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2017年1月29日 (日)

妄想劇場・漢の韓信-(159)追いつめられて…

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昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
 明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
 
良いかな・・・

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい


Kansin


漢の韓信-(159)追いつめられて…

言わぬことではない。 ・・・
皇帝はなぜ私の言うことを信じなかったのか……。  
しかし、依然として韓信にお呼びはかからない。
皇帝は匈奴との国境に近い代の地を樊噲に平定させると、
その地に自分の兄の劉仲を王として置いた。
そして同時に鉅鹿の太守として陳豨を任命したのである。  

陳豨はともかく、劉仲など……ただの農民に過ぎぬ。
単に自分の兄だからといって王位に就けるとは…
皇帝は、国を私物化している。  
一族を高位に置き、それを世襲させることは 、
叛逆行為を抑制する効果がある。それはわかる。  

しかし、ただ血をわけた兄弟だからといって
国家の建設になんの功績もない男を王として
たてることは、皇帝が公私混同しているかのように
思えるのだった。  

後の話になるが、代王劉仲は匈奴を恐れて国を捨て、
雒陽に逃げ込んだ。
彼の代王としての地位は取りあげられ、 以後は
郃陽侯ごうようこうにされたという。
能力も胆力もない男に王座を与えるあたり、
やはり劉邦のなかに公私混同があったことは
否めないであろう。  

韓信の劉邦に対する不信は、決定的になった。
そればかりか、このままでは国が滅ぶ、
匈奴に国を乗っ取られる、そのような危機感まで
持つようになった。  

確かにすべてではないが、少なくとも半分は
自分の努力によって成り立った国なのである。
それを過信だとして非難できる者は、いないだろう。

人に任せてなどおけぬ。私が先頭に立って
国を守るべきではないのか。  
だがそれを皇帝は許そうとしない。  

そもそも皇帝がわざわざ親征したのは、それに
成功することによって自分の権力を増強したいという
欲望に過ぎなかった。

人の能力を見る目だけが取り柄だった皇帝が…
肝心のその目が眩んでいるというべきだろう。  
皇帝は自己神格化の意識のあまり、自分自身の
能力を的確に判断することも忘れ、結果的に
国を弱めていた。 ・・・ 

かつて蘭は、私に皇帝の誤った行動を正すべき
存在となれ、と言い残した。…
いま、皇帝は施策を誤っている。 しかし王位を失い、
力を削がれた今の私に皇帝の間違いを正すことが
できようか? 韓信は悩んだ。

しかし当然のことながら、容易に答えが
見つかるものでもない。  
まずは削がれた力を取り戻さねば、どうにもならぬ。
どうにかして自らの発言力を強化しないことには
…やはりここは、 私が皇帝の蒙を啓かねばならぬ。  
韓信は、ついに決断した。

それは、国を私物化するほどの権力を皇帝に
与えないために、 誰かがしなければならない
決断であった。  
しかし、その決断を行動に移す資格を持つ者が、
やはり建国の元勲たる韓信だけであったことは
悲しい現実であったといえよう。  

紀元前二〇〇年二月、漢は長楽宮の完成を機に、
首都機能を櫟陽から長安へ移動した。  
韓信もこれにあわせて長安へ移住し、
相変わらず監視の目の中で暮らし続けている。

しかしそんな中、 一人の男の訪問を機に、
彼の叛逆の日々は始まっていったのであった。  
長安に居を移す煩雑な作業も一段落し、
しばしの休息をとる。  

淮陰から上がってくる租税の額が合わないという
問題は未だ解決していない。
まだ深刻な事態とはなっていないとはいっても、
いずれは原因を追及しなければならなかった。  
しかし、それはすべて終わってからだ。
今、自分が優先すべきは正しき戦略を練ること。
それに尽きる。  

居室でひとり考え込む韓信のもとへ、家令が
来客の旨を告げた。 「淮陰侯……
鉅鹿の太守さまがお見えになってございます」
「うむ。通してくれ」 現れたのは、
いよいよ任地に旅立つことになり、暇乞いの
挨拶に訪れた陳豨であった。

