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2016年11月18日 (金)

漢の韓信-(150) 皇帝と楚王

信じれば真実、疑えば妄想……


昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい



Kansin
Kansin


漢の韓信-(150) 皇帝と楚王

眛としては、充分鋭気を抑えたつもりである。
彼の言ったことは、項羽の世を復活させることでも、
漢を転覆させることでもなく、韓信の力添えをして
楚の国力を充実させることだった。  

しかし、漢に対して武力を見せつけることには変わりはない。  
眛の見たところ、韓信はこの点に拒否反応を示したようであった。
「過激に聞こえるかもしれないが、これは必ずしも
皇帝を討つ、ということではないぞ」
「……そうか。しかし……」
「不安か。だが、考えようだ。君の持つ武力は、
充分漢に対抗できるものだ。加えて君自身の指揮能力や
用兵の妙をもってすれば、漢はうかつに楚に手出しできない。

さらに配下の将として私がいれば、皇帝たりとも
君の機嫌を損なう真似はできなくなる」
「しかし……それは結局、敵対することだ。
敵対とはつまり……叛くことだ」
「わからない奴だ。実際に武力を行使することはない。
示威するだけで、ことは足りるのだ」
「確かにそうだが、しかしそれには君の存在を、
漢に認めさせねばならない。

ひそかに君を匿い、独断で要職につけたとあっては、
私は叛逆者とみなされてしまう。
たとえ実際はそうではないとしても、彼らに口実を
与えるような行動を私は慎みたいのだ。……

なあ、眛。私とともに皇帝のもとに出頭しないか。
そして助命を請うのだ。誠心誠意訴えれば、きっと皇帝は
聞き入れてくださる」
「それは、疑わしいものだ。……
しかし、なぜ今になってそのようなことを言う? 
信、君は……私を軽々しく匿ったことを後悔しているのか」
「いや、決してそうではない。ただ、君を匿い、
庇護し続けるために現在の状況を打開したいと
思っているだけだ。……

実は先ほど私あてに朝廷から正式に命令が下った。
楚領内に逃げ込んだと思われる君を逮捕せよ、とな」  

「皇帝は怒りや恨みなどの一時的な感情で、
判断を誤りやすいお方だ。しかし、あの方のいいところは、
その誤った判断に固執しないところだ。
自分の下した決断が間違いであると気付けば、
修正することを厭わない。

事実、もと楚将の季父きふは首に懸賞金を
賭けられていたが、最後には許されたのだ。
かつての敵とはいいながら、有能な男を殺してしまうことの
愚かさに気付いたのだ」  

韓信がこのとき話題にした季父という男は、
もと項羽配下の将軍で猛将と恐れられた人物である。  
項羽が死んだのち、彼は諸国を転々とし、
流浪の日々を送った。
時には頭の毛をすべて剃り、手枷をはめて
奴隷の姿に扮したこともあった。

しかし最後には魯のとある有力者のもとに
転がり込むこととなり、その有力者の訴えを聞いた
夏侯嬰が皇帝に進言し、助命されることとなった。  
その後季父は漢の要職に付き、劉邦死後の
帝室の混乱を数度に渡って解決に導く活躍を見せる。

「季父の例は、数少ない例に過ぎぬ。
丁公ていこうは殺されたぞ」  
ここで鍾離眛の言う丁公とは、季父の叔父で、
本名を丁固ていこといった。季父の母親の弟であり、
やはり楚の将軍である。  

かつて彭城で漢王であった劉邦を追撃した丁公は、
ついに剣の届く距離にまでそれに肉迫した。  
このとき命の危険を感じた劉邦は、
「いくら戦争だからといって、二人のすぐれた人物が
個人的に殺し合う必要があろうか」などと言って丁公を
なだめたという。  

この言葉をもっともなことだと思った丁公は、剣を収め、
劉邦を見逃した。  
ところが項羽が滅んで漢の世になったのち、
丁公が劉邦に謁見しようとすると、劉邦は即座に
彼を捕らえ、軍中に触れを出した。  
丁公は主君に不忠な男である。項羽に天下を失わせた者は
、ほかでもない丁公である。  と。  
結局丁公は斬り殺されたわけだが、そのときに劉邦は、  

後世の臣下たる者たちに、丁公の行動を見習わせては
ならぬのだ。  という言葉を残している。
「季父が生き延び、丁公が死んだのは弁護する者が
いたかいないかの違いだ。

季父には夏侯嬰がおり、丁公には誰もいなかった。
皇帝の信用が厚い者が弁護すれば、丁公だって
助かった可能性は高い。
だから私は君を弁護しようと言っているのだ」

「……では聞くが、信。君はそれほど皇帝の信用が
厚いのか?」  
あらためてそう問われてみると、確信はない。
韓信は言葉に詰まった。 「…………」
「君は、思い違いをしている。皇帝は、機会さえあれば
楚を直接支配したいと望んでいるのだ。
君のような異姓の王に治めさせることは皇帝にとって
苦渋の決断なのだ。それを君はわかっていない」

「……君の言う通りなら、最初から私を楚王などに
任じなければよかったではないか」
「鈍いな、君は。もともと斉王だった君から王位を
取りあげるわけにはいくまい。
不満を持った君が兵を率いて叛乱しては困るからな。……

おそらく欲の少ない君は、そんな意志などない、と言うだろう。
しかし多欲な者は、寡欲な者の考え方がわからないのだ。
皇帝は君が本心を訴えたところでまったく理解
できないに違いない」
「……だったら、どうだと言うのだ」

「はっきり言って君は、皇帝にとって厄介な存在だ。
考えていることがよくわからない、扱いにくい男として
持て余されているのだ。きっと皇帝は君を除きたい、と
思っていることだろう」 「…………」
「いいか、君がこれまで通り生き続けるためには、
少なくとも今の状態を維持し続けなければならない。
皇帝が楚を攻め滅ぼそうとしないのは、
君の兵力に加え、今私がこの地にいるからだ。
皇帝は旧楚の宿将たる私を恐れ、
私がこの地にいるうちは、楚に攻め込んだりはしない」  

韓信はこれを聞き、しばらく考え込んだ。
目を閉じ、こめかみに指を当て、沈思の表情を作る。  
やがて答えに行き着いた彼は、目を開けて言った。
「眛……。私が思うに、皇帝が恐れるのは君ではない。
皇帝が恐れているのは……やはり私なのだ。
君が楚地にいる、いないはたいした問題ではない。

要は私が君を匿っている、そのことが重要なのだ。
君の叛乱を恐れているのではなく、
私が君を利用して叛乱を起こすことを……
彼らは恐れているのだ」  

・・・

つづく

Author :紀之沢直樹 (野沢直樹)
http://kinozawanaosi.com
http://mypage.syosetu.com/273441/




愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る



B111



歌は心の走馬灯、歌は世につれ、世は歌につれ、 
  人生、絵模様、万華鏡…


『わかれうた 』





時は絶えず流れ、 今、微笑む花も、明日には枯れる



P R



入れてもらえば 気持ちは良いが、
どこか気兼ねな もらい風呂

Dr1

 

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