はね、去年から
「特別枠採用制度」というのを設けたんだ。
面接の日にね、お弁当を
みんなで一緒に食べたろう。
そのときの「素行」が採用基準になってるんだ。
「どういうことですか?」
「これはさ、他で喋ってもらうと
今年から困ってしまうんで内緒にしてくれよ」
「は、はい」
「一つは、食べる前に「いただきます」と
「ごちそうさまでした」を言うか言わないか。  
いま一つは、箸を正しく持てるかどうか。
それだけできれば、合格。  
成績やその他の能力は度外視」

「そんなあ~、誰だってできるでしょ」
「ところが、ほとんどできない」
「それが私だったってことですか?」
「うん」
「嬉しいっていうより、ちょっとショックです」
「なぜ?」
「だって、成績やその他の能力は度外視だって。  
私、秘書課に配属になって、
毎日付いて行くのが大変なんです。  
いくら勉強してもミスばかりで・・・」
大熊は、少し考えあぐねていた。
言おうか言わまいかと。
「あのさ・・・斉藤さん。絶対内緒だよ」
「・・・はい」話にはまだ続きがあるようだった。

「君さ、覚えてるかな」
「何をですか?」
「最終の役員面接のときにさ、
控室を出たところのドアの前に落ちていた
紙屑を拾ったろう」
朱音は首を傾げた。思い起こすが記憶にない。
「覚えてないのかい」
「はい」
「あの時さ、ドアの前に落ちていた紙屑を
サッと拾ってさ、山田君に差し出したそうだね」
山田とは、人事部の若手男性社員だ。
面接室まで案内する係である。
「山田君から聞いているんだ」
「どういうことですか?」
「う、うん、それが君の
最大の採用ポイントになったんだからね」
「え?!」朱音は、何が何だか訳がわからなくなった。

大熊は、少しだけ酔いが覚めて来た様子で、
はっきりとした口調で話し始めた。
「実はね、食事のときの素行だけでは
選考できなくなってしまったんだよ」
「なぜですか?」
「君のせいだよ」 「・・・」
「君がさ、大声で、『いただきま~す』
なんて言うからさ、全員がつられて一斉に
『いただきます』って言うんだもの・・・。  
こっちの企みというかヨミは大外れさ」
「・・・」 「それでね、社長がさ、
急遽もう一つ課題を出したんだよ。  

控室を一歩出たところに、紙屑を置いておく。
誰かが落としたんじゃない。  
我々が置いておいたんだ。
それに気付いて拾い、  
すぐ近くに設置してあるゴミ箱に捨てるかどうか。
拾えばマル。そのままならバツ」
「そんなぁ~」
「ところがさ、君は我々の目論見の上をいったんだ。  

山田君が『そこのゴミ箱へ
捨てておいてください』って君に言うと、
君は、『ひょっとして大切なものだといけないので、
受け取っていただけませんか』って言ったそうだね」
「そうでしたっけ」
「おいおい、そりゃないよ」
「ちょっと思い出したかも」
朱音は思い出した。

それは、くしゃくしゃと丸まったコピー用紙だった。
何かそこにはワープロで文字が打ってあった。
その時、ふと頭に浮かんだのは、
ある一流ホテルの清掃係の人の話だ。
お客様の部屋を掃除するとき、
もし床にくしゃくしゃに丸まった紙切れが
落ちていても、 けっしてゴミ扱いはしない。
ひょっとして、
たまたまゴミに見えるだけかもしれない。
そっと、机の上に置いておくか、
既にお客様がチェックアウトされていたら、
何日か保管しておくというのだ。

朱音は無意識にそのマネをしていただけだった。
「社内にゴミなんて、
落ちていてもほとんど誰も拾わない。  
うちは食品メーカーだからね。
清潔であることが重要だ。  
人事としてはあまりこのことは威張れないけどね。  
だから、ゴミに気付いて拾うだけでも
素晴らしい・・・と社長が言うんだ。  
あくまで、社長がね。
しかし、君は、その上をいった」

その時だった。
「おい、大熊、何やってんだよ!」
振り向くと、秘書室長の佐藤がいた。
朱音の上司だ。
「おい、大熊、オレの可愛い部下に
何、説教してんだよ。
それも、こんなところでコソコソと。
おおっ、セクハラか?」
佐藤も相当に出来上がっている様子だった。
「バカヤロー、そんなんじゃない。・・・
でも、可愛いやつなんだよ、コイツはな」
「おお、それは認める」
「おお、だから秘書室に配属してやったんだ。
感謝しろ」酔っ払い二人のオジサンに挟まれて、
朱音は目頭が熱くなった。
佐藤が言う。「ああ、お前泣かしたな~」
「泣かしたのはお前だろう」
朱音は、明日から、もっともっと頑張ろうと思った。


おわり

Author :志賀内泰弘



【お別れ会 】



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








furo
P R




妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……  



昨日という日は歴史、

今日という日はプレゼント

明日という日はミステリー



採用試験『何かの間違い』…!!

斉藤朱音(あかね)は、
大手食品メーカーに勤めている。社会人1年目。
役員室の秘書室で働いている。
大学時代のサークル仲間4人で、
久しぶりに女子会を開いたとき、
一番仲の良いアサコから聞かれた。
「ねえねえ、役員秘書ってどうなのよ?」

別に、自分で希望したわけではない。
大学で秘書業務の講義単位を取ったことはなく、
もちろん秘書検定の資格も持っていない。
四月に配属されて、
当の本人がびっくりしたのだった。
「わからないことばっかりで、大変よ」

「そりゃそうよね」その言葉には、
嫉妬というかやっかみが含まれていることがわかった。
アサコは、成績抜群、容姿端麗。
アナウンサーになりたくて、
マスコミ研究会に入っていた。
周りの誰もが「女子アナ」になるのだと思っていた。
しかし、世の中はそんなに甘くはなかった。
関東キー局のテレビ局はもちろん、
地方局もすべて落ちた。

今は、親のコネで、小さな雑誌社に勤めている。
それに比べて、朱音は
自分が何の取り柄もないことを知っていた。
大学こそは同じだが、単位はギリギリ。
ちょっと太目で背も低い。
スポーツ音痴で、芸術もさっぱり。
大学時代に、一度も男の子と
付き合ったことがなかった。
本当はもっと勉強がしたかったが、
朱音が2年生のときに父親が急死した。
大学をやめることも考えたが、
社会人になっていた5つ上の兄貴が
学費の一部を援助してくれた。
それでも足りないので、
ずっとバイトに明け暮れていたのだ。

