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2017年1月 9日 (月)

妄想劇場・漢の韓信-(156) 追いつめられて…

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昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
良いかな・・・
アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい



Kansin


漢の韓信-(156) 追いつめられて…

私は、このとき韓信と直接会って話をした。
その際に感じたことは冒頭に述べた通りである。
しかしあえて付け加えよう。
彼は誇り高き男であり、それでいて常に冷静な
判断力を持った男であった、と。  
彼は、状況に押しつぶされて錯乱したのではない。
むしろ彼の行動は非常に理路整然としていた。

当時韓信の意中を知る者は陳豨しか存在しなかったが、
陳豨は韓信を尊敬していたがために計画に
参加したのではなく、それが充分に成功の可能性を
秘めていたがために、そうしたのだ。

あのとき韓信が相談を持ちかけたのが陳豨ではなく
私であったなら……私は彼の計画に賛同して
いたかもしれない。

韓信は生かされたが、雒陽から関中の櫟陽れきよう
(当時の首都)に居宅を移され、無為な日々を
送らされている。
身分は列侯なので封邑からの租税が入り、暮らしに
不自由はないが、目的を喪失した感は否めない。  
能力を持て余す日々が続き、自然に気持ちも荒んでくる。
彼は、病を称して謁見の場に出ず、皇帝の行幸にも
一切随行しようとしなかった。  

かいがいしく名誉を回復しようと活動することは、
気が進まない。謁見の場で下げたくもない頭を下げ続け、
折りたくもない膝を折り続けることには、嫌気がさした。
本当に心の底から自分が尊敬する相手であったら
そうしたかもしれないが、
残念ながらもはやこのときの劉邦は、韓信の
尊敬の対象ではなかった。  

好きでもない男に頭を下げることは「媚びる」ことであり、
権力を前にして節を曲げることを意味する。  
彼に同情的な者の中には、助言をしてくれる者もいる。
「悔い改めて、皇帝に対する忠節を示すことだ。
一から出発する気持ちで……」  

心配して言ってくれていることはわかる。しかし、
いったい何を悔い改めるというのか。
改めるのは皇帝の方だろう。そう思ったとしても
無理はない。

彼はなにも罪らしき罪は犯していないのだ。  
態度が悪いと言われればそれまでだが、
劉邦の子飼の将軍たちの中には、彼より功績を
鼻にかけて恩賞を強要する輩は多い。
彼らに比べれば、韓信は謙虚だと評されても
よいくらいであった。  

周勃や灌嬰などと、この私が同じ身分とは……。  
かつては彼らを配下に従えて戦った韓信である。
彼らには恨みこそないが、自分の方が優れていると
考えるのは自然であった。  

しかし、嘆いていても始まらない。
「悔い改める」という表現は気に入らないが、
再び世に出るためには、これまでの功績をすべて
水に流し、一から再出発する覚悟が必要だ、と
思わざるを得ない彼であった。  

ある日韓信は、樊噲の邸宅を訪問した。
皇帝に昔から忠実だった臣下の心境がどのような
ものであるか、確かめようとしたのである。
韓信自身が初心に帰るためであった。  

このとき樊噲は韓信が来訪したと聞くと、みずから
門から玄関までを掃き清め、跪いて頭を地に付けて
迎えた。そして韓信を大王と呼び、自分のことを
臣(わたくし・しもべを意味する一人称)と呼んだという。

「大王さまには、わざわざ臣の家に足を運んでいただき…」  
朴訥な男であり、決して卑屈な男でもなかった樊噲の
平身低頭ぶり。これには訪問した韓信の方が驚かされた。

「樊将軍。もうその呼び方で私のことを呼ぶな
。私はすでに王ではない」 「承知しておりますが……
少なくとも私の中ではあなた様ほど王にふさわしい方は
おりませぬ」

「なにを言う。君と私とでは、身分の違いはない。
私は……淮陰侯だ。君だって舞陽侯だろう」  
樊噲は劉邦が陳で韓信を捕らえた際、それに
協力したことを評価され、列侯の地位を得たのである。

