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2015年8月

2015年8月31日 (月)

妄想劇場・番外編(18禁)

妄想劇場・番外編(18禁)

信じれば真実、疑えば妄想……

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18歳未満禁止の内容が
含まれています
18歳未満の方は
ご遠慮下さい。






メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい。


母子家庭で、生真面目な人生を送ってきた
高校生の涼也。
ある日、母親から、東京で夜の仕事をしていた
25歳の従姉が家に来て、一緒に住むと告げられる。
涼也は、◎◎をふるう従姉が大嫌いだった。……

『アベレージ』 AV9

しかし、いざやってみると、初めは泣くほど後悔した。
知らない人の前で裸になり
◎的なサービスをするということは、
キャバ以上に身を削ることなんだと思い知った。
更に、◎◎嬢になった動機は父親の
借金返済のためだという事実を意識すると、
自己嫌悪の

深淵

(

しんえん

)

に突き落とされるようだった。
ヘルスの仕事が心から慣れることはなかったが、
辞めることなく流れのままに続けていった。
常に嫌だったというわけではない。
父親のような年代の中にも、
父より断然優しい客がいたので、
そういった人に裸で甘えられるのは心地好かった。

だが次第に、虚しさが募るようになる。
自分が何のために生きているのかわからなくなっていた。
何もしない時間ができてしまうと、
言い知れぬ恐怖に襲われる。
ただ漠然と、今の自分の状態にぞっとしてしまい、
とにかく男と会った。
時間を満たす存在なら、もはや誰でもよくなっていた。
肌を重ねた男の人数をカウントすることもなくなる。
そうしていざ、孤独に戻ると、
余計に心は鬱しているだけだった。
気づけば、もうすぐ二十三歳。

奈々は以前AVにスカウトされたことを思い出した。
あのときもし、引き受けていたらどうだっただろう? 
今とは違う人生を送れていただろうか。
もしかしたら有名になっているかもしれない。
いっそ、AVに出演するのもいいかと思った。
世間にバレようが心痛める人物などいない。
憎い父親は消えた。母親には弟が居る。
母にとって自分は弟の面倒を見るヒトだった。
何をしたって、とっくの昔に失うものなんてない。
むしろ得るものがあるかもしれない。
それに、早く借金を返せる。
奈々はAV女優になる決意をした。

スカウトではなく、求人誌から応募をした。
胸は大きい方だし、キャバ嬢時代も
「エロそうで美人だね」などと鼻の下を伸ばした客から
言われていたので、そんな奈々は当然合格し、
「愛川なるみ」という名で事務所のモデルとなった。
最初は慣れないかと身構えていたが、
ヘルスで抵抗がついたからか、思いのほか
すぐにAV女優としての自分が出来上がった。
深く考えずに撮影をこなしていける。
やってみればこんなものかというのが、
最初の撮影を終えた感想だった。

それからは様々なAVに出演し、
順調に本数を重ねていった。
だが、撮影を終えるごとに段々と、
正体のわからぬ不安が胸に広がっていた。
AV女優としてお金を得るたび、
自分が失っていくものに対して
知らない振りをしている気がした。
監督に求められる人になりきれないことがある。
大勢の男優たちと絡む最中、
余計な葛藤が生まれたこともあった。

どうしてだろう。ヘルスのときはこんな感情、
生まれなかった。
自分のセックスをカメラに撮られているからだろうか。
出演を繰り返すごとに、漠然と、
自分が本当に欲するものは二度と
手に入らなくなるんじゃないだろうかという
思いが強くなった。
失うものなんてないと理解していたのに、
大事な何かを失くしている気がした。

テレビの中で浮かれるアイドルや
恋愛ドラマを目にすると、いつもうざったくなる。
鳥肌が立ち、吐き気がこみあげる。
心が、荒んでいく。あるとき、
家に居ることが耐え切れなくてとにかく街へ出た。
目的を持たず、ゆっくりとした歩度で街路を行く。
そうしていると、不意に恐怖心があらわれた。
まだそれほど有名ではないにしろ、
自分が出演するビデオの売れ行きは好調らしい。
AV女優と指を差されるかもしれない。
ああ、そうか……。リアルに感じると、
この仕事をしているリスクの強大さを、
痛いほど知った。

男が二人、立ち止まって喋っている。
目が合うと、自分のことを言ってるような気がした。
すれ違う人の心の声を想像してしまう。
冷静に考えれば数あるAVの中で愛川なるみを
ピンポイントで知っている人なんて居ないだろうに、
それでも悪いほうに考え出すと、
ネガティブな感情に歯止めが利かなくなっていた。

つづく

Author :水谷広人
http://syosetu.net/pc/



(※映画『若未亡人』予告編)



Tinko_2
人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば言い訳と、愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる




P R
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2015年8月30日 (日)

漢の韓信-(103)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。




漢の韓信-(103)

酈食其が見るに、出会った頃の劉邦は、
限りなく薄い灰色の布を持っていた。
悪を象徴する黒に何度も染められながら、
その色を何度も洗い直した痕跡がうかがえる。
しかしそれでいて善を象徴する明るい色にも
未だ染まっていないことも確かで、
逆にこれが可能性を期待させた。
これこそが劉邦なら自分の考え方を
受け入れるだろうと感じた所以である。

一方、韓信に初めて出会ったときは、驚きを感じた。
彼の持つ布は、表が黒で、裏が白いのである。
黒い色は限りなく沢山の色を混ぜ合わせた結果
黒くなったらしい。
白い色はただ単に何もない、ということではなく、
何物にも染まろうとしない不安定な
自意識の象徴であるように思われた。

こういう男は、生きていくのがつらかろう。
周囲の環境に翻弄され、時には順応し、
時には反発しながら、ひたすらに自分自身の
求めるものを追おうとする。
しかし布の裏が白いということは自分自身が
なにを求めているのか不明である証拠でもあった。

自分で自分を染める、ということが今の時点では
できないでいるらしい。
激しい風雨にさらされながら、……
ただ一本倒されずに咲き続ける花のようだ。
本来花は環境に適合して育つものである。
しかし韓信はまったく場違いな環境に生まれ、
種を飛ばしても子孫を残せない環境に咲き、
その存在の無意味さを知りつつも
咲き続けようとする花のようであった。

この男には種や花粉を異世界に飛ばすための、
鳥や蜂のような存在が必要だ。
そう思ったのは、風雨の中の一輪の花が、
弱々しくも健気で美しいと感じたからである。
その鳥や蜂のような存在が、わしだ。

酈食其は韓信を見るたびに、そう思うのだった。
酈食其は劉邦に次のように献策した。
「楚は滎陽を奪いましたが、敖倉を堅守することなく、
すぐさま兵を東に振り向けてしまいました。
また成皋も楚によって奪われましたが、
愚にもつかない兵どもに守備させるばかりで、
これを奪い返すのはたやすいと存じます。

敖倉の穀物の貯蔵量を考えれば、
漢がこれを捨て置くのは重大な過失ではないかと……。
成皋を奪い返し、敖倉の穀物を支えとすれば、
漢が実力で楚を制圧する状況にあるという威勢を
天下に示すことになります」
「なるほど」劉邦は同意を示した。
確かに敖倉の穀物は欲しい。
「北では燕、趙が平定され、
残すは斉のみとなっております。

斉は楚と国境を接しているので住民は戦乱に馴れ、
人を騙したり、変節することになんの抵抗もありません。
これは王族の田氏も同様なので、
たとえ数十万の兵をもって斉に攻め入ろうとも
一年やそこらで撃滅することは不可能でしょう。
ここは、私が斉に赴き、漢に味方する利を
説いて参りたいと存じます」
酈食其はそう説いたが、劉邦はこれに対しては
なかなか同意を示さなかった。

「かの地には韓信がいて、わしはその信に
斉を滅ぼせと命令を下してきたばかりだ。
お前が使者として行くのであれば、
韓信の進軍を止めねばならない。
それに……斉の田氏は、田儋、田栄、田横の三兄弟
いずれも独立心が強く、一度帰順の意を示したとしても
すぐ裏切るような気がする。
禍根を残さないためには一族もろとも
滅ぼしてしまうのが最善なように思うが」

「確かに田氏は一筋縄ではいかない血筋でございます。
私が使者として説得できたとしても、
屈従するのはほんの一時に過ぎません。
もし私が失敗したら韓信に命じて撃てばいいでしょう。
また、成功すれば田氏には油断が生じます。
やはりそこを撃てば……」

いずれにしても最終的には武力で討伐する、
ということであった。
しかしそれでは使者として赴く酈食其の身が
非常に危険である。
劉邦がそれを質すと、酈食其は涼しい顔をして答えた。
「挙動の軽さは私のいちばんの取り柄としているところです。
どうかご心配なさらずに」
劉邦はこれを受け、酈食其が使者として
斉に赴くことを許した。そして韓信には
なにもこのことについて伝えなかったのである。

身軽さが自慢の酈食其は、命を受けるや否や斉へ急行し、
韓信の軍より先に到達すると、
宰相の田横や斉王田広(田儋の子)を説き伏せて、
漢に帰属することをあっさりと約束させてしまった。
七十余城を守る斉の守備兵たちはこれを受けて
それぞれ撤退し、斉王田広は漢と懇親を深めようと
日夜酒宴を開き、酈食其を痛飲させてもてなしたのである。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る




歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『こころの町 』 美空ひばり




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……

『雨夜酒』藤あや子




時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



P R
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2015年8月29日 (土)

妄想劇場・一樂編

妄想劇場・一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



Mituo
人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ




『新商品開発指令・・・』(2/2)

この前、その元気のブログを見ていて、
「へえ~、やるなぁ」と感心したコンビニがあった。
元気は、車椅子ながら自動車の運転をしている。
折り畳みの車椅子を後部座席に乗せ、
乗り降り際に、その車椅子に乗り換えるのだ。
何度見ても、そのスムーズなことには驚かされる。

ただ、コンビニやスーパーに買い物に行く時には
苦労するという。
身障者用の駐車スペースが、空いていないところが
多いらしい。
健常者が停めてしまう。 空いていても、
赤い三角コーンが置いてあると、
かえって邪魔になるというのだ。
一般の車が停めないようにと注意を
促すための三角コーン。
それが反対に仇になるらしい。

人は、その身になってみないとわからぬものだ。
ところが・・・。そのコンビニでは、
元気の車が駐車場に入ってくるのを見るなり、
店員が走って来て三角コーンを
どかしてくれるのだという。 それだけではない。
車の誘導をしたり、車椅子を車から出すのも
手伝ってくれる。

その日のブログには、
「プレミアム・コンビニエンスストア!」という
タイトルが付いていた。
以来、週に5回は通っているという。
従弟が世話になっているということもある。
でも、いったい、どんな店員がいるのか。
オーナーはどんな人なのか。
営業マンとして視点からも興味があった。

「暑いなぁ~何か冷たいもんでも飲もう。
アイスでもいいな」ハンカチで、拭いても拭いても
流れる汗を拭った。
「おお、ここだな」健太は、駐車スペースへと
車を滑らせようとしてブレーキを踏んだ。
国道沿いということもあり、駐車場は広い。
トラックなどの大型専用スペースが3台。
普通車用が7台。ところが、いずれも満車。
入れない・・・。

(せっかく来たのに)と思っていたら、
ミニバンが出て行った。
すかさず切り替えしてバックで入れる。
入口の身障者用スペースには、
車椅子のステッカーを リアウインドウに貼った
ワンボックスカーが停まっていた。

「なんだ、こりゃ」まだ、11時半だった。
それなのに、2つのレジには、
それぞれ5、6人のお客が並んでいる。
健太の知る範囲では、コンビニの空いている時間帯だ。
11時50分を過ぎると、徐々に人がやってくる。
ピークは、12時10分から20分。
11時半にしてはお客が多すぎる。

レジを打っていたオバサンが、大きな声で言った。
「いらっしゃい、そこのおしぼり使ってね!」
「え?おしぼり?」そばにいた強面の男性が
健太に話しかけてきた。
「おお、お前さんは初めてか?」
「え?・・・初めてって・・・」
角刈りの頭にハチマキをして、真っ黒な顔をしている。
黒いTシャツには、「男魂」と墨文字が躍っていた。
誰が見ても、トラックの運ちゃんだった。
「これこれ、これよ」ハチマキの運ちゃんは、
コピー機の横の小さな冷蔵庫を開けた。
(え?なんで、こんなところに冷蔵庫が?)
その冷蔵庫から、一本のおしぼりを取り出し、
健太に渡した。「ほいよ、これ使いな!」
「え?いいんですか」
「ほら、ここに書いてあるだろ」
冷蔵庫の扉に、貼り紙がしてあった。
冷た~い おしぼりをどうぞ 無料です =店主
その下には、使い終わったおしぼりを入れる
籐のカゴが置いてあった。
レジに並んでいるお客さんを見てハッとした。
健太と同じような営業マン、
そしてトラックの運転手ばかりなのだ。
ハチマキの兄ちゃんが、またまた話しかけてきた。
「ここはよお、このおしぼりが嬉しくって通ってるのよ。  
みんなな。12時過ぎちゃうとな、
もう駐車場がいっぱいなんでな、こうして早く来るのよ」

健太は、自分の常識が覆されてしまい、
言葉も出なかった。
「おしぼり」といえば、喫茶店かレストランだ。
最近では、使い捨ての紙おしぼりが
主流になってきている。
まさか、コンビニで「おしぼり」だなんて。
(いったい、採算は取れてるんだろうか)
営業マンとして、いらぬ心配も頭よぎる。

「え?」どう見てもおかしい。
駐車場に、大型専用スペースは3台しかない。
なのに、店内には、あきらかに
「トラック野郎」と思しき格好のお客が10人はいる。

健太は、慌てて店を飛び出した。
国道を見渡せるところまで出て、
ゴクリと唾をのみ込んだ。
左右にズラリと、何台ものトラックが
ウインカーをチカチカさせて駐車していた。
健太の後を追うようにして、
中から一人のトラック野郎が出てきた。
手には、レジ袋に入ったお弁当が2つ。
そして、「おしぼり」が一本。
目の前のトラックの窓から、
50代の厳めしそうな男が顔を出した。
「おいよっ」と、「おしぼり」を投げる。
中の男がキャッチした。
「助かるなぁ~」 「ホント、生き返るぜ」

その時だった。 健太の頭に何かが、
降ってきた。電気が走った。
「これだ!」健太は、この常識はずれの
コンビニのおかげで、 新商品のアイデアが
ひらめいたのだった。
企画書のタイトルが思い浮かんだ。
【自販機で、おしぼりを売る】


……終わり


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



『 本当の母親 』



誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と言い訳になるから……




P R
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2015年8月28日 (金)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……

Mituo2_2

昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー



 

「停電の夜に」

「あっ切れた!」
ドーン! という雷鳴が鳴り響いた直後のことだった。
日曜日の午後5時30分。
テレビは台風が近づいてることを繰り返し告げていた。
松島奈々子は、「こんなときは、
早めにご飯にしましょう」と言い、
野菜炒めを作るため電磁調理器に
フライパンを乗せたところだった。

電気炊飯器も、途中で切れた。
「お~い! 懐中電灯どこだ~」
リビングから夫の忠宏の声がする。
「あるでしょ、防災用具の中に・・・」
「ないよ・・・どこだよ、防災用具」
「そんなはずないわよ」

「いいよ、他にも懐中電灯がどっかにあったはずだ」
リビングまで壁伝いに歩く。外は真っ暗。
向かいのマンションの灯りも全部消えている。
小学4年の娘の里奈が、蚊の鳴くような声で言った。
「ごめんなさい・・・この前、キャンプに行ったとき、  
防災グッズの入ったリュック、
そのまま車に積んだままなの」

(そう言えば・・・)と奈々子は思い出した。
里奈が「何かあったとき、キャンプに防災用具が
あったら便利だよね」と言ったので、
「あら、いいアイデアね」と返事したことを。

忠宏がカーテンを開けて窓の外を見て言う。
「スゴイ横殴りだけど取ってくるよ」
「危ないわよ」敷地が狭いので、
家の前に駐車場が作れなかった。
そのため、徒歩で3分ほどのところに
駐車場を借りているのだ。

「任せろ、大丈夫だ!」そう言うと、
レインコートを被って飛び出して行った。
しばらくして、全身びしょ濡れになって帰ってきた。
「これ」と言われて差し出されたリュックから、
里奈が懐中電灯を取り出した。
「あれ?点かないよ」
「どれ、貸してみなさい」奈々子が言う。
「ホントだ」 「え?俺にも貸してみろ・・・
あれ?電池切れかな」
・・・ごめんなさい」里奈が心配そうに言う。
「電池が切れてるのは里奈のせいじゃないよ。  
俺がチェックしてなかったからいけないんだ。
そうだ、ろうそくはないのか?」
「ろうそく~そんなのないわよ」
仏壇でもあれば、ろうそくもある。
しかし、忠宏は次男で、ご先祖様の仏壇は兄の家にある。
「なかなか電気点かないねぇ」
「すぐに点くわよ、ラジオはあったわよね。
たしか古いラジカセに付いてたはず」
「あれもダメだよ。コンセント刺さないと点かない」
「何よ~もう」
忠宏が、「何言ってんだよ、情報ならケータイだよ」
慌てて奈々子も忠宏も、真っ暗闇の中、
リビングに置いてあったケータイを捜しに行った。

「長いわねぇ、停電」
3人は、ずっと肩を寄せ合って、じっとしていた。
もう10分近くも経つだろうか。
そこへ、表からスピーカーの声が聞こえた。
「たいへんご迷惑をおかけしております。
○○電力の広報車です。  
落雷のため、ただいま停電になっております。  
全力を尽くしておりますが、復旧の目途が立っておりません。  
今しばらくお待ちください」
「ええ~回復しないの?」
「今、目途が立っていないって言ったよな」
「電気つかないの~」
3人は、茫然として時間を過ごした。

こういうときは、1分が1時間にも感じられる。
里奈が突然、声を上げた。
「あっ、ろうそく見たことがある!」
「どこでよ、そんなのあるわけないでしょ。
買ったことないんだから」と奈々子が言う。
「ううん、クロゼットの奥にキレイな箱に入ったやつ。  
昔、お父さんに『これ何?』って訊いたら、
ろうそくだって教えてくれたもん」

「あっ」 「あ!」奈々子と忠宏が、声を合わせて発した。
そうだ。 二人の結婚式の披露宴で、
一緒に火を灯したキャンドルだ。
暗闇の中を、恐る恐るクロゼットまで歩いて行く。
「あった、あった、これだ」太くて長いキャンドル。
25個の印が打ってある。
1年に一度、結婚記念日に火を灯す。
25年の銀婚式まで使えるようになっている。
ところが、結婚3年目で里奈が生まれた。
子育てで、そんな余裕などなくなってしまった。
そして、クロゼットの奥へと仕舞いっぱなしに・・・。
「早く点けようよ~」
リビングのテーブルの上にキャンドルを置く。
「あなた、まさかマッチがないとか」
「大丈夫、ライターがある」
普段は、「禁煙してよね!」と
口うるさく言っている奈々子だったが、
この時ほど忠宏がタバコを吸っていてくれて
良かったと思ったことはなかった。
忠宏がキャンドルに火を灯す。
「わあ~キレイ」と里奈が声を上げる。
そして、「お腹空いちゃったよぉ」と言った。
3人で笑った。
「よし、今夜はキャンプだ!家にある
食べられる物をここへ集めよう」
「缶詰ならあるわよ」と奈々子が答える。
キャンドルの炎の下に、あれもこれもと並んだ。
防災リュックに入っていたカンパン。
カニとサバの缶詰。あんパン1個。
ただし賞味期限が昨日まで。
食パン2切れ。ジャムにハチミツ。
スライスチーズが2枚。バナナ5本とオレンジ3個。
チロルチョコレートの大袋。
冷蔵庫から、朝の豆腐の残りと、
ビール、リンゴジュースを出した。
「ご飯は炊けてないけど、野菜ならあるから
サラダ作るわ」と奈々子が言う。忠宏が言う。
「これでいいよ。まず食べよう」
「うん、食べよう」
なぜか、里奈も忠宏も楽しそうな顔をしている。

その時だった。「あっ!点いた!」
家中の電気が灯った。
「いいねぇ、電気があるって」
「ホントね」3人は、顔を見合わせて言った。
奈々子がキャンドルを消そうとすると、
忠宏が手で制して言った。
「このまま点けとかないか」
「え?」 「13年分・・・灯そうよ」
「ああ・・・そうね」 「うん」
「そうしたら、来年からまた火を灯しましょうよ。
結婚記念日に」
「そうだね」二人の心には、この13年間の出来事が
それぞれに蘇っていた。
その横で、里奈がバナナの皮をむいていた。

Author:志賀内泰弘



『絶対零度」の反対「絶対熱」



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる





 
 
                                                       
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2015年8月27日 (木)

妄想劇場・一樂編

妄想劇場・一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



Mituo
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『新商品開発指令・・・』(1/2)

杉山健太は、飲料メーカーの営業をしている。
課長の肩書で、10人の部下がいるが、
やっていることは部下と同じ。
担当地区のスーパーを回って「売り込む」のが仕事だ。
新商品が出ると、棚を確保してもらうのが一苦労。
ライバル社との競争が激しく、
なかなか並べてさえもらえない。
仮に置いてもらえたとしても、売れ行きが悪いと
すぐに撤去される。

「千三つ」、つまり千個の新商品に対して、
定番として残るのは三個くらいの確率。
出しては消え、出しては消えの繰り返し。
「開発部はわかってんのか!」と今朝の会議では吠えた。

「そうだ、そうだ!」と全員が賛同したが、
ただの愚痴に過ぎない。
今日も、新商品のサンプルをカバンに詰めて、
「さあ、出掛けよう」としたその時だった。
「おい、杉さん。ちょっと来てくれ」と
支店長に呼ばれた。
「なんですか課長・・・あっ本部長・・・」
「たまたま、大山本部長が本社から出張で来られててな。  
さっきの、朝の会議のお前の話をしたんだよ」
「ええ!勘弁してくださいよ、課長。  
そんなチクるなんてマネやめてくださいよ~」
「チクるって何だ、人訊きの悪い」
そこへ、本部長の大山が割って入った。

「杉山クンだったよね、久しぶり」
「あ、はい、ご無沙汰しています。
横浜支店ではお世話になりました」
大山は、杉山健太がまだ主任のころ、
横浜支店で直接の上司として仕えていたことがある。
「なんか俺も同感って感じがしてな。
わかるよ、わかるよ」
「はあ~」
どうやら、愚痴を叱られるわけではないらしい。
「でもな杉山。開発だって無駄に新商品を
作ってるわけじゃないんだ。  
実は、俺もこの前、同じ文句を
言ってやったんだ、あいつらに」
「え!?」 「そうしたらな、逆襲されちまってな」

「・・・」 「
『わかりました。じゃあ、営業さんからも
ヒットする新商品の提案をしてください』って
言われちまってな・・・困ってんだよ」
「はあ・・・」
大山は、かつての部下だからか、率直に弱音を吐いた。
「そんなアイデアがポンポン出るくらいなら、
俺が開発部長になるさ。  
でも俺は営業一本でここまで来たしなぁ~。
頭も固いし、もう歳だしな」
健太は、少しホッとして答えた。
「よかった。カミナリを落とされるんだと思いましたよ」
「いやいや、それでな。お前に頼みがあるんだ」
「はあ~」 「文句を言った罰というわけじゃないが、
新商品のアイデアを出して欲しい」
「ええ~私がですか?」
「うん。期限は3日。
実はな・・・、開発の連中に約束ちまったんだよ、
1か月くらい前にな。  
その期限が3日後なんだ。ずっと考えてたんだけど、
思いつかなくて」
「そんな・・・3日だなんて」
「俺、この足で関西へ出張なんだ。
メールでも何でもいいや、待ってるぜ、じゃあな」
そう言うと、大山は大きなカバンを肩から下げて
部屋から出て行ってしまった。
支店長が、ポンッと健太の肩を叩いた。
「期待してるよ」というわけで・・・
健太は、暗い暗い、憂鬱な日々を過ごした。
そして、あっという間に3日が過ぎた。
本部長ですら提案一つできなかったというのだ。
最後は、「ごめんなさい」と言おうかと思っていた。
おそらく、開発部の連中だって、
本気で優れたアイデアが出てくるなんて
思っちゃいないはずだ。

午前中、2件のスーパーを回った。
暑い。猛烈に暑い。
スーパーの駐車場は屋根がない。
ものの10分も停めておくと、中は熱帯地方になる。
エアコンもすぐには効かない。
窓を開ける。汗が背中をつたう。
こんな日の営業はたまらない。
でも、悪い事ばかりじゃない。
テレビアニメのキャラクターとコラボした
新商品が大ヒットし、 スーパーからは
「品切れにならないように頼むよ」と言われた。
そのおかげで、時間にも余裕ができた。
(ちょっと、昼飯は寄り道していくかな)
健太は、ずっと気になっていて、
時間のあるときに行ってみたいと
思っていたところがあった。 とあるコンビニ店だ。
仕事柄、コンビニを利用すると、
ドリンクコーナーに目が行く。
直接、コンビニへ営業することはないが、
気になってしまうのだ。
うちの商品は、どの棚に並んでいるか。他社はどうか。

健太には、同い年の従弟がいた。
杉山元気という。家も近かったので、
幼い頃からよく遊んだ。
中学に入ると、一緒にテニスを始めた。
ダブルスを組んだこともある。健太は人並みだったが、
元気は違っていた。才能もあったのだろう。
別々の高校へ進んだ後、元気はテニスで
インターハイにまで出場するようになった。

ところが・・・。乗っていたタクシーが事故を起こし、
元気はケガをしてしまう。
それも、一時は重体だった。命はとりとめたが、
車椅子の生活を余儀なくさせられた。
でも、負けん気が強く、リハリビを挑む。
足は二度と動くことはなかったが、
テニスを再開させた。車椅子テニスだ。
何度か試合の応援に行ったが、とても身体に
障害がある人たちのゲームとは思えない迫力があった。
おそらく、健常者でも、
「そこそこやっている」くらいでは勝てないだろう。

……つづく


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



『盲導犬へのクレーム 』



誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と言い訳になるから……




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カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語
                                                       
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2015年8月26日 (水)

チャンネル掲示板

チャンネル・ニュース

幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない



Mousou2
昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー




『建設業であった心温まる物語』

建設業は、よく3Kの職場だと言われます。
人から嫌がられる仕事ですが、
もちろん、 そこで働く人たちは
「生きがい」「やりがい」を持って働いています。

「娘さんの就活」ある職人さんの話です。
その職人さんは、当時建築ラッシュだった
駅前のオフィスビルで、 来る日も来る日も
工事をしていました。休日も、
その仕事のたいへんさから疲れてしまい、
家族をどこかに連れて行ったりすることもできません。
それでも、自分の仕事で街が活性化する、
人が幸せになる、と思い、
懸命に仕事を続けました。

