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2017年5月 6日 (土)

妄想劇場・漢の韓信-(171) 悪意の絆…

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昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
 明日という日はミステリー



メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
 良いかな・・・

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい


Kansin


漢の韓信-(171) 悪意の絆…

「ふん……なるほど……君らはずいぶんと仲が
いいことだな! 
国を救うと称し、共謀して私を除こうと……悪意の絆! 
今さらだが、その知恵と仲の良さを私が斉や趙の地で
苦しんでいるときに発揮してほしかったぞ! 
そうすれば建国の苦労は、半分程度で済んだのだ」
痛烈な侮辱である。韓信は、この言動だけでも死罪を
免れなかった。

「そのときは、私は虜囚の身で項羽のもとに
捕われて……」
呂后はそれでも話を続けようとしたが、韓信の激情は
このとき頂点に達した。

「お前などに言っているのではない! 
いったいお前が国のために何をしたというのか! 
愚鈍なためにむざむざ捕われたくせに。
お前の愚鈍さが、漢軍全体の足枷となったことが
わかっていて口をきいているのか!」

「やめろ、やめないか、淮陰侯」
蕭何は泡をくって制止しようとした。
「相国! もうその呼び名で私を呼ぶのはやめろ! 
私はすでに謀反を犯し、もはや漢の職制の
外にある身分だ。私を呼ぶなら、単に韓信と呼べ!
 
私は……罪人として死んだ父と、不貞を犯して
死んだ母の間から生まれた、字あざなも持たぬ
平民の子だ! 
こんな国の尊称で呼ばれるより、本名で呼び捨てに
される方がよっぽどましだ!」

この言を聞き、ついに呂后は、堪忍袋の緒を切った。
「話にならぬ。相国、別室に連行して獄吏に
引き渡しなさい。そして、すぐに首をはねるのです! 
三族すべて、殺しなさい」

三族とは、狭義では妻子と両親、広義では
一族すべてのことをいう。
韓信の両親はすでに死し、妻子がないことは
明らかだったので、この場合は遠縁の者を探し出し、
すべて殺し尽くせ、という意味であった。

「は、しかし……」
「考えてはなりません。迷いのもとです。
余計な感情を持ってはいけません。すぐ、やるのです」
「……御意にございます……」

やむなく蕭何は、武士を呼び、韓信を取り押さえさせた。
両腕に枷をはめられ、引き立てられながら
、韓信は喚くように言葉を連発した。

「まったく、蒯通の言う通りだった! 
こんな国など、早いうちに滅ぼせばよかったのだ。
それにしてもこの私が、あろうことか
あんな女に騙されるとは! 
天運、まさに天運としか言いようがない」
「もうよせ、信……」
連行される韓信の後を、蕭何が静かに追った。

宮中の鐘室に韓信は連行され、蕭何もその部屋に入った。
「……なぜ、あんな死に急ぐようなことを言ったのだ」
蕭何としては、やりきれない。
彼は最後の瞬間まで韓信を助命することを
諦めていなかったが、肝心の韓信が自分で
自分の死刑を確定してしまったのである。

「すみません……相国には、ご迷惑を……
お立場を悪くしてしまいました」
韓信の態度には、すでに狂乱した様子はない。
落ち着きを取り戻した、いつもの彼の姿がそこにあった。
「私は……誰かに運命を左右されるのは嫌だ。
たとえ死ぬことを免れないにしても、私は自分の
責任でそれを迎え入れたいのです」

蕭何はため息をついた後、得心した。
いかにも韓信らしいことだ、と。
「そもそも、叛乱を計画したのは……
それを陛下が望んでいたからです」

「! ……どういうことだ」
「私のことを陛下が持て余していることは、
わかっていました。
建国の元勲も事が成就すれば、邪魔になる
そのような理屈がわからない自分ではありません。
不遜な言い方ですが、陛下には私に正面から
戦いを仕掛ける勇気がない。勝つ自信が
ないからです」

「だから、自分から挙兵しようとした、というのか?」
蕭何の問いに、韓信はこくりと頷いた。
「……戦いに勝って、自ら皇帝になろうとしたのか」
「いえ。それはありません。陛下が陛下であることに、
私自身は異存がありません。

ただ至尊の位を得た以上、正しき道を歩んで
いただきたかった。私が挙兵することによって、
今の独善的な国家運営を反省していただければ、
と思った次第なのです。

しかし、落とし穴が待っていました。
まさかあのお妃様によってそれを阻止されるとは…」
韓信はこのとき、静かに笑った。
その表情は、自嘲的であった。

「君は、自制的な男だと思っていたのだが……
君ほどの功績のある男が自制してくれることで、
天下の万民はそれを真似し、その結果、
戦乱のない平和を享受できるのだ。
そのことがわからなかったのか」

蕭何は残念そうな表情で、そう言った。
しかしその言葉は、韓信の意思を理解していない
証拠であった。

「そんなものは、おしつけの平和というものでしょう。
平和の名のもとに人々に自制を強制するのは……。
人ができる自制というものには限りがあり、
それを越えると爆発します。

そのとき、天下は際限なく乱れるでしょう。
私は、それを抑えたかった」
「…………」
蕭何はとっさに言葉を返すことができなかった。
ようやく口をついて出た言葉は、以下の
ひと言であった。「……すまなかったな」

韓信はその言葉を受け、目を伏せた。
そしてひと呼吸置き、言葉を継いだ。
「……さあ、お話はこれまでです。私は、自分で
自分を斬る勇気はありません。部下の者に
お命じください」

「なにを」
「なにをって……首をはねよ、と命じるのです」
「……簡単に言いおって
……最後に言い残すことはないか」

韓信は少し考える素振りをした後、言い残した。
「……それでは。私の家臣の者には、あまり厳しい
処分を科さないでいただきたい。彼らのなかには
進んで私に仕えてくれた者もいますが、
そうでない者もいるのです。

それと……私には、家族はいません。
妻としようと決めた者には先立たれ、
弟同然のように接していた者にも、
やはり先立たれました。

天下をくまなく探せば、父や母に血のつながる者も
見つかるかもしれませんが……
私はその人たちを知りません。

呂后は三族を殺せとお命じになりましたが、
その辺は相国がうまくごまかしていただきたい」
「うむ。……ほかならぬ君の頼みだ。善処しよう」
「ありがとうございます。それと……陛下によろしく。

陛下がご帰還あそばしたときには、伝えていただきたい。
韓信は陛下の覇業を助けたのであり、
決して邪魔するつもりはなかった、と」

「そんなこと、伝えなくても陛下はわかっておいでだ」
「そうでしょうか……そうかもしれません。
ですが、伝えていただきたいのです」
「うむ」

「さあ、今度こそ、終わりです。お命じください。
私が……心穏やかでいられるうちに」
「…………」「……さあ!」 ・・・

つづく

Author :紀之沢直樹 (野沢直樹)
http://kinozawanaosi.com
http://mypage.syosetu.com/273441/


愚人は過去を、賢人は現在を、
  狂人は未来を語る




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最後の夜だから






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