それなのに・・・。なぜか、
誰もが知る食品メーカーに合格してしまったのだ。
「私が聞きたいくらいよ」それが本音だった。
「そうよねー」 「うんうん」と、
ワイングラスを手に3人が頷いた。
朱音は、ちょっとだけムッとしたが、
本当のことなので仕方がない。
苦笑いして頭をかいた。

「本当に、社長のコネとかじゃないの?」
「ううん、ぜんぜん」
「何かの間違いじゃないの?」
「そうかもね」間違いでもいい。
朱音は今、仕事が面白くてたまらなかった。
採用してくれた会社に心から感謝していた。

それから10日ほど経った、ある晩のこと。
会社の同期の仲間15、6人で、
会社の近くの居酒屋で飲み会をした。
同期全員に声をかけたが、
仕事の都合で半分ほどの人数しか集まらなかった。
同期とはいえ、配属先はバラバラだ。
入社1年しか経っていないのに、
おのおの愚痴ばかりが先行する。

朱音は、勉強することがいっぱいあり過ぎて、
不満を抱く余裕すらなかった。
ただ、ただ、みんなの話を聞いていた。
トイレに席を立ち、用を足して
ドアを開けたところで、人とぶつかった。
「あっ、ごめんなさい」
「いや、こっちこそ」相手は大柄な男性だった。
朱音は、反動で一歩後ろに弾かれた。

「む? 斉藤さんじゃないか」
「あっ!」朱音は、次の言葉を失った。
人事部長の大熊だった。
「なんだ、会社のみんなで来てるのかい?」
「あ、はい。同期会なんです」
「いいねぇ、同期は仲よくするといいよ。
お互いにいろいろ相談しやすいしね。  
これから、40年近く同じ仕事をするんだから」
大熊の顔は真っ赤だった。
相当出来上がっている感じ。

何を思ったか、朱音はこんなことを口にしていた。
「あの~一つ伺いたいことがあるんです」
「え? なんだい」
「わたし・・・どうしてこの会社に入れたんでしょうか」
そう言いつつ、ハッとした。
朱音は自分も酔いが回っているんじゃないかと思った。
いつもなら、こんな不躾な質問などしない。
でも、もう口から出てしまっていた。

「どうしてって・・・
採用試験に合格したからじゃないか」
「だって、成績は悪いし、何の取り柄もないし
・・・それに、見てくれも・・・」
それを聞いた大熊の紅ら顔が、
少し覚めたように見えた。
「ちゃんと採用基準に基づいて採用されたんだから、  
今になってそんなこと考えなくてもいいじゃないか。
自信を持っていいよ」 「・・・」

つづく


Author :志賀内泰弘


【先生宛の遺書】



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……

時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








furo
P R



信じれば真実、疑えば妄想

妄想劇場・番外編
 
  信じれば真実、疑えば妄想……
 
  昨日という日は歴史、
  今日という日はプレゼント
  明日という日はミステリー
 

 
  落語の原型とも言われている
  江戸小咄は、 江戸時代の
  庶民の楽しみとして広く伝わって
  おおらかに性を笑いに取り入れて
  現代にまで至っています。
 

 
 
 
お色気小咄は日本だけではなく、
  外国にもあります、西洋小咄です

 
 
  勝負下着
  「今日あこがれの彼とデートするんですってね」
  「そうよ、ワクワクするわ。今日きめちゃうわよ!」
  「じゃあ、勝負下着をつけてきたってわけね」
  「ううん、何も着けないできたわ・・・

 
  下ネタ話
  「先日、ウチでパーティやったのね。
  そしたら客の一人がすごく Hな
  下ネタ話をはじめたのよ。
  私、不快になって、その人に帰ってもらったの」
  「そう、当然じゃないの。
  そんな客もいるのね。イヤーね」
  「ところがね、その人が帰ったら、
  主人まで出ていったのよ」
  「あら!どうして?」
  「もちろん、その人の話のつづきを聞きによ!」

 
  二人の女子社員の会話
  「ゆう子、あなた今朝チカンに遭って怒ってたそうね」
  「そうよ、ひどいわよ」
  「どんな男だったの?」
  「それが若くてイケメンだったのよ」
  「いくらイケメンでもひどい男ね」
  「そうよ、ひどいわよ!
  いいところで降りていったんだもの」

 
  おあとは、よろしいようで…
 
 
  ハンカチ
  一等車の中はガランとしていて、
  りっぱな紳士が二人、向きあっています。
  一方の紳士、さっきから、
  鼻にハンカチを当てがって、
  くしゃみが出そうなのを、
  がまんしているようなようすです。
 
  「もしもし、どうかなさいましたか。
  くしゃみをこらえておいでのようですが、
  ご遠慮なく。カゼ薬でしたら持ちあわせがありますから」 
  すると、相手の紳士はにっこりして、 
 
  「いや、とんだおさわがせをいたしました。
  カゼでも、くしゃみでも、なんでもないのです。
  じつは・・・もうしにくいのですが、
  私は愛する妻のそばを、
  一時でもはなれているのが、
  身を切られるようでしてね。
  旅行のときには、こうやって、
  せめても、愛する妻の移り香のある
  ハンカチを手ばなさず、妻が恋しくなると、
  出しては、匂いをかいでいるのです。
 
  みょうなやつとお笑いくださいますな。
  妻がどんなにすてきな女か、失礼ですが、
  ちょっとこのハンカチをかいでみてごらんなさい」、
  紳士は、相手の鼻さきに、
  手にしたハンカチを突きつけました。
 
  そのとき、相手は思わず、叫んでしまいました。
  「あッ!
  じゃ、あなたがガスパールさんですな・・・・・」

 
 
おあとは、よろしいようで…
 
 
 
  みつお

 
人の為(ため)と
  書いて
  いつわり(偽)と
  読むんだねぇ



  誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
  誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
  ただ、黙っているだけなんだよ、
  言えば愚痴になるから……

 
 
  歌は心の走馬灯、花に例えた古い歌
  今さら聞いても仕方がないが
  何処に置いても飾っても
  歌も花も、枯れてゆく
  …人生、絵模様、万華鏡…

 
 
 
18禁 「ホテル」
 
 
 
  時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる

 
 
 
 
 
 
 
 
  ふろ
  P R

 
  きれいなお風呂・宣言
 
 
お風呂物語

 
 
 
 
 
 

2015年5月 7日 (木)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。

 