その職人さんは、自分が携(たずさ)わった
建物はいろんな人が協力し合い、
でき上がるものだと思っていたのと、
また、それは自分の作品でもあり、
子供のように愛情のあるものだとも話していました。

ただ、建物に対し子どものように愛情を注ぐ一方で、
自分の家族に愛情をうまく表現できない自分自身に
いら立ちを感じていました。

それから十数年。 娘も大きくなり、
就職活動をしているときに、
その職人さんは聞きました。
「就職活動はどうだ?」
娘は 「○○に決まったよ、お父さん」 と答えました。

あまり娘と向き合えなかったその職人さんは、
わが娘を感慨深く見つめていると、
娘は続けてこう言いました。
「○○って会社のオフィスビル、お父さんが
工事して建てたんでしょ?  
他の会社と迷ったけど、
やっぱりお父さんが建てた建物の中で働くのって  
守られてる気がしてね……」

照れくさそうに話す娘に、
職人さんは、 ただただうなずいて
言葉を返せなかったと言っていましたが、
少し誇らしげにも見えました。

Author:志賀内泰弘


【父の思い出】 また同じ話




「こいつにけじめをつけさせるんです」

放課後、地域の方から学校に電話が入りました。
「おたくの生徒らしい子が、タバコを吸っています」
何人かの教職員でその場に駆けつけると、
私のクラスの男子生徒が二人いました。
タバコは吸ってはいませんでしたが、
一人は以前、喫煙で指導した生徒でした。
彼らの慌てぶりから「もしかして・・・」と思いました。

「何をしていた?」と尋ねても何も答えません。
「タバコを吸っていたのか?」と問いかけると、
興奮しながら、 「どこに証拠があるんだ!」と、
はき捨てるように言うのです。
何人もの教師がいるから興奮をしているのだろうと思い、
その場から二人を連れて学校へ戻り、
広い会議室で話を聞きました。
何を聞いても彼らは話さず、沈黙の時間だけが
流れました。

「本当のことを言っていいんだ。
本当のことを言わないままでいると、  
いつまでも、心がすっきりしないぞ」 と
静かな口調で彼らに語りかけました。
二人は、少し落ち着き、ぽつりぽつりと話し始めました。

一人の生徒が小さな声で、 「俺、タバコを少し吸った」 と
つぶやくように話しました。
たばこを吸った理由など聞きませんでした。
これからをどうするかを、彼らと話をしました。
悪いことをしたが、そのことを自分から素直に
話してくれたことはうれしかったのですが、
保護者にも伝えておかなければと思い、
「今夜、家庭訪問するから、先生が行く前に自分から  
親に話しておくんだぞ」と、伝えました。

父親が帰っているだろうと思う時間に、
彼の家を訪ねました。 家の中は真っ暗です。
玄関から大きな声をかけると、彼の妹が出てきました。
「お父さんはまだ仕事?」と尋ねると
「お兄ちゃんと一緒に床屋に行った」と言うのです。
すでに床屋は閉まっている時間なのに、
どうしてこんな時間に床屋に行ったのだろうか、 と
不思議に思いながら、妹に床屋の場所を教えてもらい、
その床屋に行きました。

やはり床屋は外の明かりも消えていて、
カーテンが閉まっていましたが、 店の奥からは
明かりがもれていました。
そっと床屋のドアを開けると、彼が椅子に座り
床屋さんに髪を切られる瞬間でした。
彼の横には、父親がじっと彼を見て立っていました。

私はその光景に驚き、挨拶もせず、いきなり
「どうしたのですか?」と父親に声をかけました。
振り向いた父親の目は涙でいっぱいでした。
「こいつにけじめをつけさせるんです」と、
静かな口調の中に強い決意を感じました。

「先生、こいつ二度目ですよ。あれだけ
約束したにもかかわらず」 といいながら、
彼を見つめているのです。そして、
「先生、これは、俺と息子との約束です」と
話を続けました。
彼は、何も話さず、あふれる涙を拭きもせず、
鏡に映っている自分の顔をじっと見ているだけでした。

床屋さんが彼に「いいの? 切るよ?」と
声をかけました。
小さな声で「うん」とうなずく彼の頬から
涙が落ちました。
電気バリカンの音が、部屋いっぱいに響きました。
彼の髪はどんどん短くなっていきました。

わずかな時間で短髪になった彼は、
なぜかさわやかに感じました。
彼の頬には、流れた涙の跡だけが残っていました。
父親は我が子に「これで生まれ変われ、
これで生まれ変わるんだぞ」 と涙声で
彼に伝えているのです。

それから十年以上が過ぎました。
彼は社会人になっていました。
偶然デパートで彼に会いました。
「先生、久しぶり。俺のこと覚えてる?」 と
元気に声をかけてきました。

「忘れるはずないだろう」 と彼に言葉を返しました。
彼の隣には女の子がいました。
その女の子と目が合うと、彼は
「先生、俺の彼女だよ」 とその女の子を
私に紹介してくれました。

「〇〇の担任の先生ですか? 
中学校のころ、本当に迷惑をかけたと聞いています。  
お父さんにも迷惑かけたから、親孝行したいって、
彼ったらよく話すんですよ。  
本当に、悪い子だったんでしょ?」 と
その女の子が話している横で、
彼は「余計なこと言うなよ」と照れ笑いをしながら
彼女に言葉をかけているのです。

彼は成人しても、中学時代の父親の
毅然とした態度に感謝しているのです。
父親と息子。 親子や年の差なんて関係ない。
男同士だからこそ通じる心意気もある。

Author:中野敏治



『父親への結婚挨拶』




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴にも、言い訳にもなるから……


時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる





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2015年8月25日 (火)

歴史・履歴への許可証

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昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

夢はでっかく、根はふかく。
花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 
根はみえないんだなあ


Kobanasi_3


『ともかづき』三重県の民話

むかしむかし、伊勢の海辺の村に、
みよという娘の海女がいました。
この伊勢の海には、『ともかづき』と呼ばれる
お化けがいて、海女たちから
恐れられていました。

そこでみよが海女になったばかりの時、
先輩の海女たちからこう教えられたのです。
「いいかい、みよちゃん。ともかづきは、
あたしたちと同じ海女の姿で現れて、
『アワビを、あげよう』と、言うけど、
それを手で受け取ってはいけないよ。
手で受け取ると、ともかづきに
手首をつかまれて、海の底に
引きずり込まれてしまうからね。
どうしてもそのアワビが欲しい時は
背中を向けて、背中に
はりつけてもらうんだよ」
「はい」みよは先輩海女の教えを守って、
ともかづきに会わない様に
気をつけていました。

ある年の秋の事、しけが続いて、
もう七日も海に潜れません。
「困ったわ。このままでは、
ご飯を買うお金がなくなってしまう」
そこでみよは家族が止めるのも聞かずに、
しけのおさまりきらない海へと
小舟を出したのです。

しかしいくら海に潜っても、
アワビもサザエも見つかりません。
「駄目だわ。もっと別の場所に行かない」
そこでいつもと違う場所へ潜っていくと、
海草の間から、おばあさんの海女が
大きなアワビをかかえて現れました。
そしてみよに、こう言いました。
「おや、こんな日に潜るなんて、
えらい娘さんだね。
さあ、このアワビをあげるから、
遠慮しないで持っておゆき」
(まあ、なんて親切な海女さんだろう)
みよは喜んで、そのアワビを手で受け取りました。

そのとたん、おばあさんはニヤリと笑って、
みよの手首を力一杯つかみました。
「ああ、やっと身代わりが来た。
これで成仏できるよ」そしておばあさんは、
みよを海の底へと引っ張ったのです

。(あーっ、しまった! ともかづきだ!)
みよは必死でもがきましたが、
そのまま海の底へと沈んでしまいました。

ともかづきは海で死んだ海女の幽霊で、
自分の身代わりになる海女を作らないと、
いつまでも成仏できないと言われています。
そして今でもこの海では、
死んでともかづきになったみよが、
自分の身代わりになる海女が
来るのを待っているそうです。


おしまい


小泉八雲の怪談「ろくろ首」




『絵から抜け出した子ども』兵庫県の民話

むかしむかし、あるところに、
子どものいない夫婦がいました。
「子どもが欲しい、子どもが欲しい」と、
思い続けて毎日仏さまに願ったところ、
ようやく玉のような男の子を授かったのですが、
病気になってしまい、
五歳になる前に死んでしまったのです。

夫婦はとても悲しんで、
毎日毎日、泣き暮らしていました。
でも、ある日の事。
「いつまで泣いとっても、きりがない」
「そうね、あの子の絵をかきましょう」

夫婦は子どもの姿を絵にかいて、
残す事にしたのです。
それからというもの、
父親は座敷に閉じこもって絵筆を持つと、
食べる事も寝る事も忘れて
一心に絵をかきつづけました。
やがて出来上がった絵は、
子どもが遊ぶ姿をかいた、それは
見事な出来映えでした。
二人はその絵をふすま絵にして、
我が子と思って朝に晩にごはんをあげたり、
話しかけたりしました。

ある晩の事、父親はふっと目をさますと、
なにやら気になって子どもをかいた
ふすま絵を見ました。
すると絵には子どもの姿はなくて、
絵だけを切り取ったように
白い跡が残っていたのです。

「絵の子どもは、どこへ行ったんや?」
朝になって、もう一度ふすま絵を見た時は、
子どもは元通り絵の中にいました。
「あれは、夢やったんかな?」
でも、それからそんな事が
何度もありました。
そしてそれは決まって、
月のきれいな晩でした。

その頃、死んだ子と同じぐらいの
年の子どものいる家に、夜中に子どもが
遊びに来るといううわさがたったのです。
なんでも寝ている子どもの手を引っ張ったり、
髪にさわったりして、
「ねえ、遊んでよ。ねえ、遊んでよ」と、
言うのです。

これを聞いた夫婦は、「きっと、うちの子や」
「そうよ。うちの子が、さみしがってるんやわ」と、
思い、ふすま絵にすずめを二羽、
かきたしたのです。

けれどもやっぱり、子どもは
座敷に月明かりが差し込みと、
どこかへすうーっと出ていくのです。
ある晩、子どもはいつものように出ていって、
明け方近くに絵の中へ戻ろうとしました。
その時、二羽のすずめが絵から
羽をぱたぱたさせて、
たたみに飛び降りてきたのです。

喜んだ子どもはすずめと一緒に
縁側から庭に降りて、
夜があけるのも忘れて遊んでいました。
すると、コケコッコー!と、
一番鳥が鳴きました。
驚いたすずめはどこかへ行ってしまい、
子どもも急いで絵の中に戻ろうとしたのですが、
庭石につまずいて、
ぞうりのはなおが切れてしまったのです。

さて、朝になって夫婦がふすま絵を見ると、
子どもは絵の中にいたものの
着物は泥だらけで、ぞうりは片一方しか
はいていませんでした。
そしてもう片一方のぞうりは、
ふすま絵のはじっこに転がっており、
すずめは白く形だけが残っていました。

この子どもはそれからも月明かりが差し込むと
絵から抜け出し、朝になると
顔の向きが違っていたり、切れたぞうりを
手に持っていたりしたそうです。
この不思議な絵は、一九九五年一月十七日の
阪神大震災で焼けてしまったそうです。


おしまい



人の為(ため) と
書いて、
いつわり(偽) と
読むんだねぇ





誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……。



時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる 





 
 
                                                       
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2015年8月24日 (月)

信じれば真実、疑えば妄想……

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。




漢の韓信-(102)

「……実のところ、よくわからない。
嫌いではないことは確かだ。
だが、では好きかと聞かれると、
特別そのような感情はないように思える。
確かなのは、あのお方は私の意見を聞き、
私の能力を引き出してくださった、ということだ。
それは感謝しているが……
今や私の能力は、あのお方にとって
邪魔なものになりつつある。
どうすべきか……いや、そんなことより」
韓信は蘭に向き直って、話題を転じた。

「君にとってこの知らせがどういう意味を持つか
わからないが……魏豹が死んだそうだ。
仔細は聞かされていないが」
はたして蘭は悲しむのか、喜ぶのか。
韓信は蘭の反応に興味を持つことに罪悪感を感じたが、
事実興味があるのだから仕方がない。

「魏豹が……いえ、もういいんです。
関係ありません」蘭は表面上、
喜びも悲しみもあらわさなかった。
しかし……なにも感じないはずはあるまい。
そう考えた韓信は、「君が悲しむならば、
同情しよう。喜ぶならば、共に笑おう」と言って、
蘭の肩に手を置いた。
蘭はそれに対して微笑を返したが、
その目にはうっすらと涙が浮かんでいるようだった。

人の感情というものは、近い間柄であっても
容易に理解できないものだ。
韓信はそう思わざるを得なかった。
劉邦の心も、蘭の心も、よくわからない。
しかも彼は自分自身の心さえ、よくわからないのであった。

曹参、灌嬰が引き連れてきた兵を迎え入れ、
韓信の軍は編成を新たにし、
北東方面に向かって進撃していく。
しかし、その軍勢が済水のほとり、
平原という地に達したところで韓信は決断を迫られた。 

斉がすでに漢に帰順の意を示している、という
情報が入ったからだった。 
酈食其は六十半ばの老齢でいながら、
身長は八尺(当時の一尺は約二十三センチなので
おおよそ百八十四センチ)を超える大男であったという。
老齢、しかも大男というと一般に鈍重な印象を
持たれやすいものだが、その外見に反して、
彼の動作は常に機敏だった。
世に出る前の若い頃、彼は何かを思いつくと
後先を考えず行動に移すことが多く、
故郷の高陽では、なにかと暴力を伴うトラブルを
起こすことが多かった。

このため地元の県令や父老たちも彼と必要以上に
接触することを嫌がり、城門の外に追いやって、
そこに立たせて門番とした。
そのような問題児ならぬ問題青年の彼であったが、
周囲の者にとって意外なことに、
本質的には武を好まず、学問を好んだという。
嗜好と行動が一致していない酈食其のことを
高陽の人々は尊敬せず、陰で「狂生(気違い書生)」と
呼んで蔑んだ。

老年になってからは、まともな儒者らしく
温和な表情を保ち続けているが、
当時は単なる厄介者として扱われていたのである。
彼は幼年の頃から儒家思想に陶酔し、
その世界観の実現を夢見て暮らしてきていた。
しかし人生の半ばを過ぎても世の中は乱れ続け、
儒教世界の実現どころか、その兆候さえも見出せない。

酈食其は次第に焦りを感じるようになり、
その焦りが彼の行動を過激にした。
これが市井の者とのトラブルの原因になった。
暴力を用いてさえも、自分の思想を広めようとしたのである。
しかしその彼が高陽の門番時代に劉邦と出会い、
その軍に従うことになって、ようやくその鋭気は
和らげられることになった。

劉邦の率いる漢の軍事力をもって儒家思想を
天下に広めることが可能になったからである。
儒家の祖たる孔子は、本来武力による覇道政治を否定し、
仁・義・礼などの徳行の積み重ねこそが
王道だと主張して、その実践を奨励した。
そのため酈食其が選んだ軍事力で
儒家思想を広めるという行為は、
孔子の教えに大きく矛盾している。
そのことは酈食其自身も感じていたが
、孔子の唱えた徳治政治が実現されるためには、
過程よりも結果を重視せざるを得なかった。

劉邦が天下を治めるべき存在になってから、
徳を積み重ねれば良い、と考えたのである。
この当時の儒家の学派間の論争で、
人の性は善か悪かというものがあったが、
酈食其はこれについて独特の視点を持っていた。
人は誰しも生まれたときには無教養であり、
真っ白な布のようなもので、
それが善か悪かは別問題だと考えていたのである。
真っ白な布はどのような色にでも染まり、
洗い直せばまた違う色に染め直すことができる。

しかし、いくら念を入れて洗っても、
再び真っ白な状態に戻すことは不可能に近い。
だから人は多少なりとも色を持つのが普通で、
いつまでたっても純白のままでいることは
なにも学んでいないことの証明だと思っている。

しかしその一方、数々の色に染められ、
布が限りなく黒に近いことも
彼にとって軽蔑の対象であった。
受け入れることは大事だが、ただ環境に影響され、
流されるまま生きていると考えるのである。

酈食其にとって理想的な人物は、
何度も洗い直した跡の残った布を持つ人物なのであった。
人の本性が善であろうと悪であろうと関係なく、
その人の現在が善か悪であるかを重視したのである。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る




歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



あんな男と憎んでみても 
一度の恋といまさら知った  
ひとりぼっちのこの淋しさに 
夜が切ない 新宿の女
『新宿の女 』 藤圭子




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……

『最後の一本』美空ひばり


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



 
                                                       
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2015年8月22日 (土)

妄想劇場・番外編(18禁)

妄想劇場・番外編(18禁)

信じれば真実、疑えば妄想……

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18歳未満禁止の内容が
含まれています
18歳未満の方は
ご遠慮下さい。






メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい。


母子家庭で、生真面目な人生を送ってきた
高校生の涼也。
ある日、母親から、東京で夜の仕事をしていた
25歳の従姉が家に来て、一緒に住むと告げられる。
涼也は、◎◎をふるう従姉が大嫌いだった。……

『アベレージ』 AV・8


……アレを認めてはいけない。そう思う反面、
流れていた血や涙が人間らしく見えた。
どうして血を流す? どうして、涙を流す? 
奈々がソファーに座る音が聞こえた。
涼也は動き出して、居間へ移動する。
奈々は仰向けになって右腕をおでこに当てていた。
左腕の血がソファーに付着しそうだ。
涼也はティッシュ箱を取り、差し出す。
奈々は涼也に目を合わせ、少し間を置いて
一枚、二枚とティッシュを取った。
「痛くないの?」
「痛くない」
痛そうに見えるけれど。涼也がじっと見ていると、
奈々もティッシュで腕を押さえながらじっと
涼也を見つめ返した。

……こんなとき、どうしたらいいのかがわからない。
放っておいたほうがいいのかな。
「ねえ、アンタもあたしとヤりたいって思うの?」
いきなりの問いかけに驚いた。
相手が早河奈々なので、そこまで考えたことはなかった。
でも、そう言われると涼也の本能は反応して、
ムラムラとした欲情が生まれてしまう。
例え、相手が憎い女でも。

「相手があんただし、今まで考えたことなかった」
無難にそう言っておいた。
早河奈々は微かに笑う。
「アンタにとったらあたしは最低の女だもんね。
抱くのもキモイか。……でも、どうしてかな。
あたしはそんなアンタの気持ちが嬉しくも感じるよ」

「なんで?」
早河奈々は視線を俯かせた。
「あたしを性的な対象でみないから」
「ビデオでは……しようとしたよ」 
あはは、と彼女は笑う。
「映像でヌけても実物じゃアレも起たないでしょ」
涼也は口を噤んだ。
「確かに人間じゃないよ。
お金で誰とでもセックスするんだもん。
醜態もたくさん晒した。
あたしは◎乱な◎欲処理機です、って。
そうなると、もう誰もあたしの心を見てくれない。
ヤれる女にしか見られないんだよ」

自虐的な奈々に対して、
涼也は何か言葉を発したいと思ったけれど、
何も言えない。
「今日ね、街に行ったらね、
愛川なるみだーって、男があたしを指差したの。
逃げようと思ったけどすぐに追ってきて、
AV女優、って指差した男が
一緒に居た二人に言ってさあ。囲まれて、
AVの話されて、一発ヤらせてくれって……
しつこく言われてさあ」……

……非道い話だ。本当にそんな人が居るんだな。
「道端なのに気安く身体に触ってきて、
それであたしはキレたの。
うるせえ、もうAV女優じゃない、どっかいけって。
そしたらさあ、ひどいことたくさん言われた。
カメラの前で股を開いてたのに、って。
汚いクソじじいとも喜んで◎◎してたクセにって言われた」
本人を目の前に平気でそんなこと言えるんだな……。

「悔しかった。家に着いたらすぐに涙が流れた。
でもちょっとしか流れなかったから、血を流した」
それがよくわからない。
「人間だと思いたかったから?」
「そうだよ」……この人を、認めては
いけないはずだった。でも、こんなふうに
胸を痛めていることが不気味で、
それでいて妙に人間らしく見えてしまう。
ただ、そうなると一つ疑問に思う。
「だったらどうしてAV女優なんてやったの?」

奈々は鼻で笑った。「訊きたい?」
「言ってくれるなら……」
「そっか。じゃあ、話してあげるよ」
ちゃんとした姿勢で聞いたほうがいい気がして、
涼也は床の座布団に腰を下ろした。
彼女は語りだす。

早河奈々は早河家の長女として生まれた。
弟と両親の四人家族で、親は共働きだった。
父は運送業。母はパートの仕事で
夜遅くまで働いていた。

奈々は父と母が家で仲良くしているところを
見たことがない。
父が仕事ではない時は家で酒をよく飲み、
母が仕事ではない時は、勉強しろと
二人にうるさく言っていた。
時が経つにつれ、両親の心が荒んでいくのが
奈々にはわかった。

何が原因かはよくわからない。
時折、母と父が口喧嘩をしていた。
奈々が中学生になる頃、父は仕事をクビになった。
それから急激に父は変わっていく。
よりアルコールを摂取するようになり、
ギャンブルにも手を出した。
そんな父を母がヒステリックに怒鳴ると、
更に怒号を返して時には母をぶった。
その様子を眺めていた奈々も弟も、
同じようにぶたれた。

奈々は、学校では良い成績を収めていた。
やることをやって結果を出していれば、
母は何も言わない。だから自主的に、
勉強する努力を続けた。
ただ、母はいつの間にか弟には甘くなっていた。
うるさく言うこともあるけれど、
弟に対しては大目に見ていた。
努力もしないのに良い扱いをされる弟が、
羨ましくて憎かった。

母は、兄の妻と親しかった。
時々は奈々と弟を連れて兄の家に遊びに行った。
そんなとき、奈々は弟と母の兄の息子、
涼也の世話をさせられた。
涼也が活発に動けるようになると五人でよく出かけた。
母は弟と涼也を兄弟のように見て可愛がる。
一緒に居る奈々は疎外感を覚えていた。
そんななか、涼也の母親は、
すごく優しかった。まるで娘のようにも扱ってくれる。
奈々は「母親はこっちがいいな」と思うこともあった。

涼也が言葉を覚えると、奈々に対して
生意気な口を叩くことがあった。
奈々にも原因があったのかもしれないが、
中学生の彼女には配慮などできるはずもなく、
憎しみに駆られてよく涼也を泣かせてしまう。
それが発覚すると、母は奈々を強く叱って
何度もひっぱたいた。
そうして、いつしか兄の家を訪ねなくなった。

高校二年の終わり頃になると、
初めて好きな人ができた。
相手は、バイトをして持てるようになった携帯の
サイトで知り合った二十六歳の男性。
写真交換もし、顔は悪くないと思った。
会いたい想いはお互い募り、奈々の方から
彼が住んでいる東京まで会いに行った。
当日、そこまでする気はなかったのだが、
奈々は彼に迫られて肉体を捧げた。
二人は東京で同棲する約束を交わす。
奈々が高校を出たら二人で暮らし、
幸せになろうと甘い理想をお互いに描いた。

つづく

Author :水谷広人
http://syosetu.net/pc/



(※濡れ場)安達祐実 



Tinko_2
人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば言い訳と、愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる




P R
カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語
                                                       
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2015年8月20日 (木)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……

Mituo2_2

昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー





「筆づかいがいいですね

私が絵手紙を始めたのは、
「たまたま」が重なったおかげです。
ある日、インターネットで見た、愛媛の文房具屋さんに
無地のはがきを注文しました。
届いたのは、絵手紙用の「画仙紙はがき」。
「画用紙はがき」のつもりだったのに
間違って注文してしまったのです。
「返品しようかな」と思いました。
伝票を見ると、請求金額の下に手書きの
メッセージがありました。
「たくさん練習して、絵手紙ライフを楽しんでください!」

100枚も注文したので、絵手紙の練習用に
買ったと思われてしまったのです。
「絵手紙には少し興味があるし、  
お店の人も勘違いしてくれたみたいだし、
試しにやってみようかな」と思い直し、
改めて、筆、顔彩、はがきなどが入った
「初心者セット」を購入しました。

早速一枚描いてみました。ものすごく下手、
思わず破いて捨てようかと思いました。
ところが、セットに入っていた描き方の冊子に
こう書いてありました。
「下手でいい。必ず投函しましょう」
捨てたらバチが当たりそうな気がしたので、
購入した絵手紙問屋さんに送ることにしました。

すると数日後、スタッフの方から
こんなメールが届きました。
「お客さまから絵手紙をいただいたのは初めてです。
筆づかいがいいですね!」
思わず舞い上がってしまいました。

褒め言葉を100パーセント
信じたわけではありませんが、
「下手だけど、もしかしたら筆づかいは
いいのかしら?」と調子に乗りながらも
嬉しくなりました。

メールをくれたスタッフの方は
まさかあのひと言で、 私がやる気になったとは
夢にも思っていないことでしょう。
でもあの時、ひと言褒めてもらっていなかったら、
私は絵手紙を1枚描いただけで
辞めていたと思うのです。
「たかがひと言、されどひと言」……
ひと言の大切さを学びました。


Author:Hami


『お婆ちゃん猫の武勇伝』




『新幹線』


JR東海の孫請けの磯部軌道工業という
会社があります。
この会社の社長・磯部勝介さん(63)は
高校卒業後、新幹線の保線工事
一筋で生きて来られました。
そこには、普通のビジネスマンには
計り知れない苦労があると言います。
工事は新幹線が運行していない夜間に限られます。
最終が到着した12時過ぎからが仕事です。
よって、昼夜逆転の生活になるので、
家族の協力がないとできません。
何より、始発まで完了しなくてはならないという
精神的な負担も大きいのです。

枕木の交換など計画的に行われる
作業だけではありません。
台風や大雨など緊急時に出動しなくてはなりません。
地震は予測ができず突然に起こります。
そのため、携帯電話の緊急網ができているそうです。

磯部さんは言います。
「お呼びがかかれば何があっても行かなきゃならない。
それが使命だから」
社内のビジネスマンや旅行客は、
最新鋭の車両やそのスピードに感嘆することはあっても、
レールや枕木の状態を想像することはまずありません。
軌道の高低や左右のわずかなずれや狂いがあれば、
そこで新幹線は徐行せざるをえず、
発着時刻にも影響します。

