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2017年3月31日 (金)

妄想劇場・番外編・「蜜月の逆説」

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なぜ、美人はいつもつまらない男と結婚するんだろう?
賢い男は美人と結婚しないからさ。・・・



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Bitter Moon 〜蜜月の逆説〜 

新宿駅の西口は、夜11時を過ぎても人の波が
途切れない。人と人の隙間を縫うように
歩かねばならず、二人きりになっても話など
する余裕はない。そんな中、瑤子は正志に
突然肩を抱かれた。瞬間、ドキリとする。

それは、正志が瑤子をホテルに誘ういつもの
合図だからだ。しかし、瑤子は身をよじって、
冷たく正志から離れた。
「・・・明日、仕事なの。早く帰って寝ないと。」

「明日は土曜だぜ?」
「退職までの引継ぎで大変なのよ。休日返上で
働かないと、後々迷惑かけちゃうでしょ。」
「俺に話があるって、言ってたよな。」
「・・・また、今度にする。」

瑤子は軽く手を上げ、正志に背を向けた。
重い話を、正志にどう話そうか迷っていた。
話すべきかどうかさえ、あんなに迷ってようやく
決心したというのに、その気力をすべて
失っていた。

都会の夜は、どうして人で溢れたままなのだろう。
立ってつり革につかまるのがやっとなほどの
満員電車で、瑤子は眉をひそめたまま、
宙を睨みつけていた。思い出したくないのに、
すぐに正志の声が木霊する。

こんな便利な女はそういない そうか。
正志はそんな理由で、自分を選んだのか。
冷静に考えれば、納得できる。
「愛してるから結婚する。」なんて言われるより、
ずっと堅実な理由だ。そもそも正志は、瑤子に
「愛してる。」なんて言ったことはなかった。

それでも今の今まで期待していた自分が悪い。
正志は昔からマメな男だった。
記念日という記念日は全部覚えていて、
プレゼントをかかさない。
薔薇の花束も天然石のアクセサリーも、
世の女性が喜ぶであろう品をきっちり
選んで贈ってくれた。

(でも私は、そんなものより欲しいものがあった。)
正志が自分を抱く腕は、一生頼っていい
確かな存在だと思っていた。時折不安になっても、
正志に力強く抱きしめられれば、それを
払拭することができていた。だからこそ、
悩んでいたのだ。

瑤子は明日、病院へ精密検査の結果を
聞きにいく。
会社の定期健康診断でひっかかり
二次検診を受けたら、大病院での精密検査を
促された。その結果を、正志に一緒に聞きに
行ってほしいとお願いをしたかったのだ。

そして、その結果次第では結婚をとりやめに
する覚悟をしていた。この覚悟をするまでに、
一体どれほど悩んだというだろう?
正志を失わないように、例え重い病気でも隠して
結婚してしまおうかと思いもした。

だが、それが正志のためになるとは思えないから、
正直に打ち明けようと決意したのに。
その決意が、すべて無駄になってしまった。
明日の行方の不透明さに、瑤子はめまいが
しそうだった。

瑤子は同居している両親に「買い物に行く。」と
嘘をついて、家を出た。
土曜の午前。御茶ノ水駅前は、会社員も
学生もまばらで、静かだ。
瑤子は、不思議なくらい落ち着いていた。

いや、もう、どうでもいいと思っていた。
病気でも、そうでなくても、どうでもよかった。
それよりも、これから正志とどう向き合うべきか
という問題に悩んでいた。

予約をしていたため、ほとんど待たずに
診察室に入った。
若い医師は、率直に瑤子に告げた。
癌が進行しており、すぐ手術をしても、おそらく
手遅れである、と。「すぐ入院してください。
少しは、延命できますから。」

入院するのが当然だというようにペンを走らせる
医師に、瑤子はきっぱりと言った。
「別に、延命してほしいとは思ってないです。
抗がん剤とかも、嫌です。」

医師は手を止め、瑤子に向き合った。
「このままだと、もって半年ですよ?
この世に未練はないんですか?お若いのに。」
「もちろん、親より先立つのは心残りです。
でも、それも仕方のないことですから。」

その後、医師とどういう会話を交わしたのか、
瑤子は覚えていない。その時ずっと考えて
いたのは、正志との結婚をどうするか、
それに尽きた。・・・

正志は、瑤子の病気のことを知ったら
どうするだろう?
一生無料で使い倒せる絶対服従の「妻」が
病気で先立つと知ったら、役立たずの用無し
女として婚約を破棄するだろうか。

(そりゃあ、破棄だろうな。だって便利で使えるから
私を選んだんだもの。それが、使えないとなったら
結婚する意味ないものね・・。)

無数の蛍光灯に照らされて明るく感じていた
病院から一歩外へ出ると、病院内がどんなに
暗かったか思い知る。空はまぶしく光っていて、
高くて、もうすぐ秋だと告げている。  
思わず細めた目から、涙が滲んだ。

ストレートに、ショックだった。
病気のことよりも、死ぬことよりも、正志の
言葉のほうがずっと辛かった。
何度も、何度も脳裏を木霊する。

悪いこととは、重なるものだ。でも今までは、
悪いことがあれば次にはいいことがあると
信じて前を向くことができた。しかし、
今回は違う。どんなにいいことがあっても、
死は間近に迫っている。

この事実を、正志にどう告げようか。
その前に、告げるのか?
告げる必要があるのか?
親に告げるつもりは、ない。
娘が先立つ不幸を半年前から宣言する
必要などない。

その半年間、親に何を考えさせればいいと
いうのか。
半年間で自分自身が親孝行できれば十分だ。
死の現実は、死んだ直後に知ればいい。
突然すぎて衝撃が大きくても、涙する時期は
遅らせたほうがいい。

入院中に看護させる苦労はかけたくない。
そんな悲しい負担をかけさせたくない。
しかし、正志のことだけは迷う。
・・・
つづく

Author :井浦美朗( イウラミオ)
http://mypage.syosetu.com/

性別: 女性; 血液型: AB型;


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歌は心の走馬灯、歌は世につれ、
 世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



春歌 真室川音頭






P R : 

G・ブラックコート 

黒の復活(黒のコーティング)

G02

未塗装樹脂部分の白くなっている
箇所を→ 黒くします。


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