韓信-42
軍門の外には劉邦の配下たちが待機している。
この日、劉邦の供をして配下の指揮を任されていたのは
参乗(貴人の車に陪乗して守る者)の樊噲であった。
樊噲は劉邦の旗揚げ以来の忠臣で、
両耳の下から短めに生えた顎髭が無骨な印象を与え、
外見的には熊のような男だった。

あまり複雑なことを考えるのは苦手であったが、
今日という日が劉邦はおろか、
自分の運命を決める日であることが、
この男には感覚的にわかっている。
いざという時にはあの軍神のような項羽と
刺し違える覚悟をしていた。

「樊噲!」自分のいる軍門を目指して
走ってくる張良の姿が見えた。
ただごとではなさそうなその姿に、
彼は胸騒ぎを覚えた。
「張子房どの。幕中の首尾はどうだ」
樊噲の問いに張良は息を切らしながら答えた。
「どうもこうもない。殺される寸前だ……。
樊噲、今こそ……今こそ沛公危急の時だ!」

樊噲はそれを聞くなり、盾を持ち、
剣を抜いて猛然と軍門に突入した。
楚の衛士たちがそれを止めようとしたが、
樊噲は走りながら衛士たちに盾をぶち当てて
残らず地に突き倒した。
「行ったぞ! 誰か止めろ!」
幔幕の周辺の警護に当たっていた韓信の耳に
その声が届いた。

見ると猛烈な勢いでこちらへ向かってくる
ひとりの武人の姿が見える。
あれは、劉邦の忠臣に違いない。
なんという迫力!樊噲の走った道の後には
砂塵が巻き起こり、それが渦を巻いて
竜巻が起こっているかのように見えた。

たったひとりの突入がまるで百騎程度の
騎馬集団の進軍のように錯覚させる。
「来るぞ。せき止めろ」
楚軍の警護兵たちは樊噲の鬼気迫る姿に
たじろぎながらも、防御の姿勢をとり始めた。
しかし、それを見た韓信は、
「いや、この後が見たい。通させてやれ」と言って
兵たちをとどめた。

その発言に楚兵たちは、
韓信が例によって臆病風にふかれたものと思い、
反発した。「通していいわけがあるまい。
あの様子では将軍に斬りかかるぞ!」
韓信はそれでも意見を変えず、兵たちに向かって言った。

「黙って斬られる我らが将軍ではないだろう。
将軍は、武勇の人。
あの烈士にも負けることはないはずだ」
実はこのとき韓信は、項羽が
樊噲を斬ることはないと予想していたのである。
確かな根拠はないが、項羽はこのような人物を好む、
そう感じていたのであった。

防御しようとした兵たちは皆、
すべて樊噲の盾で押し返されて吹っ飛んだ。
樊噲はその勢いのまま幕を斬り破り、
中へ突入を果たす。
突然の闖入者の出現を受け、
とっさに剣の柄に手をかけた項羽は、
「何者だ」と、凄んでみせた。

このとき懸命に樊噲の後を追いかけてきた
張良がようやく追いつき、
「この者は沛公の参乗、樊噲でございます」と、
息を切らしながら説明した。
項羽はこれを聞いて満面の笑みを浮かべて喜び、
「ううむ! これこそ壮士。酒を与えよ!」と言って、
杯になみなみと注いだ酒を
樊噲に与えたのであった。

項羽は敵味方を問わず、
このような勇壮な男を自分以外に
見たことがなかったのである。
樊噲は上機嫌の項羽に酒を与えられ、
豚の肩肉を供せられ、それを軽く平らげたのち、
項羽に対して意見しだした。

「将軍は功ある沛公に恩賞を与えないばかりか、
小人の中傷を真に受け、沛公を殺そうとしている。
将軍は間違っておりますぞ。……
私がこんなことを言えるのは他でもない。
……死を恐れぬからだ」

項羽はとっさに返答ができず、
「まあ座ればいいじゃないか」などと、
およそ彼らしくない発言をした。
おそらく項羽は劉邦を許すと決めたのにもかかわらず、
范増が殺そうとするのを快く思っていなかったに違いない。

樊噲の乱入を潮に幕中の殺人劇を
終わらせようと思ったのだろう。
しかしそんな項羽の思いなど知る由もない劉邦は、
状況が一段落したのを見計らうと、
なにも言わず席を立った。
誰もが厠へ行くものと思ったが、
劉邦はそれきり戻らなかった。

彼は恐怖のあまり、遁走したのだった。
張良はあとを取り繕い、
項羽に白璧(はくへき)(宝石の一種)一対、
范増に玉斗(ぎょくと)(玉でできた酒器)を土産に贈り、
鴻門の陣営を辞した。

項羽はそれを受けると幕を抜けて去ったが、
ひとり残った范増は贈られた玉斗を
地に投げつけて叩き壊し、
さらに剣で打ち叩いて粉々にしながら嘆いたのだった。
「ああ! 楚は小僧どもばかりで
どいつもこいつも言うことを聞かない。

項羽をはじめ一族はみな、
劉邦の虜になるだろう! 
なぜ項羽も項荘もやつを殺せなかったか!」
韓信は范増のその姿を幕越しに見て思った。
項羽や項荘が沛公を殺せなかったのは、
無理もない。彼らは武人だからだ。
武人が謀略で人を殺すことを
潔しとするはずがない……
范増老人のような人生を
達観したような者ならいざ知らず……。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
花に例えた古い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



〔弾き語り〕
ノラ 徳久広司 & 再会 弦哲也 





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R

きれいなお風呂・宣言

お風呂物語





2015年5月 6日 (水)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」。
そんな彼を描いた小説。




韓信-41
態度を和らげた項羽の命により、
酒宴が催され、各人はおのおの与えられた席に座った。
上座は項羽と、項伯である。
次座は范増、三座に劉邦、末座に張良が座り、
酒や料理が供された。
項羽は物も言わず、喰い始める。
いっぽう劉邦は食事が喉に通るはずもなく、
儀礼上箸を取り上げてはみたものの、
もしや毒でも混入しているのではないかと思い、
気が気ではない。
張良に至っては末座で畏まっているばかりで、
食べようともしなかった。
自然、話題のない酒宴は盛り上がらず、
項羽がただただ酒を飲み、
肉を喰らう音ばかりが場に響く。

おろかな男よ。狡猾な劉邦は項羽の性格を知って、
弱点を突いたのだ。
項羽は無関心な風を気取り、
喰ってばかりいるが……情にもろい男よ。
敵対する相手には容赦ないが、
自分にすがる相手には手を出せない。
まったく始末に負えん。