世界的にも有名な新幹線の安全性と定時制。
その背景には、私たちが知らないところで、
365日、 真夜中に保線工事をしている人たちが
いるから成し得ることです。
磯部さんは言います。
「何事もなく定時に走らせる。
それが使命であり、誇り。  
工事の後、誰からも何の連絡もなく、
朝の交通情報で  『東海道新幹線は
きょうも平常運転中です』って聞くのが
やりがいですから」

平常運転。つまり何事も起きなくて当たり前。
その当たり前が「やりがい」だなんて、
なんてカッコイイんでしょう。

新幹線が50年間もの長きにわたって、
「安全」を保って来られたのは、 こうした
陰の仕事をしている人たちがいるおかげであることは
間違いありません。 そうなんです。
50年もの間、「安全」であり続けてきたという
「奇跡」を成し遂げられたのは、
真夜中に保線工事をしている人たちのおかげなのです。

トヨタのおもてなし レクサス・星が丘の奇跡
「一日1000回お辞儀をする警備員の話」も同じです。
「お辞儀」なんて、普通のことです。
当たり前のことです。 でも、当たり前のことを、
当たり前でないくらいに、徹底してやり続ける。
その結果、「奇跡」が起きました。

でも、この本の中に書かれているのは
「棚から牡丹餅」は一つもありません。
黙々と、人知れず努力している人に、
神様がある日、プレゼントしてくれるもの。
それが「奇跡」であるとするなら、
レクサス星が丘のスタッフの皆さんの事を
「奇跡」と呼んでも差し支えないかな、と
思いました。

世の中にはきっと、日夜人知れず、
世の中の為に働いている人が大勢いいるはずです。
そういう人こそ、カッコイイ! と、思いました。

Author:志賀内泰弘


『嗅覚が人間を助けていた!』



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる





 
 
 
                                                     
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2015年8月19日 (水)

妄想劇場・一樂編

妄想劇場・一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



Mituo
人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ





『たいせつなひと』(2/2)


次の日、チホ姉ちゃんの姿はなかった。
「俺が母さんにチクったから…?」と、
心配になって、アイスも買わず、
さっさと家に帰った。
当然、母さんは帰ってきてないので、
病院に電話をかけてみた。

「今日、チホ姉ちゃん、おらんかったけど、
どしたん?」
「んー、今日ねぇ、ちょっとお姉ちゃんは
体を悪くしちょるんよ」
「大丈夫なん?」
「大丈夫よ。でも、お姉ちゃんと遊ぶのは、
もうやめたらどうなの?」
「なして」
「なしてって、、、」

この日から、チホ姉ちゃんが外に
出てくることはなかった。
夏休みが終わるぐらいに、
俺はチホ姉ちゃんのお見舞いに行くことにした。
母に連れられ、病室にいくと、
とても痩せたチホ姉ちゃんがいた。
綺麗な黒髪も、今は何となく
つややかさが消えていた。

チホ姉ちゃんは俺を見るなり、
大きい目を細くして、微笑んでくれた。
「珍しいお客さんね」
「体大丈夫?」
「大丈夫よ」チホ姉ちゃんは、
ベッドの机で何か手紙を書いていたのを、
俺から隠すように、裏にした。

「友達もみんな、チホ姉ちゃんが
来なくなって寂しくなってさ」
ホントは俺が一番寂しかった。
「そっか。ごめんね。お姉ちゃん、体弱くて…」

「早く元気にならんといけんよ。
待っちょる人がおるんやろ」
「そうね。元気にならんとね」
俺とチホ姉ちゃんは一日中、
折り紙遊びやTVを見ながら過ごした。
次の日も、その次の日も、友達と遊ばずに、
チホ姉ちゃんと過ごした。

夏休みが終わると、平日の夕方か、
日曜日しか、チホ姉ちゃんに会えなくなった。
チホ姉ちゃんの親にも会った。
弟ができたみたいね、と俺を可愛がってくれた。
母さんも、「お姉ちゃんができて良かったわねぇ」と
言ってくれていた。
そんな日が、ずっと続くと思ってはいなかった。

冬か、秋の終わりごろの土曜日だった思う。
俺は学校が終わるなり、すぐに
チホ姉ちゃんに会いに行くのが日課だった。
いつも通り、いろんな話をしていると、
チホ姉ちゃんが口を押さえて、
白いベッドを真っ赤にした。吐血した。
チホ姉ちゃんは真っ赤に染まった手で
ナースコールを押し、ベッドから転げ落ちた。
俺はどうすればいいのか分からなかった。
チホ姉ちゃん、チホ姉ちゃん、と
泣き叫んでいたと思う。

すぐに看護婦がやってきて、色々と手当てをした。
俺は病室を追い出された。
廊下から、チホ姉ちゃんの血を吐く音、
うなる音、咳き込む音が聞こえて怖くなった俺は、
泣きながら家に走って帰った。
家に帰るなり、部屋にとじこもって泣きまくった。
夕飯も食べず、泣いて泣いて泣きまくった。
泣き疲れて、いつの間にか寝ていた。
起きたのは4時20分
(時計を見たのをめちゃくちゃ覚えている)。
まだ暗かったが、玄関から物音が聞こえて起きた。
どうやら母さんらしく、俺の部屋に
向かってくる足音が聞こえる。
母さんが俺の部屋のドアを開けた。
俺が起きているのに気づいて、目をカッと開いた。
「千穂ちゃん、死んじゃったわ…」
予期していた言葉だった。とはいえ、
全身をつらぬく言葉であった。
俺は返す言葉もなく、ただ押黙っていた。
母さんは静かにドアを閉めた。
チホ姉ちゃんは、もういないんだ―…
次の日、チホ姉ちゃんの通夜があった。

俺は親戚でもなんでもないので、行くことはできなかった。
葬式は、母が俺が風邪をひいた、と嘘をついて、
葬式に行かせてくれた。
棺桶からチホ姉ちゃんの顔を見た。
ホント、今にも起きそうな顔だった。
体を触ると、現実を思い知らされることを知っていたので、
触ることはできなかった。
チホ姉ちゃんの前では泣かない。決めていた。
チホ姉ちゃんを焼き、骨壷にいれる時が来た。
お腹の部分の骨は全くなかった。

俺は震える手でチホ姉ちゃんをいれた。
変わり果てたチホ姉ちゃんを
正視することすらできなかった。
葬式が終わって数日後、
チホ姉ちゃんの母親から封筒がきた。
なんでも、チホ姉ちゃんが俺に手紙を
封筒の中に残してくれていたという。

ユウトくんへ。これをよんでいるということは、
私はついに死んじゃったのね。
私が死んでどれくらいたったかな?
“死ぬ”って言っても、消えるわけじゃないんだよ。
ユウトくんから見えないだけで、
お姉ちゃんはずっと、ユウトくんを見てるよ。
ほら、今、となりにいるでしょう。
いつもびょうしつに入ってくるときに言うように
「千穂姉ちゃん」ってよんでください。
私はあれを聞くのを、毎日楽しみにしていたよ。
今だって聞きたい。
ユウトくん。泣いてないよね?
元気あふれるユウトくんを見ていたいから。
おせわになりました。楽しかった。
ありがとう。10月12日千穂姉ちゃんより。
それと、封筒の中に小さい封筒が一つあった。

手触りだがその封筒の仲には
手紙が何枚かあった。封筒には
「私のたいせつなひとに書いたお手紙です。
見つけたらわたしてください」と裏にあった。
チホ姉ちゃんからは、その「たいせつなひと」の
話を全く聞いていなかった。
当然、俺に預けたって無駄って分かっていただろう。
じゃぁ何で俺に頼んだんだろ、と思った。
いつかは、「たいせつなひと」について
話すつもりだったのだろう。それを話す前に、
あっけなくチホ姉ちゃんは死んでしまったが。
チホ姉ちゃんがあのバス停でずっと
待っていたことを思い出した。
学校の帰りに、バス停に止まって
バスから降りてくる人の中でチホ姉ちゃんと
同じ中学生くらいの男子を探した。
いつでも会えていいように、ランドセルには
いつも封筒をいれていた。

あれから十数年。結局、
「たいせつなひと」に会えることはなかった。
家の大掃除をしていたら、タンスの中から
あの封筒が出てきて思い出した。
チホ姉ちゃんとの不思議な夏の話でした。
その封筒は、まだ開けていない。
……おわり


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



『バス運転手・赤ちゃん 』




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と言い訳になるから……




P R
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漢の韓信-(101)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信

紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。




漢の韓信-(101)

「韓信、信頼を裏切るような行動はとるな。
君をいちばん最初に見出したのは、この俺だぞ。
その俺の顔に泥を塗るな」別れ際の
夏侯嬰の言であった。

「私がいつそのような行動をとったというのだ。
このたび私は確かに趙で逡巡して活躍できなかったが、
それは私自身の抱える問題に原因があったからで、
ことさら大王の破滅を願ったからではない。
これによって私が裏切ると考えるのは
大王の思い込みであり、妄想だ」
韓信はそう言い、身の潔白を主張した。

「ならいいが……大王は、君を信頼している。
いや、信頼せざるを得ないのだ。
強国斉を討伐する任務を与えられる者など、
漢には事実上君しかいないのだからな。
単独行動を許され、
大王の目の届かないところにいるのをいいことに、
変な気をおこしてくれるなよ」

夏侯嬰は返事を待たず、劉邦を車に乗せ、
修武の地をあとにした。
劉邦の韓信に対する思いは微妙としか言いようがない。
当初の構想どおり魏、代、趙、燕、斉は
攻略してもらわないと困る。

しかしそれに成功しすぎて韓信の勢力が
劉邦のそれを上回ることがあってはならなかった。
このため劉邦は韓信が武功をあげるつど、
理由をつけて兵を取りあげて勢力を削ぎ、
魏蘭の言うような韓信を首領とする
私兵集団が形成されることを阻害した。

しかしそれが何回も続けば、韓信にも不満が生じる。
不満は叛逆の種となり、劉邦としては
韓信に叛逆されれば太刀打ちする手段も能力もない。
そのため懐柔することも必要であった。
すなわち劉邦は印綬を返さず、
韓信を趙の相国に任命したのである。

つまり、印綬は新たに作り直されたのだった。
相国とは総理大臣に相当する内政の長のことをいう。
丞相とどう違うかは諸説あるが、
臨時的に丞相の上に置かれる地位であると
解釈すれば問題ないであろう。

しかしいずれにせよ、韓信がこの措置に
満足したどうかはさしたる問題ではない。
ただ、地位を与えられた以上はそれに相当する
職務を遂行しなければならない、という
義務が生じたのは事実であった。

これにより、韓信は気持ちを改めざるを得ず、
斉への征旅を開始した。
「私は、そんなに危険人物だろうか。
印綬を取りあげられるほどにらまれる覚えなど
私にはないというのに」
そう愚痴りたくなるのも無理はない。

たしかに半年もの間ぐずぐずと行動をせずに
いた自分も悪いが、彼が行動するということは、
ひたすら人を殺す、ということなのである。
地位と名誉を引き換えに、とは
よく使われる台詞であるが、
彼自身はその両方とも人並みでさえあれば
構わなかった。

そのような状況にあって、逡巡するのは
むしろ人としての証ではないか。
「印綬が新しくなって戻ってきたのは
喜ぶべきことでしょう。
結局待遇は以前より良くなったことも、
やはり喜ぶべきです。
曹参さまは以前にも行動を共にしたこともございましたし、
灌嬰さまはまだお若く、
監視としては警戒すべきようなお方ではありません」
蘭はそう言いつつも、不安を禁じ得ない。

韓信の将来が見えてこないのである。
天下が乱れているうちは、
韓信は劉邦にとって必要な存在であるが、
いずれ項羽を討ち、世が泰平になった際、
韓信はその能力のゆえに存在を
許されなくなるのではないか、と思うのである。

しかしその思いはこの時点では漠然としていて、
解決方法も見えてこない。また、
劉邦が項羽を討つと決まったわけではなく、
その逆の可能性の方が現状では高いのであった。
「印綬がなくなって、私はこのうえもなく不安を感じた。
これは私が漢王の臣であるということを
如実に示していると思う」

韓信は今朝の出来事を振り返るかのように話し始めた。
その表情は、苦い薬を無理に呑んだようなものである。
自分にとって良いことなのか悪いことなのか
よくわかっていない様子であった。

「どういうことですか?」
「わからぬか? もし私に叛意があれば、
印綬などなくても行動は可能だ。
大沢郷で挙兵した陳勝・呉広に印綬があったか? 
会稽の県令を殺して自立した項梁に印綬があったか? 
沛で挙兵した漢王は印綬をもっていたか? 
答えはいずれも否である。

人が人に叛くときには印綬など必要ないのだ。
しかし私は印綬なしに行動することを、
どうやら本能的に嫌っているようだ。
こんな私が漢王に叛くなど……」
「あり得ない、と? では、将軍は心から
漢王に忠誠を誓っておられるのですね」
蘭はこのとき韓信が即座に肯定するものと
思っていたのだが、その答えは意外なものだった。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る




歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『池袋の夜』青江三奈



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



『恋は不思議なもの 』美空ひばり




時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる







 
                                                       
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2015年8月12日 (水)

妄想劇場・一樂編

妄想劇場・一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



Mituo
人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ





『たいせつなひと』(1/2)


俺が小学3、4年で夏休みの話。
小学校の夏休みは、遊びまくった覚えしかない。
俺は近所の男子と、夏休み中
開放されていた学校の校庭で午後1時から
体力づくりの名のもと遊んでいた。

※午前中は勉強しろ、と先生が言って、
午前中は開放されてなかった。んで、
大体、午後5時くらいになって解散して、
帰りの50円のアイスを商店街の、
とある店で買っていた。

それを食べるとこは、あまり使われていない
駐車場だった。
5時を過ぎると、アイスを食べて雑談している
汗だらけの小学生でいっぱいだった。
駐車場のすぐ隣にはバス停と、
バス停の後ろには公衆電話があった。

夏休みが始まってちょっと経ってからだったと思う。
いつも通り、駐車場でみんなでアイスを食べていて、
バス停に目をやると、中学生ぐらいの女の子がいた。
目は大きい二重で、髪は肩ぐらいの黒髪で、
背は150cmあるかないかだったと思う。
背は小さかったけど、大人な感じがした。

その女の子は、商店街にある時計台と
バス停に書いてある時刻表をせわしく見ていた。
「誰かを待っちょるんかなぁ」と、
その時は思っただけだった。

次の日、例の如くアイスを買いに行ったら、
またあの女の子がいた。相変わらず、
時計台とバス停の時刻表をせわしく見ていた。
「恋人でも待っちょるんかなぁ」と
他人事のように思って、
その恋人とやらが気になった。
しかし、家の門限が6時半までなので、
そう長くは駐車場におれず、いつも6時ぐらいには
駐車場でみんなは解散していた。

その女の子は、6時になっても、
時計台とバス停をせわしく見ていた。
その次の日。特別暑かった日だった。
友達が2人ぐらい倒れたと思う。
学校にいた事務の先生が「今日は暑いけん、
さっさと帰りんさい」と言って、
3時ぐらいに早くも家に帰されることになった。

友達数名と、アイスを買いに行ったら、
また、バス停にあの女の子がいた。
時計台とバス停の時刻表をせわしく見ながら。
さすがに友達も女の子が気にかかり、
「昨日もおらんやったっけ?
(いなかったっけ?)」と口にした。
「ああ、いたね」と、適当に返事をしたと思うが、
この女の子は3時から待っていて、
俺らが家に帰る6時以降もここにいるのを気付いて、
すごく衝撃的だった。

この暑い中、誰を待ってるんだろう。
ガキながら、めちゃくちゃ気になっていた。
そして、いつも通りの日が続いて、日曜日になった。

日曜日は、学校が開放されていないので、
みんなは家で遊ぶか暇を弄ぶぐらいだった。
俺はあの女の子が、何時からバス停にいるのだろう、と
好奇心で、11時ぐらいにバス停へ向かった。
さすがにこの時間にはあの女の子はいなかった。
しばらく待っていよう、と持ってきたお金で
アイスを買って、駐車場に座って待っていた。

1時になるかならないかぐらいだった思う。
あの女の子がやって来た。
その足どりはとても不安定で、
今にも転びそうなほど弱弱しかった。
また、この暑い中、誰かを待つのか―…
とりあえず、こんな暑い中、外にいると
気が狂いそうになるからすぐに家に帰った。

そして4時ぐらいに、夕立が来た。
結構激しい雨だった。あの女の子は、
傘をもっていなかったことを思い出し、
傘を持って行くことにした。

その女の子は濡れながら、バス停にたっていた。
傘を渡すと、
「あれ、さっきいた子?」と聞いてきた。
とても高い声で、そして弱弱しかった。
「さっきもいたけど、いつもおるんで」
「あぁ…5時10分らへんになると、
たくさん小学生が来るわね」

「学校の校庭で、遊んでるんだ」
「そう。楽しそうね」
「楽しいよ」しばらく、沈黙が続いた。

雨が叩きつける音が、響いていた。
「なぁ。ここにいっつもおるけど、
何しちょんの?(何をしているの?)」
しまった、首を突っ込みすぎたか、と
ガキながら、冷や汗をかいた。

「ははは。お姉ちゃんはね、ある人を待ってるの」
「ある人って恋人とか?」
「秘密」その女の子は、大きな目を細くして微笑んだ。
ガキの俺は、少しドキッとした。
胸のドキドキがヤバくなってきたので、
さっさと家に帰ろうとしたら、
女の子が傘を返そうとした。
明日、返してくれればいい、と返事をして、
急いで帰った。

次の日、やはりその女の子はいた。
俺を見つけると、大きな目を細くして、
微笑みながら手を小さく振ってくれた。
周りの友達はザワザワとなっていたので、
とても恥ずかしかった。
傘を受け取り、アイスを食べながら、
友達からすごい質問攻めにあったが無視をした。

チラッとその女の子を見ると、
やはり時計台とバス停の時刻表を
せわしく見ていた。
そしていつも通りの日がまた何日か経った。

女の子は俺ら小学生に混じって、
じゃんけん遊びやしりとりとか、
いろんな遊びを一緒にした。

女の子の名前は千穂。
見たことも聞いたこともなかったから、
最近よくある「カタカナ名前」か
何かだろう、と思っていた。
ある日、家に帰って夕食を食べていると、
母さんがこんな愚痴をこぼした。

「うちの病院に困った人がいるのよー。
病室を抜け出しては遅くに帰ってきてなぁ。
どこで何しちょる(している)か
知らんばってんが(けど)、
こげん暑い中、外に出ちょったら、
責任とれんわぁ」

父さんは、「ボケてるのか?大変だな」
「違うわよ、中学生の女の子でねぇ…。
ガン(小児がんらしい)なんよ」
「へぇ。そりゃ困るなぁ」
「まぁ、先生(医者)もこりゃ治らんっち
言いよるけん、
御両親も先生も、好きにさせりゃいい、とか
言っちょるんよ」

母さんは病院の看護婦だった。
すぐ近くにある大きな病院だ。
千穂のことかな、と胸にグサッときた。
次の日。いつも通り、チホ姉ちゃんはいた。

病院から抜け出す―…母の愚痴が思い浮かんだ。
チホ姉ちゃんに、間違いない。
細い腕、細い脚、弱そうな感じは、
いかにも病人らしかった。
その日、母さんにチホ姉ちゃんのことを
言ってみた。
チホ姉ちゃんに間違いなかった。

俺は、チホ姉ちゃんが治らない病気に
なってることがショックだった。
その日はずいぶん泣いたと思う。
「死ぬ」っていうのはガキながら
よく分かっていた。
じいちゃんが交通事故で即死したからだ。
あの悲しみが、じわじわと、
胸に湧いていた。
…続く



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



『病室で歌った校歌』




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と言い訳になるから……




P R
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2015年8月11日 (火)

歴史・履歴への許可証

歴史・履歴への許可証

昨日という日は歴史、
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明日という日はミステリー

夢はでっかく、根はふかく。
花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 
根はみえないんだなあ


Kobanasi_3


『スーホーの白いウマ』モンゴルの昔話

むかしむかし、モンゴルの草原に、
スーホーという歌の上手な若者がすんでいました。
スーホーはお母さんと二人で、
ヒツジをかってくらしていました。

ある日スーホーは、ヒツジに草を食べさせにいったきり、
日がくれても帰ってきません。
お母さんが心配していると、スーホーは
生まれたての白い子ウマをだいて帰ってきました。

「まあ、きれいな子ウマだね。どうしたんだい?」
お母さんが聞くと、スーホーはうれしそうにいいました。
「帰るとちゅうで見つけたんです。
持ち主もやってこないし、母ウマもいないんです。
夜になってオオカミにでも食われたらかわいそうだから、
つれて帰ってきました。うちでかってやりましょう」

スーホーは白い子ウマをとてもかわいがって、
だいじにだいじに育てました。
子ウマはどんどん大きくなり、やがて雪のように
まっ白な、りっぱなウマになりました。
スーホーと白いウマは、なかのよい兄弟のように、
いつもいっしょです。

ある日のこと、村にすばらしい知らせがつたわりました。
王さまが若者たちを集めて、
競馬(けいば)大会をひらくというのです。
そのうえ優勝したものは、王女のおむこさんに
むかえられるというのでした。

それを聞いた村の人たちはいいました。
「スーホー、いっておいでよ。
おまえならきっと優勝できるよ」

そしていよいよ、競馬大会の日がやってきました。
国じゅうから、じまんのウマをつれた若者が集まりました。
けれど、白いウマにのったスーホーにかなうものは
一人もおらず、スーホーが優勝したのです。

「あの若者と白いウマを、ここへよびなさい」と、
王さまはいいました。
スーホーは、大よろこびです。

ところが王さまは、スーホーが貧乏(びんぼう)な
ヒツジ飼いだとわかると、王女のおむこさんにするのが
いやになってしまいました。
王さまは、つめたくいいました。
「その白いウマをおいていけ。そのかわりに、
黄金三まいをおまえにやることにする」
これを聞いたスーホーは、ビックリです。

(この白いウマは家族のようなものだ。
それをお金で買おうなんて、なんてひどいことを)
スーホーは、王さまの命令をことわりました。
すると王さまは、顔をまっ赤にしておこり出し、
「王のいうことを聞かぬぶれい者め。
この者をムチでたたくがよい」

家来たちはスーホーを、ムチでピシピシうちました。
キズだらけになったスーホーは見物席の外へ
ほうりだされ、王さまは家来に白いウマをひかせて
帰っていきました。

スーホーは友だちに助けられて、やっと家に帰りました。
ムチのために、すっかりボロボロになったスーホーは、
何日もねたきりでした。
でも、お母さんのひっしのかんびょうで、
だんだん元気になりました。

ある晩のことです。トントンと、
門の戸をたたく音がしました。
「だれだい?」返事はありません。
「なんの音だろう?」外に出たスーホーはビックリ。
白いウマが、門のそばにたっていたからです。

「お、おまえ、帰ってきたのかい」
スーホーはかけよって、思わず白いウマをだきしめました。
ところが白いウマの体には、何本ものするどい矢が
つきささっているではありませんか。
「なんて、ひどいことを!」
スーホーは夢中で矢をひきぬき、
お母さんといっしょにキズの手当をしてやりました。
けれど白いウマは、つぎの日、死んでしまいました。

やがてスーホーは、白いウマがもどってきた
わけを知ることができました。
王さまは白いウマを手に入れたのがうれしくて、
人びとをよんで酒もりをはじめました。
ところが、おおぜいの人びとのまえで
白いウマにのろうとしたとたん、白いウマは
王さまをふりおとしてしまったのです。

おこった王さまは、家来たちにむかってさけびました。
「あのあばれウマをつかまえろ。
つかまらなければ、殺してしまえ」
家来たちは、にげていく白いウマにむかって、
雨のように矢をあびせました。
それでも、白いウマは走ったのです。
体に矢がささりながらも、なつかしい
スーホーの家にむかって、死にものぐるいで
走ったのです。

白いウマは自分をかわいがり、
育ててくれたスーホーのそばで死にたかったのでした。
白いウマが死んでから、
スーホーは悲しくて、くやしくて、
夜もなかなかねむれない日がつづきました。
そしてある日、スーホーは弓矢を取り出すと、
その弓矢の手入れを始めました。
白いウマのかたきをうつため、
この弓矢で王さまを殺そうと思ったのです。

待っていろよ。あしたの朝、あの王さまを殺して、
おまえのかたきをうってやるからな
その日の晩、スーホーのゆめの中に、白いウマが
あらわれていいました。
「スーホーさん、わたしのかたきをうつことを
決心してくれてありがとう。ほんとうにうれしいです。
でも、もう、わたしは死んでしまっています。
王さまを殺しても、わたしが生き返ることはありません。
それどころか、あなたも殺されてしまうでしょう。
どうか、かたきうちはやめてください。
それより、ひとつお願いがあるのです。

どうかわたしの体で琴(こと)をこしらえてください。
わたしは琴になって、いつまでもあなたのそばにいます」
つぎの日、スーホーは白いウマの骨としっぽをつかって、
琴をつくりました。
さおの先は、白いウマの頭のかたちをきざみました。
やがてスーホーは、草原でヒツジのばんをしながら、
いつもこの琴をひくようになりました。

美しい琴の音と、むねにしみるそのしらべは、
ほかのヒツジ飼いたちにとっても、
このうえないなぐさめとなりました。
スーホーの琴が聞こえてくると、みんなは
一日のつかれをわすれて、じっとしずかに
その音色に耳をかたむけるのでした。


おしまい




人の為(ため) と
書いて、
いつわり(偽) と
読むんだねぇ





誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……。



小泉八雲の怪談「小豆とぎ橋」




時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる 







 
                                                       
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妄想劇場・番外編(18禁)

妄想劇場・番外編(18禁)

信じれば真実、疑えば妄想……

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18歳未満禁止の内容が
含まれています
18歳未満の方は
ご遠慮下さい。






ジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい。



母子家庭で、生真面目な人生を送ってきた
高校生の涼也。
ある日、母親から、東京で夜の仕事をしていた
25歳の従姉が家に来て、一緒に住むと告げられる。
涼也は、◎◎をふるう従姉が大嫌いだった。……

『アベレージ』 AV・7

早河奈々は夕飯に帰ってこなかった。
母の携帯には何の連絡も入っていない。
あんな奴のことなんてどうだっていい。
そう思ってはいるが、涼也は頭の片隅で気にしていた。

涼也がベッドに就いた頃にはちゃんと帰ってきた。
母が心配の言葉をかけ、
奈々は久しぶりに会った友人と遊んでいたと言っていた。

次の日から、奈々と涼也の会話が無くなった。
目を合わせれば奈々に一瞬だけ睨まれ、逸らされた。
涼也は、自慰行為ができなくなった。また、
そんな気になれなかった。
事の重さに耐え切れず、伊知郎に
ぶちまけようかと悩むが、話せずにいた。

