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2017年3月 9日 (木)

妄想劇場・番外編・「八 音 琴 」

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なぜ、美人はいつもつまらない男と結婚するんだろう?
賢い男は美人と結婚しないからさ。・・・



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「八 音 琴」 転落  

あれから何年が過ぎたのであろうか。
刑期を終え、刑務所の門を出た蘭華を待つ者は、
誰一人いなかった。
母も祖母も心労がたたり、蘭華を案じながら
他界していた。

蘭華が抱える小さな古ぼけたバッグは、
かつて福田のアパートを追い出された時に
持っていたバッグであった。
蘭華はわずかな小銭で刑務所近くのバス停から
バスに乗り、かつて自分が暮らした上海に向った。

終点に到着したバスからは、乗客が次々と降り立ち、
雑踏の中へと消えて行った。
蘭華も重い足を引きずるかの様にして、
いちばん最後の乗客となってバスから降り立った。

蘭華の着る服は、刑務所から支給されたのであろう
シミだらけの古着であった。肌は荒れ、あれほど
美しかった髪は傷み、短く無造作に切り揃われていた。

そこに、どこからともなく、蘭華の妹、璐が現れた。
ビルの陰から誰にも気付かれない様に、そっと
蘭華に近づいた。

璐 「お姉ちゃん、はい、これ・・・」
璐は変わり果てた蘭華に、ひとつの小さな紙袋を
手渡すと、それ以上は何も言わず、足早に、
またビルの向こうへと消えて行った。

妹が手渡した紙袋の中には、わずかな着替えと、
当面生活が出来るだけの現金が銀行の封筒と
共に入っていた。

蘭華が何気無く、その紙袋の隅を探ってみると、
綺麗な包装紙に包まれた小さな箱が入っていた。
その箱の包装紙は、開けられた形跡も無く、
半ば色あせていただけであった。

包装紙には「新千歳空港」の文字が青く印刷
されてあった。そこは、蘭華にとって二度と
行く事が出来ない思い出の場所だった。
その文字を見たとたん、蘭華の大きな瞳から、
大粒の涙が一気にこぼれ出た。

蘭華「ごめんなさい・・、对不起・・、很对不起・・」  
大勢の人々が行き交う中、蘭華はその場に座り込み、
丁寧に包装紙を剥がして小さな箱を開けた。

そこからは、思い出だけがいっぱいに詰まった
シマフクロウの姿が現れた。
蘭華は躊躇せず、ゼンマイを回した。
かつて蘭華が感動したあの音色が、再び甦り、
気弱な音となって蘭華の耳に届いた。
蘭華は、いつまでも、いつまでも、そのオルゴール
(八音琴)のゼンマイを回し続けていた。

蘭華が北海道から戻った時である。唯一の身内である妹、
璐に、たくさんの土産と共に蘭華はシマフクロウの
オルゴールまでも託していた。
もし、あの時にこのオルゴールだけでも手元に残していたら、
蘭華の人生は違っていたのかもしれない。

しかし、それは当時、蘭華が選んだ道であった。
蘭華は行く当ても無く、ふらふらと街をさまよっていた。
あたりはすっかり暗くなり、肌寒さも増していった。
歩き疲れた蘭華は、ひとつの古ぼけたアパートに
たどり着いた。

そこは二階建ての長屋で、アパートと言うよりも、
ただ、ベニヤ板で仕切られた小屋の様でもあった。
そこの住人が使うのであろう共同の水汲み場の淵に、
蘭華は崩れ落ちる様にして腰を掛けた。

水汲み場では、一人の老婆が野菜を洗っていた。
老婆「あんた、こんなところで座り込んだら邪魔だよ。
仕事にならないじゃないか・・・」  
老婆は蘭華に、そう声を掛けたのであったが、
蘭華は身動きひとつせず、黙ってじっと中空を
見つめていた。

涙の枯れ果てた蘭華の瞳は、すでに生きる
気力さえ失っているかの様であった。
老婆「あんた、どこに行くんだい? 
どっから来たんだい?」

蘭華「对不起・・・・、很对不起・・・」
老婆「わかったよ、わかったよ、とりあえず、
こっちにおいで・・・」

老婆は様子のおかしい蘭華を放っておく事も、
追い払う事も出来ず、自分の汚い部屋に導いた。  
老婆は、古北路と言う通りで屋台を出していた。
そしていつしか蘭華は、老婆と共に屋台に
立つ様になっていた。

別段、老婆は蘭華の生い立ちなどを聞きはしなかった。
また、蘭華も老婆の境遇なども聞きはしなかった。
ただ、互いに大きな苦労をして生きてきたことだけは、
疑う事など無かった。

老婆の若い頃、中国では文化大革命と言う不幸な
出来事があった。その動乱で連れ合いを亡くした
老婆は、その後の好景気にも恵まれず、
今日に至っていた。

蘭華は、そんな老婆を自分の祖母と重ねて合わせ
て見ていた。自分を優しく育ててくれた祖母であったが、
最期を見届ける事も出来ず、思い出だけが常に
脳裏を横切っては消えていった。

かつて幼い頃、野菜を売り歩く祖母の傍らで甘えた様に、
蘭華は老婆の傍らで串刺しにした野菜や鶏肉を、
炭火で焼いていた。
老婆は長年、ここで屋台を引いているのだろう。
けっこうなじみ客もいる様で、客との対応は
老婆に任せ、蘭華は一切、顔も上げずに、
黙々と串刺しを焼いていた。そして、どうにか二人、
食べて行くまでの稼ぎにはなっていた。・・・ 

つづく

Author :夢庵壇次郎
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歌は心の走馬灯、歌は世につれ、
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