范増は無駄だとは思いつつ、
腰に下げてある玉の飾りを振って音を出し、
項羽の注意を誘った。
今がそのときだ、殺せ、というのである。
しかしもはやその気のない項羽は、
案の定聞こえぬ振りをして喰ってばかりいる。
仕方なく范増は座を立って、
幕の外で待機していた項羽の従弟の
項荘を呼びつけた。

「項荘、そこに居たか……耳を貸せ」
幕の外に現れた范増と項荘の姿を認め、
韓信はわけもなく緊張を感じた。
む……范増老人。なにか企んでいるな……。
この老人のことを失念しているとは、
私もうっかりしていたものだ。
しかし、二人が話している内容は、
韓信には聞こえない。
韓信にできることは、なにもなかった。

「できません。……とても、そんな……」
項荘は消え入りそうな声で范増に訴えた。
しかし范増は目を怒らせ、「やるのだ! 
やらないというのならお前の一族をみな虜にしてやる。
簡単なことだ。座を盛り上げましょうとかなんとか言って、
剣を持ってひらひらと舞えばいい。
その隙に劉邦を刺すのはわけもないことだろう」と
項荘を恐喝した。

「よしんばそれが成功したとして、
将軍はそれを了承しているのですか。
将軍が沛公を許すと言っているのに、
私が刺し殺すなど……不義ではありませんか」
「確かに将軍は知らん。だが心配するな。
従弟のお前がやることなら将軍はとやかく言わない。
もし万が一のことがあれば、わしが弁解してやる」

項荘はまだふんぎりがつかない。
「しかし、なぜそこまでして……」
「将軍は情に流されやすいお方だ。
劉邦は今後のために除かねばならぬことがわかっていても、
その場の感情で決断を鈍らせておられる。
楚の天下のためには将軍が誤った判断をしたら
臣下がそれを正さねばならぬ。
そして今がまさにそのときなのだ。
決断しろ、荘!」項荘が頷くのを認めると、
范増は幕中に戻っていった。

やがて幕中に入った項荘は、
ひとしきり項羽と劉邦の長寿を祝う言葉を述べ終わると、
「陣中のこととてなんの座興もないのは寂しいこと。
ここは私がひとさし剣舞をご覧にいれて
宴の余興といたしましょう」と言って、
腰から剣を抜いた。

まずい!末座の張良の目が光った。
劉邦もそう感じ、酒器を持った手が震え、
酒がこぼれた。
剣はゆっくりと宙を舞い、空を斬っていく。
しなやかな項荘の手がそれを追い、
次いで足が流れるように運ばれていく。
優雅な身のこなし。緩やかな律動で舞う項荘の姿は、
時の流れを忘れさせるかのようであった。

ひゅぅ! 突如剣が風を切る音が劉邦の耳元に届いた。
驚いた劉邦が顔を上げると、
項荘の目が鋭く自分を見据えている。
殺される! そう感じた劉邦は恐怖のあまり
尻の穴が緩み、座った状態であるにもかかわらず、
よろめいた。
手をつきながら体を支えるのがやっとである。

「相手もなくひとりで舞う剣舞などつまらぬもの。
私が相手をしよう」そのとき、そう言いつつ
剣を抜いて立ち上がったのが項伯だった。
項伯は項荘の調子に合わせて舞い始め、
項荘がつつ、と劉邦に近寄る仕草を見せると、
項伯が舞いながら身を呈して劉邦をおおいかばった。
それが幾度となく、繰り返される。
この調子では沛公が死ぬまで剣舞が続く。
張良はそう思い、幕の外に出て軍門まで走った。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた古い歌
今さら聞いても、歌っても、何処に置いても、飾っても
花も歌も、枯れてゆく....人生、絵模様、万華鏡...



岡千秋 . 露地あかり



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R

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お風呂物語




 

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幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない


昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント

明日という日はミステリー



父親の嘘
うちの父親の口癖は
「俺が嘘を付いた事あったか?」だった。
その口癖通り、父親は絶対嘘をつかなくて、
約束を守れない時も必ず事前に謝りを入れてくれた。
仕事熱心で、周りからも慕われてて、
家族思いで休日の家族サービスも忘れない
尊敬できる父親だった。

大人になるならこういう人になろうと
ずっと思っていた。
ある日小学四年だった俺が家に帰ると、
父の仕事先の上司が来ていた。
普段俺の家にこない人達だったから、
何かあったのかな?程度の事は
考えたけど、それ以上の事を考える思考力が
当時の俺には無かった。

その人達が帰った後気づいた事だが、
仕事の一番忙しい時間帯なはずなのに、
父が家に居る。
しかも部屋で寝ているらしい。
例え高熱を出しても仕事を休まない父なのに、
おかしいなとは思ったんだ。
その一時間後、父は吐血して、
病院に運ばれた。

上司の人達が来ていたのは、
どうやら仕事中に吐血して、
一度病院に運ばれたらしい。
医者は即入院と診断したらしいが、
父は仕事に行くと言い続けたせいで、
仕方なく薬を処方し落ち着くであろう家で
休養を取ることにと言う事になったらしい。

そして帰されたのだが、案の定また吐血、
母がすぐに病院に連絡し、
救急車が来て病院に運ばれた。
勿論小学生四年の俺はそんなの見るの初めてで、
小学生二年の妹を抱き締めて、
茶の間の隅で震える事しか出来なかった。

でも父親が辛そうで、怖くなって駆け寄った。
「大丈夫?お父さん」って聞いたら、
凄く辛そうなのに、真っ青な顔をしているのに
「大丈夫、すぐに戻ってくる」って言うんだ。笑顔で、
思わず「大丈夫じゃないよ!」って言った。
そしたら「俺が 嘘を付いた事が あったか?」って、
ソレ言われたらさ、信じるしか無いじゃん。
もう俺も泣きじゃくって声も出なくなったけど、
頷く事しか出来なかった。

母はその日の晩から父に付き添う事になって、
俺と妹は知り合いの家に預けられた。
周りの人は「強い人だから大丈夫」って励ましてくれた。
俺も何も考えられない訳じゃ無いし、
父親はもう長くない、
周りは俺達を気遣ってくれてるんだなって事には気付いた。
だから、俺も笑顔で
「うん、お父さん強いもんね」って言った。
色んな事が不安だったけど、妹を泣かしたく無かったし、
俺が強くなきゃと思えた。

でも次の日父は死んだ。
病院でも、家に帰るって、子供が居るんだって、
二人にしておけないって。
ずっと俺達の事気遣ってたらしい。
授業中に、担任に呼ばれて、教えられた時は、
本当に腰が抜けて、病院まで走った。
病院のドアを開けたら、もう父は息をしてなくて、…!!
何でもっと一緒に居させてくれなかった、
何でもっと早く教えてくれなかったって、
ずっと泣いた。泣きじゃくった。
父親の最初で最後の嘘がこんな形なんてのは
辛すぎる…!!


