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2017年1月24日 (火)

妄想劇場・・(1曲の出会い)言葉のチカラ…

妄想劇場・・(1曲の出会い)言葉のチカラ…

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「少年時代」



井上陽水には、堂々とした存在感を醸し出しつつも
ちょっと不思議な人である。
彼の居る部屋には独特の空気感があリ、
それはそのまま作品へも繋がる。
稀にみる美声の持ち主であり、男の色気が香る。

井上陽水の歌詞は、省略と隠喩の多く、
ちょっと象徴詩のようで、歌詞としてはかなり異色です。
メロディも、過ぎ去った少年時代への郷愁をかき立てる
傑作です。井上陽水の代表作といっていいでしょう。

でも作品は、時に大胆なほどシュールな切り口だったりする。
当然、聴き始めは「?」が浮かぶ。でも聴き終えた時、
歌がモノゴトの真理をズドンと衝いたものであることに
気づき、さっきまでの「?」が「!」に変わる。

何となく聞いていると引っかからないけど、
改めて読めば離れ業のような歌詞が多い。
例えば「リバーサイド・ホテル」という有名なヒット曲なら、
冒頭の“誰も知らない夜明け”という表現からしてそうだ。

「少年時代」はおそらく、陽水作品のなかで最も
幅広い層から愛されているのがこの曲ではなかろうか。
ヒネリの効いた陽水作品の中にあって、まっすぐで
誰でも口ずさみたくなる作風だ。

その佇まいは唱歌のようでもある。もちろん、
細かく見ていくと、そこには彼ならではのコトバの
トリックも隠れているのだが…。
そもそも、この歌はどのようにして生まれたのだろうか。

平成2年(1990)、東宝映画『少年時代』
(篠田正浩監督)の主題歌として制作されました。  
映画は、芥川賞作家・柏原兵三の自伝的長編小説
『長い道』と、それを漫画化した藤子不二雄A
(本名は安孫子素雄)の長編マンガ『少年時代』に
基づいて制作されました。

戦時下の昭和19年(1944)に富山に疎開した
東京の少年と地元のガキ大将の物語です。
2人の間に繰り広げられた葛藤と友情を
詩情豊かに描き、いくつも映画賞を獲得しました。

B面(カップリング)には良すぎる曲

キッカケはふたつあった。まず、陽水の作った
「ギャラリー」という作品を、荻野目洋子が歌うこととなる。
しかしシングル盤として出すにはB面(カップリング曲)が
必要だ。
たまたま彼女のレコード会社に、陽水と同じ
ビートルズ好きの人がいて、あるキッカケで親しくなる。

一緒にカップリング曲をあれこれ考えつつ共作することにする。
その時生まれたのが、のちに「少年時代」として親しまれる
曲だった。
ビートルズ好きの二人の共作と言われると、確かに
ピアノの感じとか、ちょっと「レット・イット・ビー」とか
連想したりする。ただ、その時は完成には至ってない。

陽水は言う。
「“♪夏が過ぎ 風あざみ”くらいは日本語があって、
あとは“♪ダラララルルル~”だった」。
以前取材した際の回想である。さらに、「でもこれ、
B面にしては良すぎないか?」という会話もあったという。

別に出し惜しみということではなく、あくまでこの
シングル曲は「ギャラリー」がメインの曲なので、
バランスというか、兼ね合いもあってのことだ。
結局、この作品はB面には採用されず、そのままの
状態で寝かしておくこととなる。

時を同じくして、陽水のもとへある依頼がくる。
藤子不二雄Aが『少年時代』という映画を制作
することになり、音楽の依頼があったのだ
(監督は篠田正浩)。
彼はふと、作りかけていたあの曲が合うのではと思い、
“♪ダラララルルル~”とだけハミングしていた部分の
歌詞も、そこから考え始める。

ここで『少年時代』という映画の概略なのだが、
藤子不二雄Aが戦時中に疎開した、富山県朝日町が
舞台となっている。
東京からやってきた主人公の、現地で芽生えた友情、
そして少年同士のさまざま確執などがテーマと
なっている。

それはもちろん、何らかの形で歌の作者に
インスパイアを与えたのだろう。
歌全体の自然豊かな牧歌的な雰囲気や、
その場所が、定住の地ではなく疎開先である
ということからくる“つかの間”な感覚などが
聴き取れる。
現実より夢の中の出来事を重視しているような
歌詞の構成法であるようにも思われる。

