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2017年9月10日 (日)

妄想劇場・韓信外伝Ⅲ 名家の変遷

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昨日という日は歴史、今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
良いかな・・・

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい




Kansin


外伝Ⅲ 名家の変遷


名家に生まれ、その責任を果たそうとした男がいた。
取り巻く親族を始めとする人々は、彼の生き様から
何を学んだのか。
人々から与えられた愛を愛で返す……。
      
返す愛が足りないからこそ、人は裏切るのだ。
彼は過去の失敗をもとに、ひたすらに人々に愛を
与えようとした。その生き方は壮絶だったが、
荒々しいものではない。
彼は確かに人々から愛されていたのだ。



序・愛あればこそ


幼いころから自国の歴史を叩き込まれた彼にとって、
現在の状況は納得できるものではない。
彼の立場は、このときただの平民であった。とはいえ、
生活が不自由なわけでは決してない。人々は皆、
彼の過去の立場を尊重して丁重に扱う。
財産も失っていない。むしろ、彼は現在を生きて
いられることに感謝すべきであった。
      
彼が学んできた歴史というものは、国の調子が良いときは
その自慢、苦境に立たされたときは他国に対する恨み、
その繰り返しである。
      
要するに、かつて栄華を極めた我が国が、あることを
きっかけに不当に足下をすくわれ、心ならずも衰退した、
我々は必ずやその恨みを晴らし、もとの栄光を
取り戻さなければならない、という内容のものである。
      
彼は、常々思っている。自国の歴史書には客観性が
欠けていると。歴史書は、栄華を極めた状態が元の
あるべき姿であると断じ、衰退した状態はすべて他国の
影響だとしているのだ。
彼にとってそれは、無条件に信じることのできない
記述であった。
      
栄華を極めた国というものは、少なからず隣国の利益を
横取りして成り立っているものだ。だから衰退するときは、
それを取り返されたときだ。そのように思うのである。
しかしだからといって、彼は自国が隣国との関わりを
いっさい断って、争いもしなければ交流もしなければよい、
とは考えなかった。
      
「人というものは、国を愛すればこそ守ろうとして戦うのだ。
他国と争って負けるという事実は、結局のところ
その気持ちが相手に比べて弱いからに他ならない。
心から守りたいと思うからこそ、国は軍備を増強して
強兵を育て、強兵たちは気持ちを前面に出して戦う。
だから勝つのだ。
      
一方これに対して負ける側は、守りたいという気持ちが
少ないから軍備の増強を怠り、前線に立たされる
兵たちはそのことに不安を感じる。
そして国の態度を疑うのだ。
      
だから国を守る気持ちよりも、自分の命を守ることを
優先する。その結果、敵に降伏してしまうのだ。
こうして国は人民を失い、土地を失う。
そこから生じる収益も失う」
      
彼の言うところはつまり、国もそれを運営する人の
意思の固まりなのであり、結局人々は人を愛して
守りたいと思うからこそ戦う、というのである。
      
彼はかつて、国を運営する側の人であった。
しかし現在はその立場を失い、国そのものも
消滅している。
それは、彼が人々に与えた愛が足りなかった
からこそ生じた結果であった。


甯陵君魏咎

人は、彼のことを「甯陵君ねいりょうくん」と呼ぶ。
なぜそう呼ぶのかというと、一般に本名で名を呼ぶことが
失礼だとされていたからである。
      
しかしこれは彼の現在の肩書きではない。
彼はかつて魏国の公子としてその肩書きを戴いていたが、
何年も前にそれを失っていた。
魏国は秦によって滅ぼされ、彼の父は投降後に処刑された。
父親の災厄が自分に降り掛かることを、彼は恐れた。
しかし幸いにも、秦は彼を許したのである。
彼はこのとき平民におとされることとなった。
      
甯陵君という肩書きが取り外されると同時に、
魏の公子であるという事実も有名無実のものとなった。
彼に残されたのは、「咎きゅう」というへんてこな
名前ばかりである。
      
「咎」という文字には、人をとがめる、非難するという意味が
込められている。しかし実際の彼は、人を愛そうと努力し、
その努力によって自分にも相応の見返りが得られると
考えていた。
      
当時彼を知る人々は、皆そのことをわかっていたが、
そのことで彼のことをあざといと評価する人物はいない。
むしろ彼は、名家の生まれにふさわしい人物として、
尊敬されていた。
      
そしてその出自を失ったという事実を、皆憐れんで
いたのである。
「私は、いつかまた国を動かす立場になりたいと思っている。
そのときには、まったくこれまでとは違う、新しいものを
作りたいものだ」
      
彼は野心的なことを滅多に語らなかったが、
ごくたまに親しい者を相手にそのようなことを話したという。
「新しいもの」とはなにか……。
少なくとも旧態依然とした戦国諸国の復興ではあるまい。
彼が単に魏国をそのまま復興するつもりだとは、
当時の誰も考えなかった。
      
彼が理想としていた国家とは、野心のままに覇権
争いをするそれではなく、純粋に価値観を共有する
人々の共同体だったのである。
      
やがて大沢郷での陳勝の蜂起をきっかけに秦の統治が
弱まると、彼は選択を迫られた。
これを機に秦の統治の目が届かない南方へと逃れるか、
それとも戦うか、である。
      
しかし、実質的に選択の余地はない。
彼を慕う人々は、自分の生まれ育った土地を愛し、
それを守るために戦うのだ。
魏咎は、自分を慕う人々を愛する限り、その意思を
尊重しなければならない。
      
