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2016年11月11日 (金)

漢の韓信-(149) 皇帝と楚王

信じれば真実、疑えば妄想……


昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい


Kansin

漢の韓信-(149) 皇帝と楚王

こうして韓信は誅罰されることになった。
「曹参や盧綰、そして張良がこの場にいれば、
こうはならなかったろうて」  
蕭何は灌嬰を前にそう言って嘆息した。
曹参は斉の宰相、盧綰は燕王としてそれぞれ不在で、
張良に至っては統一後、わずかな領地をもらっただけで
半分引退した形である。  

皇帝と同年同日に生まれた親友の盧綰がいれば、
皇帝の不安を和らげることができたかもしれない。  
韓信と長く戦場をともにしてきた曹参がこの場にいれば、
少なくとも議論は大勢に押されることなく、もっと
白熱したことだろう。

そうすれば皇帝の意志が変わることもあったかもしれないのだ。  
そして張良がいれば、陳平による詐略的な解決方法を
とることなく、もっと誠実で、武人の自尊心を尊重する案が
提出されたかもしれない。  

しかし、彼らはいずれも不在で、そのことが韓信の運命を
決定づける一因となったのである。
「張子房(張良)どのは留りゅう侯となり、まだ若くして
隠居生活をなされている、と聞きましたが……」  
灌嬰は蕭何に尋ねた。

「うむ。お上は張良の功労を高く評価しておられた。
それゆえ、彼には斉の土地、三万戸を封邑として
与えようとしたのだ。
これはとてつもなく広大な領地だ。……

つまりお上は韓信に代えて張良に斉を
治めさせたかったのだろう。
しかし、張良はこれを固辞し、わずかに留のみを
領地とするにとどめたのだ。
彼は病弱な男であったので、引続き国政に参加する
自信がなかったのかもしれないが……

実情は違うな。広大な領地を持ち、権勢を得ることで、
自分が韓信のように疑惑の目で見られることを
嫌ったに違いない」  
それを聞いた灌嬰は、突如涙をこぼした。
蕭何は驚き、逆に灌嬰に尋ねる。

「なにか知っているのか」
「いえ……」
「では、なぜ泣く」
「……かつて楚王は、私に語ったことがありました。
いわく、『自分は漢による天下統一がなったのち、
斉国は陛下に献上して、どこでもいいから
小さな土地をもらい、静かに余生を暮らすつもりだ』と……。

張子房どのの現在の隠遁生活は、
実は楚王が望んだものなのです! 
話を聞いた当時、私は楚王の気持ちが
よくわかりませんでした。……しかし、今に至り、
ようやくその意味がわかったのです」

「……そうか」  
蕭何は答えを返すことができなかった。
なんという皮肉な運命。韓信は張良に比べて
立ち回りが不器用だった、ということか。  
しかし、そんなひと言で片付けられるほど、
事態は簡単ではない。  

・・・無双の国士も、これまでか……。  
かつて蕭何は韓信を「国士無双」と評し、
劉邦にしきりに推挙した。  
自分のその行為が、結局は韓信を苦しめることに
なったのではないか。

蕭何は近ごろになって後悔を感じている。  
灌嬰の涙を見ることで、蕭何のその後悔はさらに
増幅していった。  

下邳の宮殿では、韓信が鍾離眛を招き、
余人を交えずに議論している。  
このとき韓信が鍾離眛を匿っていることを知っている者は
宮中には多い。しかし、それがいけないことだと
認識している人物は少なかったようである。  

はるか遠くの関中の地で、皇帝がそれを
問題視していることに気付いている者は、
ほとんどいない。もしかしたら気付いている者は、
当事者の二人だけだったかもしれなかった。

「眛……。唐突だが栽荘先生の前歴を知っているか。
その……淮陰に来る前の話を」  
韓信の問いに鍾離眛は首を振った。 「いや、知らぬ。
君は知っているのか?」  
興味をそそられて膝を乗り出した眛だったが、
目の前の韓信は浮かぬ顔である。

