« 妄想劇場・番外編・「八 音 琴 」 | トップページ | 妄想劇場一考編 ・私にも娘がいる!! »

2016年11月29日 (火)

チャンネル・掲示板・「いのちをいただく」

チャンネル・掲示板

信じれば真実、疑えば妄想……

幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
 不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない


「いのちをいただく」

I1_2

作業員の坂本義喜さん(52)が、なだめるように
牛を落ち着かせた。やおら、衝撃で失神させる特殊な銃を
額に当て引き金を引く。  「ガンッ!」  フライパンで
殴ったような鈍い音が響き、牛は足元から崩れ落ちた。

首筋の動脈を切る。血がバシャバシャと流れ出た。
鮮度を保つために必要な作業だという。
頭を切り落とし、小刀で皮をはぎ、内臓を取り出すと
電動のこぎりで背中から真っ二つにした。
ここまでわずか30分。・・・  

冷蔵庫に枝肉を送ると、次の牛が運び込まれてきた。
6歳の時、軽い気持ちで親の仕事を手伝った。以来、
この道一筋で働いている。

I2_2

最初は仕事と割り切り、かわいそうという感情もなかった。
「動物を一つの命ととらえていたら、身が持たない」。
そんな自分に疑問を抱いたのは、
ある少女との出会いがきっかけだった。

その少女は家族と一緒に、1頭の牛を運んできた。
「みいちゃん」と牛の名を呼び、引き渡して帰る間際まで、
体をなで続けていた。家族の一員のように。 ・・・ 

坂本さんが近づくと、牛は身構えて威嚇してきた。
それでも、体をなでてあげるうち、舌を出しペロリと
手をなめ、甘えてきた。  

「こげなことでいいのか…」。ふいに、当たり前に
こなしてきた仕事に嫌気が差した。
もちろん、その牛はきちんと処理した。  
ただ、胸中に巣くったわだかまりは、なかなか消えない。
仕事を辞めようかとも考えた。でも、ほかで食べていく
自信はない。  

いつしか、あの少女のように動物の頭や体をなでている
自分がいた。「恐怖心をできる限り取ってあげたい。
一瞬一秒でも楽にして、あの世に送ってあげるのが
役目」と思い至った。

毎日食べている肉には本来、命があって、
それを奪って自分たちが生かされている
「動物にも、お父さん、お母さん、兄弟がいて、
家族と一緒に遊びたいと思っていたけど、
人間のために肉になった。その肉をちゃんと
食べてあげて」。

人が生きるために犠牲になる動物や植物。
幼子のため、自らの時間を犠牲にする親。
お産と食肉解体は正反対な仕事に見えるが、
通底する「命の重み」を感じた。

「センターに来る牛も馬も、牧場では決して見せない
おびえた顔をする。動物だって死にたくない。
その『命の重さ』に気付いたからこそ、
今では自分の仕事に誇りもある。伝えていかなければと
思うのです」・・・

I3_2

坂本さんは、食肉加工センターに勤めています。
牛を殺して、お肉にする仕事です。
坂本さんはこの仕事がずっといやでした。
牛を殺す人がいなければ、 牛の肉はだれも
食べられません。

だから、大切な仕事だということは分かっています。
でも、殺される牛と目が合うたびに、 仕事が
いやになるのです。
「いつかやめよう、いつかやめよう」と 思いながら
仕事をしていました。

坂本さんの子どもは、小学3年生です。
しのぶ君という男の子です。 ある日、小学校から
授業参観のお知らせがありました。 これまでは、
しのぶ君のお母さんが行っていたのですが、
その日は用事があってどうしても行けませんでした。

そこで、坂本さんが授業参観に行くことになりました。
いよいよ、参観日がやってきました。
「しのぶは、ちゃんと手を挙げて 発表できるやろうか?」
坂本さんは、期待と少しの心配を抱きながら、
小学校の門をくぐりました。

授業参観は、社会科の「いろんな仕事」という授業でした。
先生が子どもたち一人一人に 「お父さん、お母さんの 
仕事を知っていますか?」 「どんな仕事ですか?」と
尋ねていました。 しのぶ君の番になりました。

坂本さんはしのぶ君に、自分の仕事について あまり
話したことがありませんでした。
何と答えるのだろうと不安に思っていると、 しのぶ君は、
小さい声で言いました。
「肉屋です。普通の肉屋です」
坂本さんは「そうかぁ」とつぶやきました。

