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2016年7月27日 (水)

漢の韓信-(138)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



こうして、こうすりゃ、こうなるものと、
  知りつつ、こうして、こうなった



メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
良いかな !!
アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい



Kanshin021111


韓信
紀元前二〇〇年代の
中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
「国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。






漢の韓信-(138)


四面楚歌

「籠城はしたものの、支援部隊が来るわけでもない
項王としては、早めにこの状況を
打開したいところです……。
つまり城外で兵が戦っている隙に、自分は
難を逃れてひそかに彭城に戻り、再起を期す。
項王の行動としてはこれしか考えられませんが、
我々としては、そうさせてはなりません」

「項羽が逃げる、というのか?」
「その機会をうかがっておりましょう。
そのため、私はこのたびの戦いで項王が
直接陣頭指揮をとることはない、と思っています。
おそらく彼は兵を小出しにして戦わせ、
自身は戦いません」

「…………」「しかし、項王は生来こらえ性のない
男でございます。一度は逃げると決めたとしても、
きっかけさえあれば我々を打ち負かし、
前面を突破しようと試みるに違いありません。……
このため、我々は二度三度にわたって楚軍に
負けるふりをし、それによって彼らにきっかけを与えます」

「……それは敵に倍する大軍のとるべき作戦ではないな」
「相手の意表をつくことこそ、作戦と言えるのでは
ないでしょうか。
項王は漢が大軍だと知れば、対抗できないものと思い、
逃亡を企む。ところがその大軍が意外に弱かったら? 
数だけを頼んだ烏合の衆だとしたら? 
彼ならずとも攻撃して撃ち破りたくなるでしょう。
我々としては、そこを突けばよいのです」

「しかし、我々の戦いが偽計だと悟られはしないか。
確かに我が漢軍は強くなく、数を頼んだだけでは
楚には勝てないかもしれない。……
しかし、今の漢軍は数だけではない。
指揮官として君がいるのだぞ」
「私は負けるふりに関しては常日ごろ得意としており、
今に至るまで何度もそれを実行してきています。

項王は私の戦い方を見て、気付くかもしれません。
『韓信の戦いぶりは、噂どおりの
意気地のないものだな!』と。そう思えば、
自ら出陣し、戦場に姿を現すでしょう。
この場合は、そこを捕らえる。

あるいはそれでも慎重を期し、彼自身が出陣しない
場合も考えられます。
しかしそのとき彼は、城中の大半の兵士を動員し、
漢を撃ち破ろうとするでしょう。
このときこそ我々は大軍の利点を生かし、
彼らを逆に殲滅する。

これにより、項王は城中に孤立します」
「戦況不利となれば、逃げ出すと君が今言った
ばかりではないか」
「そのとおりです。この場合、彼は落ち武者となります。
私の狙いは彼を落ち武者にすることです。
それもほぼ単独で逃亡する落ち武者に」

「ふうむ。……よく考えてある。
お前が敵でなくてつくづくよかったとわしは思うぞ」
劉邦のこのときの発言には、多少の
皮肉がこもっていた。
韓信にはそれがよくわかったが、
今さら言うべきことは何もない。

このときの漢軍の布陣は先頭に韓信が自ら率いる
三十万の兵、両翼を孔将軍(孔煕)と費将軍(陳賀)が固め、
その後ろに総大将の劉邦、さらにその後ろに周勃と柴武が
それぞれ率いる部隊が陣取る、という重厚なものであった。

漢軍の総数に関しては、あまりに急激に兵力が増加したため、
その正確な数値を知る者は誰もいない。
しかし韓信の軍だけで三十万であることを考えると、
少なくとも五十万は越す数であったと思われる。
また、彭越や黥布の軍が予備部隊として
控えていたことを考えれば、垓下を囲んだ漢の勢力は
天地を覆うようなものであったに違いない。

というのも、これを迎え撃った項羽率いる楚軍は
十万程度でしかなかったのである。
いかに武勇を誇る項羽といえども、太刀打ちできる
数ではない。
深刻な状況に項羽は城壁の防備を固め、
突出させる兵はほどほどにして対応した。
わずかな兵を犠牲に脱出を試みようというのである。

しかし、城外に出した兵の数は僅かであったのに、
それを処理しようとする漢軍の動きは
項羽の目に鈍重に見えた。
韓信はほぼなにもすることもできず、
少数の楚軍の動きに翻弄されているようであった。

あるいは、大軍であるからこそ、指揮が
徹底しないのかもしれぬ。
項羽はそう思い、韓信の指揮能力を軽く
見積もることにした。

これは、できることなら逃亡ではなく、
戦いを欲した項羽の本能がそう思わせたのかもしれない。
しかし、実際は韓信が項羽にそう思わせているのであった。
だが、それを見抜けなかった項羽は、
韓信が要領を得ずに後方に下がる姿を見て、
城内に留まっている残りの兵に出撃命令を出した。

