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2017年5月13日 (土)

妄想劇場・漢の韓信-(172) 悪意の絆…その後

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昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
 明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
 良いかな・・・

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい


Kansin


漢の韓信-(172) 悪意の絆…その後

韓信は目を閉じ、その瞬間を待っている。
蕭何は心を決めなければならなかった。
難しいことはない。彼はたったひと言、
語を発すればよいだけであった。

蕭何がためらったのは実際にはほんの数刻
だけであったが、彼自身にとってそれはとてつもなく
長い時間に感じられた。
「……やれ」 剣を振るう音が聞こえ、やがて体が
床に崩れる音が聞こえた。

蕭何はそれを見ることができなかった。 
人の世は、清濁入り交じって流れる川のようであり、
混沌としている。清流は清流のままでいることは難しく、
その多くは周囲の濁流の影響を受け、
自らも濁流と化すものだ。

韓信は、自分が濁流と化すことを、頑として拒否した。
しかし、結果として清流は流れをせき止められたのである。
また、汚らしい泥のなかに埋もれる宝石が、
その輝きを主張することは難しい。泥の中では
せっかくの宝石もただの石ころと見分けが
つかないものである。

韓信は早くから自分が宝石であることに気付き、
輝こうとした。あるいは石ころに生まれた方が
幸せだったと考えながら。鬱蒼とした林の中で、
わずかな日光を得て可憐に咲く花を見つけることは
困難である。林の中は雑草ばかりで、
深く分け入らないとそれを見つけることはできず、
せっかく見つけても価値がわからないものにとっては、
花も雑草であると思われるものだ。

韓信は種子を飛ばし、雑草の中に自分の仲間を
増やそうとしたが、そのどれもが失敗に終わった。
種子は芽を出した段階で風雨や害虫に晒されることとなり、
ついに生き延びることができなかった。

そして韓信自身も価値のわからない者によって、
他の雑草と同じように踏みつけられ、最後には
枯れ散ったのである。

韓信が死んだのは紀元前一九六年の春であった。
一人の英才が衆愚によって亡き者にされたという事実。
戦乱が終わりに近づき、それによって英雄は
不要とされたという時流。新時代を築きながらも、
自らはその時代に乗り遅れた男の悲しい末路であった。

韓信は死ぬ間際に、そんな社会に生きる人々の
ありかたを「悪意の絆」と称した。
絆を失った者の魂の叫びだったと言えよう。

陳豨は韓信の死後も奮戦し、その後約二年に渡って
戦線を維持し続ける。やはり韓信が見込んだ男だけあって、
秀でた能力を持っていたと言うべきであった。
これに自ら兵を率いて相対していた皇帝劉邦は、
長引く戦局に見切りを付け、一時長安に帰還した。
そして、思いがけず韓信の訃報に接することとなる。

「陛下のご留守中に、淮陰侯韓信を謀反人として
誅しました」
皇帝の帰還を迎えた呂后の言は結果だけを述べており、
なんの感情も込められていない。よって、劉邦はいちいち
事実を確認しなければならなかったが、
ひととおり説明を聞き終えると、嘆息したり、喜んで
みせたりしたという。

「……死んだか……韓信が」
「ええ。死にました」
「簡単に言う。しかも簡単にお前は殺した。
建国の元勲を! 苦楽をともにした好男子を!」
「怒っていらっしゃるのですか」
「いや……そういうわけではない。
わしは……お前に感心しているのだ。

よく決心できたものだと。わしは……いずれ韓信は
除かねばならぬと思っていたのだが、
結局今までそれが出来ずにいた。奴の功績や、
これまでの付き合いのことを考えれば……わしにとって
奴は殺してしまうには惜しい男だったのだ」

「いけないことだったのでしょうか」
劉邦はその言葉を受け、真剣に悩んだようだった。
しかしやがて頭の中を整理すると、言葉を選ぶように、
慎重に語を継いだ。呂后の気に触らないよう、
意識したようだった。

「仮にわしに親類縁者が一切いなかったとしたら、
韓信に跡を継がせてもよかったように思える。
しかし、実際にはそんなことはないのだから、
韓信は滅ぼさねばならなかった。
これでよいのだ……だが、韓信はまだ若い。
わしより先に逝くことになろうとは思っても
みなかっただろうて。……

ところで、奴は死ぬ前になにか言葉を
残さなかったか」
呂后は劉邦の感傷にさほど関心を示さない様子で、
これに答えた。
「なんでも、蒯通という者の言うことに従わなかったのが
残念だ、という内容のことを喚いておりました」
「蒯通だと……?」劉邦の目が吊り上がった。

「……そいつは斉の弁論家だ!」未だ狂人を装い、
斉に潜伏していた蒯通は、勅令によって逮捕された。

・・・

つづく

Author :紀之沢直樹 (野沢直樹)
http://kinozawanaosi.com
http://mypage.syosetu.com/273441/


愚人は過去を、賢人は現在を、
  狂人は未来を語る




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あまり突然だから






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