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2016年11月22日 (火)

妄想劇場・番外編・「八 音 琴 」

妄想劇場・番外編

信じれば真実、疑えば妄想……

181011

「八 音 琴 」

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去り行く父

女の名は、蘭華(らんか)と言い、中国南部の
ある田舎町に生まれた。
両親は小さな鉄工所を営み、暮らしは裕福とは
言えないまでも、その暮らしは決して貧しい
生活ではなかった。

一人っ子である蘭華を、毎日忙しい両親の代わりに、
近くに住む祖母がよく面倒を見ていたものだった。
生まれつき小柄な蘭華であったが、誰に似たのか
気は強く、ガキ大将と称する近所の男の子たちと共に、
他人の家に生っている桃や柿などを採って
食べていたものだった。

当時蘭華が住んでいた街は、海にも近く、
絶えず新鮮な魚を食する事も多かった。
そんなのどかな環境の中、蘭華は何不自由無く
幼少期を育っていった。しかし、蘭華にとって、
幸せと言う日々が長続きする程の運命は、
持ち合わせていなかった。

蘭華が五歳の時であった。
その日は朝から雨が降り続いていて、秋も終わりに
差し掛かった肌寒い日であった。
いつもの様に蘭華は祖母の家で一日を過ごしていた。
蘭華は勉強や習い事の好きな女の子であった。
蘭華はいつも一人、土間で習字の練習をするのが
日課となっていた。

そんな習字の練習をしている蘭華の元に突如、
父が現れた。普段、こんな時間に現れることの無い父に、
蘭華は不思議そうに言った。
蘭華「パパ、どうしたの?」
父 「蘭華、いいかな? 今からパパの言う事、
よく聞くんだよ。」
蘭華「・・・?」
父 「パパはね、これから遠くの町に行かなければ
ならないんだ。しばらくはパパ、蘭華と会えないけど、
ママやおばあちゃんの言う事をよく聞いて、
元気に暮らすんだよ。」

蘭華「パパ? どうして遠くの町に行くの? 
いつ、帰って来るの?」
父 「パパは、お仕事なんだよ。そのお仕事が終わったら、
すぐに戻って来るからね。」
蘭華「パパ、お仕事、いつ終わるの? 
やだ、行かないで・・・」  

いつもと様子の違う父に、蘭華は何かを感じたのだった。
優しい父の言う事を、いつも素直に聞いていた
蘭華であったが、その時ばかりは駄々をこねるかの様に、
ぐずっていた。
父 「大丈夫だよ、すぐ帰ってくるよ。
お土産、いっぱい買って帰るから・・
蘭華は賢い子だ。たくさん、たくさん勉強するんだよ・・」

そう言い残すと、父は蘭華に頬擦りし、土砂降りの
雨の中を振り返る事無く飛び出した。その時である。
数名の男が突如として現われ、父を羽交い絞めにし、
押さえ付けた。蘭華の父は必死に抵抗していたが、
彼はなす術も無く男たちに抱えられる様にして
連れ去られていった。

蘭華「パパ、行かないで、パパ、パパ・・・」  
蘭華の父は、政治的思想を持っていた。
その思想集団のリーダー的役割も担っていた。
しかし、彼の持つその思想は、反体制的な思想であった。
この頃の中国国内は、文化大革命という不幸な歴史も
終結に向い、世の中は落ち着きを取り戻そうとしていたが、
まだまだ国民が不信感無く暮らせるほど
平和な時代ではなかった。

当時幼かった蘭華にとって、父親が持つ思想の意味など、
到底、理解できるものでは無かった。
そして、その時以来、蘭華の元に父が現れることは
二度と無かった。

分かれ道

父が居なくなり、まもなく母は、蘭華を祖母に託し、
街から少し離れた国営工場で働きだした。
その頃の蘭華の生活は、以前とは比べ物にならない位に
変わっていた。
祖母も野菜を売りに、毎朝、重い荷物を背負い、
街に出かけて行った。蘭華は、いつも、そんな祖母の横を
片時も離れる事をしなかった。  
当時の蘭華の母は、まだ、二〇代後半で、女の美しさを
輝かせることもできる年頃だった。

そんな女を、黙って見ている男はいなかった。
母は、勤務先の国営工場の幹部に、いつしか囲われる
身となっていた。国営工場の幹部となれば、
社会的にも政治的にも立場は強く、誰一人、
彼に物言う人間は居なかった。