打ち明けようとすると奈々の憎悪に満ちた顔が
目に浮かぶ。
涼也の首を絞め、睨む顔がちらついた。
涼也は、家に居るのが嫌になっていた。
学校から帰って玄関を開けるとき、
奈々が居るかどうかを真っ先に確認してしまう。
奈々は涼也と喋ろうとしなかったが、
母の前ではいつも通りでいた。

元々涼也が住んでいた家なのに、
二人が喋っているときは涼也自身が
違う家の人間に思えていた。
あの日から数日が経った平日、
涼也はいつものように奈々の存在を気に留めながら
帰宅した。

玄関に靴はある。居るのかと気を落としたが、
奥の居間に気配を感じられなかった。
確認したところ、奈々はそこに居ない。
服を着替えながら、家の中の気配を探ったが、
物音一つしない。
トイレかと思いそちらの方に気を配り、
着替えた後はベッドに腰掛け数十分様子を窺ったが、
動きを感じられなかった。

涼也自身、今の状況が嫌だった。
少しは会話を交わしておいたほうが楽な気がした。
相手はサディスティックな元AV女優。
その異端さは腫れ物のように思えたが、
勇気を振り絞って、自分も早く用を足したいという名目で
トイレの前に立った。

「ねえ、居るの?」 中の音に意識を向けるも、
何も聞こえない。戸をノックしてみたが、
返答は無かった。
思いきって開けてしまおうとしたが、止めた。
風呂場を確認してからにしようと思い立った。

脱衣所に移動いったら、
「くんな!」風呂場で声が響いた。
「風呂に入ってるの?」
「そうだよ」奈々は威圧的な口調だった。
なぜか、脱衣場に衣服は脱がれていない。
「ここに服が脱がれてないんだけど。
着替えもないよ? 
出てきたら全裸で居間に移動する気だったの?」
返答を待ったが、何も返してはこない。

「まあ元AVやってたヒトだから
そんなこともできるか」
なぜそんなことを言ってしまったのか。
きっと、根に持っていた憎しみを吐きたかったからだろう。
物凄い反論と罵倒が飛んでくるか身構えていたが、
何も言ってはこなかった。
だから、もっと攻撃してやろうと、涼也は口を開いた。

「自分でAVやってたクセしてムチャクチャだよね、
僕の首絞めて髪掴んでさあ。
アンタは昔からそうだったよな。
気に入らないからって五、六歳の子供を
平気で蹴り飛ばしたり殴ったりするし。
同じ人間じゃないって思ってたけど、
ビデオであんな汚い醜態晒せるなんて、
本当に人間じゃなかったんだな」

「うるせぇ!」浴室に強く声が響いた。
奈々の逆鱗に触れることができた。
それが恐ろしくもあり、同時に手ごたえのようなものが
感じられた。 今日はとことん戦ってやろう。
僕も男だ。僕が受けた痛みを、
ここで全て晴らしてやる 

中で、動く音が聞こえた。
風呂場の戸がスライドし、
裸体で出てくるのかと想像したが、
ちゃんと服を着ていた。
右手には、カッターナイフ。
そこに疑問を感じた瞬間、
涼也は胸倉を掴まれて刃を目に向けられた。

「もっぺん言ってみろ!」気丈な言葉とは相反して、
奈々の表情は歪んでいた。
頬に雫が伝っている。
涼也は一瞬、顔を洗ったのかと勘違いした。
そうではなく、彼女は洟をすすり、目を潤ませていた。

「ごめん……泣いてると思わなかった」
カッターに怯えながらも罪悪感が襲ってきた。
ふと奈々の腕が視界に入り、異変に気づく。
「血が出てる!」左の袖がまくれ上がっていて、
手首から血が滴っていた。
腕に無数の古傷もみえる。

「ああ、血が出てるよ? 
自分で切ったんだからなあ。
ちゃんと人間の赤い血が流れてるだろ? 
テメェも流してやろうかあ!」
そう言って更に涼也の顔の間近に刃を近づけられる。

「落ち着いてよ、おかしなこと言ってごめん」
胸倉を掴む手とカッターが震えていた。
手元が狂えば涼也の目に刺さりそうだった。
すると、急に力が抜けた。

早河奈々は涼也を離し、うなだれた。
「リョウの言うとおり……あたしは人間じゃないんだよ」
彼女は涼也に目を合わせた。
もう睨んでいない。悲しげな瞳だ。
目線が逸れると、カッターを床に落として、
涼也とすれ違って風呂場を出ていった。


つづく

Author :水谷広人
http://syosetu.net/pc/



お色気バージョン (※伊豆の佐太郎)




Tinko_2
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誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば言い訳と、愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる




 
                                                       
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2015年8月10日 (月)

漢の韓信-(100)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin

韓信

紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。

漢の韓信-(100)


「いま私は趙の国境の南の端までたどり着き、
この修武に駐屯しております。
確かにここから滎陽までは、黄河を挟むのみの
ごくわずかの距離に過ぎません。
よって趙の内政状況など捨て置き、
大王のもとへ馳せようと思えば、そうできたでしょう。
しかしあえてそれをしなかったのは、
私が趙を離れるのをいいことに、
楚が介入することを心配したからです」

これも事実であった。しかし
事実のすべて、ではない。
韓信が積極的な軍事行動に出なかったのは、
確かに彼自身の鋭気の喪失によるものが大きい。

それはカムジンを失ったことから始まる
軍事に対する倦怠感、目的意識の喪失、
さらには以前より存在した漢王劉邦との
信頼関係への疑惑……
などが重なり合った結果によるものだろう。

韓信は趙国内の鎮撫の必要性にかこつけて、
滎陽の危急をやり過ごしたのである。
劉邦は、そのすべてを見通したわけではないが、
そこを見事に突いた。
「お前のいうことはいちいち正しいが、
楚の主力はわしを狙っているわけだし、
趙の国難に介入する楚軍の勢力など
たかが知れたものだろう。
それに趙国内の鎮撫活動についても、
なにもお前が直々に行う必要はないのだ。
すべて張耳に任せておけばよい。
そのための趙王であろう」

「はぁ……しかし……」
「それとも趙の民衆を手なずけて、
国力を蓄えて自分の勢力とし、
わしが楚に敗れて敗走すると、
それを大義名分として楚を討つ……。
そして項羽を屠ったのち、返す刀で
漢も討つつもりか。
お前ならそれもできないことはあるまい」

「……お戯れを……!」
韓信は比較的感情を表に現さない男であったが、
この時は額に脂汗が浮かんだ。
劉邦はそんな韓信の顔をまじまじと観察し、
韓信が真剣に受け止めていることを確認すると、
自分が発した言葉に自分で戦慄した。
いざ韓信が劉邦のいう通りに行動すれば、
劉邦にはそれを防ぎようがなかったのである。

「冗談はほどほどにしておこう」
決定的な破局は避けねばならなかった。
韓信は味方にしておくのに限る。
不満を抱かせて楚に寝返りでもされれば、
漢の滅亡は免れない。
劉邦は、不用意な言動は慎まねばならなかった。

「趙でのお前の逡巡は過ぎたことで、
それを責めても仕方のないことだ。
……あらためて言うが、いつまでも
趙に留まっておらず、とっとと斉に行くのだ。
そして斉を討ち滅ぼし、北の大地を
残さず漢の領土とせよ」

「……仰せの通りに……しかし、
印綬がなくては兵を指揮することができません。
どうかそれを……お返しください」
「うむ。印綬はわしの手にある。
しかしわしはこれをお前に返す前に、
権利をひとつ行使するつもりだ。

すなわち、いまお前の手元にある兵を三つにわけ、
ひとつを趙の防衛に回し、
ひとつはお前の手に残そう。
もうひとつはわしが統率し、連れて帰る」

これにより韓信の兵は三分の一となったのである。
それでも韓信は劉邦に威圧を感じ、
従うしかなかった。
「お許しを得て、差し出口を挟みたく存じますが……
よろしいでしょうか」

このとき末席から発言したのが、蘭であった。
劉邦は興味深くそれを眺め、発言を許した。
「魏豹の娘、魏蘭であったな。
信のもとで重用されていると聞いている。
よろしい、意見を申せ」
「ありがとうございます。
いま、大王は将軍に三分の一の兵をもって
斉を討てと仰せになりましたが、
斉は趙より強大にして、
七十余城を保有する大国。
知勇を謳われた将軍といえども、
とてもそのような寡兵では攻略できません。
そこでご提案がございますのですが……」
「申せ」
「大王が将軍の兵をお取りあげになられますのは、
ここにおらせます韓信将軍が
私兵集団をもつことを憂慮しているからだと、
私は考えます。
本来将軍にはそのような意志はないのですが、
大王に対してそれを証明する術をもたず、
こちらも苦慮しておられます。
これを解決するには大王の信任厚い方を
こちらに副将として派遣していただき、
もって将軍の行動を監視していただくのが
最上かと存じます」
「ほ! 当事者二人を前にして、ぬけぬけという女だ。

しかし、その意見には聞くべき価値がある。
いいだろう、曹参と灌嬰の二人を副将として送る。
信よ、この二名の将軍が到着次第、
斉へ向けての征旅を開始せよ」
「は……」
「不満か。それとも副将は盧綰や周勃の方が良いか」
盧綰や周勃はより劉邦の側に近い人物で、
彼らを迎え入れることは監視の度合いを
強めることとなる。
自分に後ろめたいことが一切ない、と
言い切れればそれでも構わないのだが……。
「いえ、そのようなことは……。
勅命、謹んで承ります」


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『人生劇場』美空ひばり




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……




『大坂しぐれ』美空ひばり




時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる

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 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない



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 昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー





(グリーンリッチホテル広島支配人)

今では1年中いつでも婚礼がある。
中学の教員をしている友人は、
教え子の結婚式に招かれることも多い。
それぞれ感動する結婚式になる。
中でも中学1年のとき、母親を病気で亡くし
父親と二人で生活していた直君の結婚式は
忘れられないという。

彼の性格はおとなしいけれど芯が強く、
感情を表に出さない生徒だった。
どんな時も前向きで、慣れない家事も
父親と二人三脚で、頑張っていた。

そんな直君から『ぜひ結婚式に来てほしい』と
うれしい連絡があり、 出席することになった。
新郎新婦の幼いことから今に至り、
楽しい思い出が披露されて、
笑顔の渦が会場を一色にしていた。

式のクライマックスで、お母さんが亡くなる前に、
お母さんからお父さんに
『直君が結婚するときに読んでほしい』と
渡された手紙が披露された。
『結婚式までは開けないでほしい』と
話していたため、今日、
披露することになったという。

『直君、結婚おめでとう。
直君が生まれた日のことを、昨日のことのように
思い出します。
大きな産声で力いっぱい存在感を 
アピールしていましたね。
お父さんも お母さんも 最高の幸せを
いただきました。ありがとう。  

幼稚園での初めての運動会。
かけっこの練習を一緒にしましたね。
たくさん たくさん練習していよいよ本番。
よーいドンの合図で走り出し1番で走っていたね。
でもゴール目前でつまずき転んでしまって、
友達がみんなゴールした後、
悔しい想いと闘いながら、最後まで投げ出さず
一生懸命走っていましたね。

そんな姿を見てお父さんもお母さんも
自慢の息子と思いました。
これからもたくさんの事にぶつかり、
迷い悩む事があるかもしれません。
でも直君なら、しっかり立ち向かい
乗り越えてくれると信じています。

明るく、楽しく、笑顔が絶えない
幸せな家庭を築いてくださいね。  
最後に晋一さん(直君の父)
私が早くに旅立つことになって、
本当にごめんなさい。
直君の成長を居場所は違うけれど
一緒に見守ることはできる。
だけど手伝うことができないのは本当に
くやしいです。

こんなに立派に育ててくれて心から感謝します。
ありがとう!  そして お疲れ様でした。
これからは晋一さんの人生思う存分
楽しんでくださいね。 心から愛しています。
ずーと愛しています。

恵実(直君の毋)』
人前では決して涙を見せない直君が
人目も気にせず号泣していた。
お父さんもお母さんが亡くなった後、
たくさんの苦労があったのだろう。
明るくて 気さくなお父さんが、
今まで抑えていたものが、一気に涙となった。
どんな状況になっても、家族の絆の強さと
温かさを改めて感じた結婚式だった。

Author:松田博美




『お父さんなりのサヨナラ 』


『サービスエリアの花屋さん』

その日は、子供会の遠足でした。
小学生の娘が帰宅するなり、
「お母さん、いつもありがとう」 と、
私にカーネーションを差し出しました。
その日は母の日でした。
「あら、ありがとう、キレイね」 と言い
受取りましたが、それに答える間もなく、
お風呂場へと走って行きました。
どうしたのだろう、と見に行くと、
珍しいことに掃除を始めたではありませんか。

あまり大きな声で言えませんが、
家の手伝いなど普段あまりしません。
それなのに・・・。 夕食の時、
「さっきは、お風呂掃除ありがとう。
どういう風の吹き回し?」 と、少しからかうように
尋ねました。すると、娘は目を輝かせながら
話はじめました。遠足の帰り道、休憩で
高速道路のサービスエリアに立ち寄った時の事。

その中に花屋さんがあり、カーネーションの
花束が目に留まったそうです。
花束には、カスミソウがあしらってありました。
娘は、母親である私がカスミソウが
大好きなことを知っています。 そこで、母の日の
プレゼントに買って行こうと思いました。
値札を見ると、1200円でした。

でも、財布には、1150円しか残っていませんでした。
遠足に行くために、特別にあげた2000円の
お小遣いの残金です。
あきらめきれずに、娘はバスの出発時間ギリギリまで、
カーネーションの前で見つめていたそうです。
すると、お店のお兄さんに声を掛けられました。
「母の日のプレゼントかな?」
「はい」 「ひょっとしてお金が足りないのかな?」

娘は、お金を財布から取り出して、
50円足りないことを話しました。
すると、 「じゃあ、足りない分は僕が出してあげるよ」 と
言ってくれたのです。
驚いて顔を上げると、お兄さんはニッコリ笑って、
花束を差し出して、こう言ったそうです。

「でも、その分、お母さんのお手伝いをするんだよ」
不足分のお金を出して下さっただけでなく、
そんな温かな一言を添えていただいたことに感動しました。

すぐにお店に電話をしましたが、その方はお留守の様子。
ありがとうございました。近く、私もお礼方々、
花を買いに伺いたいと思います。
花屋のお兄さんに、どうかよろしくお伝えください。

どうやら、このお兄さんは、アルバイトのようです。
そして、お店として「オマケ」したのではなく、
お兄さんが自腹で50円を負担されたのです。
それだけでなく、
「お母さんのお手伝いをするんだよ」の一言。
なんて温かな心の持ち主でしょう。
その一言を正直に受け取って、帰るなり
すぐにお風呂掃除をする子供も素晴らしい!
ただで、「お金をあげる」と言われたら、
「めぐんでもらう」ようで、 子供にしても
受取りにくいかもしれません。
「ああ、こんな手があったか」と感動しました。


Author:志賀内泰弘


『かあちゃんバカでごめんね』




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴にも、言い訳にもなるから……



時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる



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2015年8月 9日 (日)

妄想劇場・一樂編

妄想劇場・一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



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『大望より』


Author:こうづ かんな

人に何かをしてあげること
私は、比較的やさしい、思いやりのある
人間だと自負していた。
長女で、忙しい両親に代わって
妹や弟の面倒をみてきたことが
習い性となったのか、頼まれごとをされれば、
なんでも引き受けてしまうし、少しばかり
自分の時間や労力を費やすことになっても、
それを惜しむ気持ちにはあまりならない。

だから他人からは、面倒見がいいとか、
気配りがあるとか、やさしいとか言われ、
そう言われればも ちろん悪い気はしないから、
自分でも何となくそんな気になっていた。

そんなある日のことである。食事中に私は、
友人から意外なことを言われた。
共通の友人の窮地を見かねて、
私が一肌脱いだ経緯を話し終わった時、
彼は小さく溜め息をついて言ったのだ。

「君のやさしさってさ、
自己満足的なところがあるよね」
私はカチンときた。「どういうことよ、それ」
「いや、だからさぁ、君は確かに
相手のために何かをしてあげているんだろうけど、
結局それは、自分の美学を
まっとうするためって感じが、
ときどきするんだよね。」

彼は言いにくそうに、けれどもきっぱりと
私に言ってのける。
私は猛然と反論しはじめた。
「何かしてあげて、それで少しばかり
こちらの気分がよくなったら 自己満足なの? 
やさしくしてあげよう、と心掛けていることを
したのに、それは自分の美学を遂行したに
すぎないって言葉で片づけるの?
それって、あんまりじゃない。

もちろん私は神でも仏でも聖人でもないんだから、
そりゃあ無垢な心でやってる訳ではないけど、
相手のことを思ってやっているのは事実よ」  
黙ってしまった彼の前で、私はひたすら
言葉を続けた。

「百歩譲って偽善でもいいじゃないの。
偽善でやさしくできるほうが、
何にもしないより少しはましでしょ?
能書きばかり言って、あなたみたいに
何もしない人っていうのが一番始末が悪いのよ」  

こちらもついつい興奮して、
刃の鋭い言葉を投げつけてしまう。
彼は苦笑して私を見た。
「ごめんごめん。べつに君を批判してるわけじゃない。
人に何かしてもらいたいってことばかり
求めている人が多い中で、
君みたいにしてあげることを喜べる人は、
偉いと思ってるよ。
ただ……。 そこで立ち止まっているのは
君らしくないと思ってるだけ。」

話はそこで終わり、気まずいまま私たちは店を出て、
ほとんど会話をすることなく駅まで歩き、
そしてそのまま別々の電車に乗った。
下り電車はまだ混んでいて、私は吊り革に
ぶら下がりながら、さっきの友人の言葉を思い返した。

腹は立つのだが、何となく気になる。
残念だが心の奥底が、どこかで彼の言葉を
認めているような気もしはじめていた。
ふと昔聞いた仏教説話を思い出す。

それは地獄を釈迦が歩いている時のことだった。
地獄に落ちた人々が、釈迦に向かって口々に
「食べ物をくれ!」と叫ぶ。釈迦はその言葉を聞き、
大皿に食べ物を山のように盛り、人々の前に置いた。
そしてこう言ったという。

「食べても良いが、手掴かみではいけない。
この箸を使って食べるように」
差し出された箸は、重くて長い箸だった。
人々は釈迦が歩み去るのを待ちかねて、
箸に手を延ばし、食べ物を口に入れようとした。

ところが箸は長いので、食べ物を箸の先が掴んでも、
遠くてそれを口に入れることができない。
ならば箸の下のほうを持って……と試みても、
箸は重いので、今度は満足に操ることもできない。
結局、目の前に山のような御馳走があるのに、
それらを口に入れることができないのである。

人々が泣き叫んでいると、
ある一人の老人が何事かを思いついた。
箸で食べ物を掴んだら、自分ではなく、
目の前の人の口に入れるのである。
食べさせてもらった人は、もっと食べたいから、
その人も箸で食べ物を掴み、自分の口ではなく、
目の前の他人の口に入れる。  

自分ばかりが食べようとしている時には
口に入らなかった食べ物が、
人に食べさせることによって自分の口に入る。
人を思いやることが、結局は自分に戻ってくることに
つながるのだ……というような話だった。

こういう戒めはキリスト教にもある。
聖書には「自分がしてほしいと思うことは、
人にもそのとおりにせよ」という言葉がある。
ごくごく基本的な「思いやり」の教えなのであろう。
けれども、あの仏教説話を聞いた時、
確かその話をした人は、こんなことを
付け加えていたのではなかったか。 ?

思いやりは大切だという教えではありますが、
もう一つ大切なことが隠されています。それは、
人が誰かのために何かをするという行為は、
所詮、自分への見返りを期待してのこと。
仏の慈悲と同じだと思い上がってはいけない
……ということです」  

友人はこのことを言っていたのだろうか。
自分の行為を仏と同等に扱ってはいけない。
それは思い上がりであると言いたかったのであろうか。  
私は決して、何かを人にしてあげる時、
具体的な見返りを期待しているわけではないと
思っているが、でも心の底には、
そうする自分を見て満足するとか、
人の評価を聞いて満足するというような、
精神的見返りを待っていたと言うことが
皆無とは言いがたい。
   
私は窓の外に目を遣りながら、じっと考えた。
聖書の中に、こんな言葉もあったっけ。
「人がその友のためにいのちを捨てること。
それより大きな愛はない」
見返りを求めず、自分の身を投げうつことが
愛というならば、
私がささやかにしている行為など、
愛の足元にも及ばない。  

私は胸が苦しくなった。  
してもらうことを望むより、
してあげることの喜びを感じられるほうがいい。
偽善でも見返りを求めるような気持ちがあっても、
やさしさを表さぬよりは、表したほうがいい。
けれども、そこは第一のステップにすぎない。

その上に、階段はずっと続いているのである。
私はその階段があることに気づいていなかった。
…いや、気づいていたのかもしれないが、
面倒で、見ないようにしていたのかもしれない。

友人はたぶん、そういうことを言いたかったのだろう。
けれども、だとしたらいったい私は
どうしたらいいのだろう。
どんなふうにすれば、せめてもう一段、
階段を上がれるだろう。

帰宅後、私は思い余って
さきほど別れた友人に電話をした。
電車の中で気づいたことを素直に告げた後、
どうすればいいのだろうと尋ねたら、
彼は笑いながら言った。
「感謝感謝」 「え?」

「神や仏の愛はもちろんだろうけれど、
たとえば・・・・・ 植物はさ、
あなたのために無償で空気を提供してくれてるんだし、
太陽はさ、何の見返りもなくあなたを暖めてくれてる。
人は誰もみんな、気づいていないかもしれないけど、
もの凄い『やさしさ』を与えられながら
生きているわけよ。

それを思えば、君は誰かに何かをしてあげた時、
きっと自己満足なんかしないと思う。
むしろ、あたりまえだと思っていた
街路樹やこもれびにサンキューって言いたい
気分になると思う。
偉そうなこと、俺も言えないけどね」
私は体中が温められたような気分だった。
 
その友人は二年後に亡くなった。
周囲の人の殆どは知らなかったが、
彼はずいぶん以前から重い病を抱えていたという。
もちろん私もそんなことはまったく知らなかった。
郷里に住む高齢のご両親にかわって、
友人たちが彼のアパートの整理をした。

そのうちの一人が、後日、私に電話をしてきた。
「彼の部屋は貼り紙だらけだった。
テレビには『笑いに感謝』、
流しの水道には『水に感謝』、
トイレには『排泄に感謝』、
ベッドには『眠りに感謝』、
それに……薬の入った箱にまで貼ってあるの。
何て書いてあったと思う?
『病気に感謝』って書いてあったのよ」

彼女はそういうと電話口で泣きだした。
人に何かをしてあげること。
それはもしかしたら、自分が目に見えぬ
多くのものに守られ愛され支えられていることを
素直に感謝する瞬間なのかもしれない。  
次のステップはまだ遠い。
でも私はあの友人のおかげで、
ほんの少し心の階段を上ることが
できたかもしれないと思っている。


神津 カンナ(こうづ かんな)本名「神津十月」
東京都出身の作家、エッセイスト、コメンテーター。
母は女優の中村メイコ、父は作曲家の神津善行。
弟は画家の神津善之介。
俳優の杉本哲太は妹の神津はづきと結婚して義弟


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



『答えられな かった質問・新人看護師』
 



誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と言い訳になるから……




                                                       
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妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

 信じれば真実、疑えば妄想……


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昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー




『 フェイスブックで見つけた話(2/2) 』



2日目の朝初日よりは少しは慣れた感があった。
抱き上げられながら、妻は僕の胸に
自然ともたれかかっていた。
僕はふと、彼女のブラウスから薫る
ほのかな香りに気づいた。そして思った。

こうして彼女をこんな近くできちんと見たのは、
最後いつだっただろうかと。。。
妻がもはや若かりし頃の妻ではないことに、
僕は今さらながら驚愕していた。
その顔には細かなシワが刻まれ、
髪の毛には、なんと白いものが入り交じっている!

結婚してからの年数が、これだけの変化を彼女に
。。。その一瞬、僕は自問した。
「僕は彼女に何てことをしてしまったのだろう」と。

4日目の朝彼女を抱き上げたとき、
ふとかつて僕らの間にあった、
あの愛情に満ちた「つながり感」が
戻ってくるのを感じた。
この人は…この女性は、
僕に10年という年月を捧げてくれた人だった。

5日目、そして6日目の朝その感覚は
さらに強くなった。
このことを、僕は「ジェーン」には言わなかった。
日にちが経つにつれ妻を抱き上げることが
日に日にラクになってゆくのを感じた。
なにせ毎朝していることなので、
腕の筋力もそりゃ強くなるだろうと、
僕は単純にそう考えていた。

ある朝、妻はその日着てゆく服を選んでいた。
鏡のまえで何着も何着も試着して、
それでも体にピッタリくる一着が、
なかなか見つからないようだった。
そして彼女は「はあ?っ」とため息をついた。

「どれもこれも、何だか大きくなっちゃって。。。」
その言葉を耳にして、僕はてハッ!とした。
妻はいつの間にやせ細っていたのだ!
妻を抱き上げやすくなったのは、
僕の腕力がついたからではなく、
彼女が今まで以上に軽くなっていたからだったのだ!