お別れ会



親友からの電話。
「足が痛いから入院するよ。
たいしたことはない、一週間くらいだって」
笑いながらの連絡だった。
「そっか、がんばれよ」まあ日常的な会話。
その時たいして気には止めなかった。

一週間後、まだ入院してるとのこと。
エロ本を土産に病院を訪ねた。
病室に入るとそこには右足の無い親友がいた。
いっきに視野が狭まり、親友が見えなくなった。

その日の夜、久しぶりに自転車で
一緒に通った高校まで走ってみた。
16年前と景色はさほど変わりない。
田んぼ道、涙が溢れて止まらなかった。

もうその親友はいない。癌だった。
足を切断しても全身への転移は
止められなかったらしい。
でも親友は死ぬ直前まで
生きることをあきらめてはいなかった。
死ぬ前の日、「足が痛いんだ。
退院した後困るからさすってくれよ」
「今まで親に迷惑かけたからさ、
退院したら家の事業継ごうと思うんだ。
帳簿だけでもつけれるようになりたいから
簿記教えてくれよ。」
がんばってた。すごくがんばってた。

その日から自分自身、
がんばるって言葉を使わなくなった、
というか使えなくなった。
親友に失礼で・・
何十年後か死んだら、
親友に会うことがあるだろう。
「いい人生送れたかい?」と聞かれたら、
「うん、がんばったよ」と言えるような
人生を送りたい。・・・。


嫁の連れ子



全部俺の責任なんだ。…!!
息子の学校へ忘れ物を届けに行ったとき、
学校は中休みで、子供達は校庭で遊んでいた。
正面玄関を抜けた所にある花壇で、
軽い障害のある子が、上級生に囲まれて泣いていた。

その中のリーダー格の一人が
「やれよ、時間がねえんだよ。
やんなきゃ殺すぞ。」と凄んでいた。
頭にヘッドギアをつけた、
おそらくは肢体不自由の他に
知的障害もあるであろう、

特殊学級の男の子が、
しくしく泣いているその姿に勝ち誇るかのように、
そう言い放っていたのは、俺の息子だった。

俺は背後から息子の髪を掴んで叩いた。
まさかここにいるわけのない父親の顔を見て、
信じられない表情の息子の胸ぐらを掴んで立たせて、
顔面を殴った。
生まれて初めて親父に殴られた恐怖に、
顔をこわばらせる息子に、
「時間がねえんなら、てめえがやれや。」と
俺は言った。

俺は息子をてめえなんて呼んだことはないし、
ましてや殴ったこともなかった。
小さいときから、情操教育に気を使い、
人に優しくあれと教えてきた。
小さい子、弱い者を守ることの美徳を
教えてきたつもりなのに。

こんな陰湿ないじめをするように育ったのは、
俺の責任だ、そう思ったら、
くやしくて、情けなくて、また息子を殴った。
鼻血を出してうずくまる息子を見下ろして
仁王立ちになった俺を、
職員室から飛び出して来た担任が止めた。

帰り道で涙が止まらなかった。
全部俺の責任なんだ、
そう思うといたたまれなくなった。
小学校の高学年から高校まで
いじめられていた俺の、おれの息子が、
あんなことをしていたなんて。…!!



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから。


時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる










P R

きれいなお風呂・宣言

お風呂物語






2015年5月 4日 (月)

言葉の魔術師

言葉の魔術師・言葉の達人

達人たちは1曲の詞を書くために、
言葉を巧みに操り、
その時代を象徴する言葉を探した。
その言葉は多くの老若男女の心を掴んで離さず、
その歌は大ヒットした。
「孤独がつらく感じるとき」
「愛することがよくわからなくなったとき」
いつも、勇気と力を与えてくれた…、
作詞家は言葉の魔術師である。
そんなプロの「作詞家」の皆さんを紹介します。

音楽評論家として多数の音楽雑誌にレギュラー頁を持ち、
ヒット曲の作詞家としてはもちろんのこと、
ディズニー・アニメ『美女と野獣』などの
日本語訳詞(日本語吹き替え版)や
ミュージカルの日本語訳詞家としても
活躍され、また著書も数多く、
『幸福へのパラダイム』では
日本文芸大賞ノンフィクション賞を受賞。
さらに近年ではボランティア活動や
環境問題等で、グローバルに
行動されている才女、

「湯川れい子」
さんです。

れいこ

代表作
「ランナウェイ」シャネルズ
「センチメンタル・ジャーニー」松本伊代
「恋におちて」小林明子
「六本木心中」アンルイス
「火の鳥」中島美嘉 など多数。





歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



六本木心中・アン・ルイス





作詞論
 色、匂い、情景、動き、
 時代の息吹が感じられること。
 特に色とかドラマ、動きが見えることを意識。
 洋楽の世界で仕事をしてきたので、
 言葉のリズムを大切にしている。


作詞家になったきっかけは?
 ラジオ日本(当時のラジオ関東)でDJをしていた
 番組のアシスタントの女の子がバイリンガルで、
 突然英語の歌をアメリカの
 メジャー・レーベル名で出すことになり、
 作詞を依頼されて英語の歌詞を書いたのが大ヒット。
 エミー・ジャクソンの
 「涙の太陽 / CRYING IN THE STORM」。


プロ、初作品について
 「涙の太陽」エミー・ジャクソンを
 青山ミチがカバーすることになり、日本語詞を書く。
 のち安西マリア、田中美奈子、メロン記念日、などで、
 リバイバル・ヒット。

作品を提供したいアーティスト
 中森明菜・氷川きよし

あまり売れなかったが、私の好きなこの歌
 「月のワルツ」諌山実生
「ロング・バージョン」稲垣潤一
 (実際は、とても売れたのですが、地味な歌なので)
「LA BOHEME(ラ・ボエーム)」中森明菜

なぜ「詩を書くことを選んだか」
 ずっと純粋詩が好きで、中学時代から書き溜めた詩が、
 ノートに10冊以上。
 たまたま歌の詩を頼まれたので、
 ただ人の歌を評論しているよりも楽しそうだから。