「…聞けば、会議の席で君は私を捕らえることに
賛成したそうではないか。
のみならず陳での会同の席にも君はいた。
捕らえられ、惨めな姿をさらした私を君は弁護しようとも
しなかったではないか。

その君が……私を呼ぶにあたって尊称を使うのは
おかしい。そう思わないか?」  
韓信の物言いもややねじくれ気味である。

「お怒りはごもっともでございます。
しかし臣には大王を妬む気持ちなどなく、
今でも尊敬する気持ちに変わりありません。…
ですが臣はやはり皇帝の臣下なのでございます。

会議の席で大王を捕らえることに賛成したのも、
皇帝がそれを望んでいると察したからです。
臣はあの方のやることには逆らえないのです」
「…それだ」  韓信は樊噲の言葉に「我が意を得たり」
とでも言いたそうな反応をした。

「君や夏侯嬰の皇帝に対する臣従のあり方は、
尋常じゃない。私には理解できないのだ。
どうしてそのように皇帝に尽くそうとするのか?」
「さて……どうしてと言われても困りますな。
強いて言えば……そう、お互いに愛し合う男女が
不貞を働かないのに似ている、とでも申しましょうか。
恋人のようなものです。

世の中には美女は多い……しかし恋人のいる男は、
それに見向きもせず、自分の愛する女性だけを
追い求める……もちろん、例外はありますが」
「ふうむ……わかるような気はする……
しかし、たったそれだけのことなのか? 

私はかつて……君が皇帝を救おうと我が身を顧みず
突進する姿を見た。覚えているだろう、
鴻門での一連の出来事だ。
私は君のあの姿を見て、皇帝はよほどの方なのだろうと
想像したのだ。だから私は漢に属することにした……。

だが君の今の話を聞いていると……
少し落胆したような気になる。
君たちの関係にはもっと高尚な理由があるはずだと
思っていたのだ」

「臣どもはあの方を担ぎ上げることに、その後の
運命を賭けたのです。
確かに……皇帝より人格的にも能力的にもまさった
人物は多い。大王、あなたもそのお一人です。

しかしそれをわかっていて臣が節を変えないのは…
…過去の自分の判断が正しかったと
信じているからです。

確かに気持ちが揺らぐことはありますが……」
「つまりは、間違いを認めたくない、ということか? 
結局はそれだけのことなのか」
「しかし、人臣たる者のとるべき態度は、それに
尽きるのではないのでしょうか」

「…………」 「どうかなさいましたか」
「……君がうらやましい。私は……そこまで他人に
尽くそうという気持ちになれぬ。

皇帝は私のことを、忠誠心が足りぬといって
時に叱責する。
いったいどうしたら君のように振る舞えるのか……」
「大王には難しいかもしれませんな。
あなたは才能も人格も皇帝より……
いや、はっきりと口に出しては言えませんが……。

しかし、大王はその割によく我慢して皇帝に
尽くしていると思います」  
結局要領を得ずに樊噲宅をあとにした韓信は、
その帰り道に誰に向かってというわけでもなく呟いた。

「人臣として覚悟が足りぬ、ということか……。
よりによって忠節の関係は恋人同士の
ようなものだ、とは! そんなものは……
ただの感情に過ぎぬ」  

忠節において私が樊噲に及ばぬはずだ……
私は皇帝を愛してなどいない!
「……恋人同士に義や仁の論理があるはずもない。
樊噲はただ婦人のように皇帝を愛しただけだ。
その樊噲と私が今や同じ身分だという……
とんだお笑いぐさではないか!」 ・・・

つづく

Author :紀之沢直樹 (野沢直樹)
http://kinozawanaosi.com
http://mypage.syosetu.com/273441/



愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る



A131



時は絶えず流れ、 今、微笑む花も、明日には枯れる



歌は心の走馬灯、歌は世につれ、
世は歌につれ、
人生、絵模様、万華鏡…



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