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2017年3月16日 (木)

妄想劇場・番外編・「八 音 琴 」(最終話) 

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なぜ、美人はいつもつまらない男と結婚するんだろう?
賢い男は美人と結婚しないからさ。・・・



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「八 音 琴」 再会・・・(最終話) 

蘭華たちが屋台を出している通りには、
日本領事館が近いせいか日系企業が多く、
日本人の姿も絶えることは無かった。
時には酒に酔った日本人も屋台に立ち寄っていたが、
蘭華は一切、日本語を話すことをしなかった。

夏も終わりに差し掛かったある日の事であった。
蘭華と老婆はいつもの様に暗くなった通りで
屋台を引いて歩いていた。
そこへ、初老とも思える杖を付いた一人の男が、
蘭華たちの横をすれ違おうとしていた。
男は身体が不自由らしく、行き交う人々に
肩を触れては倒れそうになり、自分の身体を
必死になって支える様にして歩いて来た。

そんな時、身体の大きな若者が蘭華たちを
追い越した。若者の背中の影で、その初老の男が
見えなくなったとたん、歩道から車道へと転がる
弱々しい男の姿が見えた。
振り返る事も無く立ち去って行く若者を
睨め付けることもしなかった、

とっさに蘭華は転がり落ちたその男を抱え上げた。
蘭華の髪が、一瞬、男の頬を横切った。
「蘭華? 」
男は、思わず声を上げた。なんと、その男は、
変わり果てた西村であった。
西村は生きていた。西村は、蘭華の香りを
忘れてはいなかった。

西村「蘭華だね? 蘭華だよね?」
蘭華「もしかして、・・・、西村さん? 」
蘭華の口からは思わず日本語が飛び出した。
二人は十二年ぶりの偶然な再会であった。
西村は生きていた。

十年にも及ぶ闘病生活であったが、身体半分が
不自由になりながらも、西村は生きていた。

北海道で蘭華と別れた西村は、仕事に
行き詰まり、とうとう廃業を余儀なくされていた。
負債に対する責任が妻に及ばぬ様、離婚もした。
しかし、離婚直後、西村は倒れ、生死を
さまよっていた。そして、西村の闘病生活を
助けていたのは、彼の子供たちであった。

西村「蘭華だね? 本当に蘭華だね?
生きて いて良かった・・・」
蘭華「ごめんなさい、ごめんなさい西村さん・・」
西村「蘭華、もう何も言わなくていいんだよ。
君も苦労したね・・・。よく、今まで頑張って
生きてきたね・・・。生きていてくれて
ありがとう・・・・。
もう僕、君を離さないよ。さあ、僕と
一緒においで・・・」

蘭華「でも、わたし・・・」
蘭華は振り返り、老婆を見た。
老婆は何も言わず微笑みながら、蘭華に
『行きなさい』と、手で合図をしていた。

蘭華「謝謝・・・。謝謝您・・・。
我变得幸福・・・。謝謝・・・」
西村は退院後、時々、上海を訪れては
蘭華を探し続けていた。この日は、蘭華の
消息を訪ね歩いて二年が過ぎようと
していた頃であった。

西村は入院中、リハビリの目的で絵を
描いていた。不自由になった手で、絵を
描きながら訓練を重ねていた。
そんな日々を繰り返すうちに、完成した
水彩画の数は数え切れない程になっていた。
その絵のひとつが、ある出版社のコンテストに
入賞し、西村の活動は途切れる事を
知らなくなった。・・・

蘭華と再会を果たした西村は、まもなく彼女を
自分の養女にした。
いつしか蘭華はすっかり西村の杖代わりに
なっていた。西村がどこへ行こうとも、
彼の傍らには蘭華がいた。
小柄な蘭華の肩に手を回す西村は、
どこ不自由なく歩き回る事が出来ていた。

そんな西村を絶えず気遣いながら、蘭華は
精一杯に身の回りの世話をした。
食事の時には絶えず西村の仕草に気を配り、
着替えの時には汗だくになりながら大きな西村の
身体を持ち上げてズボンを履かせた。

更に西村は、入浴時でも背中を流してもらい、
湯船にも浸かることも出来た。そしていつしか、
蘭華の身体は、以前の様な美しさをすでに
取り戻していた。肌は若い時と同じ様に、
身体は小柄で細身ながらふっくらと、そして何よりも、
あの見事な黒髪が蘇っていた。

蘭華は、年齢からして短い髪形を望んでいたが、
西村の強い願いを聞き入れて背中の中程まで
伸ばす様にしていた。その黒髪は艶やかで
先端は綺麗に整えられていた。

蘭華「西村さん、約束守ってくれて、ありがとう・・・」
西村「えっ? 約束? 何だ っけ・・・? 」
蘭華は、自分の肩に手を回して歩いている西村の
横顔を満面の笑みと共に見つめていた。

それは、蘭華が四十歳になろうとしていた
九月のことであった。西村と蘭華が再会を果たし、
何年が過ぎたであろうか・・・。

蘭華は西村の作品を中国や欧米に紹介する
仕事も始めていた。そして時には、個展が
中国で開催される事もあった。

ある日、西村は、上海市内にある福祉団体の
講演に招かれ、上海に来ていた。当然、蘭華も
一緒である。二人は講演終了後の会食を終え、
夜の街を歩いていた。そこは、数年前、二人が
再会した街の通りでもあった。

西村は、美味しそうな臭いがする一台の屋台の
前で足を止めた。決して清潔には見えそうもない
屋台ではあったが、大きな茄子、ねぎ、ピーマン、
豚肉、鶏肉等、食材が長い串に刺されて
屋台の横に並んでいた。西村は、大きなナス、
ピーマン、豚肉を注文すると、屋台横の椅子に
腰掛けた。

西村「蘭華、君も食べれば?」
蘭華「私、今、食べたばかりですから・・・。
太りたくないし・・・。私、そこで飲み物でも
買って来ますね・・・」

西村の注文した食材が、屋台の炭火の上に
並べられた。ジュウジュウと音を立てながら、
食材は柔らかさを増し、焼け焦げた煙も次第に
量を増していった。屋台は五十歳前後の様に
見える夫婦らしき二人が営んでいた。

慣れた手つきで時々振り掛ける、塩、コショウは、
あたり一面に香ばしい煙となって漂った。
店主が焼き上がった串焼きを屋台横に座っている
西村に差し出した。その時、西村は何気なく、
店主の立つ屋台の後方に目をやった。

そこには、見覚えのあるシマフクロウの置物が
夫婦を見守るかの様にして、樽の上に
置いてあった。
西村は何も言わず、蘭華の買ってきた
水を飲みながら、片手で串焼きを美味しそうに
たいらげた。

「ハオチー、シェイシェイ」
西村は、店主に金を払うと、再び蘭華の肩に
手を回し、静かにそこを立ち去った。
去って行く二人を見つめながら、店主の
妻らしき女は、静かに言った。

女「ねぇ、国強。あの女の人・・・」
店主「あぁ・・・、分かってるよ。何も言うな」
そして店主は、自分の背後に置いてある
シマフクロウの置物に向って、肩の荷が
下りたかの様につぶやいた。
「母亲(かあちゃん)・・・」

Author :夢庵壇次郎
http://www.ne.jp/asahi/muan-danjiroh/jp/


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歌は心の走馬灯、歌は世につれ、
 世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



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