これを機に両翼の孔将軍と費将軍が猛然と
楚軍に襲いかかり、韓信が攻めあぐねた少数の
兵たちを殲滅した。

城内からは楚兵たちが次々に出撃してきたが、
彼らはただ大軍に包囲されるだけのために
出てきたようなものである。
態勢を立て直した韓信が再び前面に兵を進めると、
目立った抵抗もできずに壊滅するに至った。

してやられた……韓信めに……。
項羽の全身から力が抜けていき、
それとともに気力が失われていった。
覇気を失った項羽は、もはや本来の項羽とはいえない。
貴族の子として甘やかされて育てられてきた、
忍耐強くない男の姿が見え隠れする。

これまで、乱世の武人として人に見せないようにしてきた
姿がそこにあった。項羽は絶望のあまり、天を仰ぎ、
座り込んでしまったのである。

それを遠巻きに、なにも言わずに見つめた虞の目には、
彼が溢れようとする涙をこらえているかのように見えた。
このとき城内に残った楚兵の数は、わずか
千名に満たなかった。

日が暮れ、空に星の姿が見えるようになった。
韓信は篝火のもとで物思いにふけっている。
今夜は星や月の光が眩しい……。
我々にとっては好都合だが、逃亡をはかる
項王にとっては不運なことだ。
また、こんなことも思う。星の光りが人それぞれの
運命を示しているとしたら、今夜、とびきり大きな巨星が
その輝きを失うことになるかもしれない。
それは、あの星か、それとも、あの星か……。

韓信の陣営には、吉兆を占星術で占うような者はいない。
彼は戦いを前にして、祭壇に生け贄を
捧げるようなこともしなかった。
常に現実的で、自分の力のみを頼りにしてきた
彼であったが、このときは人並みに感傷に
浸っていたのである。

「お見事でしたな。城内に残るは項王と、わずかの兵……。
あとは、それをどう仕留めるか」
灌嬰は物思いにふける韓信の横に立ち、
純粋に興味本位に聞いた。
韓信が項羽の息の根をどうやって絶つつもりか
聞きたかったのである。

「うむ……。戦力の大半を失った項王は、
半ば強引な形で脱出をはかるに違いない。
……そこで我々は彼を追うわけだが……
その役目は……灌嬰将軍、君にやってもらおうと
考えている」
「は?」「いや、これはもう私の考えではない。
既に私は漢王にこのことを奏上し、許可を得ているのだ」

「なぜです? 斉王様直属の部隊をもってすれば、
決して難しい任務ではないはずですが……」
「恐ろしいのか?項王のことが」
「そういうわけでは……」
「君はかつて漢王のもとで滎陽と敖倉をつなぐ
甬道を守り続け、多大なる功績を示した。

しかし、地味な任務であったために、その功績は
正当に評価されていない。
また、私のもとに来てからは長らく国境の守備にあたり、
私としては感謝しているのだが……
君は漢王の部下であるため、勝手に私が
封地を与えることはできぬ。
私にできることは、君に誰も文句のつけようもないほどの
大功をあげさせることだ」

「つまり……?」
「うむ。君の自慢の騎馬隊をもって項王の
首をあげてみせよ。
それによって漢軍内での君の地位も高まるだろう」
韓信の命令は、灌嬰が主に護軍中尉の陳平と
そりが合っていないことを考慮してのものであった。
灌嬰は古参の武将として、新参の陳平が
劉邦に重用されていることにかつて異議を唱えたが、
その陳平の作戦がこれまで成功しているので、
結果的に漢軍内での孤立度を高めている。
韓信はそのことを気遣い、灌嬰に軍功を
あげさせようとしたのだった。

一方で韓信が項羽を斬れば、本当の意味で
劉邦を上回る存在となってしまう。
人臣の身でありながら主君を恐れさすほどの軍功を
あげることの危険性、その本当の意味に
ようやく気付き、自らは身を引いたのかもしれない。

だが、そんな気遣いも本来は戦いが終わってから
するべきものだった。というのも未だ項羽は
城内に健在で、彼が生きている限りまだまだ油断は
できないのである。

しかも、実は韓信としてもいかにして項羽を
城外に引き出すか、この時点で具体的な
考えはなかったのだ。
垓下城を取り囲む漢兵の間から、歌声が
響き始めたのはちょうどその頃であった。・・・・

つづく

Author :紀之沢直・:野沢直樹
http://kinozawanaosi.com.

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



「神戸北クラブ 」




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語 

入れてもらえば気持ちは良いが、
    どこか気兼ねなもらい風呂

Dr1

http://campbll-net.com/furotop.htm

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