陽水独特の表現「風あざみ」「宵かがり」

歌い出しからも分かるとおり、夏が過ぎた秋の
入り口あたりの季節設定だ。
ただ2コーラス目になると盛夏の情景となり、
最後は再び、夏が過ぎた辺りに戻る。
そして、よく話題になるのが冒頭に出てくる
「風あざみ」という言葉である。

教科書にも載ったことのある歌なので、このあたり、
この言葉が“正しい日本語”かどうかに関心を持つ人も
多いようだ。
「あざみはそもそも春の花なのに、なぜ夏の歌に…」。
「こういう植物は、どんな分厚い植物図鑑を開いても
載ってない」。

さらにこの歌は、「宵かがり」という、これまた
辞書に載ってない言葉が出てくることでも有名である。
例えば「風あざみ」であるなら、陽水はあざみの季語が
春であるのを知りつつ、そこに風という言葉を
合わせることで、夏が舞台のこの歌に
「春の記憶の残り香として登場させたのでは?」という
想像は可能だ。・・・

さらにもっと大胆に考えて、我々は“あざみ”を
植物だと受け取っているが、
この言葉は陽水が考案した「あざむ」という動詞の
活用形であるのかもしれないのだ。
メロディの制約からくるイントネーションにより、
植物の名前に聞こえてしまっているだけかも
しれないのである。

もしそんな動詞があったなら、イメージ的に、
夏の偏西風がざぁざぁと聞こえる様を「あざむ」と表現した、
なんて可能性もまったくゼロではないだろう
(一方の「宵かがり」のほうは、よりストレートな
短縮語として、宵にふいと目に浮かぶかがり火、
みたいな想像が出来る)。・・・

「知らないことを歌えるっていうのは、すごく嬉しい」

作者本人の具体的な解説はない。しかし彼は以前、
「知らないことを歌えるっていうのは、すごく嬉しい」と
発言している。
詳細に調べたことを歌にするのは、逆に「下品だ」とも
言っている。

これらから想像するに、きっと陽水は“確かこんな言葉
あったような気がするなぁ…”くらいの認識で、
辞書など調べず、これらの言葉を書いたと思われる。

当て推量、という日本語があるが、それに近い。
作者として無責任というのとも違う。後はお聴きの皆様が、
自由に受け取って下さい、ということだ。

もしかしたら、これらは陽水が歌の中に仕込んだ
巧妙な言葉のカプセルかもしれない。
「少年時代」は3分20秒ほどの曲だが、「風あざみ」などの
カプセルは、そこだけ情報量が圧縮されている。
脳の中で時間をかけて“解凍”されるから長く留まる。
平たく言えば印象的になる。

どんな辞書にも植物図鑑にも「風あざみ」は載っていない。
この花に会いたくなった時はこの歌を聴くことにしよう。

リバーサイドホテル



(余談)

とろけるような笑顔の井上陽水から、「携帯電話の
待ち受け画面を孫娘の写真にしてるんだ」と言われたのは、
彼が還暦を迎えるより前のことだったように思う。
「オレはいままで女をこんなに愛したことはない」などと
続けるので、陽水のファンは印象が違って
ガッカリするのではないかと忠告したが、まったく
受け入れる様子はなかった。

得意手以外で女性にもてたい

私が3歳下のこの「ミリオンセラーの人」と会うキッカケを
つくったのは、フォーク村の村長さんの異名をもつ
ミュージシャンの小室等と、私の高校時代からの友人で
伝説のベルウッド・レコードのディレクターだった
三浦光紀である。

大分前のことになるが、長良川河口堰の現地で
開かれた反対集会で、私は初めて小室と会った。
それで「小室さんのことは三浦からいろいろ聞いてます」と
言ったのだが、それに小室はビックリしたらしい。
一見、「軟派」の三浦と、ガチガチの「硬派」と思われている
私とが、どう考えても結びつかなかったとか。

翌朝、小室は驚きのままに三浦に電話をする。
そして、3人で食事をした。それを聞いた陽水が、
どうして自分を誘ってくれなかったのか、と小室を
詰(なじ)ったという。
なぜか、私に興味を持っていてくれたのだ。

そんな経緯があって、4人で会い、盛り上がった。  
そして私は『サンサーラ』の1996年12月号で、陽水と
対談することになる。私がホストの連載の相手に
彼を頼んだのである。 終わった後、
彼はしきりに「言わされてしまった」と繰り返していたが、
得意手以外でもてたいという話を引き出したのは、
私の“功績”かもしれない。