愕然とした。それほどまで、やせ細ってしまうまで
彼女は痛みと苦痛を胸のなかに。。。
僕は思わず手を伸ばして、妻の髪に触れていた。
そこに息子がやってきた。
「ダディー、マミーを抱っこして
『いってらっしゃい』する時間だよ!」

息子には、父親が母親を毎朝抱き上げる
この光景を目にすることが、
すでに大切な日常の一場面となっているようだった。
妻は、そんな息子にむかって
「おいで」と優しく手招きしたかと思うと、
彼を力いっぱいぎゅっと抱きしめた。
僕は思わず目をそらした。
そうしないと、最後の最後で、
気が変わってしまいそうだったからだ!
僕はだまって、いつものように妻を腕に抱き上げ、
寝室から、リビング、そして玄関口へと
彼女を運んだ。
妻はただそっと、僕の首に腕を回していた。

そんな彼女を、気づいたら強く
グッと抱きしめていた。
そうまるで、結婚したあの日の僕のように。。。
彼女の、それはそれは軽くなった体を
腕のなかに感じながら僕は例えようのない
悲しみを覚えていた。
そして最後の朝妻を抱き上げたとき、
僕は、一歩たりとも歩みを進めることができなかった。

その日息子はすでに学校へ行ってしまっていた。
僕は妻をしっかりと腕に抱き、そして言った。
「今まで気づかなかったよ
。僕たちの結婚生活に、こうしてお互いの
ぬくもりを感じる時間がどれほど欠けていたか・・・」
そして僕はいつもどおり仕事へ向かった。

何かにせき立てられるように、とにかくここで、
最後の最後で自分の決心が揺らいでしまうのが
怖くてそれを振り切るかのように、
車を停めると鍵もかけずに飛び出し、
オフィスのある上の階まで駆け上がっていった。
気が変わってしまう前に、オフィスへ行かなければ。

早く「ジェーン」のもとへ!
ドアを開けるとそこに「ジェーン」がいた。
彼女を見た瞬間、僕は思わず口にしていた。
「ジェーン、すまない。 
僕は離婚はできない。」

「ジェーン」は「はあ?」という目で僕を見つめ
そして額に手をあてた。
「あなた、熱でもあるの?」
僕はジェーンの手を額からはずし、再度言った。

「すまない、ジェーン。僕は離婚はできないんだ。」
「妻との結婚生活が『退屈』に感じられたのは、
彼女を愛していなかったからではなく、
僕が毎日の小さな幸せを、他愛のない、
だけどかけがえのない小さな日常を
大切にしてこなかったからなんだ。
今頃になって気づいたよ。

あの日、あの結婚した日、
僕が彼女を腕に抱いて家の中へ初めての
一歩を踏み入れたあの日のように
僕は死が二人を分つまで、彼女をしっかり
腕に抱いているべきだったんだ!」

「ジェーン」はようやく事の次第を
理解したようだった。
そして僕のほっぺたを思いっきりひっぱたくと、
扉をバタン!と閉めワーッ!と
泣き叫びながら飛び出して行った。
僕はそのまま黙って階下に降りた。

見ると、花屋が目にとまった。
僕はそこで、妻のためのブーケを
アレンジしてもらった。
店員が「カードには何とお書きになりますか?」と
聞いてきた。
僕はふと微笑んで、言った。
「そうだね、こう書いてくれ。」
『毎朝君を腕に抱いて見送るよ。
死が二人を分つ、その日まで...』

その日の夕方、僕は妻への花束を抱え、
顔に笑顔をたたえて家についた。
はやる気持ちで階段を駆け上がる!
早く早く!妻のもとへ!
出迎えてくれるはずの妻はベッドで冷たくなっていた
。。。。何も知らなかった。

僕は、何も知らなかったのだ。
妻が「ガン」であったことさえも。
ジェーンとの情事にうつつをぬかしていた僕は、
妻がこの数ヶ月必死で病魔と
戦っていたことに気付きさえしなかったのだ!

妻は分かっていたのだ。自分がもうじき死ぬことを。
彼女が出してきた「離婚の条件」は
僕を責めるものではなく、
僕を救うためのものだったのだ!

自分亡き後、最愛の息子から
僕が責められることがないように。
毎朝お母さんを抱き上げて優しく見送るお父さん。

そう、そういう僕を毎朝見ていた息子にとって
僕はまぎれもなく
「お母さんに離婚をつきつけたお父さん」ではなく
「お母さんを最後まで愛したお父さん」となったのだ!

僕はどうしても皆さんにお伝えしたかった。
日々のささやかな幸せ、、、
それが人生で何よりも大切であるということを。
幸せは大きな家、土地、高価な車、
または貯金の残高、、、
そんなものの中にあるのではないということを。

もしも今、あなたの傍らにかけがえのない
伴侶がいるのなら、毎日がどんなに忙しくても
どうか、相手が大切だと伝える
小さなジェスチャーを心を通わせる時間を
大切にして下さい。

(2/2)終り



『陸上に生息する不思議な生き物・生物・動物』





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








 

 

 

 
                                                       
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2015年8月 8日 (土)

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昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

夢はでっかく、根はふかく。
花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 
根はみえないんだなあ


Kobanasi_3


『ヒヨコ星』タイの昔話

むかしむかし、ある町はずれの畑の中に、
おじいさんとおばあさんがすんでいました。
二人の家は小さくて、持ち物は
一羽のメンドリだけでした。
しばらくして、メンドリは六つのタマゴを
生みました。
六つのタマゴは、六羽のかわいい
ヒヨコになりました。
「さあ、お母さんのあとについておいで」

メンドリは大よろこびで、ヒヨコたちの世話をしました。
タカやトビなど、こわい鳥たちにさらわれないように
気をつけて、だいじにだいじに育てました。

ところが、ある晩のことです。
メンドリがヒヨコたちをねかしつけていますと、
こんな話し声が聞こえてきました。

「ばあさんや、明日から村でおまつりがあるそうじゃ。
わしらもおまつりにいきたいが、
神さまヘのおそなえ物をどうしよう?」
「本当にどうしましょう? わたしらは貧乏で、
ものを買うお金もありません。
でも、おまつりに何も神さまにおそなえしなかったら、
ほかの人たちに、けちんぼうと思われるでしょうね」

おじいさんとおばあさんは、おまつりの
おそなえ物の相談をしていたのです。
そしてとうとう、おじいさんがいいました。
「どうだろう。一羽しかいないが、
あのメンドリをおそなえしたら」
おばあさんは、悲しそうにうなずきました。
「そうですね。ヒヨコたちがかわいそうですけど、
それしかないですね」

二人の話を、メンドリはみんな聞いていました。
あしたは、小さな子どもたちをのこして、
死ななければなりません。
メンドリは、ヒヨコたちにいいました。
「かわいい子どもたち、あした、お母さんは
死ななければならないの。
おねがいよ、お母さんがいなくなっても、
おまえたちはけんかせずに、なかよくくらしなさいね。
食べものを見つけたら、みんなで仲良く食べてね。
けっして、はなればなれにならないでね。

それから、家の外に出たりしちゃだめよ。
こわいイヌがいるからね」
「いやだよ! お母さん。
どうして死ななくちゃならないの?」
ヒヨコたちが、なき出しました。

お母さんも、なき出したいのをがまんして、
「おじいさんとおばあさんが、わたしの肉を
神さまにおそなえするとはなしていたの。
死ぬことはこわくないけれど、
小さなおまえたちをのこしていくのが心配で。

それからそうだわ、どんなに遊びたくなっても、
あき地へは出ていかないと約束して。
タカやトビにねらわれるからね。それから・・・」と、
ひと晩じゅう、ヒヨコたちにいろいろなことを
いいきかせました。

つぎの日、おじいさんは朝はやくおきると、
すぐにメンドリを殺しました。
それから羽をむしるために、グラグラにえた
お湯の中に、メンドリをなげこみました。

それを見ていたヒヨコたちは、もう、
ジッとがまんしていることができません。
「お母さん、今すぐ、ぼくたちもいくからね!」
「天国に行っても、いっしょにいようね!」
ヒヨコたちは小さな羽をはばたかせると、
つぎつぎと、お湯の中へとびこんでいきました。

このかわいそうな鳥たちのようすを、
天の神さまが見ていました。
「なんという、美しい母と子の心だろう。
おまえたちがいつまでもいっしょにいられるよう、
星に生まれかわらせてやろう」
こうして、お母さんと六羽のヒヨコたちは、
夜空にきらめく七つの星になりました。

おしまい



人の為(ため) と
書いて、
いつわり(偽) と
読むんだねぇ




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……。




小泉八雲の怪談 「大亀」







時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる 






 
                                                       
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妄想劇場・番外編(18禁)

妄想劇場・番外編(18禁)

信じれば真実、疑えば妄想……


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18歳未満禁止の内容が
含まれています
18歳未満の方は
ご遠慮下さい。






メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい。



母子家庭で、生真面目な人生を送ってきた
高校生の涼也。
ある日、母親から、東京で夜の仕事をしていた
25歳の従姉が家に来て、一緒に住むと告げられる。
涼也は、◎◎をふるう従姉が大嫌いだった。……

『アベレージ』 AV・6

土曜日。涼也は朝から一人だった。
母は仕事なのだが、奈々は
どこへ行ったのかわからない。
AVを観るチャンスだった。が、
涼也は冷静に少し時間を置くことに決めた。
いきなり帰ってきたら逃げる方法が無い。
慎重にいったほうがいい。

一時間ほど経てから、きっともっと経ってからしか
帰ってこないだろうと推測を立てた。
チャンスは今しかない。
奈々は母に合鍵を貰ったから、
鍵を閉めても開けられる。
でも、もしもの時間稼ぎにはなるので、
施錠した。

なんでAV観るためにここまで
気を配らなきゃいけないんだ 
自分の部屋へ行き、鍵つきの机の棚を開け、
DVDを出す。ディスクだけ持ち出した。
素早く居間へ移動して、テレビをつけて
プレーヤーにディスクをセット。
再生。メニュー画面へ移行して、
本編スタートを選ぶ。

映し出される人物、それは、「似てる……」
まさしく、早河奈々そのものだった。
映像で観ると特に似ていた。
狭い部屋の中、五人の男が愛川なるみに迫り、
根っからの淫乱な女であることを責め立てながら
犯すという内容のもの。

抵抗するときに出す声も、寸分たがわず
早河奈々だった。
思った以上に過激なことをしている。
最近では涼也もAVは見慣れていたが、
これは一般的なものよりハードだった。
途中から本当に強姦されているように見えた。
でも身体は反応しているのか、
愛川なるみは感じているようだった。
そうだ、嫌がってるのは演技なんだ。
気持ち良いんだろう。
じゃないとこんなのやるわけがない。
次第に嫌がる演技がエスカレートして、
愛川なるみは涙を流しながら男のモノを
銜えていた。

目薬か何かで演出しているんだろう。
“本番”になればやはり大きな喘ぎ声をあげる。
結局は感じてるんだ。こいつも人間じゃない。
こういうことをするために生まれてきた
存在なんだろう。
まさしく変態だよ、気色悪い。
涼也は心で様々な罵倒を吐きながら、
片手はティッシュ箱を掴んだ。
思うままに性欲の処理を始める。と、
ガチャン、と物音がした。

それは、ドアが開く音。
涼也は自慰に夢中になっていたせいで、
鍵の開く音に気付けなかった。
涼也の脳裏に、目の前のどうにかしなければ
ならないことの情報が一斉に過ぎった。

テレビの喘ぎ声、手に持っているティッシュ。
脱いでいるズボン、DVD。
どうしたらいいのかわけがわからなくなり、
頭が真っ白になった。

「あれ? 居るのになんで鍵閉めてんの」
リモコンに手を伸ばし、停止ボタンを連打する。
何も映っていないビデオ画面に変わった。
脇目も振らずズボンを穿く。
ティッシュが中へ入った。
中途半端な位置まで穿き、ピタリと止まる。

背中に、視線を感じた。
「……いま、何を見てた」
「なんにもだよ」
早河奈々が足早に歩く。涼也を横切り、
プレーヤーのエジェクトボタンを押す。
出てきたDVDを手に取り、呆然とした。

「やっぱり……」その言葉は、
やはり同一人物ということだろう。
「それ、アンタなのか」もうこの際だからと、
涼也はそう言ってやった。
すると早河奈々は唐突にディスクを両手で掴んで
無理矢理ひん曲げる。

「なにするんだよ!」止めてはくれず、
ディスクがどんどん曲がっていき、
やがてバキっ、と音をたてて真っ二つに割れた。
カラン、とディスクが床に落ち、
早河奈々は振り返って、涼也に迫り、
「うッ!」首を絞めた。

手加減が全く感じられなかった。本気で、
奈々は涼也を殺しにきていた。
涼也は彼女の腕を掴み、引き剥がそうとする。

「絶対に誰にも言うな、喋ったら殺す!」
すでに殺しそうじゃないか……。
なかなか腕を引き剥がせず、
首に力を入れて必死で耐え続けた。
今まで見たことのない、早河奈々の
憎悪に満ちた眼差しが、
涼也の心を凍りつかせるようだった。

込められ続けた力はやがて弱まり、
解放されると涼也は咳いた。
しかしすぐに、今度は髪を掴んできて、
強制的に顔を合わせられる。
「マジで喋るなよ。あと、これどこで
手に入れたあ?」

恐ろしくて、声を出せずにいた。
すると「言え」と、涼也の頭を揺さぶってくる。
「店だよ」「なんの?」
「ああいうビデオを売ってる店だよ……」
答えると、髪を離した。
涼也は相手を睨みつけた。
早河奈々が舌打ちをして、
振り返って歩き出す。
そのまま家を出ていった。

涼也は安堵の溜め息をつく。
なんだよ、AVやってるのはテメェだろ。
ムチャクチャな女だな……いや、女でもない。
あれは人間じゃないんだった。
涼也は恐怖心を鎮めつつ、
延々と奈々を心の中で罵倒し続けた。

つづく

Author :水谷広人
http://syosetu.net/pc/




お色気バージョン 
(※伊豆の佐太郎)





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誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
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ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば言い訳と、愚痴になるから……

 

 



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2015年8月 7日 (金)

妄想劇場・特別編

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『 フェイスブックで見つけた話(1/2) 』 

仕事から帰宅すると、妻は食事の支度をととのえていた。
僕は彼女の手をにぎり「話があるんだ」と切り出した。
妻は何も言わず席についた。

その目は苦痛に満ちていた。
ふと、僕はどう切り出したらいいのか分からなくなった。
… でも言わなければならない。
「離婚したいんだ」と。僕は冷静に、
その言葉を口にした。

妻は大したリアクションも見せず、
ただ静かに聞き返した。「どうして?」
その問いに敢えて答えないでいたら、
妻はとうとう怒りをあらわにした。
彼女はスプーンを投げ散らかし叫んだ。

「あんたなんか、男じゃない!!」
その夜、その口論のあと僕らはとうとう
一言も言葉を交わさなかった。
妻のすすり泣く声がかすかに聞こえた。
わかっている。どうして僕らがこうなってしまったのか、
妻はその理由を知りたがっているのだ。
でも僕は、彼女を納得させられるような
説明をとうてい与えられるはずはなかった。

それもそのはず。僕は「ジェーン」という
他の女性を愛してしまったのだ。
妻のことは、、、もう愛していなかった。
ただ哀れんでいただけだったのだ!
深い罪悪難に苛まれながら、
僕は離婚の「承諾書」を書き上げた。

その中には、家は妻に譲ること、車も妻に譲ること、
僕の会社の30%の株も譲渡することを記した。
彼女はそれをチラと見ただけで、
ビリビリと破り捨てた。
僕がこの10年という月日を共に過ごした、
この女は僕にとってもはや
「見知らぬだれか」に成り下がっていた。
彼女が今まで僕のために浪費した、
時間、労力、エネルギーに対しては、、、
本当に申し訳ないと思っている。
でも自分が「ジェーン」を愛しているという気持ちに、
これ以上目を背けることは出来なかった。

承諾書を破り捨てたあと、妻はとうとう
大声をあげて泣き始めた。
ヘンな言い方だが、僕はその彼女の泣く姿を見て
少しホッとしたのだ。これで離婚は確定だ。

この数週間、呪いのように頭の中につきまとっていた
「離婚」という二文字は、
これでとうとう現実化したのだ。
その翌日、僕は仕事からかなり遅くに帰宅した。

家に戻ると、妻はテーブルに向かって何かを
一生懸命に書いていた。
夕食はまだだったが食欲など到底なく、
僕はただベッドに崩れるように倒れ込み
寝入ってしまった。

深夜に一度目が覚めたが、その時も妻は
まだテーブルで何かを書いているようだった。
僕はもはや大した興味もなく、
ふたたび眠りについた。

朝になって、妻は僕に「離婚の条件」と
つきつけてきた。
彼女は家も車も株も、何も欲しくないと言った。
でもその代わりに「1ヶ月間の準備期間」が
欲しいと言ってきた。
そして彼女の条件は、その1ヶ月のあいだ
出来るだけ「今までどおり」の生活をすること。
その理由は明確だった。

僕らの息子が、1ヶ月後にとても大切な
試験を控えているため、
できるだけ彼を動揺させたくないというのが、
彼女の言い分だった。
それに関しては、僕は即座に納得した。

だが、それ以外にもうひとつ妻は
条件をつけてきた。
「私たちが結婚した日、
あなたが私を抱き上げて寝室に入った日のことを
思い出してほしい」と。
そして、これからの一ヶ月のあいだ、
あの時と同じようにして毎朝、彼女が
仕事へ行くときに彼女を腕に抱き上げて 
寝室から玄関口まで運んでほしいと言うのだ。

僕は「とうとうおかしくなったな・・・」と思った。
でもこれ以上妻といざこざを起こしたくなかった僕は、
黙って彼女の条件を受け入れた。
僕は「ジェーン」にこのことを話した。
ジェーンはお腹を抱えて笑い、
「ばかじゃないの」と言った。

今さら何をどうジタバタしたって離婚は
まぬがれないのにとジェーンは嘲るように笑った。
僕が「離婚」を切り出して以来僕ら夫婦は
まったくスキンシップをとっていなかった。
なので、彼女を抱き上げて玄関口まで
連れていった1日目僕らは二人とも
なんともヘンな感じで、ぎこちなかった。

それでもそんな僕らの後ろを、息子は
それは嬉しそうに手をパチパチ叩いてついてきた。
「ダディーがマミーを抱っこして
『いってらっしゃい』するよ!」
その言葉を聞くなり、僕の胸はきりきりと痛んだ。

寝室からリビングへ、そして玄関口へと
僕は妻を腕に抱いたまま10メートルは歩いただろうか。
妻は目を閉じたまま、そっと
「どうかあの子には離婚のことは言わないで」と
耳元でささやいた。
僕は黙ってうなずいた。でもなぜか、
そうしながら心はひどく動揺していた。
妻をドアの外に静かにおろすと、
彼女はそのままいつものバス停へ向かって
歩いていった。
僕もいつもどおり車に乗り込み仕事へ向かった。

(2/2)へつづく



『オッドアイ(虹彩異色症)』




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる




P R
カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

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妄想劇場・一樂編

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『内緒でアルバイト』

藤田守は、高校の教師をしている。 とにかく忙しい。
なぜなら、生活指導部の部長しているからだ。
柔道部の顧問だけで大変なのに、
無理やり校長に押し付けられた仕事だった。

幸い、暴力沙汰で騒ぎを起こすような生徒はほとんどいない。
しかし、小さなトラブルは日常茶飯事。
家に帰ると、妻に愚痴を聞いてもらうのが日課になっていた。

そんな中、何度注意しても言うことを聞かない男子生徒がいた。
三年生のタカシだ。
タバコを吸うとか、カツアゲをするとか、
そういう素行に問題があるわけではない。
どちらかというと、真面目な方だ。
成績は・・・というと、すこぶる悪い。
すべての教科が、いつも赤点ギリギリ。
成績が悪いと、先生からはバカ呼ばわりされる。

親は、大学に行かせたがっているらしいが、
本人は、「勉強は嫌いだから」と就職を望んでいる。
こういう生徒は、スポーツが得意だったりする。
ところが、それもからっきしダメ。
そのせいか、自分に自信が持てないでいた。
それが言葉に出る。 「どうせ・・・」が口癖で、
見ている方がやきもきしてしまう。

日本史の担任の小山田先生から、守にご注進があった。
「藤田先生、遠藤タカシのことですが・・・」
「はい、タカシが何か」
「この前の日曜日にね、隣町のレストランへ行ったんですよ。  
たまたま、家族でドライブをした帰りにね。  
そうしたら、遠藤がウエイターをやってるのを見つけて・・・」

守の学校では、アルバイトを禁止している。
よほどの事情がある場合は、親の同意を得て
申請書を提出する決まりになっている。
その「よほど」とは、生活の問題だ。
親が病気で働けないなど、どうしても
アルバイトをしないと暮らしていけないなどという
金銭的な理由がある場合のみ許可している。

以前にも、二度、アルバイトがばれて厳重注意3日間の
停学処分を受けていた。
それにもかかわらず・・・。
早速、守はタカシを呼び出した。
守は、今回はかなり厳しく言い聞かせようと、
強面を決めることにした。

「お前なぁ、何で呼ばれたかわかってるだろうな」
「あ、いいえ・・・あ、はい」
「どっちだ」
「あ・・・バイトのことですか」
「わかってるじゃないか」
「こっちを見ろ」うつむいていたタカシが目を合わせる。
「そんなに金が欲しいか」
「・・・」 「何だ、買いたいものでもあるのか」
「・・・」タカシは答えない。
「いいか、すぐに止めろ。今度わかったら、
停学を通り越して退学処分だ」
「え!そんな~」
「そんな、じゃない。どうなんだ!」
「はい、わかりました」
「よし、わかったら、ここに書け!誓約書だ。
もう二度とアルバイトはしませんと」 
「はい・・・」守の差し出したレポート用紙に、
言われるままに汚い字で
「今後、アルバイトをしないことを誓います」と書き、
肩を落として職員室を出て行った。

次の日曜日。 守は、タカシがアルバイトをしていたという
隣町のレストランに出掛けた。
駐車場に車を停めて、外から様子を伺う。
もし、まだ勤めていたら、 首根っこを押さえてでも
連れ帰ろうかと思っていた。

自動ドアが開いた。 遠くのタカシとパッと目が合う。
しかし、タカシは目をサッととそらして、
お客さんのテーブルに湯気の立っている鉄板を運んだ。
ハンバーグのようだ。

さすがに、営業中の店でもめるわけにはいかない。
白髪の店員が声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ」胸の名札には、
「店長・新城」と書かれている。
「どなたかと待ち合わせですか?」と聞かれた。
タカシの姿を捜していたからだろう。

「い、いえ・・・実は・・・」守が戸惑っていると、
店長は、意外なことを口にした。
「ひょっとして、藤田先生ではありませんか?」
「え?・・・どうしてご存じで・・・」
「わたくし、この店の店長の新城と申します。  
もしよろしければ、こちらへいらっしゃいませんか」
そう言うと、店長は守を奥へと促した。
「STAFF ONLY」と書かれたドアを貫けると、
小さな会議室のような部屋に通された。

テーブルには電気ポットと湯呑が置いてある。
従業員の休憩所だろう。
「遠藤タカシのことでいらっしゃったのですね」
「なぜ・・・」
「申し訳ございません。お宅の高校が
アルバイトを禁止しておられることはよく存じ上げています」
「・・・そうですか」
「何度も、藤田先生から止めるように言われていることは
タカシから聞いていました」
「それを承知で雇っておられるのですね」
「はい。たいへん申し訳ございません
。私も実は、何度も迷いました。  
規則に違反してまで雇うつもりはありません。
でも、良い機会です。  
先生にも話だけでもお聞きいただきたいと思っていました」

守は、初対面ではあったが、新城と名乗る店長の
誠実そうな口調と瞳にひかれて頷いた。
「タカシ君・・・いつもみたいに、
タカシって呼ばせてもらいましょう。  
タカシはね、ここで働くのが『楽しい』って言うんですよ」
「楽しい?」 「はい、それって、
ものすごく!うれしいじゃないですか、
経営者としては」どうやら、
店長は、この店のオーナーでもあるらしい。

「遠藤タカシは、働くのが楽しいって言ってるんですか」
「はい、先生。楽しいって。なぜだと思われます」
「さあ・・・」 「この前ですね。バイト料を渡すときに、
こんなことを言うんです」
マモルは店長の言葉に引きこまれる。

「今日も言われましたって」
「え? 何を?」
「私も聞き返しました。何を?って」
「するとですね、タカシがこう言うんですよ。
 
今日も『美味しかったよ、ありがとう』って言われたと」
自分が作ったものじゃない。
料理を作るのは厨房のコックだ。
タカシはそれを運ぶだけ。それでも、それをわかっていても
「美味しかった」と言われて嬉しい。
だからバイトが楽しいと。

守は、ハッとした。自分は「仕事が楽しい」と
思ったことがあるだろうかと。
さっき、タカシがお客さんにハンバーグを運んできたときの
笑顔が思い浮かんだ。
それは、学校では見たことのないような、
生き生きとした笑顔だった。

(明日、校長に掛け合ってみよう。特別に
バイトの許可をもらえないか)
守は、何か大切なことをタカシに教えられたような
気がして、レストランを後にした。


《終わり》

Author:志賀内泰弘




『ママ!この人靴が変だよ』




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる




P R
カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

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2015年8月 6日 (木)

漢の韓信-(99)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信

紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。



漢の韓信-(99)武将と弁士


修武に仮仕立ての砦を設け、
そこで起居していた韓信は、その日、
朝起きると同時に愕然とした。 
印綬がない!あわてて枕元の小箱をあさったが、
彼の記憶は定かである。
昨日の晩、たしかにこの箱に保管して就寝したのだ。
誰かが持ち出さない限り、なくなるはずがない。
念のため、もうひとつの小箱を開けてみた。
なんということだ! 割り符さえも……。

容易ならざる事態だった。
印綬と割り符がないことには、
漢王になりかわって兵士に号令を下すことができない。
このふたつが手元にないということは、
韓信がすでに漢の将軍ではない、ということを意味した。

戦乱の時代といえども、人は能力さえあれば
何をやっても構わないというわけではない。
それを許せば天下は際限なく乱れ続け、
いつまでたっても統制はとれないのである。
認められた者が認められた職権に基づいて
行動することを許す、
その象徴が印綬と割り符なのである。

しかし、いったいどこの誰が……。
そう思いつつ室外に出ると、
そこにいるはずの衛士の姿もなかった。
韓信はことさら自分を偉そうに飾り立てたり
したことはなかったが、
それでも将軍ともなれば自分が就寝している間は、
兵士が寝ずに番をしているものなのである。

自分が寝ている間に何が起こったのか、
想像もできずに広間に向かって歩いていくと、
戸口に蘭の後ろ姿が見えた。
蘭は戸をわずかに開け、
そこから室内をおそるおそるのぞき込む仕草をしている。

「蘭、何をしている。実は大変なことが起きた」
韓信は後ろから声をかけたが、
蘭はそれを聞くなり振り返って、韓信に向かって、
しぃっ。と口の前に人差し指を突き立て、
大きな声を出すな、と暗に示した。
そして室内を指差し、声を出さずに
口をぱくぱくとさせながら、
身ぶり手振りで懸命に何かを伝えようとしている。
しかし、本人の熱心さとは裏腹に、
その仕草はどこか愛嬌を含んでいた。

「なにをふざけているのだ……中でなにかあったのか。
いいからそこをどけ。忙しいんだ」
韓信は戸に手をかけ、一気にそれを引いた。
「いけません、将軍!」
蘭はついに声を出し、韓信を止めたが、
間に合わなかった。

そこにいたのは韓信の印綬と割り符を手にした
漢王劉邦その人だったのである。
「おはよう、信」「…………」
韓信は物も言えず、黙ってひれ伏すしかなかった。
こういうことか。どうりで衛士がいなかったわけだ。