そんな生活の中、蘭華、六歳の時、妹の璐が生まれた。
当然、母を囲っていた国営工場幹部との子供であった。
やはり、男にとって、「世間体」と言うものがあるのだろう。
母は蘭華と祖母の元に戻る事となっていた。
当面の生活費は、その国営工場の幹部である男が、
面倒を見ていたが、それは決して永く続くものではなかった。

蘭華は、六歳年下の妹、璐の面倒をよく見ていた。
それは蘭華にとって、孤独を紛らわすと言うよりも、
唯一の姉妹であり、唯一の生涯の身内であると
感じていたのであろう。その世話振りは、
幼い蘭華の能力を遥かに超える様に母親代わりとなっていた。

蘭華は、母や祖母の働きの元、高校まで無事、
卒業する事が出来た。
但し、蘭華が高校を卒業出来たのは、二十歳を迎える
年齢となっていた。蘭華は、学費が払えなくなる度に、
高校を休学し、奉公に出ることを余儀なくされていた。

子守奉公や辛い農作業、蘭華は労を惜しまず働いた。  
蘭華は高校を卒業後、上海と言う都会に出た。
学校では常にトップクラスの成績であった蘭華には、
幸運にも日本企業への就職が待っていた。
就職した会社は日本の大手商社の上海事務所だった。
蘭華はそこで、経理事務の一部分を任されていた。

蘭華は母親に似て、一際輝く美人であった。
身体は小柄であったが、腰の位置は高く、
スリムで腰のくびれに手を回してみたくなる様な
スタイルであった。顔は小さく、細く尖った顎には
色気さえ感じていた。特に蘭華の髪はみごとであった。

真っ黒なストレートの黒髪には、まんべんなく艶があり、
まるでシルクの様であった。
当時の蘭華は腰まで届く程の長い髪をしていたが、
一切、傷んだ部分は無く、男女問わず誰でも触れて
みたくなる様な髪であった。
そんな蘭華が高校生の頃は、男子生徒の憧れであった。

上海で一人暮らしを始めた蘭華を追いかける様に、
高校時代の同級生である一人の青年、
黄が彼女の元を訪れた。
その時の黄には、これと言って人生の目的も無かったが、
蘭華の暮らすアパートに転がり込むようにして
二人一緒の生活が始まった。

日系企業に勤める蘭華は、給料が一般の中国人に比べ
高いこともあり、蘭華にとっては男一人を養うのは
難しく無かった。しかし、実家へ仕送りをしている彼女にとって、
毎日、何もせず、ぶらぶらしている黄を見ていると、
しだいに腹立たしさが増していった。

その度に、蘭華と黄は言い争うのであったが、
心優しい黄を追い出すなんて、蘭華には出来なかった。
まだ若い蘭華は、黄が早く自分の目標を見つけ出す事を、
ただ願うしかなかった。  
田舎から出てきた黄にとって、上海と言う都会は
別世界であった。

華やかなファッションに身を包む女性には、
絶えず心惹かれる毎日であった。
黄は、いつしか、そんな女性に関わる美容業界に
足を踏み入れることとなっていった。

蘭華にとって、黄は生まれて初めての男であった。
互いに熱烈に愛し合っていた訳でもない二人であったが、
蘭華は、黄をどうにか一人前にして結婚しようとも
考えていた。

黄がある程度、美容師としての技術を身に付けたら、
二人で田舎に戻り、店を出したいとも考えていた。
しかし、何不自由なく育てられた黄にとって、
修行に耐え得る心の強さなど、まだ持ち合わせては
いなかった。・・・

つづく

Author :夢庵壇次郎
http://www.ne.jp/asahi/muan-danjiroh/jp/

歌は心の走馬灯、歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…

昭和放浪記(隠れた名曲)

歌詞の「お守り」と云う部分は当初「お金」であったが、
売春を思わせるとマズイため、書き改められた

女の名前は 花という
日陰の花だと 泣いていう
外は九月の 雨しぶき
抱いたこの俺 流れ者

女は教えて 二十一
しあわせ一年 あと不孝
枕かかえて はやり唄
歌う横顔 あどけない





A71




 
P R

入れてもらえば 気持ちは良いが、
  どこか気兼ねな もらい風呂
 
Dr1
お風呂物語』が選ばれる理由がここにあります。

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