「身近に聞くと、声だけで土俵際までバッと持っていく
力がありますね(笑)」と言ったら、彼は
「ときどきそういうようにおっしゃる方がいらっしゃるんですよ。
でも、それは禁じ手ですから、喋らないように
しています」と答えた。

聞いているだけで震えがくるような声の持ち主は
「そんなあなた、商売道具をそういうものに使っちゃ
いくらなんでも」と“自戒”していると言い、
私が「なるほど。得意手以外で相撲を取りたいと」と
“理解”を示すと、こう続けた。

「そうそう。それでいきたいんですけれど、そんなに人間って
得意手はないんだな、と思いますね。
3つ4つ得意手があれば何も商売道具を使わなくたって
ということもあるんでしょうけれども、なかなか
二物は与えられないですね。しかも、土俵際どころか、
仕切りすらないんですよ(笑)」

自分の声の「出足」を自覚したとき

最後の“告白”はにわかには信じ難い。  
陽水は24、5歳の時、つきあっていたガールフレンドの
母親に「アキミ(陽水)さん、いい声ね。ずっと聞いていたい」と
言われた。 旅館の女将で、粋なひとだった。

そのとき、「お母さん、何言ってるんですか」という気持ちが
半分、「ひょっとすると大変なことなんじゃないかな」という
気持ちが半分だった。

自分の声が「土俵際まで持っていく出足」があることを“
自覚”したのである。  
その自覚から、どう行動に発展したのかは知らないが、
彼はこんなことも言っていた。

「旅館のおかみとか飲み屋のおかみに対しては、僕は、
どういうわけかリラックスできるんですよ。
リラックスできるということは、相手にとっても好感が
持てるということですからね。だけど、・・・

一般的には、旅館のおかみや飲み屋のおかみというのは、
鵜匠のようなものであって、魚としては鵜に食べられたいのに、
鵜匠に好意を持たれてもしょうがないというところがある(笑)」

小室に暴露された相撲観戦

何度か会っているうちに親しくなり、小室に次のように
書かれてしまった。
『現代』の1997年6月号に小室が「甘えの方法」という
エッセイを載せている。何げなく読み始めたら、
一緒に相撲に行った時の話だった。

陽水ファンからは張り倒されるかもしれないが…

「某月某日、誘いを受けて、佐高信、井上陽水、
某レコード会社の会長諸氏と大相撲見物に出かけた」  
こう書き出されているが、「某レコード会社の会長」とは、
マーキュリー・ミュージックエンタテインメントの会長だった
前記の三浦である。  

〈4人掛けの舛席の前列に会長とぼく、
後列に佐高、井上両氏。いくぶん相撲に精しい会長氏と、
スポーツ観戦好きのぼくは、お茶屋から届いた酒肴も
そこそこに土俵に見入っている。

ところが後列の両人はというと、相撲はそっちのけ、
そのお喋りがやかましいこと迷惑千万この上なし。
やれ和服の綺麗所が見当たらないけど今日は
日が悪いんじゃないのとか、あの相撲取りは誰それとの事が
発覚して慌ててるから今日は負けるよとか、

ニューミュージック界の辛口評論家が聞いて呆れる。  
そうこうするうち、2人の会話に耳を貸そうとしないぼくに、
「小室さん、何してんのよ」と井上氏、
「そうそう、何してんの」と佐高氏も。
「何してんのって、相撲見てるんでしょうが」と答えるぼく、
土俵に目を戻せば、ご贔屓(ひいき)旭鷲山の一番は
終わっていた。

超ムカツクぼくに、後列席から追い討ち、
「相撲見てるんだって、変ってるね」  
変わってるのは俺じゃない、お前らだ! 
面目ない。まったく、その通りである。

陽水ファンからは張り倒されるかもしれないが、
陽水の歌に陶酔し、陽水を仰ぎ見た経験のない私は、
最初から、気の合う相手として、「お喋り」ができた。  
しかし、いま、とても残念に思うのは、会食後に
カラオケに流れて、陽水の「リバーサイド ホテル」に
挑戦したら、見るに見かねてか、陽水がそばに来て、
直々の歌唱指導をしてくれたのに、ものに
ならなかったことである。

やはり、鶴田浩二の「傷だらけの人生」や
北島三郎の「兄弟仁義」の方が似合うのかもしれない。
15歳からのつきあいの三浦は、それだけはわからない、
と言っている。


Author :佐高 信の「一人一話」|
Author :歌ネット 小貫 信昭
Author :二木紘三のうた物語
     http://duarbo.air-nifty.com/


歌は心の走馬灯、歌は世につれ、
 世は歌につれ、
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