坂本さんが家で新聞を読んでいると しのぶ君が
帰ってきました。
「お父さんが仕事ばせんと、みんなが肉ば
食べれんとやね」
何で急にそんなことを言い出すのだろうと
坂本さんが不思議に思って聞き返すと、
しのぶ君は学校の帰り際に、 担任の先生に
呼び止められて こう言われたというのです。

「坂本、何でお父さんの仕事ば 普通の肉屋て
言うたとや?」
「ばってん、カッコわるかもん。
一回、見たことがあるばってん、 
血のいっぱいついてからカッコわるかもん…」
「坂本、おまえのお父さんが仕事ばせんと、
先生も、坂本も、校長先生も、 会社の社長さんも
肉ば食べれんとぞ。 すごか仕事ぞ」

しのぶ君はそこまで一気にしゃべり、 最後に、
「お父さんの仕事は すごかとやね!」と言いました。
その言葉を聞いて、 坂本さんはもう少し 仕事を
続けようかなと思いました。

ある日、一日の仕事を終えた坂本さんが 事務所で
休んでいると、一台のトラックが 食肉加工センターの
門をくぐってきました。 荷台には、明日、殺される予定の
牛が積まれていました。

坂本さんが「明日の牛ばいねぇ…」と思って見ていると、
助手席から十歳くらいの女の子が飛び降りてきました。
そして、そのままトラックの荷台に上がっていきました。
坂本さんは「危なかねぇ…」と思って見ていましたが、
しばらくたっても降りてこないので、 心配になって
トラックに近づいてみました。

すると、女の子が牛に話しかけている声が
聞こえてきました。
「みいちゃん、ごめんねぇ。 みいちゃん、ごめんねぇ…」
「みいちゃんが肉にならんと お正月が来んて、
じいちゃんの言わすけん、 みいちゃんば売らんと  
みんなが暮らせんけん。 ごめんねぇ。みいちゃん、
ごめんねぇ…」 そう言いながら、一生懸命に
牛のお腹をさすっていました。

I_2

坂本さんは「見なきゃよかった」と思いました。
トラックの運転席から女の子のおじいちゃんが降りてきて、
坂本さんに頭を下げました。
「坂本さん、みいちゃんは、この子と一緒に育ちました。
だけん、ずっとうちに置いとくつもりでした。 ばってん、
みいちゃんば売らんと、この子にお年玉も、 
クリスマスプレゼントも買ってやれんとです。
明日は、どうぞ、 よろしくお願いします」

坂本さんは、「この仕事はやめよう。 もうできん」と
思いました。 そして思いついたのが、明日の仕事を
休むことでした。

坂本さんは、家に帰り、 みいちゃんと女の子のことを
しのぶ君に話しました。
「お父さんは、みいちゃんを殺すことはできんけん、 
明日は仕事を休もうと思っとる…」 そう言うと、
しのぶ君は「ふ~ん…」と言って しばらく黙った後、
テレビに目を移しました。 そ

その夜、いつものように坂本さんは、 しのぶ君と一緒に
お風呂に入りました。
しのぶ君は坂本さんの背中を流しながら言いました。
「お父さん、やっぱりお父さんが  してやった方がよかよ。
心の無か人がしたら、牛が苦しむけん。
お父さんがしてやんなっせ」
坂本さんは黙って聞いていましたが、
それでも決心は変わりませんでした。

朝、坂本さんは、しのぶ君が 小学校に出かけるのを
待っていました。
「行ってくるけん!」元気な声と扉を開ける音がしました。
その直後、玄関がまた開いて
「お父さん、 今日は仕事 行かなんよ ! わかった?」 と
しのぶ君が叫んでいます。
坂本さんは思わず「おう、わかった」と答えてしまいました。

その声を聞くとしのぶ君は「行ってきまーす !」 と
走って学校に向かいました。
「あ~あ、子どもと約束したけん、行かなねぇ」とお母さん。
坂本さんは、渋い顔をしながら、仕事へと出かけました。
会社に着いても気が重くてしかたがありませんでした。

少し早く着いたのでみいちゃんをそっと見に行きました。
牛舎に入ると、みいちゃんは、 他の牛がするように
角を下げて、 坂本さんを威嚇するようなポーズを
とりました。

