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2017年4月17日 (月)

妄想劇場・番外編・「蜜月の逆説」

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なぜ、美人はいつもつまらない男と
  結婚するんだろう?
賢い男は美人と結婚しないからさ。・・・



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Bitter Moon 〜蜜月の逆説〜 

次の日。瑤子は初めて、会社で倒れた。
当直の看護師に「貧血らしい」と言われ、
医務室で休んでいると直近の上司が尋ねてきた。
「気分は、どう?」10歳年上の女性チーフは、
優しく声をかけてきた。

枕に頭を埋めたまま動けない瑤子は、そのままの
姿勢で「すみません、ご心配おかけして。」と謝った。
「そんなこと、気にしないで。それよりこの間の
健康診断で『要精検』だったわね。
結果、どうだったの?」

瑤子が健康診断でひっかかったことは、上司である
彼女だけが知っている。
誰にも話せない重荷を、思わず口にして
しまいそうだった。
だが、そんなことをしてどうなるだろう?
優しい上司には正志を紹介済みである。
瑤子が話せば、上司は正志に真実を話して
しまうだろう。瑤子は結局、嘘をつくしかない。

「少し通院は必要みたいですけど、大したこと
なかったです。」
「そう?こんなふうに倒れるなんて、大したこと
ないとは思えないけど。」
「・・・今日は、たまたまです。」
「フィアンセに連絡して、迎えに来てもらいましょうか?
もうすぐ退社時間だし。」

「そんな!大丈夫です。」
「でも、まだ起き上がれないんでしょう?」
「タクシーを呼んで帰りますから。
彼に、心配かけたくないんです。
知らせないで下さい。」
「そう?じゃあ、タクシーぐらいは私に呼ばせて頂戴。
30分後でいいかしら?」
「はい。ありがとうございます。」

上司が出て行くと、瑤子は深い溜息をついた。
寿退社することにしておいて、良かった。
こんな身体では、そうそう長くは働けない。
遅かれ早かれ退社せねばならなかった。
そうなったとき、正志に何と理由を説明すればいいか。
そう思うと、退社を決断しておいて良かった。

結局、正志とは結婚式をあげるしかないところに
来ている。(仕方ないよね。正志が悪いんだもん。
私の気も知らないで、全然考えなしで怒るし、
私のことを便利な女だから結婚するなんて言うし。
・・・私は全然悪くないもん。)

そんなことを考えるたび、自分が惨めで、泣けてくる。
見上げた夜空に浮かぶ月が日ごとに欠けていくのに
比例するように、瑤子の心は日増しに衰弱していった。

式まであと二週間。本当なら、一番幸せで、
期待に満ちた時間だったのかもしれない。
だが、瑤子はいつでも泣けるほどに涙を溜めて
前を向かねばならない。限界だった。

瑤子は、正志に電話をかけた。
言っておかねばならない。黙っていても、
いつかばれることだ。そしてその時、
別れは来るのだ。

結婚するかしないかは正志に任せる。
今更の告白に正志が怒っても、それは当然のことだ。 
式場のキャンセル料も、違約金も払えるくらいの
貯金は持っている。
だから、今日こそ告げようと思う。
そして、ちゃんと口にしようと思う。

正志がどう思おうと、自分は結婚なんて、
正志以外に考えられなかったと。
正志が他の女性をこの先選んでも、
生涯、自分が結婚しようと思ったのは正志が
最初で最後だった、と。告白のセリフを何度も
シミュレーションし、緊張しながら正志に電話をかけた。

ちゃんと正志の仕事を考えて昼休みの後半に
さしかかったところで電話した。
『・・・瑤子、何?』あまり機嫌のいい声ではない。
しかし、怯んでいられない。
「今日、会えない?話があるの。」

『前もそう言って、結局言わなかったじゃないか。』
「今日は、そんなことしないから。」
『悪いけど、今日は絶対はずせない接待が入ってる。
わかってるだろ?今日の今日で会えるほど
俺が自由じゃないってこと。』
「・・・それはわかってる。でも、」

『どうせ2週間後には挙式で、それから先は一生一緒で、
嫌でもいつでも話ができる状態になるんだ。
それじゃ駄目なのか?』
正志は、瑤子が寂しさにかまけて恋人を誘い出して
いる程度にしか、思っていないのかもしれない。

「今のうちに、話しておきたいことなの。」
『何だよ。まさか、結婚やめたいなんて
言うんじゃないだろうな。』
気だるい溜息混じりに言う正志の声が、瑤子の誘いを
面倒に思っていることを示している。
「・・・わかった。もう、いい。」

『本当に、何だよ。じゃあ、今言えよ。
電話だっていいだろう?』
「それくらいなら、とっくに言ってるわよ。」
『俺にどうしろっていうんだよ。とにかく、今日は会えない。
明日も明後日も無理だ。週末は接待ゴルフ。
その次の日は貴重な休みだから、一人で休みたい、
その次の日は・・。』

「わかった、わかったわ。わかったわよ!
ごめんね、私が悪かった!」
瑤子は、正志の言葉を待たずに電話を切った。
そうだ。正志は物分りのいい無料で働く便利な女と
結婚するのだから、そんな女の言い分など
聞く気はないし、そんな面倒を背負う気もないのだ。

男にもてない人生を歩んできた瑤子など、
一度抱いてしまえば言いなりになる程度に
思っているに違いない。

瑤子の悲しみは、次第に怒りに変わっていった。
そして愛は、憎しみへと変貌を遂げていた。
もう、いい。このまま結婚する。
その後どうなろうと、先に死んでしまう瑤子には
どうでもいいことだ。瑤子という便利な女を失ったって、
半年も経てば正志には新しい便利な女が
容易く手に入るだろう。

妻に先立たれた端正な顔立ちの男を、
適齢期過ぎの女達が放っておくわけがない。
(もう、どうでもいい。私を死ぬまで使い倒して、
後悔するならすればいいし、喜ぶなら
それでいいし。・・・どうせ、私が死んだ
後のことよ。そうよ。)

下唇を噛み締めて睨み付けた先に
瑤子が見たもの・・・それは、行き止まりの
闇だった。 ・・・

つづく

Author :井浦美朗( イウラミオ)
http://mypage.syosetu.com/

性別: 女性; 血液型: AB型;


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歌は心の走馬灯、歌は世につれ、
 世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



ほかされて







P R : 

G・ブラックコート  ”見てね”

黒の復活(黒のコーティング)

G02

未塗装樹脂部分の白くなっている
箇所を→ 黒くします。

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