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2016年11月28日 (月)

妄想劇場・番外編・「八 音 琴 」

妄想劇場・番外編

信じれば真実、疑えば妄想……

181011


「八 音 琴 」

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蘭華が日系商社に勤務して、一年が過ぎた頃であった。
蘭華は中国人の上司にそっと呼ばれた。
上司「蘭華、君は今、付き合っている彼氏とかは居るのかな?」
蘭華「いえ、別にいませんが・・・」
上司「実は、我社の得意先の会社なんだが、大きな
日本の会社があるんだ。我社にとってはとても大切な
お得意様なんだ。そこの人と、今度、一緒に
食事をするんだけど、蘭華、一緒に行かないか?」

蘭華には、同棲中の彼氏がいる事を言い出すことは
出来なかった。蘭華にとって、それほど黄が自分の心の中で
重要な位置を示してはいなかったのだ。
田舎で苦労して育ち、必死に高校を卒業した蘭華にとって、
上海は今までに見たことも無い世界であった。
増してや、想像もつかないであろう豊かで自由な日本と言う
先進国の人間と接触ができるなんて、夢の中の
夢の世界であった。

蘭華は、何ら疑いもせず、上司の言われるままに
なっていった。
その日は、六月の蒸し暑い雨の中だった。
蘭華は、精一杯のおめかしをして、中国人上司と共に、
日本人の待つレストランに出かけた。
そこには、すでにスーツに身を包んだ一人の日本人男性が
個室部屋のテーブルの隅に座っていた。

上司「どうも、お待たせしました。これが、
お話しておりました蘭華です。」
上司は、あまり上手くない片言の日本語で挨拶をした。
そして蘭華は、予め教えられていた通り、覚えたての
日本語で挨拶をした。

蘭華「ハジメマシテ。ワタシハ、ランカ、トモウシマス」
蘭華を見ていた日本人は、福田と言い、日本の
大手電気メーカー、中国現地法人の総経理であった。
蘭華の想像とは裏腹に、福田は日本人でありながら
背は低く、かなりの年配に見えた。
しかし、蘭華にとって殆ど見たことも無いスーツにネクタイ、
聞いた事もない日本語、中国人男性には絶対に出来ない
紳士的な振る舞いに度肝を抜かれた様な感覚を覚えていた。

福田は、すでに長年、中国で暮らしていたせいか、
ある程度の中国語は話せていた。そして、いつしか
三人の会話は、すっかり中国語になっていた。
福田「私は、中国に来るまでは、世界の国中を
回っていましたんや。いろいろな国にも住んでおりましたよ。
中国に来て、今まで家族を日本に残し、独りで
生活をしてまんねん。

蘭華さん、今度、上海を案内してくれまへんか?」
蘭華「はい、でも私、まだ、田舎から出てきたばかりで、
上海のこと、よく分かりませんけど・・・」
福田「それやったら、わしと一緒に散歩でもするつもりで
かまへんで。どや、早速、今度の休みにでも・・・」

福田はすっかり蘭華に見とれていた。そして、
蘭華の初々しさに男としての感情が高まって行くのを
抑えるのに懸命であった。
蘭華にとって、福田は別世界の人物に見えていた。
中国しか、それも田舎しか知らない蘭華にとって、
外国とは何なんだろうと、次第に心が大きく
飛躍する思いにかられていた。しかし、この出会いは、
日本人の欲求を金で売り買いするシステムであったとは、
蘭華には知る由も無かったのである。

落とし穴

蘭華は、その後、福田との付き合いを繰り返していた。
会う度にお小遣いを貰うのだったが、その金額は
中国人にとって、とてつもない金額であった。
蘭華は、このことを同棲中の黄には話していなかった。
その頃の黄は、心を入れ替えたのであろうか、
一生懸命、修行に励む毎日を続ける様になっていた。
また、当然、蘭華は同棲中の男がいる事を、
福田には告げていなかった。

福田との付き合いが繰り返され、ある日のことであった。
福田は蘭華を自分が暮らすアパートへと連れ込んだ。
そのアパートは、蘭華たちが暮らすアパートとは
比べ物にならないくらい立派なアパートであった。
家賃は、蘭華が一ヶ月働いても払えるような金額では無く、
部屋は広く、明るく、静かで快適なアパートであった。

福田「蘭華、今日からとは言わんが、近い内にここで
暮らしいや。今の会社を辞め、大学に通いんさい。
そして、日本語の勉強もせにゃ・・・。
暮らしの面倒は、全部、わしが見るさかい、安心しいや。
その代わり、君の出来る事、例えば、洗濯や掃除、
料理などしてくれへんか? それでいいんや。」

窓の外を眺める蘭華の背後から、福田は近づき、
蘭華の耳元でつぶやいた。
蘭華「でも、私には田舎に母と妹がいます。
田舎に仕送りをしなければいけません。」
福田「そんな、心配せえへんでええ。わしが全て、
面倒を見よる。」

福田が日本に残していた家族は、皆、独立していて、
別段、仕送りもしていなかった為、福田の収入からして、
蘭華の面倒はもちろん、蘭華の仕送りまで世話を
する事など、何ら問題は無かったのだった。
しかし、当時の蘭華にとっては、為替レートの違いなど
理解することも出来ず、ただ、福田が神様の様にしか
見ることができなかった。

その晩、蘭華は初めて黄に福田の存在を告げた。
いつもの様に、蘭華よりも遅く帰って来た黄を
自分の目の前に座らせて、これからの事も話し出した。
黄は何も言わず、黙って蘭華の話を聞いていた。
全てを聞き終えた黄の後姿は、丸くなった背中を
伸ばす事も無く、ただ、しばらくはじっとしていることしか
出来ない様子だった。

翌朝、蘭華は横で寝ている黄を気にもせずに、
いつもの様に会社へと出て行った。そして、
蘭華が一日の仕事を終え、アパートに戻った時だった。
暗い部屋の灯りを付けると、そこには、黄の荷物が
跡形も無く消えていた。そんな中、蘭華は自分の
バッグが開いているのに気が付いた。
バックには現金と蘭華の全財産である銀行の通帳が
入っていた。案の定、バッグの中味は、小物以外、
全て空になっていた。その後、蘭華は二度と
黄の姿を見ることは無かった。・・・

つづく

Author :夢庵壇次郎
http://www.ne.jp/asahi/muan-danjiroh/jp/


歌は心の走馬灯、歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


命あたえて(お色気演歌)




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  入れてもらえば 気持ちは良いが、
    どこか気兼ねな もらい風呂

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