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2017年7月16日 (日)

妄想劇場・一考編・ニュースの深層

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過去に起きていることから浮かび上がってくる
真実もある。・・・




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本来なら、かわいい子供たちに会う前ですから、
ドキドキワクワクのはずですが、私の場合は…。

実習の一週間前、打ち合わせのために、
受け入れの中学校に行くと、指導教官の先生が
困惑した顔で言いました。

「実は、あの学級は問題がありましてね。
入学してから一度も教科書を持ってこない
生徒がいるのです。
その上、手が付けられませんでねえ」

「ええっ!?」
ベテランの先生方さえ手を焼く生徒!
それも2年間も教科書を持ってこない!

「甘い顔は絶対しないように。大丈夫、
何かあったら、われわれがついていますから」
(そっ、そんな……何かあってからじゃ遅いのよ!)

かくして、私の実習へのワクワクはみごとに消え去り、
鉛のように重い不安な気持で始まったのでした。

「起りーつ、れい」
いるいる、本当に何も持ってきてないわ。
こっちを珍しそうに見てるじゃないの。髪型、服装、
みごと違反ね。

それでもとりあえずは何ごともなく授業が終わり、
控室で小テストの採点をしていると、例のA君の
答案が0点!(当然ね、白紙だもの)

「ん?」
(でも、名前の字がなかなか上手)
私は全員の生徒にそうしたように、
A君の答案にひと言を書き添えました。

「字がとても上手」
当時、自分というものにとても自信が無かった私は、
せめて未来を担う子供たちには、大きな自信を
持ってもらいたかったのです。

二週間の実習の中で私は何度、生徒に言葉を
書き添えたことでしょう。

「テスト嫌だけど先生の言葉が楽しみ」
「趣味は何ですか?」
「勉強の仕方を教えてください」

日を重ねるごとに子供たちからの言葉も
見られるようになりました。
でも、A君の態度はまったく変わりません。

「ああいう子供は、もうひねくれて固まって
しまったんだから、 どうしようもないよ」
同じ実習生の言葉に現実の厳しさをひしひし
感じました。・・・

やがて、二週間の実習もあっという間に過ぎ、
いよいよ最終日がやってきました。

その日、私は15分ほどの余った時間で生徒に
授業の感想を書いてくれるようお願いしたのです。

すると驚くべきことに、
あのA君がほかの生徒と同じように、
一生懸命に鉛筆を動かし始めるではありませんか。

けれど、「ああいう子は人の優しさなんかちゃんちゃら
おかしいってタイプだよ」との同じ実習生だった人の
言葉が、私の頭に浮かびます。

「あーあ、きっと私のことをめでたいバカなやつ 
とでも書いているんだわ」とすっかりしょげていました。
そして彼の手は、チャイムが鳴っても鉛筆を
動かすのをやめませんでした。

受け取ったときからずっと気になる彼の文を、
実際に開くとなるとなかなか勇気が湧きません。
それに学校では読まないという約束があるので、
目を通したのは、帰宅後遅くなってからのことでした。

書かれていた内容はこうでした。
「せんせは、大学卒業したらほんとのきょうしに
なるんですか?
だったらひとつ注意があります。
ダメだよ。オレみたいなヤツいたらもっと
きびしくすること。

本で殴るもいい。ワルいんだからあたりまえだよ。
せんせはとってもヤサしすぎるよ。
いつもニコニコしてて、だけどやさしいところが
いいせんせいとおもいました。がんばってください」

読みながら私の手はぶるぶると震えていきました。
ノートを一度もとったことがない子が、
宿題をやってきたことのない子が、
数分間でこの文を書くことはどれほど面倒で
大変だったことでしょう。

A君、あれから四年が過ぎようとしています。
もうすぐ19歳になるあなたの目は今、
未来に向かって輝いているでしょうか。
もし自信を失って落ち込んでいるとしたら、
私はあなたに向かって言いたい。

「悩みごとがあるたびに、先生は何度も
あの手紙を読み返しました。
だってそうすると心がとても元気になれるんですもの。
そんなすごい文章がかけるあなたは、
誰にも負けない力を持っているのよ。
自信を持って未来に向かって自分の
夢を描くのよ」と。・・・