印綬などが紛失したのは、
漢の支配を快く思っていなかった趙の住民が、
ごく穏便な方法で事態の打開を狙ったことが
原因だと思っていた。
しかし実際はそうではなく、理由は不明だが、
どうやら自分は王によって兵権を剥奪された、
ということらしい。韓信は、

自分がなぜこのような立場に立たされているのか
理解できなかった。
戦場では明晰を誇るその頭脳も、
この場ではまったく機能しなかったのである。

「お前は、いったい何をしているのだ」
劉邦は開口一番、そう韓信に言った。
「何を、と申されますと……?」
「わしがいまこうしてお前の前に立っていられるのは、
命をかけてわしを守ろうとした者たちがいたおかげだ。
その者たちは、いわばわしの代わりに死んだ。
しかし……よくよく考えてみれば、
そもそもあの場にお前がいたら、
彼らは死なずにすんだのだ。

陳余を斬り、趙歇を虜にしたのはすでに
半年以上も前の出来事であるというのに、
いったいお前はいままで
何をしていたのだ、と聞いている」

劉邦の口調は常になく、厳しい。
返答次第ではただではすまないだろう。
「滎陽の危急については聞き及んでおりましたが、
趙は広大な国土でありますゆえ、
鎮撫にも時間がかかり……」

「お前にそんな任務を与えた覚えはない!」
劉邦はついに怒気を発し、韓信を一喝した。
韓信は頭を地に付け、弁解する。
「……おそれながら、確かに私が大王より
与えられた任務は、趙の武力制圧でございます。
しかし、趙王を捕らえ、陳余を殺した、
それだけで趙の国民が漢の言うことを
聞くようになるかといえば、そうではありません。
こちらが国の指導者を排除したからには、
責任を持ってその後の処理もしなければならないのです。
そうでなければ漢はただ諸地方に混乱をもたらすだけの
悪辣な存在となりましょう」

韓信のいうことは正論であり、劉邦としては
たとえ内輪話であっても、趙の民衆のことなど放っておけ、
とはいえない立場である。
内心はどうであれ、もしそのようなことを口走りでもしたら、
徳のない人物とみなされ、
天下に覇を唱える資格を失うからだ。
これにより対話の主導権は韓信に移った。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『珍島物語 』 天童よしみ





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



『骨まで愛して 』美空ひばり 





時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






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チャンネル掲示板

チャンネル・ニュース

幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない



Mousou2

昨日という日は歴史、

今日という日はプレゼント

明日という日はミステリー






『大好きなロールキャベツ』

ある日、学校から帰ったら母がいなくなっていた。
鍋の中には、私達姉弟の大好きな
ロールキャベツが作ってあった。
もう味は覚えていないけれど、
大好きだったんだよなぁ・・・。

今、二人の子供の母となってあの日、
母がどんな気持ちでロールキャベツを
作っていたか少しわかったような気がする。

でも私には、子供達を置いて行くなんて事は、
絶対にできない。
8歳の時の記憶だけれど、
トラウマになっているのかも。

自分の子供たちには、まだ一度も
「ロールキャベツ」を作った事が無い。
母がいなくなって、色々辛かった。
とても書けないような事も沢山あった。

でも今は、自分でも信じられないくらい
穏やかな毎日を送っている。
娘の机の落書き。
「ままだいすき」私の宝物です。



『授業参観で空気を変えた小学生の作文』




『さようなら。』

昔一緒に遊んでた男の子から、手紙が届きました。
その子は私の初恋の人で、今まで彼のことを
忘れたことはありません。

ポストに入っていたその紙に
彼の名前が書かれているのを見た時は、
すごく驚きました。
何年も前のことなのに、彼も私のことを
覚えてくれていたのです。

慌てて紙を開くと、一枚はびっしりと文字で
詰まった彼からの手紙でした。
『覚えてるかな。君とよく遊んでたんだけど。
手紙、いきなり送ってごめんね。
でも、ちゃんと伝えておかなくちゃだから。
昔俺が言ったこと、覚えてる?
絶対また、会いに行くって言ったこと。
残念だけど、それはもうできそうにないんだ。

あれから俺も頑張ったけど、
もう手を動かすことぐらいしかできない。
こんな弱っちい俺じゃ、
君と一緒に遊べないや。ごめんね。
最後に、これだけ言ってもいいかな。
君のこと、今までも、これからも大好き。
君を見守りたい。

だから、最後のわがままを言わせてください。
少しだけでいい、俺を、
君の心の中にいさせてください。
こんな情けない俺と仲良くしてくれて、
ありがとう。『ずっと愛してる』

最後の方は、紙もくしゃくしゃで、
文字はガタガタに歪んでいたけど、
それでもこれは、彼が私と共にいた証でした。
涙が溢れ続けましたが、どうしても私は、

2枚目の淡々としたあの残酷な2枚目だけは
今でも見ることができません。




『対照的な親子 』




「私の双子のお母さんへ」

今、私がこの世にいるのは、
お母さんの存在があってこそ。
生まれつきネフローゼ症候群と診断された私。
五才の時にお母さんの腎臓を
移植してもらってから、私達は双子になったね。

私の腎臓は二つとも機能してなくて、
お母さんの腎臓が一つ私のお腹の中に入っている。
二人で一つの命を共有しているね。
命があるだけで幸せな事なのに、
私はとても弱いまま。
免疫抑制剤の副作用から出来た顔中の吹き出物。
小さな頃から浴びせられた、
たくさんの嫌な言葉達。
刺す様な視線。

お母さん、ごめんね。
身体は元気になったはずなのに、
心は弱いままだね。
でもね、私はたくさんたくさん悩んだけど、
これだけは胸を張って言えるよ。

お母さんの娘に生まれてくる事が出来て
良かった。
この家族の中に生まれる事が出来て
良かったって。
外が怖くて、仕事も出来なくて、
メイクも出来ずにいる。
そんなどうしようもない私をいつも支えてくれる、
お母さん。
決して弱音を吐かずに明るく笑い飛ばしてくれる、
お母さん。

「こんな顔、嫌だ」「あんたみたいな顔、
滅多におらんき会った人は皆、  
覚えてくれるやろ? だき、いい顔やん!」

私ね、お母さんのおかげで
自分が大好きでいられるんだよ。
障がいは病気じゃない。
強くなれる。優しくなれる。
私だけの特別な物語が紡げる。
無駄じゃない。無駄になんてしない。
全て、意味のある事だから。
私は私の姿で生まれてくる事が出来て、
本当に幸せだよ。 女同士、
普段は口喧嘩ばかりで上手く言えないけど……。
お母さん、私を産んでくれてありがとう。
私、もっと強くなるからね。
一番苦労をかけた分、一番の親孝行者でいたい。
お母さんの片割れを持つ、璃奈という私。
言葉にしなくても私の喜怒哀楽の
全てを分かってくれる、私のお母さん。

だけど、この言葉はきちんと伝えたい。
ありがとう。 ありがとう。
私は、お母さんの双子として生きている。
世界一の幸福者だよ。
お母さんの娘  璃奈より

Author: 佐藤璃奈




『子育て…… 』


時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる


マザー・テレサ

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。







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お風呂物語


カビの生えない・きれいなお風呂

Furo1111


 

2015年8月 5日 (水)

妄想劇場・番外編(18禁)

妄想劇場・番外編(18禁)

信じれば真実、疑えば妄想……

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18歳未満禁止の内容が
含まれています
18歳未満の方は
ご遠慮下さい。






メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい。



母子家庭で、生真面目な人生を送ってきた
高校生の涼也。
ある日、母親から、東京で夜の仕事をしていた
25歳の従姉が家に来て、一緒に住むと告げられる。
涼也は、◎◎をふるう従姉が大嫌いだった。……

『アベレージ』 AV・5

心配していたとおり、DVDは観られなかった。
AVに目覚めた日から涼也はお金ができる度、
お店に足を運んで、好みのAVを買っていた。
けれど、せっかくのビデオも観られなければ
意味がない。
いつ帰ってくるかわからないから、
居間で堂々と◎◎行為はできない。
早河奈々が働き始めるのを待つしかなかった。

「おいリョウ、ナナ様が誰に似てるかわかったぞ」
伊知郎がそう言ったのは、彼が家を訪ねてから
三日後のことだった。
「ちょっとこっち来い」伊知郎が手招きをして、
涼也は教室の外へ出た。窓際の隅へ移動して、
伊知郎は小声で口を開く。「そっくりなんだよ、
オレが持ってたAVの女に」
「なんだ、そっちか」
有名芸能人に似ていることを売りにしている
ビデオはたくさんある。
そもそも星の数ほどAVはあるんだ。
探せば身内に似ているAV女優はいるだろう。
「つーか、似てるっていうか、そのまんま」
「どういうこと?」「ナナ様は東京に居たんだろ? 
もしかしたら本人じゃねえの?」
まさか。あんな怖い女がAV女優なんてやるわけない。
涼也にとってそれは確信めいた考えだった。
「他人の空似でしょ」
「そう思うんなら見てみろよ、って言いたいけど、
そのビデオもう無いんだよなあ。
見飽きてたからとっくの昔に誰かにやっちまった」
きっとこう言ったら伊知郎は反応するだろう。
「なんて名前の女優?」
「お、興味あるのか?」やっぱり言われた。
「いや、だって、名前は別人でしょ?」
「どゆこと?」「名前は違う人でしょ? 
早河奈々じゃないでしょ?」
「お前、女優がそのまま自分の名前
使ってると思ってんの?」
「あっ、そうか、偽名使うか」
「そうだよ。なんも知らねえんだな。
確か、なんたらなるみ」「なんたらなるみ?」
「なんたらって苗字じゃねえぞ? 
なるみ、しか覚えてない」
「そうか……」なるみか。

気になった涼也はその日の内に
アダルトショップへ足を運んだ。
もちろん、家に帰って着替えた後で。
最初は居るだけで恐ろしかった店内も、
今では堂々とした態度で物を探せた。
所狭しと並べられたDVDを目にしながら
、伊知郎の言った名前を探し続ける。
なんたらなるみ、なんたらなるみ……。

ふと、名前が目に留まった。
「愛川なるみ」パッケージを手に取り、顔を見た。
それはギャル系の女優で、顔立ちは
奈々に近いものがあった。多分、これだ。
けどパッケージの人の方がメチャクチャ
可愛いし綺麗だ。
でも、パッケージが可愛くて実際は
そうでもない顔なんて、よくある。
早河奈々よりこっちの方が目が綺麗。
色白。顔が整っている。
アイツが放つキツイ感じがない。

まあ写真越しだから、威圧感みたいなのは
感じられるわけないけれど。
別人にも見受けられる。
だが涼也の、身の危険を察する本能は、
漠然と奈々の面影を見出していた。

買った。けれど家に早河奈々がいるから、
その日のうちに観ることができなかった。
涼也は部屋でパッケージの裸体を眺めていた。
愛川なるみの胸は大きい。奈々と同じくらいだ。
裏面の、内容のコマを眺めているうち、
例え似た人物で憎しみを持っているとしても、
そういった衝動はやはり起きる。
これが男の性なんだ。
むしろ似ているからこそなのかもしれない。
涼也はティッシュに手を伸ばした。
居間の早河奈々に注意を払いながら、
写真で性欲の処理をした。

食事の時間、涼也はどうしても目の前に
居る女の顔をちらちらと見て気にした。
愛川なるみと比べていた。
今はメイクをしていないから、
あまり似ていないように見える。やはり別人だろうか。

「さっきから何ヒトの顔みてんの?」
指摘されたことに涼也は焦り、「いや」と呟く。
「涼也、好きなら好きって告白しな」
「はあ?」
「ちょっとケイコさん、冗談やめてくださいよ」
早河奈々は笑う。
「そうだよ、急におかしなこと言わないでよ」
「じゃあなんで涼也はなっちゃんのこと見てたの?」
少し考えて、言葉を決めた。

「怖いから」もっともらしい嘘をつくと、
二人は同時に笑った。
「意味わかんないし」「怖いって、
もうすぐ十七になるクセしていつまでもなっちゃんのこと
怖がってちゃダメでしょ?」

「リョウがあたしを恐れる気持ちはわかるけど、
もうちょい大人になりなよ」
「そうそう。なっちゃんの言うとおり」……
勝手な責めはやめてほしい。
「だいたいリョウってさあ」涼也に対する
日ごろの批判などが始まった。
喋りだすと二人は止まらない。
食事が不味くなり、涼也はすぐにその場を立ち去った。

つづく

Author :水谷広人
http://syosetu.net/pc/



人が世間をつくるのか 、
世間が人をつくるのか、 
渡る浮世の冷たい風は、 
いいことばかりじゃなかったわ 
悲しいことが多かった 
酒に酔いしれ つぶやく言葉 
いつも女は哀しいものよ 
今度は男に生まれたい……



巷の噂 
(※過去・現在/借金を抱えた有名人)





Tinko_2
人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば言い訳と、愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






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お風呂物語

歴史・履歴への許可証

歴史・履歴への許可証

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

夢はでっかく、根はふかく。
花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 
根はみえないんだなあ


Kobanasi_3


『フランダースのイヌ』ウィーダの童話

ある夏の日の事、お父さんもお母さんもいないネルロは、
おじいさんと草むらですてイヌを見つけました。
かわいそうに思ったネルロはイヌを家へ連れて帰り、
パトラッシュと名付けました。
パトラッシュはすぐにネルロになつき、
二人は兄弟のように仲良くなりました。

ネルロとおじいさんは村のお百姓さんから牛乳を集めて、
十キロ先のアントワープという町まで売りに行く
仕事をしていました。
その仕事はとても大変な上に、あまりお金にはなりません。
だからネルロとおじいさんはスープを一杯飲むのが
やっとという、とても貧しい暮らしをしていました。

ネルロが七歳になった時、おじいさんが病気になりました。
それからはネルロとパトラッシュで重い牛乳を乗せた
荷車を引いて、アントワープまで行くようになりました。
大変な道のりですが、ネルロにはアントワープの町へ
行くのが楽しみでした。

それというのもアントワープの町にある大きな教会には、
ルーベンスという有名な人の絵がかざってあるからです。
でも残念(ざんねん)な事に、その絵には
いつも白い布がかかっていて、お金をはらわないと
見る事は出来ません。

しかしネルロはルーベンスの絵のそばにいられるだけで、
うれしかったのです。
ネルロは絵を見たりかいたりするのが大好きで、
大人になったら絵かきになろうと心に決めていました。

ネルロが十五歳になったある日、ネルロは
かわいらしくてやさしい友だちのアロアを、
ぜひえがきたいと思いました。
アロアは丘の上の風車のあるお屋敷に住む、
お嬢さんです。
アロアのお父さんは貧しい牛乳売りのネルロが
アロアと仲良しなのをいやがっており、
なんとかして二人を引きはなしたいと思っていました。

ある日、ネルロがアロアの姿をえがいてくれるというので、
アロアはおしゃれをして出かけました。
けれどネルロが持っていたのは、
板きれと黒い木炭(もくたん)だけです。
「ネルロ、絵の具でえがくんじゃないの?」
「うん、ごめん。これしか持っていないんだ」
「・・・そう」
アロアはちょっぴりざんねんがりましたが、
でもパトラッシュといっしょにえがいてもらった絵は
とてもすてきで、アロアもとても気に入りました。
(よかった、アロアが気に入ってくれて。
でも今度は、ちゃんとした絵の具でえがいてやりたいなあ)

その日からネルロは、お昼ごはんをがまんして、
たまったお金で紙と絵の具を買いました。
ネルロは、パトラッシュに言いました。
「パトラッシュ、ぼくはね、いつか人の心をつかむ、
すばらしい絵かきになるんだ。
その時にはね、ぼくはみんなに言うよ。

『ぼくはパトラッシュに
助けられて、
絵かきになれました。
一番大切な友だちは
パトラッシュです』って」


パトラッシュは、うれしそうにネルロを見上げました。
ある日、クリスマスイブの子どもの絵の
展覧会の事を知ったネルロは、
夕ぐれ時に切りかぶにすわって一休みする
木こりのおじさんの絵を一生懸命にえがきました。
その展覧会で一等になれば、二百フランという
夢のようなお金がもらえるからです。

クリスマスイブの日、ネルロは心をこめてえがいた絵を
荷車につんで、パトラッシュといっしょに
アントワープの展覧会の会場へ出かけました。
ほかのみんなは絵の上に上等な布をかけて、
受付(うけつけ)に渡しています。
でもネルロの絵にはボロボロの布がかかっているので、
ネルロははずかしそうに下を向きながら受付の女性に
そっと手渡しました。

ネルロは雪のつもった町ヘ、パトラッシュと出ました。
「パトラッシュ、もし一等になったら、
お腹いっぱい、あったかいスープをあげるからね」
その時、誰が落としたのか、雪の中にお人形が
落ちていました。
(誰のかがわかる日まで、アロアにあずかってもらおう)
ネルロとパトラッシュは、アロアのお屋敷へ行きました。
そしてネルロが、展覧会に出品した事を話すと、
「わあ、ネルロならきっと、一等をとるわ!」と、
アロアは喜んで、そのお人形をあずかってくれました。

けれどその夜、大変な事にアロアのお屋敷が
火事になったのです。
「火をつけたのは、ネルロだろう!」
アロアのお父さんは、きらいなネルロをうたがいました。
そして悲しい事は、まだ続きました。
新しい牛乳屋が来たので、ネルロの
仕事がなくなってしまい、
そのうえ、病気のおじいさんが死んでしまったのです。
おじいさんのおとむらいのすんだ夜、
家主(やぬし)がやって来て言いました。
「明日の朝、ここを出て行け!」

朝が来ると、ネルロとパトラッシュは雪の降る外へ出ました。
そしてアントワープの町へ、子どもの展覧会の
一等の発表(はっぴょう)を見に行きました。
「パトラッシュ、一等を取って二百フランもらったら、
ぼくたちの住む家をさがそうね。
それからまきを買って、暖炉にくべて火をつけようね。
そのあとは、お腹いっぱい食べようね」

ネルロもパトラッシュも、このところ水しか
飲んでいなかったのです。
(必ず、一等をとってみせる! 
一等を取らないと、ダメなんだ!)
でもネルロの夢は、すぐ消えてしまいました。
一等を取ったのはネロではなく、あまり上手ではないけれど
色々な色の絵の具をたくさん使ってえがいた、
海の絵だったのです。

ネルロとパトラッシュは、展覧会の会場を
重い足どりで出ました。
「ああ、これからどうしたらいいのだろう? 
もし、お金があったら。うん? どうしたの、パトラッシュ。
・・・あっ!」なんとパトラッシュが、雪の中にうもれていた
財布(さいふ)を見つけたのです。

ネルロがその財布を開けてみると、
中には金貨がたくさん入っていました。
ネルロはまわりを見回しましたが、
誰も見ている人はいません。
「これだけあれば家をかりられるし、パンもたくさん買える。
たくさんの絵の具も買う事が出来るぞ」

ネルロはその財布を服の中にかくそうとしましたが、
ふと、その財布に見覚えがある事に気づきました。
「これは、アロアのお父さんのお財布だ」
ネルロは、アロアのお屋敷へ急ぎました。
そしてアロアのお母さんに財布を渡すと、
パトラッシュを家の中に押し込んで言いました。

この財布を見つけたのは、パトラッシュです。
ごほうびに、何かうんとおいしい物を
食べさせてやってください。
そして出来たら、ここでかってやってください」

ネルロはそう言うととびらをしめて、
雪の降る夜の中へかけていきました。
「ああ、待って、ネルロ!」
アロアとお母さんがネルロを追いかけましたが、
ネルロの姿はもう見えませんでした。

雪の町でずっと財布を探していたお父さんは、
アロアからネルロの事を聞いて目に涙をうかべました。
「わしが悪かった。あんなにいい子を、きらったりして」

お腹がペコペコのネルロには、もう歩く
元気もありませんが、最後の力をふりしぼって
アントワープの教会のルーベンスの絵の前へ行きました。
冷たい床に座り込んだネルロは、ふと、肩に
あたたかい息(いき)を感じてふりむきました。
「パトラッシュ! 追いかけてきたのかい」
ネルロは、パトラッシュの首をだきしめました。
「ありがとう、パトラッシュ。
ぼくたちは、ずっといっしょだね。
ごめんよ、置いて行ったりして。
パトラッシュ、もう離れるのはやめようね」

すると月明かりが教会にさしこみ、
あたりが明るくなりました。
雪がやんで、月がかがやき出したのです。
「あっ!」 ネルロは、思わずさけびました。
ルーベンスの絵が、見えるのです。
さっきパトラッシュが暗やみの中で、
布を引っかけて落としたからでした。

ルーベンスの絵は、キリストの絵でした。
「パトラッシュ、ぼくはとうとう見たよ! 
ああ、なんてすばらしいんだろう!」
ネルロはうれしくてうれしくて、涙をポロポロとこぼし、
パトラッシュの首をあたたかくぬらしました。
「パトラッシュ、ぼくはもう疲れたよ。
少し眠ってもいいかい?」「ワン」
ネルロとパトラッシュは、しっかりと抱きあったまま
目を閉じました。

あくる朝、牧師がネルロとパトラッシュを見つけました。
「もし、どうされました?
こんなところで寝ていては、かぜをひきますよ。
もし、・・・あっ!」

ネルロとパトラッシュは抱きあったまま冷たくなっており、
二度と目を開く事はありませんでした。
そこへアロアとお父さんとお母さん、
それに三人の大人がかけ込んで来ました。
アロアはネルロにかけよると、ワーッと泣き出しました。
「ネルロ、お父さまが、ネルロの事を
わかってくださったのよ。
今日から、いっしょに暮らせるのに。
・・・どうして、どうして天国へ行ってしまったの」

三人の大人たちは、子どもの絵の展覧会で
審査員(しんさいん)をした人たちでした。
審査員たちは、ネルロに涙を流してあやまります。
「気の毒な事をしてしまった。ネルロの絵は
受付の手違いで、他の場所に置かれていたんだ」
「とてもすばらしい、木こりの絵だったよ。
われわれは、もう一度審査をやりなおしたんだ。
そしてきみの絵が、一等に選ばれたんだよ」

天国へめされたネルロとパトラッシュは、
その言葉を聞いているかのように
やさしくほほ笑んでいました。


おしまい



人の為(ため) と
書いて、
いつわり(偽) と
読むんだねぇ




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……。



母と鳥の不思議な絆



時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる 







P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

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妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……


Mituo2_2

昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー





『合コン 』 (松本人志のゾッとする話より)

僕の女友達の話しなんですけど…
その子は可愛いんですけど彼氏がいない。
それで、いっつも「いい人いないかなー」って
言うんですけど、全然合コンとかにいかないんですよ。

なんか男性にトラウマがあって、
「合コンに来る男はろくな奴がいない!」
みたいな感じで。 でも、
「出会いが欲しい、出会いが欲しい」って
言うんですよね。
それならね、頑張っていけよと。
行きもしないで出会いがないなんて言う
権利ないぞって言ったら、
「うん…わかった…」って意を決して
行ってきたんですよ。合コンに。

そしたら、その日の合コンは3対3だった
そうなんですけど、
正面に座った男の子が結構好青年で。
(あー、こんな好青年の人でも合コン来るんだ…)
なんて思って、話しをしてたら話しがあうんですって。

楽しいなあ~趣味も結構あうし。
「好きな映画は?」って聞くと、
それもあうし。 途中から、
運命の相手って思う位相性もよくて。
それで(あー、頑張って合コン来てよかった。
こんな素敵な人に会えるなんて)って
思い始めた時に、

男の子が「家まで送っていくよ」って
言ってくれたんですって。
もうその時点で、女の子のほうは
好きになりかけてる感じですよ。嬉しいわけですよ。
それで送ってもらう事になって、

家の前まで二人で歩いて来て。 そしたら、
男の子は何もせずに「じゃあね」って
帰ろうとするんですって。
女の子からしたら、その日のうちに何もしないとこが
またいいなあ…なんて思って。
もうほとんど好きになりかけてる状態ですよ。

また会いたいって思ったから、女の子のほうから、
「私から言うのもなんなんだけど…
また会いたいから、連絡先交換したいんだけど…」
そしたら男の子が、
「もちろん!じゃあ今から番号言うから、
ワン切りして」って。

それで男の子が女の子に番号を言うわけですよね。
「俺の番号は…090-4○○…」って。
それを聞きながら女の子は、
男の子の番号を携帯にいれていって、
じゃあこれが私の番号だからね!って

ワン切りしようと通話ボタンを押した瞬間に、
その女の子の携帯の液晶画面に、
ありえない文字が浮かんだんですって。
『犯人?』って文字が浮かんだんですって。

これで女の子は全部わかったんです。
ちょっと男性にトラウマがあるって
話しがありましたけど、
半年位前に女の子の家にすごい数の
無言電話がかかってきてたんですって。
それも女の子が家に帰ってきた瞬間とか、
お風呂から上がった瞬間に電話が鳴るんです。
うわあ…気持ち悪い…この番号を
着信拒否したい…
でもなんて名前で登録しようかなぁ…

それで、とりあえずその番号を『犯人』って
登録したんです。
その相手が、今、目の前にいる
その相手だったんです。

そりゃ、合コン行って話しはあいますよ。
だって、相手は自分の事をよく知っている
ストーカーなんですもん。
好きな映画も知ってるんですよ。

それでみんなにちょっと言いたいのが、
色んな場所で出会った相手、
話しのあう相手、運命だと思った相手、
本当に初対面ですか? ……

Author:島田秀平




『解明されていない世界の不思議な現象』




『不在着信』(松本のゾッとする話より )

携帯電話を置いてて、
パッと見ると電話がかかってきてるって
よくあるじゃないですか?