プロの作詞家になりたい人へのアドバイス
 オートクチュールの世界なので、
 メロディーに合わせて言葉を選ぶ練習を。
 ボキャブラリーを増やす努力が必要なので、
 本を沢山読んで。

一口メモ
 確かN・Yに行く深夜便の中で、
 NOBODYさんのメロディーを聞きながら作詞。
 アルバムの中の1曲だったので自由に書かせて貰えた。
 アン・ルイスのイメージというより、
 シンディー・ローパーのイメージが頭の中にあった。


私の好きなあのフレーズ
 「長い睫がひわいね、貴方」
 「女ですもの泣きはしない」

プロフィール 
湯川 れい子(ゆかわ れいこ)、
本名:湯野川 和子(ゆのかわ かずこ)
1936年1月22日は、
日本の音楽評論家、作詞家、翻訳家、
USEN放送番組審議会委員長、
東京都目黒で生まれ、山形県米沢で育つ。
女優時代は吾妻 麗子を名乗っていたこともある

昭和35年、ジャズ専門誌『スウィング・ジャーナル』への
投稿が認められ、ジャズ評論家としてデビュー。
ラジオのDJ、また、早くからエルヴィス・プレスリーや
ビートルズを日本に広めるなど、
独自の視点によるポップスの評論・解説を手がけ、
世に国内外の音楽シーンを紹介し続け、今に至る。


◇文化活動として…
日本音楽著作権協会 評議員・理事・会長代行
日本作詩家協会 理事・副会長
文部科学省中央教育審議会委員
文化庁芸術選奨 審査員
など、他にも数多くの活動を行っている。

◇オフィシャルサイト:
http://www.rainbow-network.com/



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる










furo
P R

きれいなお風呂・宣言

お風呂物語



信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」。
そんな彼を描いた小説。




韓信-40

夜はすっかり更け、そろそろ
寝所に移ろうかと考え始めた頃合いである。
項羽のもとにこの夜三番めの面会人が現れた。
范増である。
「亜父。まだ休まないのか」亜父とは范増をさし、
項羽のみが使用する尊称である。
「父に次ぐもの」という意味を持ち、
肉親以外でもっとも尊敬する者に対して使う。

項羽はその暴虐・残忍な行動から、
独断専行的な印象が強いが、
実際にはこうして范増を慕い、頼りにしている
事実がある。
一概に彼を独裁者と断じるのは誤った見方であろう。
范増は老齢なため項羽ほどの体力はないが、
気性の激しい男である。
項羽と同様に暴虐、残忍な面を持ち合わせ、
さらに年齢を重ねて冷淡さも持ち合わせていた。

「先ほど、項伯どのと廊下で擦れ違った。
なにを話しておいでか?」范増の質問に、
項羽は面倒くさそうに返事をした。
この老人の策略は聞く価値があるが、
近ごろは説教くさくなってきている。
夜も深くなり、眠くなってきた項羽は、
范増の相手をするのが正直煩わしかった。

「叔父は劉邦を助けてやれ、と言った。
関中で庫を暴いたというのは虚言だと。
秦王を宰相にしたというのも嘘らしい。
だから明日の朝早く会見し、
劉邦の話を聞いてやってほしい、とのことだ」
范増は苦虫を潰したような顔をした。

「将軍は、それを承諾なされたのか。……よいか、
将軍が天下を望むのであれば、
いずれ劉邦は邪魔な存在となる。
それがわからぬ将軍ではあるまい。であれば、
早いうちに処断するのが得策であろう。
今、すべては虚言だったと言うが、
もともと劉邦などは財物を貪り、
好色な、くずのような男であったのだ。
そんな男が咸陽では財物には手を付けず、
婦女を近づけないとしたら、これはただごとではない。
天下を望む証拠であろう。

よってわしは委細構わず攻め滅ぼすべきだと考えるが、
将軍が明朝劉邦と会うことを決めたのであれば、
うるさくは申し上げまい。
次善の策を執るだけである」と言って項羽に迫った。
いよいよ面倒になった項羽は、
反論はせずに范増の話したいことを話させてやった。

「次善の策とは、何だ」
「会見の席で、わしが機を見て合図をするゆえ、
その場で刺殺なされよ」
范増の目は暗がりの中で、輝いて見えた。
謀者特有の目であった。
項羽は今宵面会した三名がそれぞれ
勝手なことを言うので、判断に迷った。
范増に対しては、いったい
何と答えて良いかわからない。
結局、「承知した」とだけ答えるにとどめた。

翌朝、劉邦は百余騎を従えて
会見の場の鴻門に姿を現した。
しかし幔幕の中に入れるのは、
劉邦その人以外は張良のみで、
残りの兵士たちは遠く軍門の外で待たなければならない。
劉邦と張良はおずおずと幕の中に入り、
続いて項伯、范増の二人が幕の中に入っていく。

昨晩項羽に献策した三名のうち二人が
会見に同席することとなったわけである。
そして、残りのひとりの韓信はいつものように
幕の外で警護の任を命ぜられていた。
最後に項羽が幕の中に入った。
表情は険しく保っているが、
実はこのときまで劉邦をどう処すべきか、迷っていた。

不遜な態度をとるようであれば、斬る。
幕の中に入ったと同時に、項羽はそう心に決めていた。
ところが劉邦は項羽が幕に入った瞬間、
地べたに這いつくばるようにひれ伏し、
傍で見ているほうが気恥ずかしくなるほどの
大げさな素振りで許しを請い始めた。

「お許しを!」から始まり、
臣(わたくし)(自分を相手より下に見立てた一人称)は
将軍と力を合わせて秦を攻め、
将軍は河北に戦い、臣は河南で戦いましたが、
まさかまさか自分のほうが先に関に入ることになろうとは、
想像もしておりませんでした。

ここで将軍とふたたび相見えることになろうとは……
臣などは河南の地でのたれ死ぬ運命だとばかり
思っておりましたが、たまたまこうして悪運強く生き残り、
関中に入ることができた以上は、
将軍が到着されるのを待ち、
すべてのご判断をお任せしようと考えておりました次第です。

臣が聞きましたところ、臣が宮殿の財物を掠め、
宮女を犯しているという噂があるようですが、
それはすべてでたらめです。
おそらくは小人が臣のことを中傷し……」と、
項羽が黙っていれば際限もなく謝罪の言葉を
垂れ流し続けた。
項羽は、完全に気勢をそがれた。

