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2017年4月20日 (木)

妄想劇場・漢の韓信-(169) 悪意の絆…

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昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
 明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
 良いかな・・・

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい


Kansin


漢の韓信-(169) 悪意の絆…

「伺おう」そう言ったものの、謀殺される危険性を
感じなかったわけではない。
陳豨は、殺される寸前に二人の間の秘事を
明かしたかもしれなかった。

そう考えると、韓信は自分の死が徐々に
近づきつつあることを運命として受け入れざるを
得なかった。

明日の昼過ぎには自分はこの世に存在しない
かもしれない。そんな風に殺される瞬間のことを
考えると、確かに恐ろしかった。

しかし一方で、その後は現世の苦しみから
解放されることになる、と思うと、気分が楽になる。
死に対する恐怖も「喉もと過ぎれば」という具合の
ものだろう、とも思えた。

恐怖は感じるが、それは彼が想像していたより、
たいしたものではなかった。
殺されるまでは生き続けようと考えていた
韓信であったが、最近では以前より生に対する
執着もなくなってきている。

以前の自分は、よく口にしたものだ。
「死んで出来ることは、何もない」と。確かにそれは
間違いではない。
しかし、今の自分にはもうひとつ、確信を持って
言えることがある。それは、生きていても
出来ることはほとんどない、ということだ。

気・力ともに充実しているときは、個人の
実力こそが、天下を動かす原動力になる、と
考えたものであった。
しかし、結局天下を得たのは自分より実力の劣る
劉邦であった。

思いがけないこの現実に力が抜けた。
これが仮に項羽であったら、自分は即座に対抗
しようとしたに違いない。

実力者が、実力者に挑むのは当然のことだからだ。
では、私は何を思って劉邦に味方したのだ。
結局味方をしたのだから、劉邦が天下をとったのは
当然のことだ。それとも私は、皇帝の座を
狙っていたとでもいうのか。
いや、そういうわけではない。

私が望んだのは…自分の知勇をもって戦乱の世に
けりをつけることであって、結果的に誰が皇帝に
なろうと知ったことではない。
しかし、一連の戦乱が終わればすべて終わり、
というわけではなく、私にもその後の人生があるのだ。

考えてみれば当然のことではないか。
我ながら、なんと浅き知恵……
なんのことはない。天下を動かすのは、
運だけであった。これこそが、真理よ……。
劉邦は運を味方に付けて、私を利用することに
成功したのだ。

韓信の心の中に一種の諦念が浮かぶように
なったのは、いつ頃からのことだろう。
「私は、出来ることなら将になりたい。
将になって天下を動かすのだ」
少年時代、自分は栽荘先生に向かって、
そんなことを言ったものだ。

ああ、先生……。私は間違っておりました。
私は何にもなるべきではなかった。
将どころか、王となっても天下を正しく導くことは
出来なかった。

市中にはびこるクズのような輩を一掃したいと
思っていたのに! 男女を問わず、老若を問わず
先生、どうして私を正しき道に導いて
くださらなかったのですか。

私は、学者にでもなればよかった。
口下手な私ではありますが、世の中に対して
思うところは多々あるのです。
それを一巻の書物にでもすれば……。
かえすがえす、お恨み申し上げます!

しかし、少なくとも自分は、世に名を残すことになった。
それは悪名であるかもしれないが、
自分のような経験ができる者は少ないのでは
ないだろうか。

韓信はそう考えもしたが、すぐにそれを否定した。
馬鹿な! 自分の人生が満足できるものだった、
とでもいうのか。よい経験をしたと? 
私の一生は素晴らしかったと? 
そんなことはないさ! 

私が死に追いやったのは、悪人ばかりではない。
敵として死んだ者の中には、数多くの善男善女が
いたに違いないのだ。それを知りながら
殺さねばならない人生の、どこが素晴らしいのか!

その酬いとして私は蘭や酈生を失うことになった…
それで十分だと思っていたのだが…
どうやら私の罪は限りなく深く、私自身が死ななければ
償うことができないほどらしい。

そう思いながら、目を閉じた。眠ったのではない。
人生の中での数少ない良い思い出を
反芻しようとしたのである。

少年時代の眛。常に私の前に立ち、先に行動した。
年は変わらないというのに、彼はいつも兄貴分を気取り、
私を見下した態度をとった。

当時は癪に障ったりもしたが、今となっては
可愛いものよ。
彼は幼き頃から、私を恐れていたのだ。
だから健気にも虚勢を張り……。

カムジン。ほとんど口をきかないお前と、
心が通じたように感じたのはなぜだろう。
あるいは私はお前を動物のように扱って
しまったのかもしれぬ。
主人の命令に忠実に従う猟犬のように。

もしくは戦うためだけに生まれてきた
軍鶏のように。
いずれにしろ私は、物言わぬお前が人と
同じ心を持つことに思い至らなかった。
もっと早く気付いてやれれば……。

酈生、あなたはよくわからない老人だった。
温和な表情。礼儀に満ちた所作。
それでも若い頃のあなたは荒くれ者だったと
聞いている。
いったい、人はそんなにも変われるものなのか。
もしそうだとしたら、やはり荀子の説は
正しいと言わねばなるまい。

善が悪に変わるのは一瞬のことだが、
悪が善に変わるのにはとてつもない努力が要る。
酈生、あなたはそれを見事やってのけた。
できることなら、私も……どうせ死ぬのであれば、
あなたのように美しく死にたいものだ。

だが、私はひたすら人を殺し、最後には
謀反を犯した。
結局、最初から最後まで悪だ。善人となって
死んだあなたのような最期は、私には
とうてい無理だ。・・・

つづく

Author :紀之沢直樹 (野沢直樹)
http://kinozawanaosi.com
http://mypage.syosetu.com/273441/


愚人は過去を、賢人は現在を、
  狂人は未来を語る




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マラグーナサロロサ - ロベルトポリスアノ

マラゲーニャ(スペイン) のマラガ地方に
起こった舞踊および舞曲。
三拍子でギター伴奏を伴う。


P R : 

G・ブラックコート ”見てね”

黒の復活(黒のコーティング)

G02

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