僕の知り合いに非常に霊感の強い
女性がいるんですけど、
パッと見ると電話がかかってきてる。
見てみると知らない番号。
知らない番号だし、気持ち悪いし
放っておこうか…

けど、その日を境に、その番号から
結構な頻度でかかってくるんですって。
で、ちょっと気持ち悪いのが、
手に携帯電話を持ってる時はかかってこなくて、
携帯電話を置いてる時、見てない時に
気づくとかかってきてるんです。

さらに気になるのが、この番号ってのは
携帯の番号じゃなくて、固定電話。
『058…』からはじまるんですが、覚えがない。
それで、ある日留守電が入ってるんですって。
聞いてみようと思って聞いてみても、
ずーっと無言なんですね。

でも、さすがに何回もかかってくるから、
これは誰かと間違えてかけてきてるから
教えてあげないとな…と。 勇気を出して
この番号にかけ直したんです。
かけなおしてみると、
(ピンポンパンポーン…この番号は
現在つかわれておりません)……

いやいやいや…かかってきている番号に
かけ直してるのに、繋がらないわけはないだろうと。
それで、その番号を調べてみようって思ったんです。
まず、ネットで『058』って調べると、
どうやらこれは岐阜県のほうの地域の番号らしい。
それで関係機関にこの番号は何なんですか?って
聞いてみると、十年以上前にダムの下に沈んだ
村の電話番号だったんです…

それでその後、留守電を聞いて見ると、
無言じゃなかったんです。
よーく聞いてみると、 ゴボゴボゴボゴボ…

Author:島田秀平

『世界の不思議人物・伝説 』



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語


Furo1










2015年8月 4日 (火)

漢の韓信-(98)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信

紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。



漢の韓信-(98)

紀元前のこの時代に世界を動かす者は、
主に武人であった。しかし当然のことながら、
文人がまったく力を持たなかったわけではなく、
幾人もの人物が弁士として歴史に名を残している。
武ではなく学問で世界を動かそうとしていた彼らは、
各地に赴いてその自慢の弁舌を駆使し、
権力者の心を揺り動かそうとした。
しかし残念なことに当時の学問は未成熟の段階にあり、
弁舌家たちはその未成熟な学問を論拠として
相手を説得せねばならなかった。
したがって彼らが権力者を前にして放つ言葉は
、往々にして嘘ばかりである。
だが彼らを論評の価値もない単なる
嘘つきと断ずるのは誤りである。

彼らの放つ嘘は武人が戦略と称して
罠を仕掛けることと同じであり、
嘘がばれて真実が露呈することは、
罠を見破られることと同じなのである。

つまり彼らは自らの舌を武器とする戦士なのであり、
言動に自らの命を賭けているという点で、
武人となんら変わることがない。

劉邦率いる漢軍は滎陽を救おうと
河南の宛・葉の地に出兵した。
彭越は楚軍の後背を撹乱せんと彭城の東、
下邳を討った。
黥布はこの時期に正式に漢軍に合流し、
劉邦とともに兵を集めた。
しかし滎陽を囲んでいた項羽はこれらの動きを察知すると、
まずは東に向かって彭越を討ち、
あっという間に敗走させた。
その帰途で漢軍が成皋(せいこう)にはいったと聞くと、
急ぎ滎陽を落城させ、
周苛を煮殺し、成皋を包囲したのである。
真の意味で「向かうところ敵なし」というべき動きであった。

劉邦はこのとき項羽のことを恐れるあまり、
夏侯嬰ただ一人だけを従え、
ひそかに成皋を脱出した。
「なんとも情けないものだ……嬰、
お前と二人で逃避行を決め込むのはこれで二度目だな」
劉邦の言動には以前の覇気が薄れてきているようで、
夏侯嬰にはそれが気になって仕方がない。
年を取ったせいもあるのだろうが、
やはり滎陽で紀信や周苛を見殺しにしてしまったことが、
だいぶこたえているのだろう。

「以前は韓信が追いすがる楚兵を撃ち破り、
我々を助けてくれました。今度も心配いりません。
幸運を期待しましょう」
夏侯嬰の言葉には劉邦をいたわる気持ちが
込められているが、残念ながらまったく根拠がなく、
気休め程度でしかない。

「そばに居るのがお前では、
幸運を期待するしかないわい」
「! これは、手厳しいおっしゃりようで……。
話は変わりますが、大王には
どこに向かわれるおつもりですか」

これを聞き、劉邦の機嫌はさらに悪くなった。
「わしに行くあてなんぞあるものか! 
それを考えるのはお前の役目だろう」
「私は……しょせん御者でしかありませんので」
「御者というものは、車上の主人に
もしものことがあれば、主人になりかわって
指揮を執るものだ。
お前が御者ではわしはおちおち死んでもいられぬわい」

「はぁ……。では、愚見を申し上げますが、
どこかの地で再起をはかるにしても
兵がなければなんともなりません。
どこかで大々的に募兵でもいたしますか?」 
劉邦はそれを聞いてしばらく考え込んだ。
「いまからそんなことをしても間に合わん」
しばらく柄にもない沈思の表情を見せた劉邦は、
やがて思いついたように顔を上げながら、言った。

「嬰、北へ向かえ。……趙だ。
趙にいる韓信の兵を強奪する!」
「え……?」「やつはわしの将軍だ。
すなわちやつの兵は、わしの兵でもある。
……深く考えるな、いいから行け!」
韓信の軍は代国の攻略以来、
井陘、邯鄲へと次第に南下し、
このときは黄河の北のほとりの
修武(しゅうぶ)という地に駐屯している。

約半年の間に目立った軍事行動がなかったとはいっても、
やはりなにもしないでいたわけではなく、
諸地方の制圧、鎮撫に奔走していたのである。
地味な作業であり、それまでの韓信の
華々しい活躍とはあまりにも違う。
しかも修武は黄河をはさんで滎陽と
至近の距離にあることから、
ここまで来ていながらなぜ救援に来ないのか、
という思いを劉邦以下漢の首脳部が抱いたことは
容易に想像できる。
信のやつは、わしを見捨てたのではないか。
……思えば張耳を趙王に推挙したのはあいつであった。
……信は張耳を傀儡として自立するつもりでは?
……いや、それはあり得ん。やつは、そんな男ではない。
だが……劉邦の思考は縺れた糸のように複雑に絡み合い、
確たる答えは見出せない。

劉邦はこれまで韓信のことを信用してきたつもりであった。
だが、その信用が裏切られたときのことを想像すれば、
とてつもない恐怖感に襲われる。
おそらく対等の条件で戦えば、韓信に勝てる者はいない。
黥布や彭越などとは、比べ物にならん。
智と勇をあれほど兼ねそろえたやつは、
少なくともこの時代にはいないであろう。
あの恐ろしい項羽でさえも……敵ではない気がする。

まして自分などが……と思うと劉邦の背筋には
冷たい汗が流れた。
「深く考えるな」とは夏侯嬰に対してではなく、
自らに発せられた劉邦自身の
心の叫びであるかのようであった。 



つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『白い海峡 』 大月みやこ





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



『娘船頭さん 』美空ひばり 





時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






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お風呂物語

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2015年8月 3日 (月)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……

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昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー





『タモリの弔辞 』

テレビ朝日「報道ステーション」では
弔辞の様子をVTRで伝え、映像から
「手にした紙には何も書かれていないようにも
見える」と指摘。
インターネット上の掲示板でも話題となり
「白紙なんだよね。すごいよタモさん」
「あの長い弔辞を白紙で読んでるとかすげぇな」
「読み上げるふり。ささげるギャグなのかな」
などといった書き込みが相次いだ。
タモリは手にしていた紙を何度も見ながら
弔辞を読んでいたが、紙は白紙で、
すべてアドリブだった可能性がある。


8月2日にあなたの訃報に接しました。
6年間の長きにわたる闘病生活の中で、
ほんのわずかではありますが回復に向かっていたのに、
本当に残念です。
われわれの世代は赤塚先生の作品に
影響された第1世代といっていいでしょう。
あなたの今までになかった作品や、
その特異なキャラクター、
私たち世代に強烈に受け入れられました。

10代の終わりからわれわれの青春は
赤塚不二夫一色でした。
何年か過ぎ、私がお笑いの世界を目指して
九州から上京して、歌舞伎町の裏の
小さなバーでライブみたいなことをやっていた時に、
あなたは突然私の眼前に現れました。

その時のことは今でもはっきり覚えています。
赤塚不二夫が来た。あれが赤塚不二夫だ。
私を見ている。この突然の出来事で、
重大なことに、私はあがることすらできませんでした。

終わって私のところにやってきたあなたは、
「君は面白い。お笑いの世界に入れ。
8月の終わりに僕の番組があるからそれに出ろ。
それまでは住むところがないから、
私のマンションにいろ」と、こう言われました。

自分の人生にも他人の人生にも影響を及ぼすような
大きな決断を、この人はこの場でしたのです。
それにも度肝を抜かれました。
それから長い付き合いが始まりました。
しばらくは毎日新宿の「ひとみ寿司」というところで
夕方に集まっては深夜までどんちゃん騒ぎをし、
いろんなネタを作りながら、あなたに教えを受けました。
いろんなことを語ってくれました。
お笑いのこと、映画のこと、絵画のこと。
他のこともいろいろとあなたに学びました。
あなたが私に言ってくれたことは、
いまだに私にとって金言として心の中に残っています。
そして仕事に生かしております。

赤塚先生は本当に優しい方です。シャイな方です。
麻雀をする時も、相手の振り込みであがると相手が
機嫌を悪くするのを恐れて、ツモでしか
あがりませんでした。
あなたが麻雀で勝ったところを見たことがありません。
その裏には強烈な反骨精神もありました。

あなたはすべての人を快く受け入れました。
そのためにだまされたことも数々あります。
金銭的にも大きな打撃を受けたこともあります。
しかし、あなたから後悔の言葉や相手を恨む言葉を
聞いたことはありません。
あなたは私の父のようであり、兄のようであり、
そして時折見せるあの底抜けに無邪気な笑顔は、
はるか年下の弟のようでもありました。

あなたは生活すべてがギャグでした。
たこちゃん(たこ八郎さん)の葬儀の時に、
大きく笑いながらも目からはぼろぼろと涙がこぼれ落ち、
出棺の時、たこちゃんの額をぴしゃりと叩いては、
「この野郎、逝きやがった」と、
また高笑いしながら大きな涙を流していました。

あなたはギャグによって物事を動かしていったのです。
あなたの考えはすべての出来事、存在をあるがままに
前向きに肯定し、受け入れることです。
それによって人間は、重苦しい陰の世界から
解放され、軽やかになり、
また、時間は前後関係を断ち放たれて、
その時、その場が異様に明るく感じられます。

この考えをあなたは見事に一言で言い表しています。
すなわち、「これでいいのだ」と。
今、2人で過ごしたいろんな出来事が、場面が、
思い浮かんでいます。

軽井沢で過ごした何度かの正月、伊豆での正月、
そして海外への、あの珍道中。
どれもが本当にこんな楽しいことがあっていいのかと
思うばかりのすばらしい時間でした。

最後になったのが京都五山の送り火です。
あの時のあなたの柔和な笑顔は、
お互いの労をねぎらっているようで、
一生忘れることができません。
あなたは今この会場のどこか片隅で、
ちょっと高い所から、あぐらをかいて、
ひじを付き、ニコニコと眺めていることでしょう。
そして私に「おまえもお笑いやってるなら
弔辞で笑わしてみろ」と言ってるに違いありません。

あなたにとって死も1つのギャグなのかもしれません。
私は人生で初めて読む弔辞が、
あなたへのものとは夢想だにしませんでした。
私はあなたに生前お世話になりながら、
一言もお礼を言ったことがありません。
それは肉親以上の関係であるあなたとの間に、
お礼を言う時に漂う他人行儀な雰囲気が
たまらなかったのです。

あなたも同じ考えだということを、
他人を通じて知りました。
しかし、今、お礼を言わさせていただきます。
赤塚先生、本当にお世話になりました。
ありがとうございました。
私もあなたの数多くの作品の1つです。
合掌。


『色が持つ不思議な力 』



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誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
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妄想劇場・一樂編

妄想劇場・一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

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明日という日はミステリー



Mituo

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いつわり(偽)と
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『ごめんね』Author:篠原正子


「ごめんね」 あんたの頭を撫でながら
母さんは言ったね。
もういい加減な年のおっちゃんになったあんたは、
母さんを許してくれるだろうか。

三十六年前、我家を選び、
知的障害のある子として生まれて来たあんた。
医師に「三歳位までしか生きられないでしょう」
告げられた言葉に、 胸が締め付けられ
何をどうして良いのか分からなかった。

でも婆ちゃんが、
「命ばもろうて生まれてきたっちゃけん、
皆で頑張って育てよう」 そう言ってくれた。
短命ならば精一杯の愛情を注ごうと
決心して育ててきた。

あんたは体が弱くて何度も生死をさ迷い、
徹夜の看病もしばしばでした。
合併症もあり小さな体、細い血管、
入らぬ点滴の針はどんなにか痛かっただろうね。
その度に、生きようとするあんたの
強い心が死を遠ざけ、
短命の言葉をはねのけてきた。

この三十六年の間、
夫婦の危機や姑とのいざこざも、
仕事が不調な時も、
あんたの真っ直ぐな心と澄んだ目が、
どれだけ母さんたちを支えてくれただろう。

そんなあんたに手を挙げてしまった母さん。
あんたの予想しなかった早めの老化現象と、
母さんの思い通りにならぬ、
あんたの行動に腹を立て、イライラが爆発

「あんた、そぎゃん言うこと聞かんなら、
もう施設に帰らんね、うちにおらんでよかよ」
暴言を吐き頭を叩いてしまったね。

そしたらあんたは、驚いたように母さんを見て、
「僕は帰ります。園に帰ります」
小さな声で言いました。
その夜、母さんは布団の中で長いこと
大きな声で泣きました。
虐待にも似た仕打ちを何でしてしまったんだろう。
あんたさえ居なければと思ったりしたんだろう。
「ごめんね、ほんとにごめん」
この手紙書いても読めないあんただけど……
あんたが大好きだよ、
そして母さんを許すと言って欲しい。


《終わり》



 『ガロシエゴ』アルゼンチンタンゴ




Author:中野敏治


「元気になるために手術をしてくるからね」
ある日、一人の生徒が学校を休みだしました。
足に痛みがあるからと、町の病院に行ったのです。
そこで診察をしたところ、すぐに
大きな病院を勧められました。
そして数日後、大きな病院で検査を受けました。
その間、彼はしばらく学校を休みました。

数日後に彼の父親が学校へ来ました。
その日は曇り空でしたが、父親は
サングラスをかけていたのです。
応接室で父親と話をしました。
応接室でも父親はサングラスを外そうとは
しませんでした。 父親の言葉に驚きました。

「息子の痛みの原因は、悪性の腫瘍でした」と
言うのです。 その場の空気は一変し、
時間が止まりました。
私は返す言葉がありませんでした。

父親は話を続けました。「最初の病院で腫瘍の
疑いがあると言われたとき、  
この医者は何を言っているんだと思ったんです。  
だって、小学校からずっとサッカーのレギュラーで、  
試合にもずっと出てきた息子ですよ。  
怪我はしても病気などしたことがない息子ですよ。  
その息子の足の痛みの原因が腫瘍だと言うんです。  
そんなこと、信じられますか」

少し、時間をおいて父親は話を続けました。
「大きな病院に紹介状を書いてもらって、  
その病院でいろいろ検査をしたら、  
やはり腫瘍があると言われたんです。  
信じられない、そんなの信じられない。  

今まで元気だった息子ですよ。  
信じろって言っても無理です」
なかなか外さないサングラスが気になって、
「そのサングラスは?」と父親に尋ねると、
「先生、恥ずかしいんですが、俺、
息子の病名が信じられずに、毎日涙が止まらず、
目が腫れてしまい、それでも涙が止まらないんです。  
腫れた目を隠すためにサングラスをしているんです。  

息子の方がもっと苦しいのに、情けないです。  
息子、冷静に医者の話を聞いていたんですよ。  
そして、サッカーはまたできるのですかと
医者に聞いているんですよ。  
生きてほしいんですよ、息子には」と言いながら、
父親はうつむき涙を流すのです。

彼は大きな病院でさらに詳しい検査をし、
手術のために専門の病院へ行くことになりました。
「手術するよ。でもその前に、一回、学校へ行きたい」 と、
彼は父親に頼みました。
そして、彼は手術の数日前に学校へ
両親と一緒に登校しました。
彼は、自分の病気のことをみんなに伝えたかったのです。

体育館に彼と同じ学年の生徒が集まりました。
学年の生徒の前に立って、彼は自分の病気のことを
話し始めたのです。
医者から聞いた自分の病気のことをすべて、
みんなに話したのです。
そして、これから手術のために、
また違う病院に入院することも。
しばらくはみんなと連絡もできないということも。

体育館はしーんとしました。
そして、涙を流す生徒もいました。
そしてみんなに、彼はこう言いました。
「大丈夫だから。元気になるために手術をするんだから。
みんな待っていて」

学年のみんなに自分の思いを伝えた後、
彼は家に戻るため、 学校の玄関に両親と向かいました。
彼は学校の玄関を出るとき、立ち止まり、
そして振り向いて、見送りに来た先生方に言うのです。

「先生、行って来るね。また帰ってくるから」
泣いてはいけない、泣いてはいけないと
思いながらも、 彼の言葉に両親も先生方も
涙があふれてきました。

本当は、一番不安で辛いのは彼なのです。
でも、彼は自分以上にみんなに、
特に、サングラスをずっとかけっぱなしの父親を
気づかったのです。

まだ中学生、でも彼は、こんなにも周りの大人に、
周りの仲間に気を遣い、 勇気を与えているのです。
彼の後姿を見ながら、大丈夫、大丈夫と
心の中で願いました。
一番、辛い時、 人はまわりに気を遣い
勇気を振りまく。
大丈夫、勇気ある人なら困難を乗り越えてくれる。


《終わり》



『Tango Flamenco』



誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






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お風呂物語

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妄想劇場・番外編(18禁)

妄想劇場・番外編(18禁)

信じれば真実、疑えば妄想……

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18歳未満禁止の内容が
含まれています
18歳未満の方は
ご遠慮下さい。






メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい。



母子家庭で、生真面目な人生を送ってきた
高校生の涼也。
ある日、母親から、東京で夜の仕事をしていた
25歳の従姉が家に来て、一緒に住むと告げられる。
涼也は、◎◎をふるう従姉が大嫌いだった。……

『アベレージ』 AV・4

伊知郎と早河奈々が接触したらどんな会話を
繰り広げるのか。涼也はそんなことに興味があった。

「おっじゃまっしまーす」妙なテンションで
伊知郎は家に入ってきた。
だが玄関に目的の人の靴はない。
奥からは気配もしない。「居ないみたい」
「ええ!」オーバーに驚いたものだから、
涼也は軽く笑った。

「残念。そのうち帰ってくるかもね」
涼也は自分の部屋へ入り、荷物を置く。
伊知郎の足音が居間へ向かっていく。
部屋を出て居間へ移動すると、伊知郎は
早河奈々が持ってきた衣類ケースを眺めていた。
気配に気づいた伊知郎は顔を涼也に向ける。

「ここがナナさんのお部屋なんだろ?」
「居間なんだけどね。勝手に触らないでよ」
「バッカヤロォ、
オレがそんな変態なことするわけないだろ」
自分で変態だなんて言っている時点でおかしい。

「でもあれだな、リョウの部屋テレビ無いから
AV観れねぇな」
「元々観ないからいいよ」
未だに涼也は自分のキャラを明かしていない。
だから、嘘をついた。
「観てるだろ? あーでもいいか」
伊知郎はへへへと笑う。

「これからはオカズに困らないなあ」
「そういうことをあの人の前では言わないでね」
「あの人?」
「この部屋使ってる人」
どうしても名前を呼びたくなかった。
「……オレがそんな人前でべらべらエロ話するような、
分別の無い人間にみえるのか?」
普段学校でべらべら言ってるし……。

ガチャン、と戸が開く音が耳に届いた。
「あ、帰ってきたんじゃねえ?」
ヒールの音が聞こえ、ドアが閉まり、
足音がこちらに向かってくる。
「あぁ……」と、伊知郎はそこで言葉を切る。
背筋を伸ばし、なぜか深々とお辞儀をする。

「はじめまして、おじゃましています」
早河奈々は「ああ」と声をあげ、
一瞬涼也を見て、伊知郎を見て、
「こんにちは」と言った。
「リョウヤ君からお伺いしていた以上にお綺麗ですね」
涼也も早河奈々も同時にふっと笑った。
笑みの種類は全く異質だろう。

「どうもありがとう」早河奈々は
涼也たちの間を抜けていき、
衣装ケースから服を取った。
そうして、母の部屋へ入っていった。
伊知郎は無言で母の部屋を見つめる。
きっと妄想しているんだろう。

「どっかで見たことあるんだよな……」「え?」
「いやあ」伊知郎は振り返って涼也を向く。
「ナナさん。見覚えがあるんだよ」
「あんな感じの顔の人たくさんいるじゃん」
「そうだなあ。じゃあ誰かに似てる」
「だれ? 芸能人?」
「そうかも」んー、と唸って考えてみるも、
涼也には思いつきそうになかった。
「わかんねえけど、でもすっげー誰かに
似てるんだよ。あー、出てこないな」誰だろう。

少し経って、早河奈々は部屋着になって出てきた。
「まだ突っ立ってたの?」

(

あざけ

)

るように奈々は笑う。
「ずっとナナさんのことを考えてたんですよ」
「ははっ」と笑って、奈々はソファーに座った。
「あたしの何を考えてたの?」

「誰かに似てるなあって」「……誰?」
奈々は顔だけこちらに向いた。
「それが考えても思いつかなくて」
「ふーん。こんな顔よくいるからね」
奈々はリモコンに手を伸ばし、テレビをつけた。

「あっ」と声をあげて伊知郎を向く。
「君はアレに似てるよ「オレっすか?」
「そう。君は、西郷隆盛」
ハッ、と涼也は笑った。確かに似ている。

学校で伊知郎がそう言われたこともあった。
その喩えに、彼は激怒していた。にも拘わらず、
「おいどんは西郷でごわす」などと
彼は適当に真似をし、早河奈々を笑わせた。

伊知郎は嬉しそうだ。「あ、リョウは、
サンドバッグに似てる」
「生き物じゃないし!」
涼也が反射的につっこむと、早河奈々は更に笑う。

「すぐ泣くサンドバッグだよ」
「そんなにリョウをボコボコにしてたんすかあ?」
「いや、ちょっと小突くだけでビービー大泣きしてたよ。
憎たらしいガキでさあ、あたしの言うこと聞きやしない」

涼也は何かと彼女の言うことに反発していた。
それは身体が危険人物だと
感じ取っていたからかもしれない。
目にしたときから合わないだろうと思っていた。

「確かにリョウはちょい頑固なとこあるしな」
言いながら、伊知郎はへらへらと笑う。
「僕が?」「うん」
「あんたは自分の思い通りにならないと、
イラっとくるタイプなんだよ」
そりゃアンタのほうだよ。
涼也はそう言いたかったのだが、やめた。

「まだまだお子様だね」言葉が癪に障った。
早河奈々はソファーに寝転がる。
「お姉さまの言うとおり、オレたちは
まだまだガキなんだって」
まるで涼也を慰めるように伊知郎は肩を叩いてきた。

勝手に決めつけて結論付けられ、不服だった。
「あ、そういやぁリョウから訊いたんすけど、
東京でやってた夜の仕事って、
もしかすっとキャバ嬢っすか?」
早河奈々は、一瞬硬直を見せた。
それからすっと身体を起こし、涼也を睨んだ。

「人のこと、勝手に喋んな」
ドスの利いた声。伊知郎は「こえぇ」と身を引かせた。
「変なこと言ってすいません」
「いや、あんたはいいよ。喋ったのコイツだから」
顎で涼也をさす。

「別にいいじゃん、仕事の話くらい」
「ああ?」早河奈々の眉間に皺が寄る。
「寝てる間に刺し◎◎すよ?」
「うぉメッチャこえええ!」
「オマエは黙れ」「あ、スイマセン」

「あたしのことは人に喋るな。以上」
それだけ言って、また寝転がった。
早河奈々に気圧されて、涼也たちは静まり返る。

テレビの音がよく聞こえた。
「オレ、今日は帰るな」伊知郎が小声で言った。
「わかった」涼也も声を抑える。
「男のクセしてひそひそ喋んな!」

「すいません、ごめんなさい、おじゃましました!」
早河奈々は「おお」と、男みたいな口調で返事した。
伊知郎は涼也に「じゃあな」と言って、
足早に去っていく。
涼也はその場に居られなくなって、
自分の部屋に籠もった。

つづく

Author :水谷広人
http://syosetu.net/pc/



人が世間をつくるのか 、
世間が人をつくるのか、 
渡る浮世の冷たい風は、 
いいことばかりじゃなかったわ 
悲しいことが多かった 
酒に酔いしれ つぶやく言葉 
いつも女は哀しいものよ 
今度は男に生まれたい……



巷の噂 
(※芸能界の首領-2)





Tinko_2
人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ





誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば言い訳と、愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


2015年8月 2日 (日)

漢の韓信-(97)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信

紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。

 

漢の韓信-(97)滎陽脱出

その日、滎陽の東門が開き、
中から二千人ほどの部隊が突出を始めた。
楚兵たちは突然の展開にみな首を傾げたが、
包囲している側としては、期待していた事態である。
一斉に攻撃を始めた。しかし漢兵たちは
抵抗もろくにせず、散り散りになって
逃亡するばかりである。

楚兵たちが追いかけてその姿形を確認してみると、
どれも甲冑に身を固めた女であるらしかった。
いぶかった楚兵たちが状況を把握できないでいるうちに、
彼らの前に目にも眩しい黄色い布で
全体を覆い尽くした車両が現れた。
その車両は随所に牛や犛牛(ヤク)の尾を
飾りとして施した大旗を靡かせており、
いわゆる黄屋車(こうやしゃ)という
漢王劉邦の専用車両であった。

「余は漢王である! いま余と余の軍は、
城中の食が尽きたため、休戦を申し出る。
戦闘をやめよ! 
余は楚に降るであろう」
楚兵たちはこれを聞き、みな感動して
万歳を叫んだ。

「ついにやったぞ」
「これで国に帰れる」兵たちは武器を捨て、
互いに抱き合い、無邪気に自分たちの
勝利を信じて喜びを表現した。
その隙に甲冑姿の女たちは四散して
残らず姿を消した。
あとには黄屋車だけが残った。

しかしその車両も項羽の本陣までたどり着くと、
主人の漢王だけを残し、滎陽城に引き返していった。
知らせを聞き、奥から姿を現した項羽は
目の前の男を見るなり、激怒した。
顔中に広がる憤怒の色を隠そうともしない。

「貴様、漢王ではないな! 何者だ!」
漢王を称したその男は、項羽の面前で付け髭をとり、
上げ底をした履物を脱ぎ捨てた。
そうするとまるで王の貫禄などはなく、
意外なほど小男だったのである。

項羽の周囲の者は、あっけにとられた。
「我こそは、漢王を詐称する逆賊紀信である! 
楚の馬鹿者ども、その濁った目に
この姿をしっかりと焼き付けておくがいい!」

項羽は頭に血が上り、相手の胸ぐらをつかんで
恫喝した。
「貴様がどこの誰だろうと関係ない! 
劉邦はどこだ」
「お前が何者だと聞くから答えてやったのだ。
劉邦の行方など知らぬ!」