坂本さんは迷いましたが、そっと手を出すと、
最初は威嚇していたみいちゃんも、 しだいに
坂本さんの手をくんくんと嗅ぐようになりました。
坂本さんが、「みいちゃん、ごめんよう。 
みいちゃんが肉にならんと、みんなが困るけん。
ごめんよう…」と言うと、 みいちゃんは、
坂本さんに首をこすり付けてきました。

それから、坂本さんは、女の子がしていたように
お腹をさすりながら、 「みいちゃん、じっとしとけよ。 
動いたら急所をはずすけん、
そしたら余計苦しかけん、 じっとしとけよ。
じっとしとけよ」 と言い聞かせました。

牛を殺し解体する、その時が来ました。
坂本さんが、「じっとしとけよ、
みいちゃんじっとしとけよ」 と言うと、
みいちゃんは、ちょっとも動きませんでした。
その時、みいちゃんの大きな目から 涙が
こぼれ落ちてきました。
坂本さんは、牛が泣くのを初めて見ました。

そして、坂本さんが、 ピストルのような道具を
頭に当てると、 みいちゃんは崩れるように倒れ、
少しも動くことはありませんでした。
普通は、牛が何かを察して頭を振るので、
急所から少しずれることがよくあり、 倒れた後に
大暴れするそうです。

次の日、おじいちゃんが食肉加工センターに
やって来て、 坂本さんにしみじみとこう言いました。
「坂本さんありがとうございました。
昨日、あの肉は少しもらって帰って、 みんなで
食べました。

孫は泣いて食べませんでしたが、
『みいちゃんのおかげでみんなが暮らせるとぞ。
食べてやれ。 みいちゃんにありがとうと言うて
食べてやらな、 みいちゃんがかわいそうかろ?
食べてやんなっせ。』 って言うたら、孫は泣きながら、
『みいちゃんいただきます。

おいしかぁ、おいしかぁ。』 て言うて食べました。
ありがとうございました」

坂本さんは、 この仕事を続けていて良かったと
思いました。 ・・・

B15111_2

ある学校で、保護者の一人から
「給食費を払っているのに、『いただきます』と
子どもに言わせるのはおかしい」 という
クレームがあったと言う話を聞いたことがあります。
「なんという常識のない保護者なんだ !」と
片付けるのは簡単です。

でも、もしもこの保護者が、この話を知っていたとしたら、
どうだったでしょう?
現在の食生活は、「命をいただく」というイメージから
ずいぶん遠くなってきています。
そしてその結果、食べ物が粗末に扱われて、
日本での一年間の食べ残し食品は、 発展途上国での、
何と3300万人分の 年間食料に相当するといいます。

私たちは奪われた命の意味も考えずに、
毎日肉を食べています。
動物は、みんな自分の食べ物を 自分で獲って
生きているのに、 人間だけが、自分で直接
手を汚すこともなく、 坂本さんのような方々の思いも
知らないまま、 肉を食べています。

動物だろうが植物だろうが、どんな生き物であっても、
自分の命の限り精いっぱい生き続けたい、
そう願って生きているんだと思います。
命をいただくことに対しての「思い」。
食べ物をいただくとき、 そこに尊い命があったことを
忘れずに、 その命を敬い、感謝の言葉を
かけてあげられる人に育ちましょう。

もちろん、食べ残しをせずに。 食べ物が、
あなたの体を作ります。 あなたの体に姿を変えて、
あなたの中で生き続けます。 そして、
体の中からあなたを精いっぱい 応援してくれています。

あなたができる最高の恩返しは、 たくさんの
生き物たちから 命のバトンを託された
あなたの命を、いっぱいに輝かせること。 そ
れが、あなたと共に生きている たくさんの命たちが、
いちばん喜ぶことなんです。
みんなの分まで、命いっぱいに輝きましょう! ・・・

Author :内田美智子 諸江和美
出典:西日本新聞社「いのちをいただく」  



I7


P R

入れてもらえば 気持ちは良いが、
どこか気兼ねな もらい風呂

Dr1
お風呂物語』が選ばれる理由がここにありま
す。

« 妄想劇場・番外編・「八 音 琴 」 | トップページ | 妄想劇場一考編 ・私にも娘がいる!! »

妄想劇場」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1772781/68632960

この記事へのトラックバック一覧です: チャンネル・掲示板・「いのちをいただく」 :

« 妄想劇場・番外編・「八 音 琴 」 | トップページ | 妄想劇場一考編 ・私にも娘がいる!! »

流れ雲(^o^)

ウェブページ

無料ブログはココログ

最近のトラックバック

最近のコメント

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
フォト