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2016年12月 6日 (火)

信じれば真実、疑えば妄想…逆臣とは…

信じれば真実、疑えば妄想……


昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、良いかな
アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい


Kansin


漢の韓信-(152) 逆臣とは

韓信は死した鍾離眛の首と引き換えに、淮陰侯の肩書きを
得ることとなった。漢の大将軍、趙の相国、斉王、楚王
……様々な異称が彼に与えられたが、淮陰侯という呼称は
韓信に与えられた尊称の中でも、ひときわ印象深いものである。

私は、その尊称の持つ語感に哀愁を感じざるを得ない。
酈生や魏蘭、蒯通などの人物との出会いと別れ、
旧友鍾離眛との相克の日々、
劉邦や項羽と渡り合った波乱の人生……
私にはそのすべてがその尊称には詰まっているかのように
思える。だが彼の人生は、まだ終わりではなかった。
失意の韓信の前に、ひとりの士官が姿を現す。

髪や体を洗い、こびりついた血のりを流し尽くした
つもりでも、臭いが残っているような気がする。
あるいは顔に浴びた血潮の生ぬるい感触。
それを忘れ去ることは不可能に近い。
ついさっきまで意識を持ち、辻褄は合っていないが、
流暢な調子で言葉を継いでいた眛が、あっという間に
血と単なる肉の塊と化したことを受け入れることは
難しかった。

韓信にとって旧来の友人である鍾離眛を失ったことは、
確かに悲しいことであり、衝撃的なことであった。
しかしそれ以上に気になったのは、やはり死ぬ間際の
彼の言動の不可解さであった。

そもそも眛が助けてくれ、と言ったのだから、
私は彼を匿い、助けようとしたのだ。それを今さら……。
武人としての誇りが、いつまでも自分の世話になることを
拒否したのだろうか。

それとも彼は常に自分に劣等感を感じており、
私はそのことに気付かなかった、ということだろうか。
考えられることではある。
おそらく眛が言ったとおり、近ごろの私の目は
濁っていたに違いない。
そう考えれば、悪いのはやはり自分ではないか、
という気がしてくる。

自分の行為や言動が彼を追いつめる結果になったのではないか、
と。しかし一方で反発も覚える。眛に限らず、世の中には
烈士に類する人物が多すぎる。彼らは、苦難や屈辱に耐えて
生き抜こうとせず、いとも簡単に死のうとする。

往々にして自分の命を顧みない者は、
他人の命をも顧みることがないのだ。
つまり、すぐ死ぬ奴は、すぐ人を殺そうとする、
だから今の世の中には戦乱が絶えない、そう考えるのである。

しかし、殺した人間の数では、同時代で韓信に匹敵する者は
少ない。これはつまり、彼自身も他者の命を軽んじている
ことでは世にはびこる烈士と同じである。
韓信が彼らと違うのは、自らの命を惜しんでいる点であった。
あるいは、私は彼ら以下の存在かもしれない。
私には雄々しく死んでみせる勇気などない。
そのくせ敵対する者を無慈悲に殺す能力だけは持っている。

項羽を初めて見たときのことが、思い出された。
あのとき彼は項羽のことを内心で「殺し屋」と呼んだものである。
しかし、いま思い返してみると、その言葉は自分自身にこそ
当てはまるものであった。

そんな風に自分のことを卑下するのはよせ……私の悪い癖だ。
考えてもみろ……いくら主義主張のために美しく
死んでみせたとしても、しょせん世の中は生者のものだ。
死んでしまえばそれ以上主義主張を世に唱えることは出来ない。

人というものは……生きていてこそ意味をなすものなのだ。
死んではなにも出来ない。死者になにが出来よう。
韓信は、そう頭の中で繰り返し、自分を慰めるしかなかった。
しかし、いくら考えてみても今後自分が生き続けて
なにを成そうとしているのかは、わからなかった。

だったら死んでも同じではないか、という思いさえ
頭に浮かんでくる。
いや……生きながらえれば、きっとなにかはあるに違いない。
結局韓信の考えは、そこに落ち着いた。
「大王。天子の出遊の時期が近づいております。
このようなときですが、そろそろご準備を……」  
思いに浸る韓信に対して、家令の一人が、そう告げた。
すでに劉邦が雲夢沢に赴き、諸侯と会同することは、
韓信にも伝えられていたのである。

「天子? ……出遊……? そうであったな。……
ちっ、なんとも間が悪い」  出遊などとは、
平和を象徴するような言葉であるが、韓信には、
いささか時期尚早にも思われた。

天下が完全に治まったとはいい難く、諸地方に叛乱の
種火がくすぶっている状態だというのに、
いい気なものだ、と思ったのである。  まして当然ながら、
このときの彼はとても遊ぶ気にはなれない。
「このたびは……ご病気とでも称して、欠席されて
はいかがですか」  心配した家令がそう告げた。

言われずとも、理由を付けて欠席することを韓信も
考えないではなかった。  
そもそも諸地方の叛乱の種火の中で、いちばん
大きなものは、他ならぬ楚なのであり、誰がいちばん
危険なのかというと、韓信なのであった。

もちろん彼は自分でそう意識して実際に行動に移している
わけではない。皇帝からそのように見られている、ということが、
わかるだけである。 行けば、もしかしたら
一個戦隊が待ち受けているかもしれぬ。
出遊を理由に私をおびき寄せ、一気に処断しようと……。  
だが、それにしても口実はない。

ひょっとすると眛を匿っていたことが、彼らに知れて
いたのかもしれんな……。  
考えられる限り、自分の後ろ暗いことといえば、
そのことだけである。しかし、そのこともすでに解決した。
鍾離眛は死に、結局命令のとおり韓信は眛を捕らえた形と
なったのである。  

・・・つづく

Author :紀之沢直樹 (野沢直樹)
http://kinozawanaosi.com
http://mypage.syosetu.com/273441/

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


A131



歌は心の走馬灯、歌は世につれ、世は歌につれ、 
  人生、絵模様、万華鏡…


「リバーサイドホテル」




時は絶えず流れ、 今、微笑む花も、明日には枯れる


P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

入れてもらえば 気持ちは良いが、
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