「この……無礼者め!」
項羽は紀信を突き放し、唾を吐き捨てるように
言い放った。
しかし紀信はその様子を笑い、
からかうようにして跳ね回る。
「お前がいくら腹を立てても無駄だ! 
すでに漢王は滎陽にはおらぬ。
やい、項羽の馬鹿め! 人殺し! 鬼!」
項羽はさらに逆上して紀信を指差し、
周囲に向かって叫んだ。
「……こいつを、焼き殺せ!」

自分の身が炎で焼かれていく状況を、
紀信はあまり観察しないようにした。
それを考えると、ともすれば
「助けてくれ」と言いたくなってしまう。
あと数刻で楽になれる、
我慢だ、と思うようにして、
あとは未来の自分に対する評価に
思いを馳せることにした。

家族が不本意ながら、幸せな生活を
送っている姿が見える。
ざまを見ろ。兄と嫂が子供たちを囲み、
弟の武功を誇らしげに話して聞かせる
場面が見える。

偽善者どもめ。俺はお前らのことが心底嫌いだ。
それを想像すると不思議なほど気が紛れた。
体はいつの間にか焼き尽くされ、
紀信はそれに気が付くこともなかった。
紀元前二〇四年七月、
紀信の人生は死を目前にした最後の
瞬間にのみ輝きを放ち、その蜉蝣のような
一生は幕を閉じた。

紀信が項羽に悪態をついている間に、
劉邦や陳平らはごく少数の護衛を従え、
滎陽城をあとにした。
諸将もそれに次いで段階的に脱出をはかり、
彼らはひとまず関中に入り、
再起を期すこととなったのである。
滎陽城には周苛、樅公ら少数の守備隊が残されている。

劉邦には彼らを見捨てる気持ちはなかった。
「早く陣容を整え、滎陽を救うのだ」
言うばかりでなく、劉邦は実際に行動に移そうとしたが、
それを止めた者がいる。
「滎陽へ出ては、楚軍と正面から戦うことになり、
これまでとなんら状況が変わりません。
それよりも武関から南方面に出兵すれば、
楚軍は滎陽を捨て置き、
そちらに兵を向けることになりましょう」

劉邦はその言をよしとして、
河南の宛(えん)葉(しょう)という地に出兵し、
楚軍をおびき寄せようとしたが、
結局滎陽を救うという目的は果たせずに終わった。
紀信が項羽によって焼かれたのは七月のことで、
その後、周苛が魏豹を殺害したのは八月のことであった。

さらにそのひと月後滎陽城は攻略され、
項羽の手に落ちた。
周苛を始めとする残存守備隊が滎陽を守り通したのは
二か月程度であり、
その期間は短いようでいて、長いようでもある。

劉邦が河南の地に出兵し、
陽動を試みたが間に合わなかったことを思えば、短い。
しかしそもそも食糧難を最大の理由に
劉邦が撤退したことを考えれば、
周苛らは長期間にわたって滎陽城を死守した、と
評価するのが正しいかもしれなかった。

少なくとも実際に敵として周苛と渡り合った項羽は、
そう感じたようである。
「貴公、わしのもとで将軍とならぬか。
上将軍として、三万戸の封地を与えよう」

項羽は引見した周苛に誘いの言葉をかけた。
敵を無条件に憎みぬくことを旨としてきた
この男にしては、極めて希有なことである。
それだけ周苛は奮戦したということで、
さしもの項羽も敵将の行動に美を感じた、
ということだろう。

しかし、周苛はそれを拒絶したのである。
「私は、常に勝つ側にいることを望み、
敗れる側にいることを望まぬ。
つまり、お前は、敗れて虜になるのだ。
殺されたくなければ、せいぜい早めに降ることだ。
お前など……漢軍の敵ではないのだ!」

周苛は煮殺された。釜茹での刑である。
この刑は、他の刑罰に比べて
圧倒的に死を迎えるまでの時間が長い。
当然被刑者が死の恐怖を味わう時間も長く、
それだけに見た目以上に
残酷な刑であるといっていいだろう。
水温が徐々に上がり、それにつれて
死が刻々と近寄るのを実感しながら
精神の平衡を維持するのは大変なことで、
大抵の者は途中で「助けてくれ」と泣き喚く。

あるいは項羽は周苛が「助けてくれ」と言えば、
助けたかもしれない。
しかし、釜の中の周苛は、
一切そのようなことは口にせず、
目を閉じ、無言のまま息を引き取った。
周苛は死ぬ瞬間まで自分に取り乱すことを許さず、
謹直な男であり続けたのである。
よって彼がどの瞬間に死んだのか、
正確に知る者はいない。
項羽はあわせて樅公を殺し、
韓王信を捕虜とした。
ここにおいて滎陽城は
その役目を終えたのである。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『雪深深 』 藤あや子




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……


『別れの宿 』美空ひばり 



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる





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幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない

 

Mousou

昨日という日は歴史、

今日という日はプレゼント

明日という日はミステリー

 

『普通の家庭』

俺が小学生の頃、親父が原付に乗っていて
交通事故にあった
頭蓋骨骨折の重体だったけどなんとか
一命はとりとめた
でも大好きだった原付にも車にも
乗れなくなったみたいで大分ストレスが
溜まってたみたい

それで子供達には優しいんだけど夫婦喧嘩は
日常茶飯事
すぐに手が出る親父だったから堪えかねたお袋が
一人で実家に帰っちゃった
その時何も知らされてなくて「母ちゃん遅いね」
なんて兄弟3人で暢気に話してた気がするで、
何だかんだあって離婚してお袋は
子供3人連れて引っ越ししたんだ

時は経って俺はちゃんと高校まで通わせて貰った
当時は兄が俺の一つ上で大学生、
妹が俺の二つ下で高校生という状況
俺は家の経済状況が母子家庭で収入もないって事は
承知してたから高校出た後は
迷う事なく就職の道を選んだ
ちなみに引っ越した当初は家具は一切なく布団だけ、
荷物を詰めた段ボールを裏返してテーブルにするという
なかなかの極貧生活を送ってたで、

俺が18だったか20だったかの時にお袋から
「重要な話がある」と言われた
それは親権関係の書類で保護者の欄?は
お袋の名前にするか親父の名前にするかというものだった

お袋が言うには親父に書類を書いてもらうとすると、
どこにいるのかも生きてるのかも分からない親父に
直接書いて貰わなければいけないらしい
それは面倒だと俺はお袋に書類を書いて貰う事にした

その時神妙な面持ちで正座していたお袋が
ポロリと「ごめんね」と呟いた
俺は馬鹿で想像力もないから「何が?」と返したんだ
そしたらお袋が「あんたは普通の家の子みたいに
育てられなかったから」と言ってボロボロ泣き始めた
どれだけ親父に暴力を振るわれようとも
子供の前では泣かなかったお袋が泣いた

違うよ確かに俺の家は母子家庭だった
だけど自分の家が他と違うとは全然思わなかったんだ

俺が遠足行く時に風邪引いてたのに
大好きな唐揚げをいっぱい入れてくれた事
俺がプレステが欲しいと言ったら
中学の卒業祝いに買ってくれた事
俺が自分の実力以上の高校を受けた時には
心配してくれた事
高校の合格発表の日に仕事の合間を縫って
俺に電話してくれた事
俺の合格を聞いた日の夜に祝いのケーキを買って
みんなで一緒に食べた事
就職祝いにネクタイとスーツを買ってくれた事

どれも他の家でもやってるよ
普通の家じゃないか
そんな事一気に思い出して言葉に出来ずに
俺も号泣してしまった

来週お袋の誕生日がある
あの時の味には絶対に敵わないけど
今度は俺が唐揚げ作るよ
上手く作れるように頑張るから待っててな
お袋ありがとう
これからいっぱい親孝行するよ


【あの日の逆走 】



『息子の誕生日 』

今日は息子の二十歳の誕生日でした。
息子と私たち夫婦に血の繋がりはありません。
生まれてすぐ施設に預けられた息子を
私たちで引き取り育てました。
しかし、そのことを言うことができずにに
今日まで過ごしてきました。
私たちが産みの親ではないと知った時、
息子はどんな思いをするだろうか。
どんな目で私たちを見るようになるだろうか。
それが怖くて今日まで言うことができませんでした。

散々話し合った末、今日この日に
全てを伝えようと二人で決めました。
夕方、仕事から帰ってきた息子に
二人して全てを話しました。

息子は話を聞き終えるとゆっくり顔を上げ、
こんなことを言いました。
「離婚の話じゃないの?」
予想外の質問にあっけに取られながらも、
離婚話じゃないと言うと笑いながら
「よかった~w。ここ最近、二人とも暗い顔してたし、
今朝なんか二人して真剣な顔で
今日は早く帰れなんて言うからてっきり
離婚するのかと思って心配で
一日仕事にならなかったよw」

まじめに話を聞くように言うと息子は、
「俺は父さんと母さんの子供で
本当によかったと思ってる。
今日まで立派に育ててくれてありがとう
そう言うとニッコリ笑いながら缶ビールを開け、
こちらに傾けました。
初めて息子と飲んだ酒は塩気がきいていて
とても美味しかった、でもこの味には
この先、出会うことはもう無さそうです。




『小学生の感想文の発表会』




『笑顔をたやさない』


私は都内でナースをしています。
これは二年ほど前の話です。
ある病院で一人の患者さんを受け持つことになりました。
22歳の女性の患者さんです。
彼女は手遅れの状態で癌が見つかり
半年もつか分からない状態でした。

彼女は笑顔がかわいらしい目のくりくりした
タレントさんみたいにかわいい人でした。
末期のがんであと半年もつかわからないことは
彼女もしっていました。
けれど絶対に笑顔をたやさない。
人前で涙や弱音を吐かない人でした。
そして明るく、とっても優しい人でした。

私と彼女は同い年でした。私は彼女を尊敬しました。
彼女は上智大学の4年生でした。
彼女はよく「卒業して子供たちに英語を教えたい」と
言っていました。
彼女は大学でアメリカに1年、留学していたからでしょう。
同じ病院の小児科の子供たちにも好かれて
よく英語を教えていました。

彼女にはお母さんがいませんでした。
彼女が小学生のときに家を出て行ってしまったそうです。
それから、お父さんと二人でくらしていました。
彼女はお父さんのことが大好きでした。
彼女はあえて抗がん剤治療はしないで
進行をとめる薬を投与していました。
髪は抜けなかったものの、体は日に日に弱っていき、
容態は悪くなる一方で彼女は日に日に衰弱していきました。

12月に入りました。
彼女は意識がなくなりもうもたない状態になりました。
彼女のお父さんは「逝かないでくれ、
お父さんを一人にしないでくれ」と言っていました。
本当に心が痛みました。

私は最後を立ち合いました。
心肺停止になるとお父さんは彼女の酸素マスクをとり
「ありがとう、ありがとう」と何回も繰り返しました。
応急処置はできない状態だったのです。
そのままといういい方はおかしいのですが
処置はしませんでした。

お父さんは彼女の頭をなでながら
「お父さんの子供でありがとう。」と言いました。
私は泣きました。
ボロボロでてくる涙はとめられませんでした。
お父さんは彼女の病室からみつかった
一冊のノートをみせてくれました。
英語の勉強のノートだったのですが、
一番最後のページにこう書いてあったのです。

ありがとう、わたしはとっても幸せでした。
お父さん、ごめんなさい。
孫の顔みせてあげられなかったね。
わたしは病気になってつらいことはあったけど、
決して後悔はしていない。
神様がわたしにくれたミッションだったかもしれないね。
ちょっと、早めのミッション。
男手ひとつで育ててくれてありがとう。
だいすきだよ。

彼女の葬儀にはたくさんのお友達がきていました。
それから2年ほどたったいま、
彼女のお父さんは私の病院に入院しています。
おとうさんも癌になってしまいました。
けれどお父さんは私に言ったのです。
「もしかしたら、一人にさせたらいけないと思って
あの子がそうさせてくれたのかもしれない。
だから死ぬのはこわくないんだ。
あの子がまっていてくれてるから。」



『"ありがとう”の反対語』




時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる


マザー・テレサ

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。







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夢はでっかく、根はふかく。
花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 
根はみえないんだなあ


Kobanasi_3


『ふしぎなブドウ』(中国の昔話)


Budou
むかしむかし、ある村に、
とても心のやさしい娘がいました。


この娘のひとみの一つが、
ブドウのようにかがやいていたので、
村の人びとは娘のことを
「ブドウ姫」と、よんでいました。




娘が十二才になったとき、お父さんとお母さんが
病気でなくなってしまいました。

娘は、おばさんの家にひきとられることになりました。
このおばさんは、たいそういじわるな人で、
いつも娘につらくあたっていましたが、
ある日とうとう、娘を家からおいだしてしまったのです。
しかし、娘は悲しんで泣いたりはしません。

昼は村のガチョウのせわをし、
夜は川のほとりのやなぎの木にもたれてねむりました。
一人ぼっちの娘の友だちはガチョウたちで、
さびしくなると、ガチョウをだいて歌をうたいます。
するとガチョウたちも、娘の歌にあわせて
「ガア、ガア」と、うたうのでした。

それから一年ほどたったころ、
おばさんに女の赤ちゃんが生まれました。
この赤ちゃんは生まれつき、目が見えませんでした。
「ブドウ姫にいじわるをしたから、
きっとバチがあたったんだ」
村人たちは、こんなわるくちをいいました。

おばさんは、くやしくてなりません。
さて、お月見の夜のこと。娘は川岸にすわって、
水にうつる月の光をボンヤリとながめていました。
するとそこへ、おばさんが通りかかりました。
町へお月見のごちそうを買いにいった
帰りなのでしょうか。
おいしそうなブドウがはいったカゴをかかえています。

「おばさん」と、娘はいいました。「
わたしにそのブドウをひとふさわけてくださいな。
朝からごはんをたべていないので、
おなかがすいてなりません」
おばさんは立ちどまり、おそろしい顔で
娘をにらみつけました。

「そういえば、だれかがおまえの目を、
ブドウのようだとかいっていたね。
どれ、見せてごらん」おばさんはそういうと、
いきなり砂をつかんで、娘の目の中に
グイグイとすりこんだのです。

「キャーーーァ!」かわいそうに娘は、
目をつぶされて川のほとりで泣きつづけました。
泣きながらふと、むかし
お母さんからきいた話を思いだしました。

Budou
「遠い山のなかに、
野ブドウがなっているの。
それはふしぎなブドウで、
たべるとどんなに
目のわるい人でも

すぐになおるそうよ」



娘はそのふしぎなブドウをさがそうと、
川の流れにそってあるきはじめました。

「ふしぎなブドウさえ見つかれば、
わたしの目も、
おばさんの赤ちゃんの目もなおるし、
ほかの目のわるい人にも
きっとよろこんでもらえるわ」

こうして十日もあるきつづけていると、
とつぜん、クマのうなり声がしました。
娘はそばの木によじのぼって、ジッとしていました。
クマはグルグル木のまわりをまわっていましたが、
そのうちに、むこうの谷のほうへ行ってしまいました。
ホッとしていると、こんどはきゅうに、
木がグラグラとゆれました。
木の上に、一羽のタカがまいおりたのです。
タカのつばさは木をスッポリと
おおいかくしてしまうほど大きく、
ツメは鉄の針のようでした。
するどい刀(かたな)のようなくちばしで、
木をつっつくたびに、木はガッガッと
音をたててゆれます。

娘はどうなることかと、ガタガタふるえていました。
しかしタカは、娘に気づかずに、
「ギャオ!」と、ないて、とびたっていきました。
でもそのとき、風がピューとふいてきて、
娘は木の枝からふきとばされてしまいました。
地面に落ちたときに、足をくじいてしまったので、
娘は、はっていくことにしました。
こうして、また十日がすぎていきました。

娘の着物はボロボロにやぶれ、
顔や手に血がにじんでいます。
ひどく疲れのために、娘の黒くてつややかだった髪も、
いつのまにかまっ白になってしまいました。
「どこまで行ったら、あのふしぎなブドウが
見つかるのでしょう」
娘は、なんどもあきらめて、ひき返そうとしました。
しかしそのたびに、勇気をふるいおこして、
前へ前へと進んでいきました。

「いちど心にきめたことは、さいごまで
やりとおさなくては」
そのうちに、つめたくてやわらかなものにぶつかりました。
それは、大きなヘビでした。
でも娘は目が見えないので、へいきでその
ヘビの背中の上をまっすぐはっていきました。
そのとき、ヘビがみぶるいをしたので、
娘はあっというまにふかい谷底へまっさかさまです。

「ドシーン!」娘は谷底にたおれたまま、
動くこともできません。
「わたし、このままここで死んでしまうのね。
・・・お母さん」娘は、天国のお母さんにいいました。
そのとき、娘の顔に、フワッと何かがふれました。
さわってみると、草のつるのようなものです。
そしてそのつるの先に、水の玉のようなものが
ぶらさがっていました。 (もしかしたら)
娘は水の玉をひきちぎって、そっとなめてみました。
すると、いままでとじていた目がパッとひらき、
光がいちどにとびこんできたではありませんか。

水の玉だと思ったのは、さがしていた
ブドウだったのです。
見えるようになった目で、あたりを見回してみると、
いちめんにブドウがしげり、キラキラと
光をはじいています。
野の花がさき、小鳥たちが楽しそうにさえずっています。

「目が見えるということは、こんなに
すばらしいことだったのね」
娘はブドウのつるの上にすわって、
歌をうたいはじめました。
うたいながらブドウのつるで、カゴをひとつあみました。

「はやく村へかえって、目のわるい人たちに、
ブドウをわけてあげましょう」
カゴいっぱいブドウをつみおわったとき、
あたりがきゅうに、くらくかげってきました。
「どうしたのかしら?」すると、うしろのほうから、
「おーい」と、よぶ声がしました。
ふりむいてみると、大男が山をまたいでくるところです。
大男は肩に緑の布をまとい、
頭に金のかんむりをかぶり、
足に水晶(すいしょう)のクツをはき、
手に銀のつえをもっています。
「娘よ。ここへ、なにしにきた!」
高い高い空の上から、大男の声がひびいてきました。

娘は、すこしもおそれずにいいました。
「はい、ふしぎなブドウをさがしに」
大男はうなずいて、
「わしは、この森と草原と山の王だ。どうだ娘。
わしといっしょに、このすばらしい国でくらさないか?」と、
娘をだきあげて、森をゆびさしました。

そこには、めずらしい宝石がかぞえきれないほど
たくさんきらめいていました。
「ここにあるくだものも、宝石も、みんなおれのものだ。
どうだ。おれの娘にならないか。
そうすればわしの城にすみ、
幸せにくらすことができるのだぞ」

「ありがとう。でも、わたしは村へ
帰らなければなりません。
村に帰って、目が見えなくて悲しんでいる人びとに、
ブドウをあげなければ」
「バカもの!」
大男はおこって、娘をふきとばしました。
娘は空高くふきあげられ、星のきらめくなかを
グルグルとまわって落ちてきました。
大男は、娘をうけとめると、
「村へ帰っても、つらいことばかりだろう。
どうだ。わしのそばでくらすか?」
「いいえ。わたしはどうしても村へ帰ります」

「・・・そうか、わしはおまえのような
こころのやさしい、すばらしい娘と
くらしたいと思っていた。
だがあきらめよう。さあ、村へ帰るがいい」と、
娘に一本の緑の小枝をわたしました。

大男からもらった緑の小枝をにぎりしめると、
風のように早く走ることができました。
娘はブドウのカゴをかかえて、
なつかしい村へ帰っていったということです。


おしまい


尻尾の釣り





人の為(ため) と
書いて、
いつわり(偽) と
読むんだねぇ






誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……。



時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる 







P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

Furo1


2015年8月 1日 (土)

漢の韓信-(97)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin
韓信

紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。

 

漢の韓信-(97)滎陽脱出

その日、滎陽の東門が開き、
中から二千人ほどの部隊が突出を始めた。
楚兵たちは突然の展開にみな首を傾げたが、
包囲している側としては、期待していた事態である。
一斉に攻撃を始めた。しかし漢兵たちは
抵抗もろくにせず、散り散りになって
逃亡するばかりである。

楚兵たちが追いかけてその姿形を確認してみると、
どれも甲冑に身を固めた女であるらしかった。
いぶかった楚兵たちが状況を把握できないでいるうちに、
彼らの前に目にも眩しい黄色い布で
全体を覆い尽くした車両が現れた。
その車両は随所に牛や犛牛(ヤク)の尾を
飾りとして施した大旗を靡かせており、
いわゆる黄屋車(こうやしゃ)という
漢王劉邦の専用車両であった。

「余は漢王である! いま余と余の軍は、
城中の食が尽きたため、休戦を申し出る。
戦闘をやめよ! 
余は楚に降るであろう」
楚兵たちはこれを聞き、みな感動して
万歳を叫んだ。

「ついにやったぞ」
「これで国に帰れる」兵たちは武器を捨て、
互いに抱き合い、無邪気に自分たちの
勝利を信じて喜びを表現した。
その隙に甲冑姿の女たちは四散して
残らず姿を消した。
あとには黄屋車だけが残った。

しかしその車両も項羽の本陣までたどり着くと、
主人の漢王だけを残し、滎陽城に引き返していった。
知らせを聞き、奥から姿を現した項羽は
目の前の男を見るなり、激怒した。
顔中に広がる憤怒の色を隠そうともしない。

「貴様、漢王ではないな! 何者だ!」
漢王を称したその男は、項羽の面前で付け髭をとり、
上げ底をした履物を脱ぎ捨てた。
そうするとまるで王の貫禄などはなく、
意外なほど小男だったのである。

項羽の周囲の者は、あっけにとられた。
「我こそは、漢王を詐称する逆賊紀信である! 
楚の馬鹿者ども、その濁った目に
この姿をしっかりと焼き付けておくがいい!」

項羽は頭に血が上り、相手の胸ぐらをつかんで
恫喝した。
「貴様がどこの誰だろうと関係ない! 
劉邦はどこだ」
「お前が何者だと聞くから答えてやったのだ。
劉邦の行方など知らぬ!」

「この……無礼者め!」
項羽は紀信を突き放し、唾を吐き捨てるように
言い放った。
しかし紀信はその様子を笑い、
からかうようにして跳ね回る。
「お前がいくら腹を立てても無駄だ! 
すでに漢王は滎陽にはおらぬ。
やい、項羽の馬鹿め! 人殺し! 鬼!」
項羽はさらに逆上して紀信を指差し、
周囲に向かって叫んだ。
「……こいつを、焼き殺せ!」

自分の身が炎で焼かれていく状況を、
紀信はあまり観察しないようにした。
それを考えると、ともすれば
「助けてくれ」と言いたくなってしまう。
あと数刻で楽になれる、
我慢だ、と思うようにして、
あとは未来の自分に対する評価に
思いを馳せることにした。

家族が不本意ながら、幸せな生活を
送っている姿が見える。
ざまを見ろ。兄と嫂が子供たちを囲み、
弟の武功を誇らしげに話して聞かせる
場面が見える。

偽善者どもめ。俺はお前らのことが心底嫌いだ。
それを想像すると不思議なほど気が紛れた。
体はいつの間にか焼き尽くされ、
紀信はそれに気が付くこともなかった。
紀元前二〇四年七月、
紀信の人生は死を目前にした最後の
瞬間にのみ輝きを放ち、その蜉蝣のような
一生は幕を閉じた。

紀信が項羽に悪態をついている間に、
劉邦や陳平らはごく少数の護衛を従え、
滎陽城をあとにした。
諸将もそれに次いで段階的に脱出をはかり、
彼らはひとまず関中に入り、
再起を期すこととなったのである。
滎陽城には周苛、樅公ら少数の守備隊が残されている。

劉邦には彼らを見捨てる気持ちはなかった。
「早く陣容を整え、滎陽を救うのだ」
言うばかりでなく、劉邦は実際に行動に移そうとしたが、
それを止めた者がいる。
「滎陽へ出ては、楚軍と正面から戦うことになり、
これまでとなんら状況が変わりません。
それよりも武関から南方面に出兵すれば、
楚軍は滎陽を捨て置き、
そちらに兵を向けることになりましょう」

劉邦はその言をよしとして、
河南の宛(えん)葉(しょう)という地に出兵し、
楚軍をおびき寄せようとしたが、
結局滎陽を救うという目的は果たせずに終わった。
紀信が項羽によって焼かれたのは七月のことで、
その後、周苛が魏豹を殺害したのは八月のことであった。

さらにそのひと月後滎陽城は攻略され、
項羽の手に落ちた。
周苛を始めとする残存守備隊が滎陽を守り通したのは
二か月程度であり、
その期間は短いようでいて、長いようでもある。

劉邦が河南の地に出兵し、
陽動を試みたが間に合わなかったことを思えば、短い。
しかしそもそも食糧難を最大の理由に
劉邦が撤退したことを考えれば、
周苛らは長期間にわたって滎陽城を死守した、と
評価するのが正しいかもしれなかった。

少なくとも実際に敵として周苛と渡り合った項羽は、
そう感じたようである。
「貴公、わしのもとで将軍とならぬか。
上将軍として、三万戸の封地を与えよう」

項羽は引見した周苛に誘いの言葉をかけた。
敵を無条件に憎みぬくことを旨としてきた
この男にしては、極めて希有なことである。
それだけ周苛は奮戦したということで、
さしもの項羽も敵将の行動に美を感じた、
ということだろう。

しかし、周苛はそれを拒絶したのである。
「私は、常に勝つ側にいることを望み、
敗れる側にいることを望まぬ。
つまり、お前は、敗れて虜になるのだ。
殺されたくなければ、せいぜい早めに降ることだ。
お前など……漢軍の敵ではないのだ!」

周苛は煮殺された。釜茹での刑である。
この刑は、他の刑罰に比べて
圧倒的に死を迎えるまでの時間が長い。
当然被刑者が死の恐怖を味わう時間も長く、
それだけに見た目以上に
残酷な刑であるといっていいだろう。
水温が徐々に上がり、それにつれて
死が刻々と近寄るのを実感しながら
精神の平衡を維持するのは大変なことで、
大抵の者は途中で「助けてくれ」と泣き喚く。

あるいは項羽は周苛が「助けてくれ」と言えば、
助けたかもしれない。
しかし、釜の中の周苛は、
一切そのようなことは口にせず、
目を閉じ、無言のまま息を引き取った。
周苛は死ぬ瞬間まで自分に取り乱すことを許さず、
謹直な男であり続けたのである。
よって彼がどの瞬間に死んだのか、
正確に知る者はいない。
項羽はあわせて樅公を殺し、
韓王信を捕虜とした。
ここにおいて滎陽城は
その役目を終えたのである。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『雪深深 』 藤あや子




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……


『別れの宿 』美空ひばり 



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる





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