「もうよい。君の言う小人とは君の軍の
左司馬で曹無傷という男だ」
このひと言を聞いた劉邦は、曹無傷め! あの野郎……
あとでどうしてくれよう!と内心で毒づいたが、
決してそれを表情には出さなかった。
「その曹無傷とやらの中傷がなければ」
項羽は劉邦の肩に手を置き、
「どうしてわしが君を疑ったりしよう」と言って、
自ら劉邦を席へ案内した。

たいした男だ、沛公は……。
私が沛公の立場であれば、あそこまで自分を
おとしめることができるだろうか。
いや、とても無理だ。項羽が単純な性格で、
泣き落としに弱いと知っていても、やはり無理だ。
ああいう男は生き残るためには
どんなことでもするに違いない。
ある意味では項羽などよりよほど恐ろしい
存在ではないか……。
幕の外で聞き耳を立てていた韓信は
この会見は項羽の負けだ、と予想した。
この調子なら今日は波乱はなさそうだ。
韓信はそう結論づけたのだが、
ここまでは会見の第一段階に過ぎなかったのである。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた古い歌
今さら聞いても、歌っても、何処に置いても、飾っても
花も歌も、枯れてゆく....人生、絵模様、万華鏡...



女道- 美空ひばり



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R

きれいなお風呂・宣言

お風呂物語





歴史・履歴への許可証

歴史・履歴への許可証
 
 
昨日という日は歴史、
  今日という日はプレゼント
  明日という日はミステリー
 
 
民話
 
  正体のばれたキツネ

 
むかしむかし、ある小さな山の茶店に、
  一人のさむらいが入ってきました。
  「ごめん」「はい、いらっしゃいませ」
  「じいさん、ここのダンゴは、うまいと評判だ。
  わしにも一皿、もってまいれ」
  「はいはい。どうぞ、めしあがってくださいませ」
  茶店のおじいさんは、お茶とダンゴをはこんできました。
  その時、おじいさんはさむらいの顔を見て
  びっくりしました。「あれ、まあ!」
 
  何と、おさむらいの耳はピーンと三角にとがっていて、
  顔のあちこちに茶色の毛が生えています。
  (ははーん、このおさむらいはキツネだな)
  おじいさんは正体を見抜きましたが、
  キツネはうまく化けたつもりで、
  むねをはっていばったかっこうをしています。
  おかしくなったおじいさんは
  小さなおけに水を入れて、
  さむらいの前へ持って行きました。
  「おさむらいさま、お顔と耳が少し
  汚れておいでのようです。
  どうぞ、この水をお使いください」
  「ふむ、これはどうも」
  うなずいたさむらいは、おけの中をのぞいてびっくり。
    (コンコン、これは化けそこなった!)
 

きつね
 
  キツネは、大あわてです。「さあ、おさむらいさま。
  ごゆっくり、召し上がってくださいませ」
  おじいさんがそう言っても、キツネには聞こえません。
  キツネはダンゴも食べずに、
  そのまま山の方へ逃げていってしまいました。
 
  次の日、おじいさんはたきぎをひろいに、
  山の中へ入っていきました。
  すると、どこからか、
  「おじいさん、おじいさん」と、よぶ声がします。
  おじいさんは見回しましたが、誰もいません。
  「はて? 何のご用ですか?」
  おじいさんが言うと、
 
  「おじいさん、昨日はおかしかっただろう。
  大失敗だったよ。ウフフフ、アハハハ」と、
  笑い声が聞こえてきました。
  「ああ、昨日のキツネさんか。
  そう言えば、あの時はおかしかったな。アハハハ」
  おじいさんも、大笑いしました。
 
 
おしまい
 

 
 
  一休さん「毒の水アメ」

 
 
 
 
 
  彦一は、きっちょむさんや一休さんと共に、
  日本を代表する,とんち話の主人公ですが、
  先の二人と違って、空想の人物といわれています。
 

  彦一
 
  むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、
  とてもかしこい子どもがいました。
  ある春の日の事、
  殿さまが二十人ばかりの家来を連れて、
  お花見へ出かける事になりました。
  そのお花見には、殿さまのお気に入りの
  彦一も呼ばれています。
 
  そして出発の時、殿さまがみんなに言いました。
  「みんなには花見の荷物を運んでもらうが、
  どれでも好きな物を持って行くがよいぞ」
  すると家来たちは、何を持って行こうかなと、
  前に並べられた荷物を、グルリと見回しました。
  そこには殿さまが腰をかけるいす、
  地面にしく毛せん、茶わんや皿や土びん、
  つづみやたいこなどの鳴物道具(なりものどうぐ)に、
  とっくりやさかづきなどの酒もり道具。
  他には歌をよむ時の筆やすずりやたんざくなどもあります。
  どうせなら軽い物が良いと、家来たちは
  我先にと軽い荷物を選んでいきます。
  そんな様子を彦一がじっと見ていると、
  最後に残ったのは竹の皮にくるんだにぎりめしや、
  おかずの入っている包みだけでした。
 
   (はは~ん、食べ物は重いから、誰も手を付けないな。
  しかしこれは、いい物が残ってくれたぞ)
  彦一は、わざとガッカリした様子で言いました。
  「何と、こんなに重たい物しか残っていないとは・・・」
  そして重そうに弁当の包みをかつぐと、
  みんなのあとをついて行きました。
  それを見た家来たちは、
  (知恵者と評判の彦一だが、
  あんな重たい物をかつぐとはバカな奴じゃ)と、
  クスクスと笑いました。

 
  花見
 
 
さて、お目当ての山に到着した一行は、
  囲いのまくをはり、
  毛せんをしいて荷物を広げると、彦一の持って来た
  弁当を食べる事にしました。
  そして花をながめるやら、踊るやら、歌をつくるやら、
  酒盛りをするやらして、
  みんな思う存分にお花見を楽しみました。
  そしていよいよ、お城ヘ帰る事になり、
  家来たちが持って来た荷物をかたづけていると、
  彦一が殿さまに言いました。
  殿さま。このまま行きと同じ道を帰るのですか?」
  「ふむ。と、言うと?」
  「ごらんくだされ。向こうの山も、
  あの通りの見事な花盛りでございます。
  いかがでしょう。ひとつあの山の花をながめながら
  お帰りになっては」
 
  「なるほど、それはよい事に気がついたな」
  殿さまは大喜びで、さっそく家来たちに言いました。
  「まだ日も高いし、向こうの花をながめながら
  帰ろうと思うが、どうじゃ?」
  それを聞いた家来たちは、荷物をかついで
  向こうの山をこえるなんてまっぴらと思いましたが、
  殿さまの言葉には逆らえません。
  「はい。お供いたします」と、しぶしぶ頭を下げました。
 