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困っている人の顔を見ると、一声かけたくなるものだ。
私もこれまでの人生、励ましの言葉を
たくさんもらってきた。
しかし、五十歳のときに「がんばれ」の一言は、
私にとって今までとは真逆の意味になっていた。

ある日突然、私の体を病魔が襲ったのだ。
副腎白質ジストロフィーという難病で、
両下肢が麻痺し、車いすの生活を余儀なくされた。
あまりのことに茫然とするしかなかった。

「大変だけど、頑張ってね」
多くの方から励ましの言葉をもらった。
今までの私なら、その一言で発奮していたことだろう。

しかし今回ばかりは、そう言われてもどうしても
がんばれなかった。

日常生活を普通に遅れる健常者の方に言われると、
「あなたはがんばって。・・・私は知らないけど」と
突き放されたような感じがするのだ。

次第に、励まされること自体が苦痛になっていった。
自分でも嫌になるほど、私は荒んでいった。
心の状態に比例するかのように病状も進行し、
ついには寝たきりの生活になってしまった。

ある日のこと、障がい者団体の方が家に訪ねてきた。
私より十歳年上の男性で、彼も車いすに乗っている。
何をしにきたのだろうと構えていると、
彼は穏やかな口調でこう言うのだ。

「なんだか近ごろずいぶん辛いようだね」
今まで励ましの言葉はたくさんもらってきたが、
彼のように私の心情に寄り添ってくれた人は
初めてだったので驚いた。

温かな言葉だった。
荒んでいた私の心はパッと明るくなった。
気がつくと、抱え込んでいた苦しさのたけを、
彼に思い切りぶつけていた。

彼は目を細め、穏やかな笑顔で私の愚痴に
ひとつひとつ相槌を打ってくれる。

「毎日が大変なんだね。よくわかるよ」
同じ車いす生活という境遇のためだろうか。
彼に対しては素直になれた。

一通り愚痴を吐き出し、少し落ち着いてきたころ、
彼から問いかけがあった
「ところで、何かいいことは最近なかったかな」

いいこと・・・。
私は考え込んでしまった。
こんな自分に、いいことなどあるはずがない。
ないに決まっている……。

「どんなに小さなことでもいいんだよ」
いや、待てよ……。
最近は自分のことしか頭になく、身の回りで
何が起こっているのかさえ見ようとしていなかった。

彼の問いかけから、
自分の視野がいかに狭くなっていたかに気づかされた。
「そうだな……」

長い間考え込んだ私は、最近五年生になる息子が
学校から帰って遊びに出る前に、洗濯物を取り込み、
たたんでくれる話をしてみた。

その話にも、彼は温かく相槌を打ってくれる。
話すうちに、久しく忘れていた子どもを思う気持ちが
蘇ってくるのが分かった。

「すごくいい話じゃないか。
そんないいことが見えているTさんは、絶対大丈夫だ。
勝てるよ、きっと。 病気に勝てる。
だから僕と一緒にがんばってみませんか」

「一緒に」という言葉の響きが、私にはとても新鮮だった。
彼は、がんばれない私をすべて肯定してくれたのだ。

「がんばれよ」と突き放すのではなく、
私と同じ車いすに乗った目線で、
「一緒にがんばってみませんか」と寄り添ってくれた。

「一緒に」という言葉の響きが、私の中で大きく
広がっていった。
「Tさんに会えてよかった。ありがとう」
そう言って帰った彼の後姿に、手を合わせ、
何度もお礼を言った。

こんなに晴れやかな気分になったのは、本当に
久しぶりだった。
一時は寝たきりだった体も回復し、今では
車いすで旅行にも行けるようになった。
彼との出会いが、私を変えてくれたのだ。

その後、この障がい者団体のメンバーの一人として、
私も一緒に活動をさせてもらうことになった。
彼のように、苦しむ方のための手助けが
出来ればと願っている。

一人一人の思いに寄り添う……
彼が私に示してくれた姿勢を常に目標にしている。




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歌は心の走馬灯、歌は世につれ、
 世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…







P R :

Bu 

隙間産業(ニッチ市場) 


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