「来たか。よく来てくれた」  韓信はそう言って
立ち上がると、近侍の者を遠ざけ、
陳豨の手を取るようにして庭へ連れ出した。
「ここの庭は広大で、散策するにはちょうど良い。
独り者の私には広すぎるくらいだ」

「大王……いえ、淮陰侯。あなたの庭は
天下でしょう。これでも物足りないぐらいでは
ありませんか?」  
陳豨の態度は特に韓信に対して媚を
売ったようなものではない。  
この時代の武人にとって韓信はやはり
尊敬に値する人物であり、陳豨はそれを
素直に言葉に表しただけであった。  

しかし、韓信はその言葉を否定した。
「いや……私はいくつもの国を滅ぼし、
何人もの武将を討ち続けて現在に至っている
わけだが……実は私自身、一国を束ねる
王となりたいと望んだことはなかった。

戦乱の世が終わった暁には……静かな
暮らしを求め、誰からも忘れ去られて
過ごしたいと望んでいた。

しかし、不思議なものだな。今の私は王座を追われ、
監視の目はあるものの何不自由なく暮らしている。
それがたまらなく嫌で仕方ないのだ」
「国家の大役を担いたいと……? 
働き足りないということですか?」

「いや、少し違う……。私はただ、戦いたい
だけなのかもしれない」 「…………」
「先に君は、 この王朝は駄目だ、と言ったな。
今でもその意見に変わりはないか?」

「無論です。それどころか不満は日増しに
大きくなってきております。
かつて項王は項姓を持つ者ばかりを優遇し、
親族以外には冷たいと評されましたが……
今の皇帝の施策はそれとなんら変わるところが
ありません。

諸国には劉姓を持つ者ばかりが王として立ち、
異姓の者はないがしろにされつつあります。
座視すべき事態ではありません」
「うむ……よく言った。ついては相談がある。
君を信頼して、ぜひ頼みたいことがあるのだが」
「なんなりとご命令ください」

「君の任地の鉅鹿という土地は、伝統的に
多くの精鋭を生むところだ。 近年では
項羽と章邯が激突した土地であり、
これに勝利した項羽が覇王として名を轟かす
きっかけになった場所だ。

したがってことを起こすには極めて縁起のいい
土地だと言える」  
陳豨はこのとき韓信がなにを言おうとしているのかを、
理解した。
「では、ついに……」

「ああ。君は幸いなことに陛下の信頼が厚い。
君の行動に多少疑わしいところがあったとしても、
陛下は心を動かさないだろう。つまり、
下準備に十分な時間がとれる、ということだ」

「はい」
「二度三度、 君の忠誠が疑われる事実が
発覚するようになると、陛下はようやく重い腰を
上げることになる。 あの方は、極端な方だ。
いざ君を討つことを決めると、部下に命じることなく
自分で軍を率いて行動するだろう。

私が見る限り、近ごろはその傾向が強いようだ。
以前にもまして気が短くなっておられるのだろう。
あるいはお年を召したからかもしれない」
「そこを返り討ちにするのですな。
入念な準備をしたうえで……」

「……まあ、それができれば最善だが……。
持ちこたえてくれさえすれば、それでよいと
私は思っている。 私の狙いは、
陛下に首都を留守にしてもらうことだ」
「ほう……」 「
陛下が留守になれば、 宮殿には私の敵に
なるような者などいない。そこで私は兵を集め、
長楽宮を襲撃し、呂后と太子を虜とりにしようと思う」

「……殺すのですか?」 「いや。彼らはあくまでも
陛下を私の前に引き出す餌だ。つまり、
彼らを人質にとり、陛下と戦うことを私は
望んでいるのだ」
「……謹んで仰せのとおりにいたしましょう。

しかし……危険ではないですか? 
いや、私ではなく淮陰侯が、です」
「以前に人から聞いたことがある。
人は大事なものを守ろうとするからこそ戦うのだと。
そして、世に戦いが尽きることはないのは
それが理由だと。

確かに危険なことではあるが…
…ここまでしなければ、
陛下は私と戦ってはくださらぬだろう」  

・・・

つづく

Author :紀之沢直樹 (野沢直樹)
http://kinozawanaosi.com
http://mypage.syosetu.com/273441/


愚人は過去を、賢人は現在を、
 狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、歌は世につれ、
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