愛は、愛によって報いなければ効果がないのだ。
「私は、陳勝の軍に馳せ参じようと思う。
そこでひとかどの役割を果たし、皆の子々孫々へ
至るまでの土地を確保するつもりだ。
私自身のためにもそれがいちばんいいと思う」
      
そこで魏咎は陳勝の在所である陳(地名)を訪ね、
その配下となったのである。
      
目的としては、陳勝配下である程度の働きをし、
その功労をもって魏国の旧領土を統治する権利を
手に入れることだった。
      
しかし陳勝は魏咎をひと目見て惚れ込み、自らの
近辺を離れることを許さなかった。
魏国の統治はおろか、陳を離れることも
叶わなかったのである。
      
「愛されることは名誉なことだが、困ったことだ」
魏咎は嘆息まじりに息子たちに向かって呟いた。
彼には多くの息子がいる。しかしそのうち正妻に
生ませた男児は二人のみであり、彼が常日ごろ
身近に置いておくのは、この二人のみであった。
      
名を、賈と成という。兄が賈で、弟が成である。
「お前たちに別れを告げなければならぬときが
来たらしい。……
      
このままでは、私は単に陳勝どのに仕えた
というだけで、挙兵したことにはならぬ。
お前たちだけでも魏の地に戻って、かの地の
平定に尽力するがいい。……
我が弟の豹ひょうの指示に従え」
      
兄の賈は答えた。
「ご命令はお受けしますが…それにしてもなぜ陳王
(陳勝のこと)は、父上のことを離さないのでしょう」
賈は背が大きい男であったが、表情が優しい。
目が丸く、愛嬌のある顔は人を和ませた。
ただし政治的な眼力は乏しく、魏咎はややそのことが
残念に思っている。
      
長男であるがゆえに甘やかした環境で育てすぎた、
と後悔していたのである。
「天下の趨勢を見るがいい。趙では陳王が派遣した
武臣という男が勝手に自立して王となってしまっている。
陳王としては、そのような動きを極力抑えたいのだ。
まして、この私が魏国の王族であるという事実は
彼にとって大きな利用価値がある。
      
私を味方につけることで、陳王は少なくとも魏国の
統治を正当化できるのだ」賈は傍らの成を顧みて、
その意を伺った。このとき、賈は自分の思いをうまく
言葉に表すことができなかったようであった。
      
成はそんな賈をややあきれたような目で見やったあと、
兄にかわって意見した。
「陳王の意はわかります。ですが、父上のお考えは
どうなのでしょう。
父上ご自身に、王を称するつもりはないのですか」
      
咎は成の意見に大きく頷きながら、その後首を
横に振った。
聞くべき価値はあるが、即座には肯定できないという
気持ちの現れであろう。
      
「民衆に求められてその座につくというのであれば、
そのつもりがないわけではない。あるいは陳王が
統治の都合上、そうしてくれというのであれば……。
しかし、今の段階で私が自ら王を称することは、
私を慕う人々に無用な戦いを強いることでしか
ないのではなかろうか」
      
成はなおも食い下がった。
「父上には、自らが理想とする社会を創り上げる
気概がないと見えます。
このまま天下が陳王の手の中に収まることを、座して
眺めているだけのおつもりですか」
      
この言を受けた咎は、いささか憤慨した。
「なにを言う。息子よ」
父親の顔色をうかがった賈は、場を取りなすように
成に注意した。
「言葉が過ぎるぞ、成よ。父上の目指しているものは、
権力によって人が虐げられない社会なのだ。
戦いは、秦の暴政から人々を救うためであり、
次に誰が権力を握るかという問題は、
二の次でしかないのだ」
      
賈が言うことは、概ね咎の意図と合致していた。
人が戦いの場に自らの身を投じるということは、
強制でもされない限り、よほどの理想や目的がなければ
あり得ないことである。
      
魏咎の場合、公子であったという過去の自分の
立場もあり、戦乱の中で人々が枯れ葉のように状況に
舞い踊るだけであることを、黙って見ていられ
なかったのである。
      
自分が立たねば、彼らは徴兵されて死ぬか、
土地を奪われて飢えるか……それだけである。
彼は、せめて自分を慕ってくれる周囲の人々だけでも、
幸せにしたいと願ったのであった。
      
長男の賈は、多少朴訥すぎる面はあるが、
父親のそのような気持ちをよく理解していたようである。
いっぽう成は覇気にあふれており、もっと激しく
行動したいようだ。
父親の魏咎から見れば、二人の性格を合わせれば
ちょうど良い、といったところであった。
      
「慎重に事態を見極め、行動を起こすと決めたなら
迅速にしなければならん。まずは、豹のもとへ行け。
豹はいま、陳王の派遣した周市将軍に協力して
旧魏国の領土の平定に尽力している。
      
お前たちが行けば、豹も周市も喜ぶだろう」
魏咎は息子たちに伝えて旅立たせ、自らは
陳勝のもとに残った。
      
つづく




愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る・・・


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