  すると彦一が、「では殿さま。
  わたくしがご案内いたします」と、
  みんなの先に立って歩きます。
  殿さまが家来たちを見ると、
  みんな大きな荷物を持っていますが、
  けれど彦一は小さくたたんだふろしきを
  腰にぶら下げているだけです。
  殿さまは不思議に思って、彦一に尋ねました。
  「これ彦一。お前の荷物はどうした?」
  すると彦一は、ニッコリ笑って言いました。
  「はい、わたしの荷物は、
  みなさんのお腹の中にございます」

 
 
 
  七夕物語
 
 
 
  人の為(ため) と書いて、
  いつわり(偽) と読むんだねぇ
 
  誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
  誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
  ただ、黙っているだけなんだよ、
  言えば愚痴になるから。

 
 
  時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる

 
 
 
 
 
 
 
 

 
   
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    ふろ


2015年5月 2日 (土)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 

韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」。
そんな彼を描いた小説。




韓信-39
韓信に退出を命じて、ものの数刻も経たないうちに
項羽のもとへ次なる面会人が現れた。
項羽の叔父にあたる項伯(こうは)という男である。
項羽の叔父ということは項燕の息子にあたり、
これは同時に項梁の兄弟であることを意味するが、
この二人が本当の意味での兄弟のように
生活をともにした事実はない。
彼らはともに数多い項燕の妾の腹から生まれた子供であり、
彼ら自身も自分に兄弟が何人いるのかを
正確には知らなかった。

確かなことと言えば、項伯は項燕の息子たちの中では
末弟であったということだけである。
その項伯が項羽に面会していちばんに
なにを述べたかと言えば、
「先ほど、沛公にお会いしてきた」と、いうことであった。
項羽はこれには驚き、
「劉邦と叔父上は個人的な関係がおありでしたか」と、
問いたださずにはいられなかった。
「直接にはない。いや、なかった。
実を言うとわしは沛公に仕えている
張良と以前より交流があってな。
今日はそのつながりで沛公にお目どおりかなった次第だ」

項羽は不信感を抱かざるを得ない。
明日叩き潰す相手に会いにいくとはどういう魂胆であろう。
相手が叔父とはいえ、話の内容次第では
許すべきことではなかった。
「叔父上と張良はどんな関係ですか」
項伯は真剣なまなざしで答えた。
「ひと言で申せば、義の関係だ」
「……詳しくお聞かせ願いたい」

項伯は以前、人を殺めたことがある。
それがもとで秦の官憲に追われ、
逃亡生活を余儀なくされたが、そのとき彼を匿ったのが
張良その人であった、という。
「張良は、そのとき下邳(かひ)(地名)に潜伏していた」
「潜伏とは……? 張良はなにかしでかしたのですか」
「始皇帝が巡幸で博狼沙(はくろうさ)にさしかかった際に、
襲撃を加えたのだ。

力士を雇い、二人で巨大な鉄槌を
轀輬車めがけて放ったそうだ。
しかし、狙いが外れて鉄槌は隣の車両に当たった。
それ以来逃亡を続け、下邳に潜伏していたとのことだ」
張良は韓の遺臣であり、その家は
代々宰相を務める名門であった。
彼は弟が病死しても「費えを惜しむ」として
葬式も出さず、始皇帝を狙う刺客探しのための
資金を蓄えたという。
その資金を投じて力士を雇ったが、
計画は失敗に終わったのだった。

「張良のことは、一度見たことがあります。
楚に懐王を擁立した際に、
韓も復興するべきだと主張して、
それがかなえられたのでしたな。
あの時の張良の印象は、線が細く色白で、
まるで婦女子のような感じでした」項伯は頷いた。
「外見は確かにそうだ。
しかし彼の情熱は誰よりも激しい。
……わしを保護してくれたのも男伊達の精神からだ。
侠の精神だ」侠とは、こんにちでいう単に
「やくざ」という意味合いとは違い、
義のために命を惜しまない精神のことで、
一度受けた恩義に対しては、
たとえ死んでも義理を返す、という
行動原理のことである。
彼らにとっては恩義に報いることが自らの命よりも
重要なことであったので、
当然法律などよりも優先されることであった。

また、恩義を施す側は礼などを
求めたりしてはいけない。
なにも言わずに助けることで、
自分が困窮したときには相手が助けてくれるのである。
いわば侠とは殺伐とした古代社会に生きる
個人同士の相互扶助の契約のようなものだった。
「わしは張良から恩義を受けた。
受けた恩義は返さねばならぬ。
そこでわしは張良のもとへ行って、
一緒に逃げようと誘ったのだ」
項羽にも義や侠の精神はわかる。
したがって項伯の行為を咎めたりはしなかった。
項伯はさらに続ける。

「しかし張良は、沛公を見捨てる気にはならない、と
それを断った。そこでわしは沛公と会い、
張良の媒酌で義兄弟の契りを……」
項羽はびっくりした。
「なんと申した、叔父上?」
「義兄弟の契りだ。わしも最初は戸惑ったが、
張良を救うにはこれしかない。
羽よ、明日の朝早く沛公と会見の場を設けるのだ。
沛公は釈明したいと望んでいる」
項羽は迷い、部屋中を歩いて回ったが、
やがて意を決したように立ち止まると
項伯に対して宣言するかのように、声を張り上げた。
「いいでしょう。しかし、会うだけです。
許すとは限りません。
劉邦の態度次第では斬り捨てることも
叔父上は覚悟してください。
それでいいでしょう」項伯は静かに語った。

「もとより沛公が関中を破らなければ、
羽よ、おまえは関内に入ることが
できなかったかもしれない。
沛公は関中入りして以来、
少しも財物を私にしたことはなく、
吏民を帳簿に載せ、庫を封鎖しておられる。
また、子嬰を宰相にしたというのは虚言であり、
沛公は子嬰を捕らえ、おまえの沙汰を
待っているというのが事実だ。
これは大功と言っていい。
大功をたてた者を討つのは不義だ。
厚遇したほうがいい」

「考えておきましょう」
退出した項伯は疲れを感じ、自嘲気味に考えた。
侠とはいっても、わしにできることはここまでのようだ。
しかし、もういい。言うだけのことは言った。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた古い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
花も歌も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...



夢追い酒- 美空ひばり


人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R

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お風呂物語

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