どうやら、栽荘先生を種に昔話に興じるつもりではないらしい。
「栽荘先生は、戦国時代の燕の遺臣で、
本名を鞠武というそうだ。
燕の太子であった丹の守り役であったらしい。
先生が死ぬ直前、私に話してくれた」

「ほう……。
太子丹といえば、始皇帝に刺客を送った人物だな。
それに失敗し、燕は秦によって滅ぼされた。
栽荘先生は国を失い、淮陰に逃れてきたというわけか……。
大人物だな。意外にも、というべきか、やはり、と言うべきか
「うむ。……ところで先生が言うには、私は太子丹に性格が
よく似ているそうだ。先生に言わせれば、
私などは生き方の不器用な若者、ということになるらしい。
太子丹も同じように不器用であった、とのことだ……

今になって思い返してみると、栽荘先生は私の性格を
よく見抜いていたよ。やはり、だてに年はくっていなかった、
と言わざるを得ない」
「ふむ……」  鍾離眛は、なぜ今韓信がそのようなことを
話しだしたのか考えた。  

韓信は今、自分の不器用さを実感している。と、いうことは
彼は今、なにかの問題に突き当たり、それをうまく
解決できずにいるに違いない。
「信……。言いたいことがあるのなら、率直に
言ってみたらどうなのだ」  
眛はそう言ってせき立ててみたが、
韓信の態度はまだはっきりしない。

「うむ。そのつもりだが……もう少し話させてくれ。
太子丹は、始皇帝を殺害しようと刺客である
荊軻を咸陽に送り、それに失敗したことが原因で
燕は滅亡するのだが……、

この事件は太子が秦からの亡命者である樊於期を
中途半端な義侠心を発揮して匿ったことに端を発している」
「……つまり、亡命者の樊於期が私であると言いたいのか。
君が私を匿ったのは、中途半端な、つまらない
義侠心がゆえだと」
「……よく、わからない。しかし、このままいけば、
そういうことになる。私は、つまるところ、
太子丹のような末路を迎えたくないのだ。
たとえ、性格が似ていたとしても」

「……言っている意味がよくわからないが」
「君が私のもとで今後どのような人生を
送るつもりなのかを知りたい。
君はこのまま死ぬまで隠れ続け、何ごとも成すことなく
一生を終えるつもりなのか」 「…………」

「それならそれで構わないのだが……。
だが、おそらく君にはそんなつもりはないだろう」
「ああ。その通りだ」
「では聞く。君の目的はなんだ?」
「再び世に出て、名を残すことだ」
「それでは答えになっていない。何をして
名を残すつもりなのかを聞きたいのだ」  

韓信の表情には、わずかながら不安が浮かんでいる。  
眛にはその理由がわかった。
もし、自分がいずれ漢を打倒するためにここに
潜伏しているのだ、などと言ったら……。
「私は、君を手助けするために、ここにいる。
君にはそれがわからないのか」
「なに? どういうことだ」

「私を公職につけよ。そうすれば、君の王権は強化される。
君と私が組めば……現在の君の不安定な立場を
解消することができるのだ。
私に兵を与えよ。君の兵たちの鉾先は今民衆に
向けられているが、それは間違っている。
民衆を威圧しても権力は強化されず、それはただ
失われるばかりだ。

権勢あるものに対して軍威を見せつけることこそ、
国の安定につながる。それは結果的に
民衆を守ることにつながるのだ」  ・・・

つづく

Author :紀之沢直樹 (野沢直樹)
http://kinozawanaosi.com
http://mypage.syosetu.com/273441/


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

B111


歌は心の走馬灯、歌は世につれ、世は歌につれ、 
  人生、絵模様、万華鏡…


『 いにしえワルツ 』




時は絶えず流れ、 今、微笑む花も、明日には枯れる



P R

入れてもらえば 気持ちは良いが、
どこか気兼ねな もらい風呂

B216

お風呂物語』が選ばれる理由がここにあります。

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